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11 43歳の女性。高校の美術教師。2年前に乏突起神経膠腫を発症した。現在緩和ケア病棟で疼痛緩和の治療を受けている。作業療法士時に「死んだらどうなるのでしょうか」と問いかけられた。
対応として最も適切なのはどれか。
1.「よく分かりません」
2.「あなたはどう思っていますか」
3.「気持ちを切り替えて、作業をしましょう」
4.「そんなことは心配しなくても大丈夫ですよ」
5.「何か楽しくなるようなことを考えましょう」
解答2
解説
乏突起神経膠腫とは、脳表の近くに発生し、CTでは石灰化を伴うなどの特徴がある。20〜30年かけてゆっくり大きくなるものもあり、生存期間中央値11.6年で、5年生存率約70%とデータがある。本症例は、緩和ケアを受けており、患者の気持ちに添い、共感的な対応が必要である。
1.× 「よく分かりません」と言われたら、患者は突き放した感じで受け取る可能性が高く不適当である。
2.〇 正しい。「あなたはどう思っていますか」は、対応として最も適切である。なぜその発言に至ったのか、患者の思いを聞くことができる。共感と傾聴を一緒に行える。
3.5.× 「気持ちを切り替えて、作業をしましょう」「何か楽しくなるようなことを考えましょう」と言われてもなかなかできるものではなく、話を反らしているだけである。言われた側は「めんどくさがられている」と受け取る可能性もあり、患者の気持ちに添っていない。
4.× 「そんなことは心配しなくても大丈夫ですよ」と患者の訴えを軽視しており、作業療法士が病状の予後を保証することはできない。
緩和ケアにおける理学療法は,回復を目的としたトレーニングとは異なる。回復が望めない中にあってその苦痛の緩和に努め,残された機能を最大限に生かし,安全な生活を支えることが必要である。また,残された機能を生かし支えることは,ひいては患者や家族の実際的ニーズや希望を支えることにもなる。さらに,その過程においてさまざまな患者の訴えに心を傾け,患者に寄り添うことは,理学療法士が提供できる大切な心のケアと考える。
①疼痛・苦痛の緩和:リハにおいてもまず取り組む課題である。(安楽肢位、リラクゼーション、物理療法、補装具の検討、電動ベッドなどの検討)
②ADL 能力維持・援助:特に排泄動作に関する要望が多い。(移動能力維持、環境設定、ADL訓練、介助法の指導)
③精神面の援助:死を受け入れていくうえでも「どのように生きるか」が重要である。
④家族への援助:家族から要望があれば介助方法や援助方法(マッサージの方法など)を伝達する。
⑤廃用性変化の予防・全身機能維持:リハが日常生活にリズムをつくる。
※(参考:「緩和ケアにおけるコメディカルの役割と人材の育成」著:下稲葉 主一(栄光病院リハビリテーション科))
12 18歳の男性。脳梗塞後の右片麻痺。発症から5か月経過。Brunnstrom法ステージは上肢、下肢ともにⅢ。T字杖で室内歩行は自立しているが、疲労しやすく、すぐに椅子に腰掛ける。遠近感が分かりづらく、平地でつまずくことがある。自宅退院に向けた浴室の環境整備案を図に示す。
設置する手すりとして必要でないのはどれか。
1.①
2.②
3.③
4.④
5.⑤
解答5
解説
・18歳の男性(脳梗塞後の右片麻痺)
・5か月経過:Brunnstrom法ステージは上肢、下肢ともにⅢ。
上肢Ⅲ:坐位で肩・肘の同時屈曲・伸展。
下肢Ⅲ:坐位、立位での股・膝・足関節の同時屈曲。
・T字杖で室内歩行は自立しているが、疲労しやすく、すぐに椅子に腰掛ける。
・遠近感が分かりづらく、平地でつまずくことがある。
→本症例は右片麻痺である。左手に手すりがあると動作の安定に寄与する。本症例の座位能力についての記載はないが、立ち上がりにも使用できるよう右片麻痺に対して左手に手すりを設置するのが基本となる。したがって選択肢5.⑤洗い場横手すりは必要ない。設置を考えた場合、左手につけるのが良い。
1.3〇 ①入り口縦手すり、③縦手すりは、浴室の出入りに必要である。
2.〇 ②バスボード用の手すりは、浴槽を跨ぐときに必要である.
4.〇 ④浴槽から立ち上がるときの横手すり(できればL字手すりが望ましい)で必要である。
縦手すり:出入り口の動作安定などのその場での動作に使用。
横手すり:移動や座位安定に機能する。
L字手すり:縦・横手すりの機能を持つ。座位からの立ち上がりに機能する。
13 38歳の女性。性格が几帳面、完全主義。仕事仲間との関係性に悩んでいた。そうした中、浮腫を自覚したため内科を受診したところネフローゼ症候群と診断され、副腎皮質ステロイド薬の投与が開始された。投与開始1ヵ月後から蛋白尿が消失したが、「何事にも興味がわかない」などの言葉が聞かれるようになり、趣味のコーラスもやめてしまった。
今後検討すべき治療方針として、最も優先順位が高いのはどれか。
1.家族療法
2.音楽療法
3.精神分析療法
4.抗うつ薬による薬物療法
5.副腎皮質ステロイド薬の調整
解答5
解説
本症例は、ネフローゼ症候群と診断され、副腎皮質ステロイド薬の投与が開始されている。副腎皮質ステロイド薬の副作用は、①易感染性、②骨粗鬆症、③糖尿病、④消化性潰瘍、⑤血栓症、⑥精神症状(うつ病)、⑦満月様顔貌(ムーンフェイス)、中心性肥満などである。「何事にも興味が湧かない」といった訴えや、趣味のコーラスをやめてしまったことから、患者はうつ病と疑われる。
1.× 家族療法とは、家族を対象とした心理療法の総称である。摂食障害・アルコール依存症の治療などに用いられる。
2~3.× 音楽療法・精神分析療法は、行うとしても回復期後期が適当である。現時点では、急性期と考えられ優先度は低いと考えられる。
4.× 抗うつ薬による薬物療法を行う前に、原因と考えられる薬物の調整の方が優先度は高い。本症例の場合、ネフローゼ症候群と診断され、副腎皮質ステロイド薬の投与が開始おり薬物が特定されやすい。
5.〇 正しい。副腎皮質ステロイド薬の調整(減量等)を行うことが今後検討すべき治療方針として最も優先順位が高い。ただし、服薬の調整は医師が担当している。作業療法士は、現状の作業療法の様子や状況を「うつ症状」も的確に報告するのが望ましい。
【ステロイドの機序】
ステロイドは細胞の中に入った後にグルココルチコイド受容体に結合する。ステロイドの結合したグルココルチコイド受容体は、細胞の核内へ移行し、炎症に関与する遺伝子の発現を調節すると言われている。 この結果として強力な抗炎症作用と免疫抑制作用が発揮される。
【ステロイドの副作用】
軽度:中心性肥満、体重増加、満月様顔貌
重度:消化管潰瘍、糖尿病、感染症、骨粗鬆症・骨壊死、筋炎、精神症状(抑うつ、せん妄)
ステロイドを長期的に内服した場合、体内でステロイドホルモンが分泌されなくなることがある。そのため、急に薬の内服を止めると体内のステロイドホルモンが不足し、倦怠感や血圧低下、吐き気、低血糖などの症状が起こることがある。これをステロイド離脱症候群という。
(※参考:「副腎皮質ステロイド」日本リウマチ学会様HP)
14 47歳の男性。幼少期からクラスメートとの喧嘩が絶えず、しばしば担任から注意を受けていた。中学校卒業後、暴行と障害とで少年院に2回の入院歴、刑務所に4回の服役歴がある。最後の出所後、クリーニング工場に勤めたが、同僚への暴言によるトラブルをきっかけに飲酒量が増加し、飲食店で他の客と口論となって刃物を持ち出して逮捕された。その後、連続飲酒状態を繰り返すようになり、アルコール依存症と肝障害との診断を受けて入院した。作業療法では他の患者の発言に反応して威圧的な態度をとることが多く、指摘しても問題を感じている様子がない。
合併するパーソナリティ障害として考えられるのはどれか。
1.強迫性パーソナリティ障害
2.境界性パーソナリティ障害
3.回避性パーソナリティ障害
4.自己愛性パーソナリティ障害
5.反社会性パーソナリティ障害
解答5
解説
・47歳の男性。
・幼少期:喧嘩が絶えない(攻撃性)。
・中学校卒業後:暴行と障害を繰り返す。
・出所後:飲食店から刃物を持ち出して逮捕された(衝動性、モラルの欠如)。
・その後:アルコール依存症と肝障害にて入院。
・作業療法:威圧的な態度をとる、指摘しても問題を感じている様子がない(他人への配慮がない)。
1.× 強迫性パーソナリティ障害は、秩序・完全主義・精神および対人関係の統一性にとらわれ、柔軟性・開放性・効率性が犠牲にされている傾向にある。男性に多い。
2.× 境界性パーソナリティ障害は、感情・対人関係・自己像が非常に不安定で衝動的であり、見捨てられることに不安を感じ、それを異常に避けようとする傾向にある。女性に多い。
3.× 回避性パーソナリティ障害とは、①社会的状況で恥をかくことや、②相手から拒絶される可能性を常に意識している特徴を持つパーソナリティ障害である。
4.× 自己愛性パーソナリティ障害は、特権意識(自分が素晴らしいと誇大に思うこと)をもち、尊大で倣慢な態度(自己中心的な態度)をとる。賞賛されたいという欲求が強く、また他者への共感の感情が欠如する傾向を持つ。
5.〇 正しい。反社会性パーソナリティ障害は合併するパーソナリティ障害として考えられる。反社会性パーソナリティ障害は、他人への配慮がなく、衝動的な反社会行動の傾向にある。本症例の特徴である①少年院への入院、②刑務所での服役歴を繰り返す、③口論をきっかけに刃物を持ち出すなど、衝動的で反社会的な行動が当てはまる。
類似問題です↓
【OT専門のみ】パーソナリティ障害についての問題「まとめ・解説」
15 39歳の男性。アルコール依存症。前回退院後に連続飲酒状態となり、妻からの依頼で2回目の入院となった。入院の際、妻からお酒をやめないと離婚すると告げられた。離脱症状が治るのを待って作業療法が開始された。用意されたプログラムには自ら欠かさず参加し、特に運動プログラムでは休むことなく体を動かしていた。妻には「飲酒による問題はもう起こさないので大丈夫」と話している。
この患者に対する作業療法士の対応として最も適切なのはどれか。
1.運動プログラムを増やす。
2.さらに努力を続けるように伝える。
3.支持的に接し、不安が示されたら受け止める。
4.離婚されないためということを動機づけに用いる。
5.過去の飲酒が引き起こした問題には触れないでおく。
解答3
解説
・39歳の男性(アルコール依存症)
・前回退院後:連続飲酒状態となり2回目の入院。
・現在:離脱症状が治るのを待って作業療法が開始された。
・用意されたプログラムには自ら欠かさず参加。
・妻には「飲酒による問題はもう起こさないので大丈夫」と話している。
→本症例は、離脱症状が落ち着き、作業療法を勧めていることから、治療前期~後期である。退院を視野に入れた作業療法を徐々に取り入れていく。
1~2.× 運動プログラムを増やす/さらに努力を続けるように伝えるのは不要である。なぜなら、本症例は運動プログラムでは休むことなく身体を動かしているため。アルコール依存症者は、飲酒の際の汚名を挽回しようとふるまう傾向にあるため、負担やストレスをかけることはしない。
3.〇 正しい。支持的に接し、不安が示されたら受け止める。なぜなら、今回で2回目の入院となり、妻には「離婚」という単語も出ていることから、本症例は妻には「飲酒による問題はもう起こさないので大丈夫」と話しているが、精神的に不安になることもある可能性が高いため。不安を受け止め、共感を示すことは、疾患を持つすべての患者に対して必要である。
4.× 離婚されないためということを動機づけに用いるのは不要である。今のところ、妻には「飲酒による問題はもう起こさないので大丈夫」と話しており、すでに「離婚されないため」ということが、本人がプログラムに参加する動機付けになっていると考えられる。今後は、飲酒をしない生活に向かうための意識付けを行っていく必要がある。
5.× あえて過去の飲酒が引き起こした問題には触れないでおく必要はない。なぜなら、飲酒による失敗を否認せずに、本人が受け止め、治療が継続できるように支援することが重要であるため。
アルコール依存症とは、少量の飲酒でも、自分の意志では止めることができず、連続飲酒状態のことである。常にアルコールに酔った状態でないとすまなくなり、飲み始めると自分の意志で止めることができない状態である。
【合併しやすい病状】
①離脱症状
②アルコール幻覚症
③アルコール性妄想障害(アルコール性嫉妬妄想)
④健忘症候群(Korsakoff症候群)
⑤児遺性・遅発性精神病性障害 など
コメント失礼します。
12番の解説なんですけど赤線の右片麻痺に対して右手に手すりを設置するではなく、右片麻痺に対して左手に手すりを設置するではないですか?
コメントありがとうございます。
ご指摘通り間違えておりました。
修正致しましたのでご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。