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96.注意欠如・多動性障害について正しいのはどれか。2つ選べ。
1.薬物療法は行わない。
2.男児よりも女児に多い。
3.生育歴の聴取が重要である。
4.二次性の精神症状に注意が必要である。
5.成人期において診断されることはない。
解答:3,4
解説
1.× 薬物療法も行う。中枢神経刺激薬や、選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬など保険適応となっている。発達障害の一つであるADHD(注意欠如・衝動性障害・多動性障害)の治療には大きくわけて、「薬物療法」と「心理社会的アプローチ」の2種類がある。
2.× 逆である。女児よりも男児に多い。ただ、女子の場合は多動性が少なく不注意が優勢であり、攻撃的・反抗的な特徴が控えめな傾向があるため、周囲に気づかれにくいという指摘もあり、ほぼ同数という報告もある。
3.〇 正しい。生育歴の聴取が重要である。不健康、通院中、悩みやストレスが多いという特徴が見られる。ADHDの場合は、2~3歳の頃から主に多動が目立つようになり、12歳までに診断を確定する。
4.〇 正しい。二次性の精神症状に注意が必要である。一次障害である発達障害を原因として、後天的に精神障害などを発症することを二次障害という。二次障害として、うつ病や不安障害・自律神経失調症などがあげられる。ADHDでは、注意欠如・衝動性・多動性は日常生活の困難をもたらし、それによる心理的な傷つきや抑うつなどの精神的な不調を呈することがあり、注意が必要である。
5.× 成人期においても診断される。ただ、一般的に男子は8歳以前に診断されることが多い。女子はそれより遅く12歳頃に診断される傾向にある。子どもの頃にはその傾向が目立たなかった人が、就職、結婚など、子ども時代よりも周囲との調和が強く求められる環境下でADHDの存在がはっきりしてくることもある。
97.驚きなどの情動によって脱力発作が誘発されるのはどれか。
1.睡眠時驚愕症
2.ナルコレプシー
3.むずむず脚症候群
4.レム睡眠行動障害
5.睡眠時無呼吸症候群
解答:2
解説
1.× 睡眠時驚愕症(夜驚症)は、夜、眠っている時に突然起き上がり、極度のパニックを起こす障害である。突然、目を開けて絶叫したり、激しく体を動かしたりするほか、心悸亢進、過呼吸、瞳孔散大、発汗といった強い自律神経興奮を示す。小児にみられ、ノンレム睡眠の未熟さが想定されている。大人になると自然に治っていくことが多い。
2.〇 正しい。ナルコレプシーとは、驚きなどの情動によって脱力発作が誘発される。また、日中において場所や状況を選ばず起こる強い眠気の発作を主な症状とする脳疾患である。睡眠発作(日中眠くなる)、脱力発作(カタプレクシー:情動に誘発されて力が抜ける)、睡眠麻痺(いわゆる「金縛り」状態)、入眠時幻覚が見られるが、せん妄は見られない。
3.× むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群、下肢静止不能症候群)は、身体末端の不快感(むずむず感)や痛みによって特徴づけられた慢性的な病態である。入眠時にむずむず感が生じると、それを軽減するために下肢を絶え間なく動かすために入眠が障害される。
4.× レム睡眠行動障害は、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つ。睡眠時随伴症に分類される。基礎疾患として、脳幹部の脳腫瘍、パーキンソン病、オリーブ橋小脳萎縮症、レヴィー小体病などいくつかの原因が考えられている。しかしながら、約半数は基礎疾患を持たず、原因不明である。
5.× 睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間に呼吸が止まる病気である。医学的には、10秒以上の気流停止を無呼吸とし、無呼吸が一晩に30回以上、もしくは1時間あたり5回以上を診断基準とすることが多い。
98.神経性無食欲症について正しいのはどれか。
1.頻脈になる。
2.無月経になる。
3.恥毛が脱落する。
4.体温が上昇する。
5.行動が不活発になる。
解答:2
解説
摂食障害には、①神経性無食症、②神経性大食症がある。共通して肥満恐怖、自己誘発性嘔吐、下剤・利尿剤の使用抑うつの症状がみられる。作業療法場面での特徴として、過活動、強迫的なこだわり、抑うつ、対人交流の希薄さ、表面的な対応がみられる。患者の性格として、細かい数値へのこだわり(①体重のグラム単位での増減、②この食べ物はあの食べ物より〇カロリー多いなど)がみられる。
【摂食障害の作業療法のポイント】
①ストレス解消、②食べ物以外へ関心を向ける、③自信の回復(自己表出、他者からの共感、自己管理)、④過度の活動をさせない、⑤身体症状、行動化に注意する。
【性格的特徴】
①強情、②負けず嫌い、③執着心が強い、③極端な行動に及びやすい。
1.× 「頻脈」ではなく徐脈になる。なぜなら、痩せて代謝機能が低下し、さらには甲状腺機能低下症を合併したりするため。しかし、この場合には拒食症が治り、甲状腺機能が改善したときには徐脈も治る。
2.〇 正しい。無月経になる。なぜなら、痩せて視床下部ホルモンの分泌が低下して卵巣機能が低下するため。
3.× 「恥毛が脱落する」のではなく、うぶ毛が増加する。ちなみに、恥毛が脱落は、副腎皮質機能低下症などでみられる。
4.× 体温が「上昇する」のではなく低下する。なぜなら、痩せて代謝機能が低下するため。
5.× 行動(活動性)が、「不活発になる」のではなく活発する。なぜなら、やせるため(カロリーを消費を図るため)。
99.ACT (assertive community treatment)について正しいのはどれか。2つ選べ。
1.医師を中心としたチームを組む。
2.每日24時間のサービス提供体制である。
3.短時間であっても頻回に利用者への訪問を行う。
4.スタッフ1人当たりのケースを50人程度にする。
5.地域生活が安定した軽度の精神障害者を対象とする。
解答:2,3
解説
ACT (assertive community treatment:包括的地域生活支援プログラム)とは、重い精神障害をもった人(入退院を繰り返すなど)であっても、地域社会の中で自分らしい生活を実現・維持できるよう包括的な訪問型支援を中心に提供するケアマネジメントモデルのひとつである。地域社会でうまく生活を継続することができるように多職種が365日・24時間体制で多職種によって構成されたチームにより関わる仕組みである。サービス提供は原則的に無期限である。
1.× 「医師が中心として」ではなく、看護師・精神保健福祉士・作業療法士・精神科医などからなる多職種チームアプローチで行う。医師以外のチームリーダーを置く。
2.〇 正しい。每日24時間・365日のサービス提供体制である。危機介入にも対応する。
3.〇 正しい。短時間であっても頻回に利用者への訪問を行う。
4.× スタッフ1人当たりのケースを、「50人程度」ではなく、10人以下にする。
5.× 地域生活が安定した「軽度の精神障害者」ではなく、重い精神障害をもった人であっても対象とする。
100.うつ病の患者への対応として適切でないのはどれか。
1.急性期には休息をとらせる。
2.自殺しないように約束させる。
3.重要な問題の決定を先延ばしさせる。
4.抗うつ薬の副作用について説明する。
5.うつ病であることを伝えずに伏せておく。
解答:5
解説
1.〇 正しい。急性期には休息をとらせる。急性期に限らず、うつ病患者には精神的・身体的に十分休息をとることを勧める。
2.〇 正しい。自殺しないように約束させる。なぜなら、特に回復期は自殺企図が多いため。辛くても自殺しないことを約束させる。
3.〇 正しい。重要な問題の決定を先延ばしさせる。うつ病は悲観的な思考をする傾向があるので重大な決断(退職、離婚など)は必ず先延ばしにするのが鉄則である。
4.〇 正しい。抗うつ薬の副作用について説明する。特にうつ病患者は、自己判断で怠薬することのないよう、薬の効果や副作用(立ちくらみ、眠気、まぶしさ等)についての説明を十分に行う。
5.× うつ病であることを伝えずに伏せておくのは不適切である。患者にうつ病であることを伝えることで、自身の症状に対しての理解が深まり、治療者とともに病気に立ち向かっていこうとする意欲が沸く。疾病を十分理解させ、睡眠障害や身体障害を観察しながら休息やリラックス法を取れるようにする。
※問題の引用:第53回理学療法士国家試験、第53回作業療法士国家試験の問題および正答について
※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。