第52回(H29) 作業療法士国家試験 解説【午前問題6~10】

 

6 65歳の男性。Parkinson病。方向転換の不安定性や突進現象を伴う歩行障害が出現し始めた。ADLは動作に制限があるものの自立している。家業である洋裁店を妻や長男夫婦の手助けで行っている。
 この時点でのHoehn&Yahr の重症度分類ステージはどれか。

1. Ⅰ
2. Ⅱ
3. Ⅲ
4. Ⅳ
5. Ⅴ

解答3

解説

Hoehn&Yahr の重症度分類ステージ

ステージⅠ:片側のみの症状がみられる。軽症で機能障害はない。
ステージⅡ:両側の症状がみられるが、バランス障害はない。また日常生活・通院にほとんど介助を要さない。
ステージⅢ:歩行障害、姿勢保持反射障害が出現し、ADLの一部に介助が必要になる。
ステージⅣ:日常生活・通院に介助を必要とする。立位・歩行はどうにか可能。
ステージⅤ:寝たきりあるいは車いすで、全面的に介助を要する。歩行・起立は不能。

 本症例は、設問から「①歩行障害が出現(方向転換の不安定性や突進現象を伴う)、②ADLは動作に制限があるものの自立」していることが読み取れる。このことから、選択肢3.ステージⅢ【軽~中等度パーキンソニズム。姿勢反射障害あり。日常生活(労働を含む)に一部介助(制限)が必要になるが自力での生活可能。】と考えられる。

 

 

 

 

 

 

7 50歳の女性。左椎骨動脈解離によるWallenberg 症候群で3週経過した。四肢に麻痺と高次脳機能障害はないが、摂食嚥下障害があり経鼻経管栄養が開始された。嚥下造影では咽頭収縮不良による左側咽頭通過障害を認め、唾液を常にティッシュで拭っている状態である。発熱はなく、呼吸状態は安定している。
 この患者への対応で正しいのはどれか。

1. 間接訓練は禁忌である。
2. 頸部左回旋して嚥下する。
3. 間欠的経管栄養の適応はない。
4. 垂直座位で唾液の誤嚥を防ぐ。
5. 頸部の筋力訓練は禁忌である。

解答2

解説

Wallenberg症候群(延髄外側症候群)とは?

Wallenberg症候群(延髄外側症候群)は、椎骨動脈、後下小脳動脈の閉塞により延髄外側の梗塞を来す疾患である。①梗塞と同側の顔面感覚障害(温痛覚)、②梗塞と同側の運動失調(上下肢の動かしづらさ)、③梗塞と同側のホルネル(Horner)症候群(一側眼の瞼裂狭小化、縮瞳、眼球陥凹)、④梗塞と反対側の半身感覚障害(頸から下の温痛覚)、⑤嗄声、嚥下障害、⑥回転性めまい、眼振、⑦味覚障害が生じる。

(※参考:「脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告書」厚生労働省HPより)

1.× 間接訓練は禁忌でない。間接訓練とは、食物を使わない訓練方法のことである。実際の食物を用いる直接訓練では、誤嚥の危険性が高い場合にも有用な訓練法である。
2.〇 正しい。頸部左回旋して嚥下する。頸部を麻痺側に回旋させることにより、動きの悪い方の喉を狭くして食塊を溜まりにくく誤嚥しにくくする。
3.× 間欠的経管栄養の適応である。間欠的経管栄養とは、口からチューブを食道まで(口から30~40cm)入れて、注入する方法(口腔食道、OE法)や胃まで(40~50cm)入れて注入する方法(口 腔一胃、OG法)などがある。自分で一日3回食事の時間に合わせて行うことも可能である。間欠的経管栄養の適応は、①訓練で経口摂取が可能と判断される症例、②一時的な経口摂取不良時、③チューブの嚥下が訓練になると判断されるときなどである。本症例は、嚥下造影では咽頭収縮不良による左側咽頭通過障害を認められているものの、今後の経口摂取が困難であることは問題文から書かれておらず、間欠的経管栄養の適応(①訓練で経口摂取が可能と判断される症例)にも当てはまる。
4.× 垂直座位より、30°のリクライニング位で誤嚥を防ぐ。30°のリクライニング位は、患者自身で食事は目視できないため、食事介助が必要であるが、食塊の流入速度を遅くさせ、喉頭閉鎖遅延の代償ができるため誤嚥予防となる。
5.× 頸部の筋力訓練は嚥下機能改善に効果的である。Shaker法(頭部挙上訓練)とも呼ばれる。舌骨周囲の嚥下筋(特に舌骨上筋群)の強化を目的とする。方法としては、仰向けに寝た状態から頭を持ち上げつま先を見る(30秒キープ)。これを3回繰り返す。次いで、1秒毎に頭を挙げたり下げたりを30回繰り返す。

 

 

 

 

 

 

8 図のように右股関節を最大屈曲させた際に、左大腿部の挙上がみられた。
 短縮が最も考えられる筋はどれか。

1. 大腿筋膜張筋
2. 大腿直筋
3. 中殿筋
4. 縫工筋
5. 大腰筋

解答5

解説

 図はThomas テストである。Thomasテストは、股関節の屈曲の主動作筋である腸腰筋(腸骨筋・大腰筋・小腰筋)による屈曲拘縮の有無を評価する検査法である。つまり、陽性であるため選択肢5.大腰筋の短縮を疑う。

Thomasテストとは?

股関節の屈曲拘縮(腸骨筋、大腰筋、小腰筋)をみるための検査である。
①患者は、背臥位で測定する。
②検査者は、患者の膝を一側ずつ屈曲させ胸に近づける。
③胸に近づけた方と反対側の股関節が屈曲し膝が持ち上がれば、陽性である。
④胸に近づけた方と反対側の股関節の屈曲拘縮が生じていることを示す。

 

 

 

 

 

9 図は痙直型両麻痺を示す脳性麻痺児(GMFCSレベルⅢ)の長座位姿勢である。後方に倒れるのを防ぐため上体を起こそうと全身の筋緊張を強め努力している。
 その際に上肢に起こる連合反応として適切なのはどれか。

1. 肩甲骨の挙上
2. 肩関節の外転
3. 肘関節の伸展
4. 前腕の回外
5. 手関節の背屈

解答1

解説

本症例のポイント

・両麻痺とは、両下肢に重度の麻痺がある状態のこと。痙直型両麻痺の特徴として、体重支持に際し、陽性支持反応にもとづく同時収縮が起こり、下半身を中心に漸進的に伸展緊張の亢進をもたらす(両下肢の麻痺に、軽~中等度の両上肢・体幹の麻痺を伴うことが多い)。
・GMFCSレベルⅢ:「歩行補助具を使用して歩くことは可能」である。
・連合反応とは、痙直型麻痺児の運動でみられる緊張性姿勢反射の一つである。随意運動の際に、その運動に関与していない四肢・体幹に痙直の増強が生じる反応である。努力性の運動や精神的緊張により誘発されやすい。上肢の筋緊張の亢進では、肩甲骨の挙上、肩関節屈曲・内転・内旋、肘関節屈曲、前腕回内、手関節掌・尺屈(個人差あり)、手指屈曲を誘発しやすい。

1.〇 正しい。肩甲骨の挙上は、上肢に起こる連合反応である。連合反応とは、痙直型麻痺児の運動でみられる緊張性姿勢反射の一つである。随意運動の際に、その運動に関与していない四肢・体幹に痙直の増強が生じる反応である。努力性の運動や精神的緊張により誘発されやすい。上肢の筋緊張の亢進では、肩甲骨の挙上、肩関節屈曲・内転・内旋、肘関節屈曲、前腕回内、手関節掌尺屈、手指屈曲を誘発しやすい。
2.× 肩関節の外転ではなく、屈曲・内転・内旋しやすい。
3.× 肘関節の伸展ではなく、屈曲しやすい。
4.× 前腕の回外ではなく、回内しやすい。
5.× 手関節の背屈ではなく、掌・尺屈(個人差あり)しやすい。

GMFCSのそれぞれレベルの大きな見出し

レベルⅠ:制限なしに歩く
レベルⅡ:制限を伴って歩く
レベルⅢ:手に持つ移動器具を使用して歩く
レベルⅣ:制限を伴って自力移動(電動の移動手段を使用しても良い)
レベルⅤ:手動車椅子で移送される

 

 

 

 

 

 

10 75歳の女性。自宅の浴室で転倒し右大腿骨頸部を骨折したため人工股関節置換術(後外側アプローチ)が施行された。担当医からは患側への全荷重が許可されている。
 この患者に対するADL 指導で正しいのはどれか。

1. 割り座で靴下をはく。
2. 和式の畳生活を勧める。
3. 靴ひもを結ぶときはしゃがむ。
4. 椅子は座面の低いものを使用する。
5. 階段を下りるときは右足を先に下ろす。

解答5

解説

MEMO

後方アプローチの禁忌肢位:股関節過屈曲、内転、内旋
前方アプローチの禁忌肢位:股関節伸展、内転、外旋

1.× 割り座(お姉さん座り、トンビ座り)は、禁忌肢位である。なぜなら、股関節の屈曲・内旋を伴いやすいため。
2.× 和式の畳生活をあえて勧めることはしない。なぜなら、畳生活での横座りや床からの立ち上がりなど、それらの動作は股関節に負担をかけやすくしっかり動作を覚えないと禁忌肢位となりやすいためである。
3.× 靴ひもを結ぶときは「しゃがむ」のではなく、椅子座位で靴を脱ぎ手に持った状態で行う。しゃがむことで、禁忌肢位(股関節の過屈曲を伴う)ため不適切である。
4.× 椅子は座面の「低いもの」ではなく、高いものを使用する。なぜなら椅子が低いと禁忌肢位(股関節の過屈曲を伴う)となるためである。
5.〇 正しい。階段を下りるときは右足を先に下ろす。本症例は、右大腿骨頸部であり、右足が患側である。階段昇降時は、平地歩行に比較して股関節への負荷が高まる。そのため、通常、人工股関節置換術後の昇降方法は二足一段で、上りは健側(左足)から、下りは患側(右足)から出すよう指導する。

 

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