第52回(H29) 作業療法士国家試験 解説【午後問題36~40】

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36 上肢装具と目的について正しいのはどれか。

1. ウェブスペーサ:母指外転筋短縮予防
2. Thomasスプリント:手関節中間位固定
3. 指用ナックルベンダー:PIP 関節屈曲補助
4. 肘屈曲型アームスリング:肩関節外転位保持
5. フレクサーヒンジ・スプリント:手関節屈曲機能を利用した把持動作

解答3

解説

1.× ウェブスペーサは、母指と示指の間の第一ウェブスペースの確保に用いられる。「母指外転筋短縮予防」ではなく、母指内転筋短縮予防に有効である。
2.× Thomasスプリント(トーマススプリント)は、橈骨神経麻痺高位型(下垂手)に適応となり、ゴムの弾性を利用して手関節背屈補助をすることで、手関節軽度背屈位としてMP関節と母指の運動を行うものである。つまり、手関節中間位固定するものではない。
3.〇 正しい。指用ナックルベンダーは、PIP関節屈曲補助である。適応はスワンネック変形などの関節リウマチである。
4.× 肘屈曲型アームスリングは、「肩関節外転位保持」ではなく肩関節内転位保持、他にも肘屈曲位での保持や肩関節亜脱臼予防である。
5.× フレクサーヒンジ・スプリント(把持装具)は、「手関節屈曲機能」ではなく手関節背屈機能を利用した把持動作である。

 

 

 

 

 

 

37 視覚障害者への対応で正しいのはどれか。

1. 伝い歩きをするときは障害者の手掌を周囲に接触させる。
2. 点字の利用では読む面と書く面を同じにする。
3. 歩行時に介助者は障害者の後方に位置する。
4. 白杖は2歩先の状況が分かる長さとする。
5. 視覚の代償手段として義眼がある。

解答4

解説

1.× 伝い歩きをするときは、障害者の「手掌」ではなく手背を周囲に接触させる。
2.× 点字の利用で、読む面と書く面を同じにするのは間違いである。点字を読むときには、紙面の凸状の点を触って左から右へ読む。点字器で書くときは、裏面から点筆で紙をへこませて右から左へ書く。読む面を凸面、書く面を凹面とよぶ。
3.× 歩行時に介助者は、障害者の「後方」ではなく半歩前に位置する。通常、白杖を持っていない側に立ち肘の上を握ってもらうとなお良い。
4.〇 正しい。白杖は2歩先の状況が分かる長さとする。したがって、単独歩行用の白杖の長さは、身長から40~50cm引いたもの、杖を真っ直ぐに立て、使用者のみぞおちより上、脇より少し下になる。
5.× 視覚の代償手段として、「義眼」ではなく誘導ブロックがある。義眼とは、失った眼球の代用品であり、顔面の見栄えをよくするために用いられる。

 

 

 

 

 

38 慢性期頸髄損傷の残存機能レベルと使用する機器の組合せで正しいのはどれか。

1. 第3頸髄節:環境制御装置
2. 第4頸髄節:人工呼吸器
3. 第5頸髄節:チンコントロール電動車椅子
4. 第6頸髄節:BFO
5. 第7頸髄節:コックアップスプリント

解答1

解説

1.〇 正しい。第3頸髄節の運動機能は、頭部の前屈・回旋である。環境制御装置の利用で部分自立が可能である。
2.× 第4頸髄節の運動機能は、吸気・肩甲骨挙上である。横隔膜の動きは障害されていないため、人工呼吸器は不必要である。C3残存機能レベルは必要である。
3.× 第5頸髄節の運動機能は、肩関節:屈曲・伸展、外転、内外旋、肘関節:屈曲・回外が行える。そのため、ハンドリムに工夫を行うことによって平地自走は可能である。チンコントロール電動車椅子の適応は、C4残存機能レベルである。
4.× 第6頸髄節の運動機能は、肩関節内転、手関節背屈が可能である。BFO(Balanced Forearm Orthosis)の適応は、C4、5残存機能レベルが適応である。
5.× 第7頸髄節の運動機能は、肘関節伸展、手関節掌屈が可能である。そもそもコックアップスプリントは、橈骨神経麻痺高位型の下垂手に使用する。

 

 

 

 

 

 

39 幻覚の精神症状評価を含む尺度はどれか。2つ選べ。

1. BPRS
2. CDR
3. FAST
4. LASMI
5. PANSS

解答1/5

解説

1.〇 正しい。BPRS(Brief Psychiatric Rating Scale:簡易精神症状評価尺度)は、統合失調症患者の薬物療法の効果簡便に評価する尺度として考案されたものである。18の評価項目があり、幻覚も評価項目に含まれる。医師(または心理学者)が評価する。
2.× CDR(Clinical Dementia Rating:臨床認知症評価法)は、記憶を中心とした認知機能障害の重症度評価尺度である。対象者の診察や、対象者を知る者からの行動観察情報により行動を評価する。
3.× FAST(Functional Assessment Staging of Alzheimer’s Disease)は、Alzheimer型認知症の認知機能障害を1(正常)~7(高度)の7段階で評価する。
4.× LASMI(Life Assessment Scale for the Mentally ill:精神障害者社会生活評価尺度) は、日常生活、対人関係、労働または課題遂行能力、持続性・安定性、自己認識の5つの大項目からなる評価尺度である。評価は、過去1ヵ月間の行動について、0~4点の5段階で評価する。
5.〇 正しい。PANSS(Positive and Negative Syndrome Scale:陽性・陰性症状評価尺度)は、統合失調症を対象に、30項目について陽性尺度、陰性尺度、総合精神病理尺度を医師が評定するものである。幻覚も評価項目に含まれる。

 

 

 

 

 

 

40 アルコール依存症の患者の離脱症状を示す発言はどれか。

1. 「自分は飲酒量を減らさなければならない」
2. 「二日酔いで子供の運動会に行けなかった」
3. 「飲酒した晩の翌朝、迎え酒をすると汗がおさまる」
4. 「妻が自分の飲酒についてあれこれ言うのが不愉快だ」
5. 「自分は昔に比べて、ずいぶん酒が強くなったと思う」

解答3

解説

離脱症状とは、飲酒中止後に生じ、精神的、肉体的な症状を呈する。最終飲酒から数時間後から出現し、20時間後にピークを迎える早期離脱症候群(振戦、自律神経症状、発汗、悪心・嘔吐、けいれん、一過性の幻覚)と最終飲酒後72時間頃から生じ数日間持続する後期離脱症候群(早期離脱症状に加え意識変容を呈したもの、振戦せん妄といわれる。小動物幻視や日頃やり慣れた動作、例えば運転動作を繰り返す、夜間に目立つ)に分けられる。

1.× 「自分は飲酒量を減らさなければならない」という発言は、飲酒量を減らせば病気から脱出できると考えていると推測できる。アルコール依存症者に通常みられる発言である。
2.× 「二日酔いで子供の運動会に行けなかった」という発言は、二日酔いでの失敗談で後悔していると考えていると推測できる。アルコール依存症者に通常みられる発言である。
3.〇 正しい。「飲酒した晩の翌朝、迎え酒をすると汗がおさまる」という発言は、離脱症状を示す発言である。発汗は、離脱症状の初期からみられ、飲酒により治まる。
4.× 「妻が自分の飲酒についてあれこれ言うのが不愉快だ」という発言は、アルコール依存症者の心性(飲酒問題の否認)がよく表れている発言である。
5.× 「自分は昔に比べて、ずいぶん酒が強くなったと思う」という発言は、アルコールの耐性による症状を述べた発言である。

 

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