第52回(H29) 作業療法士国家試験 解説【午後問題21~25】

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21 作業療法に関する歴史において誤っているのはどれか。

1. Adolf Meyer は感覚統合療法を提唱した。
2. 呉秀三は欧州における作業の効果を紹介した。
3. Philippe Pinelは精神病者を拘束的環境から解放した。
4. 昭和40年に理学療法士及び作業療法士法が制定された。
5. 自立生活(IL)運動は患者の自己決定権尊重をもたらした。

解答1

解説

1.× Adolf Meyer は感覚統合療法を提唱したのは間違いである。Adolf Meyer(アドルフ・マイヤー)は、スイス生まれの精神科医で、アメリカにおいて精神分析の思想を精神生物学として発展させた。感覚統合療法は、A.J.Ayres(アンナ・ジーン・エアーズ)により考案された。
2.〇 正しい。呉秀三は欧州における作業の効果を紹介した。呉秀三は、隔離拘束が中心であった精神病患者の処遇を、解放化に向け、作業を中心とした移導療法を行った。1901年に欧州留学から帰国した呉秀三は、「我が国の精神病患者には、病気という不幸と我が国に生まれた不幸の、2つの不幸がある」といった意味のことを述べ、当時の日本の精神病患者の処遇の劣悪さを指摘した。
3.〇 正しい。Philippe Pinelは精神病者を拘束的環境から解放した。Philippe Pinel(フィリップ・ピネル)は、フランスの精神科医で、人道的精神医学の創始者ある。18世紀末に初めて閉鎖病棟から精神病患者を解放した医師として知られる。
4.〇 正しい。昭和40年に理学療法士及び作業療法士法が制定された。理学療法士及び作業療法士の資格を定めるとともに、業務の適正運用医療の向上の寄与を目的として定められている。
5.〇 正しい。自立生活(IL)運動は患者の自己決定権尊重をもたらした。自立生活 (IL) 運動は、「重度の障害があっても、健常者と同じように自立して生きていきたい」という障害者の主張を実現するため、障害者の自己決定権の拡大などを目的とした運動である。1960年代にアメリカで始まり、その後世界に広がった。

 

 

 

 

 

 

22 あるスクリーニングテストの結果を表に示す。
 このテストの感度はどれか。

1. 20 %
2. 40 %
3. 50 %
4. 60 %
5. 80 %

解答5

解説

覚えておきたい用語

・疾病を有するものを正しく疾病ありと診断する確率を「感度」という。
・疾病を有さないものを正しく疾病なしと診断する確率を「特異度」という。

検査陽性者のうち実際に疾病を有する者の割合を「陽性反応的中度(陽性的中率)」という。
検査陰性者のうち実際に疾病を有さない者の割合を「陰性反応的中度(陰性的中率)」という。

つまり、感度=真陽性÷(真陽性+偽陽性)=20÷(20+5)=0.8(80%)である。よって、選択肢5.80 %が正しい。

 

 

 

 

 

 

23 患者に対するOSAについて正しいのはどれか。

1. 役割の有無を示す。
2. 身体機能の状態を示す。
3. 行動状況をVASで示す。
4. 生活史をスロープで示す。
5. 希望する改善点を優先順位で示す。

解答5

解説

 OSA (Occupational Self Assessment:作業に関する自己評価)とは、人間作業モデルの作業に関する自己評価を行うための方法である。質問紙により、患者が現在の自分自身の作業機能状態を評価し、改善したい項目の優先度を記す。これに基づいて、患者が作業療法士と協働して作業機能を高めていくものである。

1.× 「役割の有無を示すもの」ではなく、作業に関する自己評価を示す。
2.× 身体機能の状態を示すものではない。「自己」と「環境」の2部構成であり、「自己」に関しては①意志、②習慣化、③遂行技能の3つの構成要素に分ける。身体機能の状態は示されない。
3.× 行動状況をVAS(Visual Analogue Scale)で点数化しない。質問紙により評価する。
4.× そもそも生活史は問題としない。
5.〇 正しい。希望する改善点を優先順位で示す。質問紙により患者の希望に沿って改善したい項目の優先度を決める。

 

 

 

 

24 作業療法評価に理論とモデルを用いる目的で誤っているのはどれか。

1. 疾病を診断する。
2. 治療方針を示す。
3. 治療の妥当性を示す。
4. 守備範囲を明確にする。
5. 治療効果の正当性を示す。

解答1

解説

 作業療法評価では、単に作業療法を行うだけではなく、専門家として考えておくべきことがある。その根拠となるものが理論とモデルである。何を目的に作業をやるのか、それは方法として適当なのか、どこまでやるのか、効果はあるのかなど、多岐にわたる。

1.× 疾病を診断するのは、医師が行うものであり、作業療法士は行うことができない。
2.〇 正しい。治療方針を示す。作業療法は、やみくもに行われるのではなくその方針を示す。
3.〇 正しい。治療の妥当性を示す。作業療法の目的に合い、妥当なものかを示す。
4.〇 正しい。守備範囲を明確にする。守備範囲とは、良くスポーツで使われている用語であるが、他の意味として、「自分がすべきことの範囲。また、自分ができることの範囲。」という意味もある。
5.〇 正しい。作業療法の治療効果の正当性を示す。

 

 

 

 

 

 

25 我が国の脊髄損傷の疫学について正しいのはどれか。

1. 男性よりも女性が多い。
2. 不全損傷よりも完全損傷が多い。
3. 頸髄損傷よりも胸腰髄損傷が多い。
4. 原因はスポーツ事故よりも転倒が多い。
5. 受傷年齢は20代をピークとした一峰性を示す。

解答4

解説

1.× 男性よりも女性が多いのは間違い。男女比は3:1であり、男性の方が多い。
2.× 不全損傷よりも完全損傷が多いのは間違い。不全損傷が多い。なぜなら、転落、交通事故など、強い外傷が加わらないと完全損傷にはなりにくいため。
3.× 頸髄損傷よりも胸腰髄損傷が多いのは間違い。頸髄損傷が一番多く75%を占める。
4.〇 正しい。原因はスポーツ事故よりも転倒が多い。外傷性脊髄損傷の原因は、圧倒的に交通事故によるものが多く、原因の40%を超える。若年者ではバイクによる事故が多く、中高年者では自動車事故が多い。次いで、高所からの転落・転倒・スポーツによるものとなっているが、スノーボードによる事故も増えている。
5.× 受傷年齢は20代をピークとした一峰性を示すのは間違い。16~20歳代 (小さなピーク)と、50~60歳代(大きなピーク)の二峰性をしていたが、近年は、徐々に70歳代をピークとする一峰性へと変化しつつある。

 

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