第52回(H29) 作業療法士国家試験 解説【午前問題21~25】

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21 理学療法士及び作業療法士法の規定内容について正しいのはどれか。2つ選べ。

1. 作業療法士は業務独占資格である。
2. 作業療法士の診療報酬を規定している。
3. 国家試験に合格した日から業務を行うことができる。
4. 業務上知り得た人の秘密を他に漏らしてはならない。
5. 作業療法は社会的適応能力の回復を図るために行われる。

解答4/5

解説

1.× 作業療法士は、「業務独占資格」ではなく、名称独占資格(無資格者は該当の名称を用いて当該業務に就くことができないが、無資格者であってもその名称を用いなければ当該業務に就くことができる。)である。他にも、理学療法士や保育士がそれにあたる。一方、業務独占資格(国家資格を持たないものが、その名称を用いて当該業務に従事することはできない)は医師看護師助産師などに規定されている。
2.× 作業療法士や理学療法士等のセラピストごとの診療報酬の規定はない。疾患別リハビリテーション料などが診療報酬として定められている。
3.× 国家試験に合格した日でも作業療法士として名乗って業務を行うことはできない。正しくは、国家試験合格後に免許申請を行い、名簿登録を行わなければ免許は交付されない。それまで作業療法士と名乗っての業務は行えない
4.〇 正しい。業務上知り得た人の秘密を他に漏らしてはならない。それは守秘義務である。退職後も継続的であり、違反した場合は50万円以下の罰金となる。
5.〇 正しい。作業療法は社会的適応能力の回復を図るために行われる。作業療法の定義は、「身体又は精神に障害のある者に対し、主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため、手芸・工作その他の作業を行なわせることをいう」と定められている。

 

 

 

 

 

 

22 研究法の説明で正しいのはどれか。

1. 横断研究は症例の経過を追って情報収集する。
2. メタアナリシスは多数の研究を数量的に統合して検討する。
3. 留め置き調査法は集団で実施した調査票をその場で回収する。
4. 縦断研究は年齢の異なる集団を同時期に調査して年齢群を比較する。
5. ABA型のシングルケースデザインは2種目の治療介入効果を立証できる。

解答2

解説

1.× 症例の経過を追って情報収集するのは縦断研究である。横断研究の「横断」は一時点のことを指しており、疾病の頻度・分布などの統計をとり、疾病の発生要因などを考える研究方法である。
2.〇 正しい。メタアナリシスは多数の研究を数量的に統合して検討する。メタアナリシス(meta-analysis)とは、複数の研究の結果を統合し、より高い見地から分析すること、またはそのための手法や統計解析のことである。 メタ分析メタ解析とも言う。 ランダム化比較試験(RCT)のメタアナリシスは、根拠に基づく医療 (EBM) において、最も質の高い根拠とされる。
3.× 集団で実施した調査票をその場で回収するのは面接法である。留め置き調査法は、対象者に調査票を渡し、後で調査員が回収するものである。特徴として、その場で回答を回収しないため、人前で回答しにくい場合などに有効である。また、低コストで行いやすい。国勢調査がその代表例である。
4.× 年齢の異なる集団を同時期に調査して年齢群を比較するのは横断研究である。症例の経過を追って情報収集する調査が縦断研究である。
5.× ABA型のシングルケースデザインは、「2種目」ではなく1種類の治療介入効果を立証できる。シングルケースデザイン(単一被験体法)とは、1人の被験者を対象に何らかの実験的介入を行い、その前後の行動変化に基づいて介入の有効性を確認する研究法のことである。ABA型とは、介入を行わないA期(基礎水準測定期、ベースライン期)と実験的介入を行うB期(治療介入期、操作導入期)の実施に引き続き、再びA期を実施する方法である。そのため、ABA型での介入は1種目だけである。

 

 

 

 

 

 

23 人間作業モデルについて誤っているのはどれか。

1. 役割の変化を評価する。
2. 作業の興味を評価する。
3. 作業の重要度を10 段階で評価する。
4. 人が作業に適応できるように介入する。
5. 人を意志、習慣化および遂行能力の相互作用でとらえる。

解答3

解説

 人間作業モデルは、キールホフナーによって確立された作業療法の実践もであるである。作業を人間性の保持に必要なものや健康が破綻した後の再調整をするものと位置づけ、どの程度作業に適応しているかを考える要素は、その人の行動を決定するものとして「意志」「習慣化」「遂行技能」の3要素の相互作用によるものとしている。さらに、これに加えて作業を促進するための「環境」を4要素目として挙げている。この4要素は、より細かい10の要素から構成されている。ここでいう「作業」とは、作業療法の場面だけでなく、日常生活全体を含んでいる。

1.〇 正しい。役割の変化を評価する。人間作業モデルでは、「役割」は「習慣化」に含まれており、現在置かれている状況でどういう役割があるのか、またその役割の変化を評価する。
2.〇 正しい。作業の興味を評価する。「興味」は、能力の自己認識(個人的原因帰属)、価値と共に「」を構成する3つの要素の1つであり、評価すべき要素である。
3.× 作業の重要度を「10 段階で評価する」のではなく、作業の10の構成要素について記述的に評価する。
4.〇 正しい。人が作業に適応できるように介入する。「環境」要素として、作業ができるように働きかける人がいることが重要となる。
5.〇 正しい。人を意志、習慣化および遂行能力の相互作用でとらえる。その人の行動を決定するものとして「意志」「習慣化」「遂行技能」の3要素の相互作用によるものとしている。

 

 

 

 

 

24 SOAPに関する説明で正しいのはどれか。

1. Oには患者の言葉をそのまま記載する。
2. S には作業療法の評価結果を記載する。
3. Oから治療方針を定めたものがP である。
4. Pには他部門からの情報やカルテ情報を記載する。
5. SとOを専門的知識によって分析した内容をAに記載する。

解答5

解説

1.× O(Objective)には客観的なデータであり、診察所見や検査所見などの他覚所見を記載する。患者の言葉をそのまま記載するのはS(Subjective)である。
2.× S(Subjective) には主観的データ(患者の言葉をそのまま記載)をする。作業療法の評価結果を記載するのはO(Objective)である
3.× O(Objective)からではなく、A(Assessment)から基にした治療方針(今後の検査・治療・患者教育の計画・方針)を定めたものがP(Plan)である。
4.× P(Plan)にはA(Assessment)から基にした治療方針(今後の検査・治療・患者教育の計画・方針)を定めたものを記載する。他部門からの情報やカルテ情報を記載するのはO(Objective)である。
5.〇 正しい。SとOを専門的知識によって分析した内容(患者の状態の評価・考察)をA(Assessment)に記載する。

 

 

 

 

 

 

25 頭部単純CT で発症直後から診断できるのはどれか。

1. 脳梗塞
2. 脳出血
3. Parkinson病
4. 多発性硬化症
5. 白質ジストロフィー

解答2

解説

1.× 脳梗塞発症直後の診断に有用なのは、MRI拡散強調像である。
2.〇 正しい。脳出血の診断に有用なのは、頭部単純CTである。脳出血急性期に出血部位が高吸収域(白く映る)になる。
3.× Parkinson病は、頭部単純CTや頭部MRIでもルーチン画像では特異的な所見はみられない。核医学検査(RI)が有効である。
4.× 多発性硬化症は、MRIが有効である。
5.× 白質ジストロフィーは、脱髄部位は低吸収域になることがあるが、頭部単純CTでは感度が悪く診断できない。そのため、MRIが有効である。

多発性硬化症とは?

 多発性硬化症は、中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患であり、時間的・空間的に病変が多発するのが特徴である。病変部位によって症状は様々であるが、視覚障害(視神経炎)を合併することが多く、寛解・増悪を繰り返す。視力障害、複視、小脳失調、四肢の麻痺(単麻痺、対麻痺、片麻痺)、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害、有痛性強直性痙攣等であり、病変部位によって異なる。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。脱髄部位は視神経(眼症状や動眼神経麻痺)の他にも、脊髄、脳幹、大脳、小脳の順にみられる。有痛性強直性痙攣(有痛性けいれん)やレルミット徴候(頚部前屈時に背部から四肢にかけて放散する電撃痛)、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)などが特徴である。若年成人を侵し再発寛解を繰り返して経過が長期に渡る。視神経や脊髄、小脳に比較的強い障害 が残り ADL が著しく低下する症例が少なからず存在する長期的な経過をたどるためリハビリテーションが重要な意義を持つ。

(参考:「13 多発性硬化症/視神経脊髄炎」厚生労働省様HPより)

 

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