第52回(H29) 理学療法士国家試験 解説【午後問題96~100】

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96 精神遅滞を生じる疾患のうち、先天性代謝異常が原因であるのはどれか。

1. Down症候群
2. 結節性硬化症
3. 神経線維腫症
4. Turner症候群
5. フェニルケトン尿症

解答:5

解説

1.✖ Down症候群は、体細胞の21番染色体が通常より1本多く存在し、計3本(トリソミー症)になることで発症する先天性疾患群である。
2.✖ 結節性硬化症は、全身の疾患で、皮膚、神経系、腎、肺、骨などいろいろなところに過誤腫と呼ばれる良性の腫瘍や過誤組織と呼ばれる先天性の病変ができる病気。
3.✖ 神経線維腫症は、カフェ・オ・レ斑、神経線維腫という皮膚の病変を特徴とし、そのほか骨、眼、神経系などに様々な病変を生じる遺伝性の病気である。
4.✖ Turner症候群(ターナー症候群)は、X染色体の全体または一部の欠失に起因した疾患の総称である。性腺機能不全を主病態としている。
5.〇 正しい。フェニルケトン尿症は、先天性代謝疾患のひとつであり、アミノ酸の一種類であるフェニルアラニンをうまく代謝できないことから発症する発達発達遅滞をきたす病気である。

 

 

 

 

 

97 疾患と病変の組合せで正しいのはどれか。

1. Lewy小体型認知症:白質の病変
2. Alzheimer型認知症:アミロイドの沈着
3. 血管性認知症:黒質の神経細胞脱落
4. 大脳皮質基底核変性症:運動ニューロン病変
5. 前頭側頭型認知症:大脳皮質の腫大神経細胞

解答:2

解説

1.✖ Lewy小体型認知症は、脳の広い範囲にレビー小体という異常な蛋白がたまり、脳の神経細胞が徐々に減っていく進行性の病気である。Lewy小体型認知症とは、Lewy小体が広範な大脳皮質領域で出現することによって、①進行性認知症と②パーキンソニズムを呈する病態である。認知機能の変動・動揺、反復する幻視(人、小動物、虫)、パーキンソニズム、精神症状、REM睡眠型行動障害、自律神経障害などが特徴である。ちなみに、白質の病変がみられるのは多発性硬化症などである。
2.〇 正しい。Alzheimer型認知症は、アミロイドの沈着である。老人斑、神経原線維変化の出現を特徴とする神経変性疾患である。
3.✖ 血管性認知症は、脳血管障害によって生じる認知症である。ちなみに、黒質の神経細胞脱落がみられるのはパーキンソン病である。
4.✖ 大脳皮質基底核変性症は、大脳皮質と皮質下神経核(特に、黒質と淡蒼球)の神経細胞が脱落し、神経細胞及びグリア細胞内に異常リン酸化タウが蓄積する疾患である。
5.✖ 前頭側頭型認知症は、前頭葉と側頭葉の神経細胞が少しずつ壊れていくことによっておこる。

 

 

 

 

 

98 境界性パーソナリティ障害にみられないのはどれか。

1. 不安定な感情
2. 孤立への欲求
3. 持続的な空虚感
4. 不明瞭な自己像
5. 繰り返す自傷行為

解答:2

解説

 境界性パーソナリティー障害の特徴として、①『二極思考・対人関係の障害』、②『衝動行為』、③『自傷行為』、④『見捨てられ不安』、⑤『抑うつ、不眠』などである。他者の愛情や優しさ、注目に対する飢餓感が強く、慢性的な見捨てられ不安に苦しんでいる。したがって、選択肢2.孤立への「欲求」ではなく、正しくは、孤立への恐怖(不安)である。

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99 てんかんについて正しいのはどれか。2つ選べ。

1. 単純部分発作は意識障害がみられる。
2. 欠神発作は過換気によって誘発される。
3. 特発性てんかんは脳の器質的病変が特定できる。
4. 複雑部分発作は側頭葉てんかんに多くみられる。
5. 全般発作は発作開始時にてんかん放電が大脳半球の片側にとどまっている。

解答:2,4

解説

1.✖ 単純部分発作は意識障害がみられない。意識障害を伴うものは複雑部分発作である。
2.〇 正しい。欠神発作は過換気によって誘発され、脳波上に持続的な3Hzの棘徐波複合が出現する。
3.✖ 脳の器質的病変が特定できるのは、「特発性(原発性)てんかん」ではなく続発性全般発作である。ちなみに、特発性(原発性)てんかんの多くの病因は不明である。
4.〇 正しい。複雑部分発作は、側頭葉てんかんに多くみられる。単純部分発作もみられる。
5.✖ 全般発作は発作開始時にてんかん放電が、「大脳半球の片側」ではなく脳全体で起こる。つまり、全般発作は両側大脳半球が同時に過剰放電して始まる。部分発作が、発作開始時にてんかん放電が大脳半球の片側にとどまっている。

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100 疾患と治療の組合せで正しいのはどれか。

1. 身体化障害:系統的脱感作法
2. 強迫性障害:曝露反応妨害法
3. PTSD(外傷後ストレス障害):フラッディング
4. 心気障:持続エクスポージャー法
5. 解離性健忘:バイオフィードバック法

解答:2

解説

1. ✖ 身体化障害は、器質的な病変の存在が証明されないにもかかわらず、多彩な身体症状を長期にわたり訴える疾患である。系統的脱感作法は、徐々(系統的に)に不安を感じる刺激を与えて慣れさせる方法をとること。神経症や摂食障害が適応である。
2. 〇 正しい。強迫性障害は、不合理な行為や思考を自分の意に反して反復してしまう精神障害の一種である。曝露反応妨害法は、患者を怖れに直面化させ、逃避行動を取らせないものである。強迫性障害や、心的外傷後ストレス障害(PTSD)が適応となる。
3. ✖ PTSD(外傷後ストレス障害)は、突然の不幸な出来事によって命の安全が脅かされたり、天災、事故、犯罪、虐待などによって強い精神的衝撃を受けることが原因で、心身に支障をきたし、社会生活にも影響を及ぼす様々なストレス障害を引き起こす精神的な後遺症、疾患のこと。フラッディングとは、不安・恐怖の強い場面にひたらせ、いやおうなしにこれと対決させる方法。強迫性障害や恐怖症に適応である。心的外傷後ストレス障害(PTSD)の場合、恐怖の再体験となり症状を悪化させるので用いられない。
4. ✖ 心気障は、身体の徴候や症状の誤った解釈のため、病気にかかるあるいはかかっているとの思い込みが6か月以上持続しており、それが著しい苦痛や機能の障害を呈している精神障害である。持続エクスポージャー法(エクスポージャー:曝露)とは、恐怖を喚起する記憶や手掛かりに暴露させることを含んだ認知行動療法である。PTSD(外傷後ストレス障害)に適応である。
5. ✖ 解離性健忘は、記憶が解離するタイプの解離症。 解離性健忘の主な特徴は、心的外傷(戦争、天災、事故、犯罪、虐待といった強い精神的衝撃)や、強いストレスとなる出来事の記憶(数時間~数日間の記憶)を思い出せなくなること。バイオフィードバック法は、生理現象を計測しながら良い状態であれば被験者に信号を出してよい状態を保つように訓練する。不安神経症強迫性障害に適応である。

 

 

※問題の引用:第52回理学療法士国家試験、第52回作業療法士国家試験の問題および正答について

※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。

2 COMMENTS

98問目の境界性パーソナリティ障害の答えって2番ではなく5番ではないでしょうか?
繰り返す自傷行為かと

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大川 純一

コメントありがとうございます。
なぜそのような考えに至ったのかも説明してくださると、こちらは返答しやすいのですが、、、。
多分ですが、「みられないのはどれか?」という設問文の読み間違えだと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。

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