第52回(H29) 理学療法士国家試験 解説【午後問題91~95】

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91 10か月の正常児でみられるのはどれか。

1. Moro反射
2. 手の把握反応
3. 緊張性迷路反射
4. パラシュート反応
5. 非対称性緊張性頸反射

解答:4

解説

1.✖ Moro反射は、4~6か月に消失する。頭を急に落下させる。
2.✖ 手の把握反応は、3~4か月に消失する。手掌を圧迫、または軽くこする。
3.✖ 緊張性迷路反射は、4~6か月に消失する。背臥位・腹臥位にして姿勢を見る。
4.〇 正しい。パラシュート反応は、6~8か月ごろに出現する。
5.✖ 非対称性緊張性頸反射は、生後1~3か月に出現し、4~6か月に消失する。頭部を回旋する。

 

 

 

 

 

92 高齢者にみられる病態のうち、低栄養の関与が低いのはどれか。

1.貧血
2.褥瘡
3.大腿骨骨折
4.サルコペニア
5.虚血性心疾患

解答:5

解説

1~4.✖ 貧血/褥瘡/大腿骨骨折/サルコペニアは、低栄養に関与が大きい。低栄養状態の方が褥瘡になりやすい。低栄養→骨粗鬆症→骨折に陥る。サルコペニアとは、加齢や疾患に伴って生じる骨格筋量と骨格筋力の低下していることである。加齢により食事等の刺激に対する感度が低下することに加え、タンパク質の摂取量が減少するので、筋の合成・分解のバランスが崩れて筋力低下が起こる。
5.〇 虚血性心疾患とは、この冠動脈が動脈硬化などの原因で狭くなったり、閉塞したりして心筋に血液が行かなくなること(心筋虚血)で起こる疾患である。生活習慣病である。高コレステロール血症などの栄養過多状態で起こりやすい。

 

 

 

 

93 2型糖尿病の運動療法について誤っているのはどれか。

1.有酸素運動が用いられる。
2.インスリン感受性を上昇させる。
3.食事療法との併用が基本となる。
4.尿中ケトン体が陽性の場合においても推奨される。
5.実施にあたってはインスリンが十分に補充されている必要がある。

解答:

解説

1.〇 正しい。有酸素運動とレジスタンス運動が用いられる。また、食事療法との併用が基本(バランスのとれた食事)となり、週3日1日20分以上運動を行うように指導する。
2.〇 正しい。インスリン感受性(抵抗性を改善)を上昇させる。糖尿病の理学療法の目的(※下記参照)である。
4.× 尿中ケトン体が陽性の場合においては、推奨されず禁忌である。
5.〇 正しい。実施にあたってはインスリンが十分に補充されている必要がある。血糖コントロール不良である状態は、運動療法は禁忌である。

2型糖尿病の理学療法

 1型糖尿病の原因として、自己免疫異常によるインスリン分泌細胞の破壊などがあげられる。一方、2型糖尿病の原因は生活習慣の乱れなどによるインスリンの分泌低下である。運動療法の目的を以下に挙げる。

①末梢組織のインスリン感受性の改善(ぶどう糖の利用を増加させる)
②筋量増加、体脂肪・血中の中性脂肪の減少。(HDLは増加する)
③摂取エネルギーの抑制、消費エネルギーの増加。
④運動耐容能の増強。

【糖尿病患者に対する運動療法】
運動強度:一般的に最大酸素摂取量の40~60%(無酸素性代謝閾値前後)、ボルグスケールで『楽である』〜『ややきつい』
実施時間:食後1〜2時間
運動時間:1日20〜30分(週3回以上)
消費カロリー:1日80〜200kcal
運動の種類:有酸素運動、レジスタンス運動(※対象者にあったものを選択するのがよいが、歩行が最も簡便。)

【運動療法の絶対的禁忌】
・眼底出血あるいは出血の可能性の高い増殖網膜症・増殖前網膜症。
・レーザー光凝固後3~6カ月以内の網膜症。
・顕性腎症後期以降の腎症(血清クレアチニン:男性2.5mg/dL以上、女性2.0mg/dL以上)。
・心筋梗塞など重篤な心血管系障害がある場合。
・高度の糖尿病自律神経障害がある場合。
・1型糖尿病でケトーシスがある場合。
・代謝コントロールが極端に悪い場合(空腹時血糖値≧250mg/dLまたは尿ケトン体中等度以上陽性)。
・急性感染症を発症している場合。

(※参考:「糖尿病患者さんの運動指導の実際」糖尿病ネットワーク様HPより)

 

 

 

 

 

94 血友病について正しいのはどれか。

1. 脾腫がみられる。
2. 血小板数が減少する。
3. 点状紫斑がみられる。
4. 膝に関節症をきたす。
5. 自己免疫性疾患である。

解答:

解説

”血友病とは?”

血友病とは、血液を固めるのに必要な「血液凝固因子(第Ⅷ因子または第Ⅸ因子)が不足・活性低下する病気のことである。

【概念】
伴性劣性遺伝(男児に多い):生まれつき発症することがほとんどであるため、幼少期から①些細なことで出血する、②出血が止まりにくいといった症状が繰り返される。
血友病A:第Ⅷ凝固因子の活性低下
血友病B:第Ⅸ凝固因子の活性低下

【症状】関節内出血を繰り返し、疼痛、安静により関節拘縮を起こす。(筋肉内出血・血尿も引き起こす)肘・膝・足関節に多い。鼻出血、消化管出血、皮下出血等も起こす。

【治療】凝固因子製剤の投与、関節拘縮・筋力低下に対するリハビリテーション

(※参考:「血友病」Medical Note様HP)

1.✖ 脾腫は起こらない。血友病は、関節内や筋肉内などの内出血が多くみられる。また、頭蓋内に出血することもある。脾腫とは脾臓が正常な範囲を超えて拡大することである。 肝硬変や右心不全などによる門脈圧亢進、感染症などが原因として起こる。
2.✖ 血小板数の変化は起こらない。血友病の検査では、血が止まりにくいかどうかを調べるため、はじめに「血小板数」「プロトロンビン時間(PT)」「活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)」の3つを測定する。そこでAPTTだけが正常よりも延長している場合に血友病が疑われる。
3.✖ 点状紫斑はみられない。点状紫斑とは、皮膚にみられる点状出血、斑状出血を総称して「紫斑」と呼ぶ。紫斑は、大別して血管に原因がある場合(血管炎)と、血小板が減少するか、はたらきの異常(紫斑病)で起こる。
4.〇 正しい。関節内出血関節変形筋肉内出血を起こす。特に、膝・足・肘関節内などで起こり、疼痛を来たす。
5.✖ 「自己免疫性疾患」ではなく、遺伝性疾患である。伴性劣性遺伝であり、原則として男子に発症する。

 

 

 

 

 

95 リンパ浮腫について正しいのはどれか。

1. 腹水を伴う。
2. 利尿薬で治療する。
3. 蜂窩織炎になりやすい。
4. 肺塞栓症の原因の1つである。
5. 皮膚が線維化を起こすことは稀である。

解答:3

解説

 リンパ浮腫とは、がん治療によってリンパ節やリンパ管が傷つき、リンパの流れが滞るとことで起こるむくみのこと。組織間隙に蛋白と水が過剰に蓄積し、循環が悪くなっている状態である。

 

1.✖ 腹水は伴わない。腹水とはタンパク質を含む体液が腹腔に蓄積した状態である。腹水とは、タンパクを含む体液が腹部に貯留したもの。 腹水がたまる病気は多くあるが、最も一般的な原因は、肝臓につながる静脈(門脈)の血圧が上昇すること(門脈圧亢進症)で、通常は肝硬変によって起こる。
2.✖ 利尿薬では治療しない。リンパドレナージ、圧迫療法、圧迫した状態での運動を組み合わせた治療を行う。
3.〇 正しい。リンパ浮腫を起こすと、リンパ液の流れが悪くなるため、虫に刺されたり、小さな傷があると、細菌が侵入し、腕や脚全体に炎症が広がる。これを蜂窩織炎という。
4.✖ 肺塞栓症の原因は、血液が固まりやすい、静脈内血液の流れが悪い、静脈が傷ついているなどである。リンパの流れが滞るリンパ浮腫と直接関係は少ない
5.✖ 皮膚が線維化を起こすため、スキンケアは非常に大切である。皮膚・皮下組織の肥厚と線維化を起こし、蜂窩織炎となる。

 

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