第52回(H29) 理学療法士国家試験 解説【午後問題86~90】

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86 特発性大腿骨頭壊死症について正しいのはどれか。

1. 小児に多い。
2. 手術適応例は少ない。
3. 両側性病変は稀である。
4. ステロイド薬使用者に多い。
5. 股関節内外旋可動域は保たれる。

解答:

解説

 特発性大腿骨頭壊死症とは、大腿骨頭の一部が、血流の低下により壊死(骨が腐った状態ではなく、血が通わなくなって骨組織が死んだ状態)に陥った状態である。特発性大腿骨頭壊死症は、危険因子により、ステロイド関連、アルコール関連、そして明らかな危険因子のない狭義の特発性に分類されている。

 

1. ✖ 全体では、「小児」ではなく30~50歳代(青・壮年期)に多い。男女比は、全体では1.8:1。
2. ✖ 自覚症状(強い痛み)があり、圧潰の進行(歩行困難)が予想されるため、速やかに手術適応を決定する。保存療法の適応はほとんどない。
3. ✖ 両側性病変は稀ではない
4. 〇 正しい。ステロイド薬使用者に多い。特発的に生じるものとして、ステロイド投与、アルコール多飲で多く発生する。
5. ✖ 股関節内外旋可動域は保たれない。なぜなら、壊死骨頭部には荷重がかかり、骨頭部は変形をきたすため。これにより、関節痛が発生し、痛みによる関節可動域制限もきたす。

 

 

 

 

 

87 家族性が孤発性よりも多いのはどれか。

1. Parkinson病
2. 多系統萎縮症
3. Huntington病
4. Lewy小体型認知症
5. 筋萎縮性側索硬化症

解答:3

解説

孤発性疾患は、複数の遺伝因子・環境因子が関与している疾患という意味でもちいられることが多い。

1.× Parkinson病は、孤発性90%を占める。
2.× 多系統萎縮症は、ほとんどが孤発性で、家族性はごくわずかである。
3.〇 正しい。Huntington病(ハンチントン病)は、常染色体優性遺伝型式を示す遺伝性の神経変性疾患である。舞踏病(不随意運動)がみられる。
4.× Lewy小体型認知症は、ほとんど孤発性であり、家族性の報告は少数である。Lewy小体型認知症とは、Lewy小体が広範な大脳皮質領域で出現することによって、①進行性認知症と②パーキンソニズムを呈する病態である。認知機能の変動・動揺、反復する幻視(人、小動物、虫)、パーキンソニズム、精神症状、REM睡眠型行動障害、自律神経障害などが特徴である。
5.× 筋萎縮性側索硬化症は、多くは孤発性であり、家族性は10%以内とされている。

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋委縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

88 重症筋無力症について正しいのはどれか。

1. 起床時に症状が強い。
2. 悪性腫瘍の合併が多い。
3. 自己免疫性疾患である。
4. 女性よりも男性に多い。
5. 40歳以前の発症は稀である。

解答:3

解説

重症筋無力症とは?

重症筋無力症とは、末梢神経と筋肉の接ぎ目(神経筋接合部)において、筋肉側の受容体が自己抗体により破壊される自己免疫疾患のこと。全身の筋力低下、易疲労性が出現し、特に眼瞼下垂、複視などの眼の症状をおこしやすいことが特徴(眼の症状だけの場合は眼筋型、全身の症状があるものを全身型と呼ぶ)。嚥下が上手く出来なくなる場合もある。重症化すると呼吸筋の麻痺をおこし、呼吸困難を来すこともある。日内変動が特徴で、午後に症状が悪化する。クリーゼとは、感染や過労、禁忌薬の投与、手術ストレスなどが誘因となって、急性増悪し急激な筋力低下、呼吸困難を呈する状態のことである。直ちに、気管内挿管・人工呼吸管理を行う。
【診断】テンシロンテスト、反復誘発検査、抗ACh受容体抗体測定などが有用である。
【治療】眼筋型と全身型にわかれ、眼筋型はコリンエステラーゼ阻害 薬で経過を見る場合もあるが、非有効例にはステロイド療法が選択される。胸腺腫の合併は確認し、胸腺腫合併例は、原則、拡大胸腺摘除術を施行する。難治例や急性増悪時には、血液浄化療法や免疫グロブリン大量療法、ステロイド・パルス療法が併用 される。

(※参考「11 重症筋無力症」厚生労働省HPより)

1.✖ 「起床時」ではなく、夕方になると症状(筋力低下、易疲労性)が増悪する。
2.✖ 「悪性腫瘍」ではなく、胸腺腫を合併することが多いが、重症筋無力症患者の約15%である。ちなみに、肺癌の合併がよくみられる神経筋接合部疾患は、Lambert-Eaton症候群(ランバート・イートン症候群)である。
3.〇 正しい。自己免疫性疾患である。
4,5.✖ 20~40歳代の女性、50~60歳代の男性(男:女=1:2)である。

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【PT/OT/共通】重症筋無力症についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

89 てんかんについて正しいのはどれか。

1. 半数以上が遺伝性である。
2. 睡眠不足は発作の誘因である。
3. 年齢とともに発症率が減少する。
4. 成人では症候性よりも特発性が多い。
5. 発作の持続時間は後遺障害と相関しない。

解答:2

解説

1.✖ 半数以上が、「遺伝性」ではなく症候性である。
2.〇 正しい。てんかん発作は、睡眠不足のほかにアルコール過労で発作の誘因である。
3.✖ てんかんは、年齢とともに発症率が減少するとは限らない。生後2歳までの間と、思春期に最も多く出現する。
4.✖ 逆である。成人では症候性の方が多い。
5.✖ 発作の持続時間と後遺障害は相関する。例として、全身性強直間代発作が5分続けばてんかん重積状態と診断して治療を始め、30分持続すれば後遺障害を生じる可能性がある。また、部分発作や欠神発作重積では10分以上続けば治療を開始し、1時間以上持続すれば後遺障害を遺す可能性が高い。

発作の誘因

①睡眠不足、②疲労、③発熱、④飲酒、⑤低血糖、⑥生活環境の変化

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【共通のみ】てんかんについての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

90 眼疾患とその病態の組合せで正しいのはどれか。

1. 白内障 :硝子体の混濁
2. 麦粒腫:眼瞼の悪性腫瘍
3. Behçet病:ぶどう膜の炎症
4. 流行性角結膜炎:色素上皮の剝離
5. 緑内障:眼圧の低下

解答:3

解説

1. ✖ 白内障は、「硝子体」ではなく水晶体の混濁である。
2. ✖ 麦粒腫は、「悪性腫瘍」ではなく細菌感染によるものである。俗に「ものもらい」と呼ばれる病気で、汗を出す腺や、まつげの毛根に感染した場合を外麦粒腫、マイボーム腺の感染を内麦粒腫と呼ぶ。
3. 〇 正しい。Behçet病(ベーチェット病) は、口腔粘膜のアフタ性潰瘍、外陰部潰瘍、皮膚症状、眼症状の4つの症状を主症状とする慢性再発性の全身性炎症性疾患です。眼症状のある場合、特に眼底型の網膜ぶどう膜炎がある場合の視力の予後は悪い。
4. ✖ 流行性角結膜炎(はやり目)は、アデノウイルスというウイルスの感染が原因となる病気である。まぶたは腫れ、結膜はむくみ、充血がみられる。
5. ✖ 緑内障は、眼圧の「低下」ではなく上昇である。

 

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