第52回(H29) 理学療法士国家試験 解説【午後問題81~85】

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81 模擬場面でのリハーサルを技法として用いるのはどれか。

1. 内観療法
2. 箱庭療法
3. 森田療法
4. 認知行動療法
5. 支持的精神療法

解答:

解説

1.✖ 内観療法は、自分が身近な人からしてもらったことや、迷惑をかけたことなどを繰り返し想起して自己洞察を深める。
2.✖ 箱庭療法は、一定の大きさの箱に種々の人形や模型を自由に並べた作品を通して、治療者が患者の非言語的表現を解釈することによって治療を行う。
3.✖ 森田療法は、目的、行動本位の作業を繰り返すことにより、症状を受け入れながら(あるがまま)生活できるようにする。
4.〇 正しい。認知行動療法は、障害や行動異常の背景に認知のゆがみが存在しているとき、この歪みを面接によって修正し、患者が直面する問題に対処できるように援助する。模擬場面でのリハーサルを技法として用い、これを認知行動療法という。統合失調症患者へのSST(社会技能訓練)は、認知行動療法の考えが生かされた集団精神療法の例である。自然に頭に浮かんだ考えを記録して個人の信念や思想様式をもとに施行のプロセスを把握し、より合理的な考え方ができるように導く方法。SST(Social Skills Training:社会技能訓練)は、①教示、②モニタリング、③リハーサル、④フィードバック、⑤一般化を行っていく。
5.✖ 支持的精神療法は、患者の自我の弱い部分をサポートすることで、患者が症状に耐えて生活できる適応能力を身につけさせる方法である。

 

 

 

 

 

82 脊髄損傷の自律神経過反射でみられるのはどれか。2つ選べ。

1. 頻脈
2. 高血圧
3. 低血糖
4. 顔面紅潮
5. 損傷レベルより下の発汗

解答:2,4

解説

 自律神経過反射は、T5~6以上の脊髄損傷患者において、損傷部以下の臓器からの刺激によって起こる自律神経の異常反射である。生命の危険を伴い合併症を伴う。自律神経過反射の症状は、高血圧、ガンガンする頭痛、顔面紅潮、損傷レベルより上部での発汗、鼻詰まり、吐き気、脈拍60以下の徐脈、損傷レベルより下部の鳥肌である。よって、選択肢2,4高血圧/顔面紅潮が正しい。

1.「 頻脈」ではなく、徐脈(<60/min)が起こる。
3. 低血糖などの血糖の変動は起きない
5. 損傷レベルより、「下の発汗」ではなく、上の発汗がみられる。

低血糖症状

血糖値が低下するとカテコラミン(インスリン拮抗ホルモン)の分泌が上昇し、交感神経刺激症状が出現する。さらに血糖値が低下すると脳・神経細胞の代謝が低下し、中枢神経症状が出現する。頭痛や空腹感などの比較的軽度な症状から始まるが血糖値が低下し続けると昏睡に至る。低血糖症状は、①自律神経症状と②中枢神経症状に分けられる。①自律神経症状は、冷感・顔面蒼白・頻脈・動悸・発汗・手の震え・空腹感などである。②中枢神経症状は、頭痛・集中力低下・視力低下・痙攣・昏睡などである。予防法として、飴や角砂糖などを携帯してもらう。

 

 

 

 

83 老研式活動能力指標の質問項目のうち、手段的ADL に該当するのはどれか。

1. 「本や雑誌を読んでいますか」
2. 「年金などの書類が書けますか」
3. 「バスや電車を使って1人で外出できますか」
4. 「家族や友だちの相談にのることがありますか」
5. 「健康についての記事や番組に関心がありますか」

解答:3

解説

老研式活動能力指標の質問項目(主に3項目)

①手段的自立(日用品の買い物ができますか、自分で食事の用意ができますか、請求書の支払いができますか、銀行貯金・郵便貯金の出し入れが自分でできますかバスや電車を使って1人で外出できますか)、

②知的能動性(年金などの書類が書けますか、新聞を読んでいますか、本や雑誌を読んでいますか、健康についての記事や番組に関心がありますか)

③社会的役割(友だちの家を訪ねることがありますか、家族や友だちの相談にのることがありますか、病人を見舞うことがありますか、若い人に自分から話しかけることがありますか)となる。

よって、選択肢3. 「バスや電車を使って1人で外出できますか」が正しい。

 

 

 

 

 

84 摂食嚥下障害への対応で正しいのはどれか。

1. 飲水にはぬるま湯を用いる。
2. 咽頭期障害では頭頸部伸展姿勢で嚥下する。
3. 口腔期障害に対しては高粘度の食物を用いる。
4. 先行期障害に対して食事のペースを指導する。
5. 鼻咽腔閉鎖不全に対してはShaker法を用いる。

解答:

解説

1.✖ 逆である。ぬるま湯よりも冷水(温度差がある)の方が咽頭への刺激が大きく、反射を誘発するため誤嚥を防ぐことができる。またとろみをつけることも重要である。
2.✖ 咽頭期障害(食塊を咽頭から食道に送り込むまでの時期)では、頭頸部「伸展姿勢」ではなく、屈曲姿勢で嚥下する。なぜなら、伸展位では、喉頭が開き咽頭と気道が直線状となり誤嚥の危険性が増すため。
3.✖ 口腔期障害(食塊を舌の動きにより、口の奥に送り込む時期)に対しては、「高粘度の食物」ではなく、低粘度のペースト状の食形態(さらさらの液体やみそ汁、コーンスープ、シャーベットなど)が好ましい。なぜなら、高粘度の食物が好ましいのは、咽頭期障害である。
4.〇 正しい。先行期障害に対して食事のペースを指導する。先行期は、これから摂食する食物の性状を認知し、食物の量、食べ方、その早さなどを決定し、さらに姿勢、唾液の分泌などを整えて口まで適切なペースで運ぶのと同時に、口唇を構えて受け入れる準備を行う段階である。先行期障害は、食べ物を認識し口元まで運ぶ時期で、認知機能低下などで、嚥下能力に見合わない量をどんどん詰め込んでしまう、適切なペース配分ができていないなどの障害がみられる。したがって、先行期障害では、①食事のペースを声掛けする、②食べ物をさらに小分けにする(環境調整)などの工夫が必要である。
5.✖ 鼻咽腔閉鎖不全に対しては、「Shaker法」ではなく、軟口蓋挙上不全患者(発語時に口腔内に空気を保つことができず、鼻に漏れる状態)に用いる。Shaker法(シャキア法:頭部挙上訓練)は、舌骨上筋などの喉頭挙上に関わる筋の筋力強化法である。したがって、Shaker法(シャキア法:頭部挙上訓練)を用いるのは、食道入口部の開口が減少している患者、球麻痺、一般高齢者、咽頭残留・誤嚥のあるケースに有効である。

 

 

 

 

 

85 上腕骨顆上骨折で正しいのはどれか。

1. 老年期に多い。
2. 原則として手術を行う。
3. 外反肘を生じることが多い。
4. 前腕の循環不全を生じやすい。
5. 肘関節屈曲位での受傷が多い。

解答:

解説

 小児の骨折中最多であり、ほとんどが転倒の際に肘を伸展して手をついた場合に生じる。転移のあるものは、肘頭が後方に突出してみえる。合併症は、神経麻痺(正中・橈骨神経)、フォルクマン拘縮(阻血性拘縮)、内反肘変形などである。よって、選択肢4.前腕の循環不全を生じやすい。が正しい。

 

1.✖ 「老年期」ではなく、小児に最多である。
2.✖ 手術か保存療法があり、骨折のずれの程度によって異なる。原則として、「手術」ではなく保存療法を優先する。
3.✖ 「外反肘」ではなく、内反肘変形が多い。
5.✖ 肘関節「屈曲位」ではなく、伸展位での受傷が多い。

 

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