第51回(H28) 作業療法士国家試験 解説【午後問題16~20】

 

16 14歳の女子。生来健康で活発であった。6か月前からダイエットを契機に、拒食や過食嘔吐をするようになり、体重が58kg(身長158cm)から41kgまで減少した。心配した母親に連れられて精神科を受診し、入院となった。3週後、体重は47kgを超えて作業療法が開始となったが、部屋にある料理の本をずっと眺めており「したいことに集中できない」と訴えた。
 この患者に対する作業療法士の説明として適切なのはどれか。

1. 「気分転換できる作業を探しましょう」
2. 「復学に向けた計画を考えていきましょう」
3. 「料理に興味があるのですね。簡単なものから作ってみましょう」
4. 「食物から距離を取るために、ここでは料理の本を見るのはやめましょう」
5. 「今は休養が大事な時期です。何もせずゆっくり過ごすことを目標にしましょう」

解答1

解説

本症例のポイント

・14歳の女子。
・6か月前:ダイエットを契機に拒食や過食嘔吐になった。
・体重が58kg(身長158cm)から41kg(BMI:16.4)。
・3週後:体重は47kg(BMI:18.8)
・部屋にある料理の本をずっと眺めており「したいことに集中できない」と訴えた。
→本症例は、摂食障害の神経性無食症が疑われる。摂食障害の治療としてまず患者に対する動機づけが重要である。適切な動機づけによって治療に導入し、身体合併症に対しては栄養輸液などを行い、支持的精神療法、家族療法、集団精神療法、認知行動療法、薬物療法などから適宜選択し、組み合わせて治療を行う。精神療法では、患者との面接を通して、まずは共感的態度をとりながら患者の語ることを受容し、やがて体重や食事に対する誤った認識のあることを自覚してもらい、身体イメージの障害を徐々に修正していく。また、発症には家族内の葛藤が関与していることも多く、家族関係や食生活に治療者が介入する家族療法も有効。このほか、自分の摂食行動と情動の動きについてグループで話し合う集団精神療法、体重・体型についての歪んだ認識を改善するための認知行動療法、SSRIによる薬物療法も有効であるとされる。

1.〇 正しい。摂食障害害患者は、食べ物への強い執着があり、食べ物のことが頭から離れなくなる。作業療法時には食べ物以外へ関心を向けさせることが必要である。「気分転換できる作業を探しましょう」が正しいと言える。
2~5.×  「復学に向けた計画を考えていきましょう」「料理に興味があるのですね。簡単なものから作ってみましょう」 「食物から距離を取るために、ここでは料理の本を見るのはやめましょう」 「休養が大事な時期です。何もせずゆっくり過ごすことを目標にしましょう」、それぞれの選択肢は、「復学に向けた計画」「料理」「料理の本の禁止」「休養」と、侵襲的な患者心理への介入指示的な態度となっている。良好な関係を築くうえで障害になりかねないため避けるべきである。

摂食障害とは?

摂食障害には、①神経性無食症、②神経性大食症がある。共通して肥満恐怖、自己誘発性嘔吐、下剤・利尿剤の使用抑うつの症状がみられる。作業療法場面での特徴として、過活動、強迫的なこだわり、抑うつ、対人交流の希薄さ、表面的な対応がみられる。患者の性格として、細かい数値へのこだわり(①体重のグラム単位での増減、②この食べ物はあの食べ物より〇カロリー多いなど)がみられる。

【摂食障害の作業療法のポイント】
①ストレス解消、②食べ物以外へ関心を向ける、③自身の回復(自己表出、他者からの共感、自己管理)、④過度の活動をさせない、⑤身体症状、行動化に注意する。

【性格的特徴】
①強情、②負けず嫌い、③執着心が強い、③極端な行動に及びやすい。

 

 

 

 

 

 

17 35歳の女性。統合失調症。デイケアの就労準備プログラムに参加している。普段は生真面目で穏やかな性格であったが、3週前から些細なことでいら立ち怒り出すようになった。
 悪化の原因を理解することを目的とした面接において、担当の作業療法士が優先して確認すべき項目はどれか。

1. 食欲
2. 服薬状況
3. 家族の問題
4. 就労に向けた不安
5. デイケアの人間関係

解答2

解説

本症例のポイント

・35歳の女性(統合失調症)
・デイケアの就労準備プログラムに参加中。
・普段:生真面目で穏やかな性格。
・3週前:些細なことでいら立ち怒り出す。
→本症例は、統合失調症の維持期であったが、再燃の前兆(些細なことでいら立ち怒り出す)様子も見られ始めている。再発防止の観点が重要である。統合失調症の治療には、通常、薬物療法が用いられる。したがって、選択肢2.服薬状況を担当の作業療法士が優先して確認すべき項目である。患者が薬剤規定どおりに服薬することができていない場合、服薬しないことによる症状悪化や、服薬をしていても抗精神病薬の副作用による錐体外路症状などでイライラする場合もある。まずは、処方通り服薬しているかを確認する必要がある。また、服薬管理は、再発防止のために最重要である。

1.3~5.× 食欲/家族の問題/就労に向けた不安/デイケアの人間関係は、確認すべき事項ではあるが、選択肢2と比較すると優先度は下がる。

統合失調症の再燃・再燃時

再燃・急性増悪の主な原因としては,抗精神病薬へのアドヒアランスの欠如やストレスなどの大きなライフイベントが挙げられるが,薬物治療を継続していても,統合失調症の自然経過として再燃・急性増悪をきたすことも少なくない。(※引用:「第2章 再発・再燃時」)

 

 

 

 

 

 

18 16歳の女子。約6か月前から、壁に向かってぶつぶつと独りで話をしている。悪口が聞こえる、と周囲を怖がる様子がみられ、学校に行かず自宅に閉じこもることが多くなった。両親に説得されて病院を受診したが、自分は病気ではないと治療に抵抗するため、ACT<Assertive Community Treatment>による訪問が開始された。
 この患者に優先すべきなのはどれか。

1. SSTを実施する。
2. 復学に向けた検討を行う。
3. 治療の必要性を納得させる。
4. 集団心理教育プログラムを行う。
5. 患者の興味を話題にして関係性を築く。

解答5

解説

本症例のポイント

・16歳の女子。
・6か月前:壁に向かって独り言、悪口が聞こえる(幻聴)、周囲を怖がる(妄想)、閉じこもる、自分は病気でない(病識の欠如)がみられる。
・ACT<Assertive Community Treatment>による訪問が開始。
→本症例は、統合失調症の急性期が疑われる。この時期は、十分な睡眠や休養、安心感の確保が大切であるが、治療を拒否しているときの対応として、まず患者との関係性を築くことが最優先である。

1.4.× SST(Social Skills Training:生活技能訓練)を実施する/集団心理教育プログラムを行うのは主に回復期後期以降である。本症例は急性期であるため、時期尚早で負担が大きすぎる。
2.× 復学に向けた検討を行うのは主に回復期後期以降である。本症例は急性期であるため、時期尚早で復学はイメージしにくい。また、設問から「悪口が聞こえる」、「学校に行かず自宅に閉じこもることが多くなった」ことから学校でストレスがあったとも考えられる。本症例は急性期であるため、この時期は、十分な睡眠や休養、安心感の確保が大切であるが、治療を拒否しているときの対応として、まず患者との関係性を築くことが最優先である。
3.× 治療の必要性を納得させる優先度は低い。なぜなら、本症例は、病識がなく治療に抵抗しているため。現在の状況や治療の必要性を説明しても、すぐに納得はさせられないと考えられる。まず、患者との関係性を築くことから始める必要がある。
5.〇 正しい。患者の興味を話題にして関係性を築く。本症例は、統合失調症の急性期が疑われる。この時期は、十分な睡眠や休養、安心感の確保が大切であるが、治療を拒否しているときの対応として、まず患者との関係性を築くことが最優先である。

ACT (assertive community treatment:包括的地域生活支援プログラム)とは?

 ACT (assertive community treatment:包括的地域生活支援プログラム)とは、重い精神障害をもった人(入退院を繰り返すなど)であっても、地域社会の中で自分らしい生活を実現・維持できるよう包括的な訪問型支援を中心に提供するケアマネジメントモデルのひとつである。地域社会でうまく生活を継続することができるように多職種が365日・24時間体制で多職種によって構成されたチームにより関わる仕組みである。サービス提供は原則的に無期限である。

 

 

 

 

 

 

19 32歳の女性。幼いころから落ち着きがなく、忘れ物も多かった。大学卒業後、医療事務の仕事に就いたが、仕事が忙しくなるとミスが多くなり、同僚にかんしゃくを起こすなど感情が不安定となった。仕事を休むことも多くなったため、職場の上司に勧められ、精神科を受診し、入院となった。2週後、情緒的に落ち着いたところで作業療法が開始された。
 この患者の作業療法で予測される行動はどれか。

1. 読書に没頭する。
2. 他者との接触を避ける。
3. 他者の作業種目に目移りする。
4. 物を置いた場所を何度も確認する。
5. 自分の作品の出来栄えに固執する。

解答3

解説

本症例のポイント

・32歳の女性
・幼いころ:落ち着きがなく(多動性)、忘れ物が多かった。
・就職後:ミスが多く(注意欠如)、同僚にかんしゃくを起こす(衝動性)など感情が不安定となった。
・仕事を休むことも多く精神科へ入院。
・2週後:情緒的に落ち着いたところで作業療法が開始された。
→本症例は、注意欠陥多動性障害(ADHD)が疑われる。注意欠陥多動性障害(ADHD)とは、発達障害の一つであり、脳の発達に偏りが生じ年齢に見合わない①注意欠如、②多動性、③衝動性が見られ、その状態が6ヵ月以上持続したものを指す。その行動によって生活や学業に支障が生じるケースが多い。治療として、①まず、行動療法を行う。②改善しない場合は、中枢神経刺激薬による薬物療法を用いる。中枢を刺激して、注意力・集中力を上げる。※依存・乱用防止のため、徐放薬が用いられる。

1.× 読書に没頭する可能性は低い。なぜなら、①注意欠如のため、集中困難である場合が多い。
2.× 他者との接触を避ける可能性は低い。なぜなら、ADHD(注意欠如・多動性障害)は、同僚にかんしゃくを起こすなど感情が不安定はあるものの(③衝動性)、自ら他者との接触を避けるわけではないため。
3.〇 正しい。他者の作業種目に目移りする。なぜなら、①注意欠如、②多動性のため、容易に注意を逸れる。
4.× 物を置いた場所を何度も確認する可能性は低い。なぜなら、①注意欠如のため、確認をおろそかにしていることが多い。したがって、忘れ物が多い特徴を持つ。
5.× 自分の作品の出来栄えに固執する可能性は低い。なぜなら、①注意欠如のため、作品が出来上がった後はあまり作品に執着しないことが多い。

 

 

 

 

 

 

20 28歳の男性。統合失調症。持続性の幻聴や被害妄想のため、21歳から入退院を繰り返していたが「働きたい」という本人の希望を尊重して、一般就労を目指して支援することになった。作業療法士を含めた多職種によって生活を支援する一方、地域障害者職業センターやハローワークと協力して、マッチングを図りながら24か月を限度に支援を行っている。
 この患者が受けている就労支援サービスはどれか。

1. 就労移行支援
2. 職場適応訓練
3. リワーク支援
4. 就労継続支援A型
5. 就労継続支援B型

解答1

解説

本症例のポイント

・28歳の男性(統合失調症
・21歳から入退院を繰り返していた。
就労希望を尊重あり、一般就労を目指す。
・生活:作業療法士を含めた多職種の支援あり。
地域障害者職業センターやハローワークと協力して、マッチングを図りながら24か月を限度に支援を行っている。
就労移行支援事業がこの患者が受けている就労支援サービスである。

就労移行支援事業とは、利用期間2年で【対象者】一般就労等を希望し、知識・能力の向上、実習、職場探し等を通じ、適性に合った職場への就労等が見込まれる障害者(65歳未満の者)①企業等への就労を希望する者である。【サービス内容】一般就労等への移行に向けて、事業所内や企業における作業や実習、適性に合った職場探し、就労後の職場定着のための支援等を実施。通所によるサービスを原則としつつ、個別支援計画の進捗状況に応じ、職場訪問等によるサービスを組み合わせ。③利用者ごとに、標準期間(24ヶ月)内で利用期間を設定する。

1.〇 正しい。就労移行支援とは、就業が可能と思われる65歳未満の障害者対して、就業のために必要な知識や技能を身に付けてもらう。2年(特例で3年)が限度である。
2.× 職場適応訓練とは、国の補助により都道府県が事業主に委託し、障害者が実際の事業所で訓練を受けることにより作業環境に適応することを容易にして、訓練終了後はその事業所に引き続き雇用してもらうことを目指す制度である。ハローワークが窓口となる。
3.× リワーク支援とは、うつ病などで休業している人や休職と復職を繰り返している人に対して、復職への準備として、実際の仕事で使うスキル(パソコン操作やプレゼンテーションなど)に慣れていくためのプログラムを提供して、円滑に復職できるようにするものである。
4.× 就労継続支援A型とは、通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労が可能である者が対象である。期限の設定はない。
5.× 就労継続支援B型とは、通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労も困難である者が対象である。期限の設定はない。

障害者総合支援法に基づく障害者の就労支援事業

①就労移行支援事業:利用期間2年
【対象者】一般就労等を希望し、知識・能力の向上、実習、職場探し等を通じ、適性に合った職場への就労等が見込まれる障害者(65歳未満の者)①企業等への就労を希望する者
【サービス内容】一般就労等への移行に向けて、事業所内や企業における作業や実習、適性に合った職場探し、就労後の職場定着のための支援等を実施。通所によるサービスを原則としつつ、個別支援計画の進捗状況に応じ、職場訪問等によるサービスを組み合わせ。③利用者ごとに、標準期間(24ヶ月)内で利用期間を設定する。

②就労継続支援A型(雇用型):利用期限制限なし
【対象者】就労機会の提供を通じ、生産活動にかかる知識及び能力の向上を図ることにより、雇用契約に基づく就労が可能な障害者。(利用開始時、65歳未満の者)
① 就労移行支援事業を利用したが、企業等の雇用に結びつかなかった者
② 特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、企業等の雇用に結びつかなかった者
③ 企業等を離職した者等就労経験のある者で、現に雇用関係がない者
【サービス内容】通所により、雇用契約に基づく就労の機会を提供するとともに、一般就労に必要な知識、能力が高まった者について、一般就労への移行に向けて支援。一定の範囲内で障害者以外の雇用が可能。多様な事業形態により、多くの就労機会を確保できるよう、障害者の利用定員10人からの事業実施が可能。

③就労継続支援B型(非雇用型):利用制限なし
【対象者】就労移行支援事業等を利用したが一般企業等の雇用に結びつかない者や、一定年齢に達している者などであって、就労の機会等を通じ、生産活動にかかる知識及び能力の向上や維持が期待される障害者
① 企業等や就労継続支援事業(A型)での就労経験がある者であって、年齢や体力の面で雇用されることが困難となった者
② 就労移行支援事業を利用したが、企業等又は就労継続事業(A型)の雇用に結びつかなかった者
③ ①、②に該当しない者であって、50歳に達している者、又は試行の結果、企業等の雇用、就労移行支援事業や就労継続支援事業(A型)
の利用が困難と判断された者
【サービス内容】
通所により、就労や生産活動の機会を提供(雇用契約は結ばない)するとともに、一般就労に必要な知識、能力が高まった者は、一般就労等への移行に向けて支援。平均工賃が工賃控除程度の水準(月額3,000円程度)を上回ることを事業者指定の要件とする。事業者は、平均工賃の目標水準を設定し、実績と併せて都道府県知事へ報告、公表。

(引用:「就労移行支援について」厚生労働省様HPより)

 

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