第51回(H28) 理学療法士国家試験 解説【午後問題46~50】

 

46 糖尿病患者における運動療法が禁忌となる合併症はどれか。

1. 高血圧症
2. 増殖性網膜症
3. 閉塞性動脈硬化症
4. ポリニューロパチー
5. ペースメーカー植込み後

解答2

解説

閉塞性動脈硬化症とは?

閉塞性動脈硬化症は、手や足の血管の動脈硬化により、狭窄(血管が狭くなる)や閉塞(血管が詰まる)を起こして、血液の流れが悪くなり、手先や足先へ栄養や酸素を十分に送り届けることができなくなる病気である。下肢の慢性虚血による間欠性跛行が発症症状であることが多く、虚血が進行すると壊死に至る。50~70歳代の男性、糖尿病症例に多くみられる。太ももの付け根(大腿動脈)や足の甲(足背動脈)を触診し、脈が触れないことで診断し、確定診断には血管造影検査を行う。

【病期】
Ⅰ期:「しびれ」「冷感」。
Ⅱ期:「間歇性跛行(かんけつせいはこう)」。一定距離を歩くと脚が傷み、休むとまた歩けるようになる。
Ⅲ期:「安静時疼痛」。安静にしていても脚に痛みが生じる。
Ⅳ期:「潰瘍」「壊疽」。血液が足の先に行かないので、足に潰瘍ができ、ついには足が腐ってしまう。

【治療】
まず動脈硬化の原因である糖尿病・高血圧・脂質異常症の治療を行う。喫煙者は禁煙する。初期の手足の冷感やしびれには血管拡張薬や血液を固まりにくくする薬(抗血小板剤)を用いる。また歩くことによって、側副血行路が発達し血行の流れの改善をはかる。

(※参考:「閉塞性動脈硬化症」厚生労働省HPより)

1.× 高血圧症であっても、運動療法が禁忌であるとはいえない。
2.〇 正しい。増殖性網膜症を合併している場合、運動療法は禁忌である。
3.× 閉塞性動脈硬化症(間欠性跛行に対し)は、運動療法は有効で推奨される。閉塞性動脈硬化症の治療として、まず動脈硬化の原因である糖尿病・高血圧・脂質異常症の治療を行う。喫煙者は禁煙する。初期の手足の冷感やしびれには血管拡張薬や血液を固まりにくくする薬(抗血小板剤)を用いる。また歩くことによって、側副血行路が発達し血行の流れの改善をはかる。
4.× ポリニューロパチーとは、多発性に生じる末梢神経炎のことを指す。下肢に起こることが多く、合併している場合は足に負担がかからない運動(水泳など)を推奨される。
5.× ペースメーカー植込み後は、バイタルサインに問題がなければ運動を実施できる。

2型糖尿病の理学療法

 1型糖尿病の原因として、自己免疫異常によるインスリン分泌細胞の破壊などがあげられる。一方、2型糖尿病の原因は生活習慣の乱れなどによるインスリンの分泌低下である。運動療法の目的を以下に挙げる。

①末梢組織のインスリン感受性の改善(ぶどう糖の利用を増加させる)
②筋量増加、体脂肪・血中の中性脂肪の減少。(HDLは増加する)
③摂取エネルギーの抑制、消費エネルギーの増加。
④運動耐容能の増強。

【糖尿病患者に対する運動療法】
運動強度:一般的に最大酸素摂取量の40~60%(無酸素性代謝閾値前後)、ボルグスケールで『楽である』〜『ややきつい』
実施時間:食後1〜2時間
運動時間:1日20〜30分(週3回以上)
消費カロリー:1日80〜200kcal
運動の種類:有酸素運動、レジスタンス運動(※対象者にあったものを選択するのがよいが、歩行が最も簡便。)

【運動療法の絶対的禁忌】
・眼底出血あるいは出血の可能性の高い増殖網膜症・増殖前網膜症。
・レーザー光凝固後3~6カ月以内の網膜症。
・顕性腎症後期以降の腎症(血清クレアチニン:男性2.5mg/dL以上、女性2.0mg/dL以上)。
・心筋梗塞など重篤な心血管系障害がある場合。
・高度の糖尿病自律神経障害がある場合。
・1型糖尿病でケトーシスがある場合。
・代謝コントロールが極端に悪い場合(空腹時血糖値≧250mg/dLまたは尿ケトン体中等度以上陽性)。
・急性感染症を発症している場合。

(※参考:「糖尿病患者さんの運動指導の実際」糖尿病ネットワーク様HPより)

 

 

 

 

 

 

 

 

47 長期臥床患者で測定値が1週以上前の状態を反映しているのはどれか。

1.AST
2.単球
3.血糖
4.血清アルブミン
5.尿中クレアチニン

解答4

解説

1.× ASTとは、肝細胞・心筋・骨格筋に含まれており、これらの障害にて血中に増加する。血中半減期はASTが、1日弱である。したがって2~3日前から、採血時までの状態を反映している。
2.× 単球とは、白血球の一種で、最も大きなタイプの白血球である。 単球の血中半減期は、12~24時間である。ちなみに、好中球は6~7時間である。
3.× 血糖は、血糖コントロールの指標となる。血糖値は、採血時点での血糖状態を反映する。ちなみに、HbA1cは、1~2か月の間の平均血糖値を反映している。
4.〇 正しい。血清アルブミンは、栄養状態の評価の指標となる。血清アルブミンの血中半減期は、約15~21日であり、2~3週間前の静的栄養状態を示す。
5.× 尿中クレアチニンは、糸球体濾過機能を反映する。クレアチニン・クリアランスの測定法は、1~2時間の短時間法と24時間法がある。ただどちらも、測定値が1週以上前の状態を反映していないため不適切である。

 

 

 

 

 

 

48 介護保険制度の考え方として特に重視されているのはどれか。

1. 家族による介護
2. 公設介護施設の建設
3. 市町村による介護プランの作成
4. 入所型施設サービス
5. 予防とリハビリテーション

解答5

解説

介護保険の「基本指針について」

①2025・2040年を見据えたサービス基盤、人的基盤の整備
②地域共生社会の実現
介護予防・健康づくり施策の充実・推進
④有料老人ホームとサービス付き高齢者住宅に係る都道府県・市町村間の情報連携の強化
⑤認知症施策推進大綱等を踏まえた認知症施策の推進
⑥地域包括ケアシステムを支える介護人材確保及び業務効率化の取組の強化

(※引用:「基本指針について」厚生労働省HPより)

1.× 「家族による介護」ではなく地域共生社会の実現を重視している。「地域共生社会」とは、制度・分野ごとの『縦割り』や「支え手」「受け手」という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が『我が事』として参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えて『丸ごと』つながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会を目指すものである。
2.× 「公設介護施設の建設」を重視しているのではなく、民間企業の参入を促進している。
3.× 市町村は介護プランの作成を行わない。一般的に介護支援専門員(ケアマネジャー)などが行う。要介護認定は、市町村に設置される介護認定審査会で判定する。市町村は介護認定審査会で要介護認定を行う。
4.× 入所型施設サービスを重視しているわけではない。介護保険の基本理念は、「高齢者が自分らしい生活を送ることができるよう、自立した生活を積極的に支援すること」である。特に「入所型施設サービス」を重視することはせず、自立した生活が送れるよう必要に応じて提供する。
5. 予防とリハビリテーションは、介護保険制度の考え方として特に重視されている。③介護予防・健康づくり施策の充実・推進に記載されており、要介護(支援)者に対するリハビリテーションの目標については国で示す指標を参考に計画している。

(※画像引用:「要介護認定の流れ」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

 

 

49 デザインの種類と説明の組合せで正しいのはどれか。(※解答2つ)

1. ユニバーサル — 世界の基準に則った受注品
2. アクセシブル — 異なる特性を持つ人でも使いやすい
3. バリアフリー — 心身の障壁がない環境
4. レディーメイド — 個別に作製した特注品
5. テーラーメイド — 障害の特徴に応じた既製品

解答2/3

解説

1.× ユニバーサルとは、世界の基準に則った受注品ではなく、「すべての人が利用しやすいように作られた製品や建築、環境のこと」である。
2.〇 正しい。アクセシブルは、異なる特性を持つ人でも使いやすいことである。つまり、情報やサービスなどが障害者や高齢者も含めて様々な人に受け入れやすいことである。
3.〇 正しい。バリアフリーは、心身の障壁がない環境である。つまり、心身障害者や高齢者の社会生活上での物理的、制度的、文化・情報面、意識面(差別など)での障壁を除去し、環境を整備することである。
4.× レディーメイドとは、個別に作製した特注品ではなく、実用のために作られた既製品のことである。
5.× テーラーメイド(オーダーメイド)とは、障害の特徴に応じた既製品ではなく、個別に作製した特注品のことである。

ユニバーサルデザインとは?

ユニバーサルデザインとは、障害の有無だけでなく、老若男女・能力・言語の違いを問わず、誰でも利用可能な製品・設計・情報のデザインのことである。

【ユニバーサルデザイン7原則】
①公平、②柔軟、③簡単、④理解、⑤安全、⑥省力、⑦空間

 

 

 

 

 

 

50 ある疾患に対する運動療法の再発予防効果を検討した研究のメタアナリシスを行った。その結果、運動療法を行った群の効果量は0.78(95 %信頼区間:0.66〜0.90)であった。
 これに対する考察で正しいのはどれか。

1. 運動療法は生命予後を改善する。
2. 運動療法は再発予防効果がある。
3. 運動療法は再発危険因子を改善する。
4. このメタアナリシスは統計学的に有意でない。
5. 運動療法を行った78%の人に再発予防効果がある。

解答2

解説

用語解説

メタアナリシスとは、複数の研究結果を統合し、1つの結果にまとめ上げる解析方法である。

95%信頼区間とは、母平均が95%の確率でその範囲にあるということをさす。信頼区間が、1を挟んでしまうと、母集団でのオッズ比は、2つの練習に差がない・2つのいずれかが優れている(2パターン)という3種類のオッズ比になる可能性を示す。したがって、1を挟まない場合は「統計学的に有意である」といえる。

1.3.× 生命予後/再発危険因子は関係しない。なぜなら、本設問から「ある疾患に対する運動療法の再発予防効果を検討した研究のメタアナリシスを行った」と記載があるため。
2.〇 正しい。運動療法は再発予防効果がある。なぜなら、本設問から「ある疾患に対する運動療法の再発予防効果を検討した研究のメタアナリシスを行った」と記載があるため。また、この効果量は0.78であり、95%信頼区間(0.66~0.90)で、運動療法に有意な再発予防効果があったと解釈できる。
4.× このメタアナリシスは統計学的に有意である。なぜなら、この効果量は0.78であり、95%信頼区間(0.66~0.90)で、有意な再発予防効果を示している。1を挟まない場合は「統計学的に有意である」といえる。
5.× 運動療法を行った78%の人に再発予防効果があるとはいえない。なぜなら、この効果量は、2つのグループの間の実質的な差が大きいか小さいかをみるための指標であるため。この数字をもってどの程度の効果があるかを言及することはできない。

 

 

 

※問題の引用:第51回理学療法士国家試験、第51回作業療法士国家試験の問題および正答について

※注意:著者は理学療法士で、解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究・自己研鑽のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。またコメントにて解き方等教えてくださると幸いです。

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