第51回(H28) 理学療法士国家試験 解説【午後問題41~45】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

41 下肢装具とそのチェックアウト基準の組合せで正しいのはどれか。

1. 骨盤帯 — 腸骨稜頂点
2. 股継手 — 大転子上端
3. 膝継手 — 膝関節裂隙中央
4. 下腿半月 — 腓骨頭上端
5. 足継手 — 内果下端

解答5

解説

1.× 骨盤帯は、「腸骨稜頂点」ではなく腸骨稜と大転子の中間で、床面と平行である。
2.× 股継手は、「大転子上端」ではなく大転子の上方2cm・前方2cmの位置である。
3.× 膝継手は、「膝関節裂隙中央」ではなく膝関節裂隙と内転筋結節の中間である。
4.× 下腿半月は、「腓骨頭上端」ではなく腓骨小頭より2~3cm遠位で床面と水平にとる。
5.〇 正しい。足継手は、内果下端である。前額面は、外果中央(内果下端)を通り床面に平行な軸である。水平面は、外果の中央を通り、踵中央と第2~3趾中間点を結ぶ線である。

 

 

 

 

 

 

42 大腿骨近位部骨折に対する人工骨頭置換術(後方アプローチ)後、全荷重が可能な状態での理学療法で適切でないのはどれか。

1. 背臥位における膝伸展位での股関節外転運動
2. 腹臥位における他動的な股関節伸展運動
3. 座位における重錘を用いた大腿四頭筋の筋力増強
4. 低い椅子から股関節内旋位での立ち上がり練習
5. 歩行器を用いた屋外歩行練習

解答4

解説

1.〇 背臥位における膝伸展位での股関節外転運動を実施する。なぜなら、筋力低下や関節拘縮の予防のため。
2.〇 腹臥位における他動的な股関節伸展運動を実施する。なぜなら、関節拘縮の予防のため。前方アプローチの場合、脱臼の危険性もあり禁忌である。
3.〇 座位における重錘を用いた大腿四頭筋の筋力増強を実施する。なぜなら、筋力低下の予防のため。
4.× 低い椅子から股関節内旋位での立ち上がり練習は優先度は低い。なぜなら、低い椅子からの立ち上がりの姿勢は、股関節の過屈曲を伴い、脱臼の危険性を伴うため。
5.〇 歩行器を用いた屋外歩行練習を実施する。なぜなら、積極的な離床、廃用症候群の予防のため。必要であれば階段昇降の練習も行う。

人工骨頭置換術の患側脱臼肢位

①後方アプローチ:股関節内転・内旋・過屈曲
②前方アプローチ:股関節内転・外旋・伸展

人工骨頭置換術の脱臼発生率は、2~7%と報告されており、前方アプローチと後方アプローチと比較して、後方アプローチで発生しやすい。

 

 

 

 

 

43 小児の四肢切断の特徴として正しいのはどれか。

1. 後天性四肢切断は男児に比べ女児に多い。
2. 義手の装着開始時期は4歳ころが適切である。
3. 下腿切断では成長に伴い外反膝変形を生じやすい。
4. 後天性の切断における幻肢の頻度は成人より低い。
5. 骨肉腫が原因で切断になる頻度は増加傾向にある。

解答4

解説

1.× 後天性四肢切断は、男児に比べ女児は少ない。男女比は2:1である。なぜなら、男児は女児より活発であり、怪我をするため。
2.× 義手の装着開始時期は、「4歳ころ」ではなく生後6か月ごろが適切である。義足は、生後8~10カ月頃から装着するのが望ましい。遠城寺式・乳幼児分析的発達検査表によると、生後6か月ごろは「手を出して物をつかむ」時期となり、手の参加が増える時期である。また、生後8~10カ月頃は「ものにつかまって立ち上がる」時期であり、足の参加が増える時期である。
3.× 下腿切断では、成長に伴い「外反膝変形」ではなく膝関節屈曲拘縮を生じやすい。これは、股関節屈筋と伸筋のアンバランスにより生じると考えられている。股関節伸展筋より股関節屈曲筋のほうが筋量が多く優位になりやすい。
4.〇 正しい。後天性の切断における幻肢の頻度は成人より低い。なぜなら、小児はボディ・イメージが十分形成されていないため。
5.× 骨肉腫が原因で切断になる頻度は「増加」ではなく減少傾向にある。腫瘍切除の際に、人工関節などを利用して四肢を温存する方針である。

幻肢・幻肢痛とは?

幻肢・幻肢痛とは、腕や足の切断後、失ったはずの感覚があり、かつそこに痛みを感じる状態である。切断をした人の約7割で生じるが、強い痛みは5~10%とまれである。幻肢痛のメカニズム(発生の機序)は解明されていない。下肢より上肢、近位部より遠位部に多く、電撃痛や、捻られるような痛み、ズキズキするような痛みなど様々である。一般的に、切断の手術後1週間以内に発症し、6か月~2年で消失することが多いが、それ以上長引くこともある。幻肢の大きさは健肢とほぼ同様で、幻肢痛が発生するのは、失った手や指、足などが多い。一方、肘や膝に感じることはまれで、4~6歳以下の小児切断例では出現しないことが多い。幻肢痛への一般的な治療方法として、薬物療法と非薬物療法に分けられる。幻肢痛は天候や精神的ストレスに左右されるため、薬物療法は、鎮痛剤(アセトアミノフェン、イブプロフェン)、三環系抗うつ薬抗痙攣薬、プレガバリン(リリカ)などの抗てんかん薬が、神経痛の治療に使われる。非薬物療法としては、ミラーセラピーである。幻肢は断端の運動につれて移動し、断場の状態(神経や癒着など)に関連を持つ場合がある。

※幻視痛は、心因性の要素が関係するため薬物療法以外の治療法 (バイオフィードバック、リラクセーション訓練、認知行動療法、経皮的電気神経刺激法【TENS】 など)も用いられる。ちなみに、ミラーセラピー(mirror therapy)とは、鏡を使用して運動の視覚フィードバックを与える治療法である。矢状面で両肢間に鏡を設置し、鏡に映された一側肢が鏡に隠れた反対側肢の位置と重なるようにする。切断や麻痺などの患側肢の遠位部に健側肢の映った鏡像がつながって見えることで、患側肢が健常な実像であるかのように感じさせながら運動を行う。

(※参考:「幻肢痛」慢性通治療の専門医による痛みと身体のQ&A様HPより)

 

 

 

 

 

 

44 Down症候群の児の理学療法で適切なのはどれか。

1. 腹筋群の収縮を促す。
2. 不随意運動を抑制する。
3. 緊張性迷路反射を促通する。
4. シャフリングを移動手段とする。
5. 定頸後すぐに立位姿勢を経験させる。

解答1

解説

1.〇 正しい。腹筋群の収縮を促す。なぜなら、全身の筋緊張が低下しているため。Down症候群の乳児期の特徴としては、全身の筋緊張が低く、発達の遅れを伴う。そのため、健常者の座位は、ハムストリングスが伸張されるため膝関節を屈曲位に保ちたいが、Down症候群の乳児期の場合は膝関節伸展位で体幹屈曲するのも容易である。また、腹筋の筋緊張も低いため、腰椎の前弯が生じやすく、両手で床を支持することが多い。したがって、理学療法では、腹筋群の収縮を促すようアプローチすることが多い。
2.× 不随意運動はみられない。ちなみに、不随意運動がみられる特徴的な疾患としてアテトーゼ型脳性麻痺があげられる。不随意運動とは、本人の意思とは無関係に身体に異常な運動が起きることである。主として、無意識の運動をつかさどる錐体外路系(大脳基底核、脳幹、小脳など)が障害された際にみられる。不随意運動の種類は、さまざまなパターンがある(①律動的なもの、②運動の速度が速いものや遅いもの、③画一的な運動が繰り返されるもの、④不規則な運動が雑然と連続しておこるもの、⑤ごく一部(顔面、四肢、躯幹(くかん)など)に生ずるものから全身に及ぶものなど)
3.× 緊張性迷路反射を促通する必要はない。なぜなら、成長するにつれ原始反射(緊張性迷路反射など)は消失していくものであるため。緊張性迷路反射は、背臥位では上下肢伸展し、腹臥位では上下肢屈曲する反射である。生後5~6か月に消失する。
4.× シャフリングを移動手段とするのではなく、正常発達に近づけるべく、「はいはい・つたい歩き・歩行」を目指せるように動作を促す。シャフリングとは、いざり(座ったままお尻で移動する)のことである。
5.× 定頸後すぐに立位姿勢を経験させる必要はない。なぜなら、全身の筋緊張が低下しており、定頸後すぐに立位をしても筋収縮の促進とは考えにくいため。

ダウン症候群とは?

 ダウン症候群(Down症候群)とは、染色体異常が原因で知的障害が起こる病気である。常染色体異常疾患の中で最多である。Down症候群になりうる異常核型は、3種に大別される。①標準トリソミー型:21トリソミー(93%)、②転座型(5%)、③モザイク型(2%)である。発症率は、平均1/1000人である。しかし、35歳女性で1/300人、40歳女性1/100人、45歳女性1/30人と、出産年齢が上がるにつれて確率が高くなる。症状として、①特異な顔貌、②多発奇形、③筋緊張の低下、④成長障害、⑤発達遅滞を特徴とする。また、約半数は、先天性心疾患や消化管疾患などを合併する。特異顔貌として、眼瞼裂斜上・鼻根部平坦・内眼角贅皮・舌の突出などがみられる。

 乳児期の特徴としては、全身の筋緊張が低く、発達の遅れを伴う。理学療法では、バランスボールなどダウン症児の興味関心を抱きやすい環境で筋緊張を高められる運動(主に体幹筋群)を提供する。スカーフ徴候陽性や、シャフリング移動がみられる。スカーフ徴候の正常(陰性)の場合、腕を首に巻きつけるようにすると抵抗するが、陽性の場合は抵抗がみられない。シャフリング移動とは、お座り姿勢のまま移動する(いざり)ことである。脚の動かし方、手の使い方のバリエーションが少なかったり、下半身の筋肉の張りが弱く、筋肉量も少ないために行うことがある。Down症候群の子供では、立位歩行の獲得が遅れるため、シャフリング移動がみられる。正常発達の乳児期前半では、背臥位にて手で足をつかむ動作を行うようになるが、ダウン症乳児の場合、全身の筋緊張が低下しているため、背臥位では股関節外転・外旋した「蛙様肢位(蛙状肢位)」となり、足の持ち上げが難しくなる。読み方は、そのまま「カエルヨウ肢位、カエルジョウ肢位、カエル肢位」などと読む。

 

 

 

 

 

 

45 心筋梗塞発症時にみられる左腕の痛みはどれか。

1. 深部痛
2. 表在痛
3. 関連痛
4. 内臓痛
5. 神経障害性疼痛

解答3

解説

心筋梗塞とは?

心筋が壊死に陥った状態のこと。
心電図の特徴は、STの上昇である。
リスクファクターとして、①高血圧、②喫煙、③糖尿病、④脂質代謝異常などである。

1.× 深部痛とは、骨膜・筋膜・靭帯などの痛みである。
2.× 表在痛とは、皮膚や粘膜の痛みである。
3.〇 正しい。関連痛である。関連痛とは、神経線維の走行の関係で生じる痛みである。つまり、原因とは離れた部位に感じる痛みである。心筋梗塞では左肩・上腕部痛などとして自覚される。
4.× 内臓痛とは、内臓の障害によって生じる疼痛である。心筋梗塞の場合の胸痛として自覚される。他にも、急性胃炎の場合の心窩部痛として現れる。
5.× 神経障害性疼痛とは、末梢神経中枢神経の損傷や障害によって生じる痛みである。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)