第51回(H28) 理学療法士国家試験 解説【午後問題31~35】

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31 骨粗鬆症性骨折が最も起こりやすいのはどれか。

1. 頸椎
2. 鎖骨
3. 尺骨
4. 橈骨
5. 距骨

解答4

解説

 骨粗鬆症とは、骨量が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気である。原因として、閉経による女性ホルモンの低下や運動不足・喫煙・飲酒・栄養不足・加齢などである。骨粗鬆症の患者は、わずかな外力でも容易に圧迫骨折(特に胸腰椎)、大腿骨頚部骨折橈骨遠位端骨折を起こしやすい(※参考:「骨粗鬆症」日本整形外科学会様HPより)。よって、選択肢4.橈骨が正しい。

1.2.3.5.× 頸椎/鎖骨/尺骨/距骨は、好発部位ではない。

骨粗鬆症について

①原発性骨粗鬆症とは、閉経後や高齢者にみられる骨粗鬆症のことである。

②続発性骨粗鬆症とは、結果として二次的な骨量喪失が起こる骨粗鬆症のことをいう。例えば、骨代謝に影響を及ぼすホルモンやサイトカイン異常、不動など骨への力学的負荷の減少、骨構成細胞や物質の異常、全身的および血管障害などの局所的栄養障害などによって起こる。これら骨粗鬆症は原疾患に基づいて発症する続発性骨粗鬆症であるため、原疾患の適切な治療により正常化することが期待しうるが、骨代謝の正常化を期待するには不十分であることが多く、また先天性異常では改善は望めず、多くの症例で骨量喪失に対する治療を要することが多い。

 

 

 

 

 

 

32 頸椎の椎間孔圧迫試験はどれか。

1. Adsonテスト
2. Allenテスト
3. Morleyテスト
4. Spurlingテスト
5. Wrightテスト

解答4

解説

1.× Adsonテスト(アドソンテスト)は、胸郭出口症候群誘発テストである。方法は、両手を膝に置き、頚椎を伸展し、患側へ回旋を加え、深吸気位で息を止めさせたときに、橈骨動脈の脈拍をみる。橈骨動脈が減弱もしくは消失すれば陽性である。
2.× Allenテスト(アレンテスト)は、胸郭出口症候群誘発テストである。方法は、肩関節を90°外転・外旋、肘関節を90°屈曲位に保持させ、頭部を健側に回旋させて橈骨動脈の脈拍をみる。障害側の橈骨動脈の拍動が減弱あるいは消失すれば陽性である。
3.× Morleyテスト(モーレイテスト)は、胸郭出口症候群誘発テストである。方法は、検者が患者の鎖骨上縁の斜角筋三角部を指先で1分間圧迫する。患側頚部から肩・腕および手指にかけての痛み・しびれ・だるさなどが出現すれば陽性である。
4.〇 正しい。Spurlingテスト(スパーリングテスト)は、頚椎の椎間孔圧迫試験である。方法は、頭部を患側に傾斜したまま下方に圧迫を加える。患側上肢に疼痛やしびれを認めれば陽性である。陽性の場合、椎間板ヘルニアや頚椎症による椎間孔狭窄(頚部神経根障害)などが考えられる。
5.× Wrightテスト(ライトテスト)は、胸郭出口症候群誘発テストである。方法は、座位で両側上肢を挙上(肩関節を外転90°・外旋90°、肘関節を屈曲90°)させる。橈骨動脈の拍動が減弱すれば陽性である。

 

 

 

 

 

33 肘部管症候群の所見で正しいのはどれか。2つ選べ。

1. 小指球の筋萎縮
2. 示指のしびれ感
3. Tinel徴候陰性
4. Froment徴候陽性
5. Phalenテスト陽性

解答1/4

解説

肘部管症候群とは?

肘部管症候群は、尺骨神経が肘関節背面内側にある尺側骨手根屈筋下の肘部管を通過する際に生じる絞拒性障害である。尺骨神経麻痺を来し、指の開閉運動障害や鷲手変形を生じる。

1.〇 正しい。小指球の筋萎縮は肘部管症候群の所見である。
2.× 示指のしびれ感は、正中神経麻痺で生じる。ちなみに、肘部管症候群(尺骨神経麻痺)の場合、感覚障害は環指尺側1/2と小指、手背尺側に起こる。
3.× Tinel徴候は、「陰性」ではなく陽性である。手根管症候群肘部管症候群でみられる。Tinel徴候とは、手根部や肘部の神経圧迫部位を叩打すると支配領域に放散痛が生じる現象をいう。
4.〇 正しい。Froment徴候陽性は肘部管症候群の所見である。Froment徴候とは、母指の内転ができなくなり、母指と示指で紙片を保持させると母指が屈曲位をとることである。
5.× Phalenテスト陽性は、正中神経麻痺でみられる。手根管症候群でみられ、手関節を1分間掌屈位に保ち、しびれや疼痛が増加すれば陽性である。

 

 

 

 

 

 

34 健常人における椅子座位からの立ち上がり動作の運動学的な特徴で正しいのはどれか。

1. 体幹前傾後に座圧中心位置は後方へ変位する。
2. 離殿までの身体重心の前方移動は膝の屈曲によって起こる。
3. 体重心位置の上方への移動は前方のおよそ2倍である。
4. 体重心位置の方向制御には二関節筋が関与している。
5. 立位になる直前に足圧中心はいったん大きく後方へ変位する。

解答4

解説

1.× 体幹前傾後に座圧中心位置は、「後方」ではなく前方へ変位する。なぜなら、立ち上がり動作は殿部にある重心を足部に移動する動作ともいえるため。
2.× 離殿までの身体重心の前方移動は、「膝関節屈曲」ではなく股関節屈曲(体幹前傾)によって起こる。
3.× 体重心位置の上方への移動は、前方の2倍はない。重心位置は、腹部前方あたりにある。前方移動距離は、大腿長よりやや小さくなる。一方で上方移動距離は、腹部から骨盤内に移動する。つまり、上方への重心移動は、前方への重心移動よりやや小さい
4.〇 正しい。体重心位置の方向制御には二関節筋(大腿直筋・腓腹筋)が関与している。一方で単関節筋は抗重力作用に関与している。
5.× 立位になる直前の足圧中心は、いったん大きく後方へ変位することはない。立位になる直前には、前傾姿勢であるので、足圧中心も前方に変位している。

 

 

 

 

 

 

35 筋疲労時にみられるのはどれか。

1. 乳酸の減少
2. ADP濃度の増加
3. グリコーゲンの増加
4. 筋形質中のpHの上昇
5. 小胞体のカルシウムイオン取り込みの増加

解答2

解説

筋収縮の機序

【筋収縮の機序】
①筋小胞体から放出されたCa2+がトロポニンと結合する。
②ATPエネルギーを利用したミオシンの頭部首振り運動が起こる。
③アクチンフィラメントを引き寄せながらミオシンフィラメント上を滑走して筋収縮が起こる。

【運動による筋疲労によって起こる事象】
①代謝産物の蓄積(乳酸の増加やpHの低下)
②エネルギー供給率の低下(ATP低下、ADP増加、グリコーゲン低下)
③興奮収縮連関不全(筋小胞体へのCa2+取り込み低下)

1.× 乳酸の「減少」ではなく増加(蓄積)する。なぜなら、嫌気性解糖の亢進のため。嫌気性代謝閾値(AT)とは、運動時に有酸素運動から無酸素運動へと切り替わる運動強度の閾値のことである。つまり、筋肉のエネルギー消費に必要な酸素供給が追いつかなくなり、血液中の乳酸が急激に増加し始める強度の値である。
2.〇 正しい。ADP濃度は増加する。なぜなら、筋収縮により大量のATPが分解されるため。ADP(アデノシン二リン酸)とは、ATP分解酵素の働きによってATPが加水分解すると、ひとつのリン酸基がはずれたものをさす。その際にエネルギーを放出し、このエネルギーを使って筋の収縮が行われる。筋線維の中に蓄えられているATPの量はわずかなので、激しい運動では短時間で使い果たしてしまう。
3.× グリコーゲンは「増加」ではなく減少する。なぜなら、グルコースが嫌気性解糖により分解され、乳酸が蓄積することで筋疲労となるため。
4.× 筋形質中のpHは「上昇」ではなく低下する。なぜなら、筋疲労時には乳酸が蓄積するため。乳酸とは、カラダを動かすエネルギーを作るため糖を分解している際にできる生成物で、その名の通り酸性である。
5.× 小胞体のカルシウムイオン取り込みは「増加」ではなく低下する。筋収縮によりADPなどが増加し、それによりCa2+-ATPaseの活性が低下するため。Ca2+-ATPaseは、筋肉の小胞体膜にあり、Ca2+放出によって収縮した筋線維からCa2+を小胞体の中に回収し、筋肉を弛緩させる。

酸塩基平衡

血液(体液)のpH:7.40 ± 0.05
アシドーシス(酸性):pHが低下している状態。
アルカローシス(アルカリ性):pHが上昇している状態。

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