第51回(H28) 理学療法士国家試験 解説【午後問題26~30】

 

26 局所性脳損傷と比べた場合のびまん性軸索損傷の特徴として正しいのはどれか。

1. 脳幹部の症状が出現しやすい。
2. 急性硬膜下血腫を合併しやすい。
3. 重度の感覚障害を合併しやすい。
4. 行動障害は早期に改善しやすい。
5. バランス障害は軽度であることが多い。

解答1

解説

びまん性軸索損傷とは?

びまん性軸索損傷とは、頭部外傷後、意識障害を呈しているにもかかわらず、頭部CT、MRIで明らかな血腫、脳挫傷を認めない状態である。交通事故などで脳組織全体に回転加速度衝撃が加わり、神経線維が断裂することで生じる。頭部外傷は、前頭葉・側頭葉が損傷されやすい。びまん性軸索損傷の好発部位は、①脳梁、②中脳、③傍矢状部などである。症状として、①意識障害、②記銘・記憶障害、③性格変化、④情動障害、⑤認知障害、⑥行動障害などの高次脳機能障害がみられる。他にも、運動失調バランス障害も特徴的である。意識障害の回復が悪い。

1.〇 正しい。脳幹部(中脳・被蓋)の症状が出現しやすい。なぜなら、びまん性軸索損傷の好発部位は、①脳梁、②中脳、③傍矢状部などであるため。小脳から中脳への連絡通路が損傷されやすい。
2. 急性硬膜下血腫を「合併しやすい」ではなく認められにくい。びまん性軸索損傷とは、頭部外傷後、意識障害を呈しているにもかかわらず、頭部CT、MRIで明らかな血腫、脳挫傷を認めない状態である。局所性脳損傷と異なり、頭蓋内に血腫がないときに本疾患を疑う。
3. 重度の感覚障害を「合併しやすい」ではなく認められにくい。症状として、①意識障害、②記銘・記憶障害、③性格変化、④情動障害、⑤認知障害、⑥行動障害などの高次脳機能障害がみられる。他にも、運動失調バランス障害も特徴的である。
4. 行動障害は早期に「改善しやすい」ではなく改善しにくい。頭部外傷は、前頭葉・側頭葉が損傷されやすい。周囲の状況に合わせた適切な行動ができず、行動障害が社会生活上問題となることが多い。
5. バランス障害は「軽度」ではなく重度であることが多い。なぜなら、小脳から中脳への連絡通路が損傷されるため、四肢・体幹の失調を呈する。

 

 

 

 

 

 

27 観念失行に関連する行為はどれか。

1. 検査者のキツネの指を模倣することができない。
2. 杖を持つときに上下を逆さまにして使おうとする。
3. 麻痺が重度でもそれを意識せずに立ち上がろうとする。
4. 歩行時、右に曲がるべきところで曲がらずに通り過ぎる。
5. 「右足を先に出して」と教示してもできないが、自然な歩行は可能。

解答2

解説

観念失行とは?

観念失行とは、複合的な運動の障害であり、日常使用する物品が正当に使用できない失行のことである。優位半球頭頂葉(特に角回)を中心とする広範囲な障害で生じる。例えば、タバコに火をつける、お茶を入れる、歯磨きをするなどの手順が困難になる。

1.5.× 検査者のキツネの指を模倣することができない/「右足を先に出して」と教示してもできないが、自然な歩行は可能なのは、観念運動失行である。自然な運動では障害がなく、単純な動作(模倣)を指示すると運動ができない失行のことで、指示がなければ出来る。優位半球の縁上回の障害で起こる。
2.〇 正しい。杖を持つときに上下を逆さまにして使おうとするのは、観念失行である。慣れているはずの道具の使い方がわからなくなっている状態である。
3.× 麻痺が重度でもそれを意識せずに立ち上がろうとするのは、病識の欠如(病態失認)である。病態失認とは、明らかに病的症状が認められるのに、その存在を認知しえないことを言う。患者は症状を指摘されてもこれを否認する。右大脳半球病変に伴う左片麻痺例でみられることが多く、特に急性期に出現しやすい。
4.× 歩行時、右に曲がるべきところで曲がらずに通り過ぎるのは、地誌的失見当である。両側または右頭頂後頭葉などとされており、主に中・後大脳動脈領域の梗塞で生じる。地誌的失見当の症状は、①自己中心的失見当、②道順障害、③街並失認に分類される。

 

 

 

 

 

 

28 すくみ足現象がみられるParkinson病患者の歩行練習を理学療法士の近位見守り下で実施した。
 このときの練習法で適切でないのはどれか。

1. 横歩き
2. 階段昇降
3. スラローム歩行
4. 歩隔を狭めた歩行
5. メトロノームの音を活用した歩行

解答4

解説

パーキンソン病のすくみ足の誘発因子と対応方法

【誘発因子】①狭路、②障害物、③精神的緊張など。

【対応方法】①視覚(障害物を跨ぐ、床に目印をつける)、②聴覚(メトロノームなどのリズムや歩行に合わせてのかけ声)③逆説的運動(階段昇降)など。

1.〇 横歩きは、Parkinson病の歩行練習法で適切である。なぜなら、横歩きの効果として、左右の重心移動が大きくなり、歩幅の改善が期待できるため。
2.〇 階段昇降は、Parkinson病の歩行練習法で適切である。なぜなら、階段昇降は、視覚的刺激により、すくみ足の改善に期待できるため。
3.〇 スラローム歩行は、Parkinson病の歩行練習法で適切である。スラローム歩行とは、等間隔に目印を置き縫うようにして歩くものである。そのため、スラローム歩行は、視覚的刺激があるためすくみ足の改善を期待できる。
4.× 歩隔を狭めた歩行は適切ではない。なぜなら、歩隔を狭めると支持基底面が小さくなり、転倒の危険が増すため。歩隔とは、歩く時の両足間の横の幅のことである。
5.〇 メトロノームの音を活用した歩行は、Parkinson病の歩行練習法で適切である。なぜなら、手拍子やメトロノームの音に合わせて聴覚刺激を与えることで、突進現象やすくみ足は改善が期待できるため。

矛盾性運動(逆説的運動)とは?

すくみ足の症状があっても、床の上の横棒をまたぐことができることをいう。リズムをとったり、視覚的な目標物を踏み越えてもらうと、本来難易度が高いはずであるが、スムーズに足が出るといった現象である。ちなみに、階段昇降もこれに含まれ、平地歩行に比べて障害されにくい。

 

 

 

 

 

 

29 重症筋無力症で正しいのはどれか。

1. 脱髄性疾患である。
2. 午前中に症状が悪化する。
3. 複視を生じることは稀である。
4. 感染はクリーゼの誘発因子である。
5. 四肢遠位筋の筋力低下を生じやすい。

解答4

解説

1.× 「脱髄性疾患」ではなく、神経筋接合部の障害により起こる。重症筋無力症は、末梢神経と筋肉の接ぎ目(神経筋接合部)において、筋肉側の受容体が自己抗体により破壊される自己免疫疾患である。脱髄性疾患は、Guillain-Barré 症候群や多発性硬化症などがある。
2.× 「午前中」ではなく午後に症状が悪化する。重症筋無力症は、日内変動があり筋収縮や刺激を反復するに従って顕著になる。そのため、午後に症状が強くなる。
3.× 複視を生じることは「稀」ではなく特徴的な症状である。全身の筋力低下、易疲労性が出現し、特に眼瞼下垂複視などの眼の症状をおこしやすいことが特徴(眼の症状だけの場合は眼筋型、全身の症状があるものを全身型と呼ぶ)。
4.〇 正しい。感染はクリーゼの誘発因子である。クリーゼとは、感染を契機に急性増悪し、急激な筋力低下や呼吸困難を呈し、生命の危機的状態になることである。直ちに、気管内挿管・人工呼吸管理を行う。
5.× 「四肢遠位筋」ではなく、近位筋の筋力低下を生じやすい。

重症筋無力症とは?

重症筋無力症とは、末梢神経と筋肉の接ぎ目(神経筋接合部)において、筋肉側の受容体が自己抗体により破壊される自己免疫疾患のこと。全身の筋力低下、易疲労性が出現し、特に眼瞼下垂、複視などの眼の症状をおこしやすいことが特徴(眼の症状だけの場合は眼筋型、全身の症状があるものを全身型と呼ぶ)。嚥下が上手く出来なくなる場合もある。重症化すると呼吸筋の麻痺をおこし、呼吸困難を来すこともある。日内変動が特徴で、午後に症状が悪化する。クリーゼとは、感染や過労、禁忌薬の投与、手術ストレスなどが誘因となって、急性増悪し急激な筋力低下、呼吸困難を呈する状態のことである。直ちに、気管内挿管・人工呼吸管理を行う。
【診断】テンシロンテスト、反復誘発検査、抗ACh受容体抗体測定などが有用である。
【治療】眼筋型と全身型にわかれ、眼筋型はコリンエステラーゼ阻害薬で経過を見る場合もあるが、非有効例にはステロイド療法が選択される。胸腺腫の合併は確認し、胸腺腫合併例は、原則、拡大胸腺摘除術を施行する。難治例や急性増悪時には、血液浄化療法や免疫グロブリン大量療法、ステロイド・パルス療法が併用 される。

(※参考「11 重症筋無力症」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

 

30 糖尿病性の多発神経障害で早期から異常がみられやすいのはどれか。

1. 膝蓋腱反射
2. 徒手筋力検査
3. 内果の振動覚
4. 関節可動域検査
5. Timed Up and Go Test(TUG)

解答3

解説

(※引用:「糖尿病に伴う神経障害:診断と治療の進歩」著:馬場 正之)

 糖尿病性の多発神経障害の評価として、糖尿病性神経障害指数(Diabetic Neuropathy Index:DNI)がある。検査項目として、①足の外観(変形、皮層乾燥、感染巣)、②足の潰瘍、③アキレス腱反射、④足親指振動覚である。各項目を左右でチェックし、合計点数>2で、DPN(diabetic polyneuropathy:糖尿病性末梢神経障害)と診断する。

1.× 膝蓋腱反射ではなく、アキレス腱反射である。
2.4.× 徒手筋力検査/関節可動域検査は、早期から異常は見られない。
3.〇 正しい。内果の振動覚は、早期から異常がみられる。
5.× Timed Up and Go Test(TUG)は、歩行能力やバランス能力の検査である。早期から異常は見られない。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)