第50回(H27) 作業療法士国家試験 解説【午後問題26~30】

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26 運動失調がみられないのはどれか。

1.Wallenberg症候群
2.脊髄小脳変性症
3.Wernicke脳症
4.重症筋無力症
5.脊髄癆

解答4

解説

 運動失調は、障害部位によって①小脳性、②脊髄(後索)性、③迷路(前庭)性、④大脳性に分けられる。

1.〇 Wallenberg症候群は、運動失調がみられる。Wallenberg症候群(延髄外側症候群)は、椎骨動脈、後下小脳動脈の閉塞により延髄外側の梗塞を来す疾患である。めまい・嘔吐・嚥下障害・眼振・Horner症候群・小脳性運動失調・同側顔面と対側上下肢の表在感覚の低下が生じる。
2.〇 脊髄小脳変性症は、運動失調がみられる。脊髄小脳変性症は、小脳かその連絡線維の変性により、主な症状として運動失調を呈する疾患の総称である。
3.〇 Wernicke脳症は、運動失調がみられる。Wernicke脳症は、ビタミンB1欠乏によって起こり、意識障害、眼球運動障害、運動失調を3主徴とする。
4.× 重症筋無力症は、運動失調がみられない。重症筋無力症とは、末梢神経と筋肉の接ぎ目(神経筋接合部)において、筋肉側の受容体が自己抗体により破壊される自己免疫疾患のこと。全身の筋力低下、易疲労性が出現し、特に眼瞼下垂、複視などの眼の症状をおこしやすいことが特徴(眼の症状だけの場合は眼筋型、全身の症状があるものを全身型と呼ぶ)。嚥下が上手く出来なくなる場合もある。重症化すると呼吸筋の麻痺をおこし、呼吸困難を来すこともある。日内変動が特徴で、午後に症状が悪化する。クリーゼとは、感染や過労、禁忌薬の投与、手術ストレスなどが誘因となって、急性増悪し急激な筋力低下、呼吸困難を呈する状態のことである。
5.〇 脊髄癆は、運動失調がみられる。脊髄癆とは、神経梅毒によって引き起こされ、脊髄の後根・後索の慢性進行性変性を呈する。そのため、脊髄後索性の運動失調が起こりうる。

”脊髄小脳変性症とは?多系統萎縮症とは?”

脊髄小脳変性症とは、運動失調を主症状とし、原因が、感染症、中毒、腫瘍、栄養素の欠乏、奇形、血管障害、自己免疫性疾患等によらない疾患の総称である。遺伝性と孤発性に大別され、①純粋小脳型(小脳症状のみが目立つ)と、②多系統障害型(小脳以外の症状が目立つ)に大別される。脊髄小脳変性症の割合として、孤発性(67.2%)、常染色体優性遺伝性(27%)、が常染色体劣性遺伝性(1.8%)であった。孤発性のものの大多数は多系統萎縮症である。(※参考:「18 脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く。)」厚生労働省様HPより)

多系統萎縮症とは、成年期(多くは40歳以降)に発症し、進行性の細胞変性脱落をきたす疾患である。①オリーブ橋小脳萎縮症(初発から病初期の症候が小脳性運動失調)、②線条体黒質変性症(初発から病初期の症候がパーキンソニズム)、シャイ・ドレーカー症候群(初発から病初期の症候が自律神経障害であるもの)と称されてきた。いずれも進行するとこれら三大症候は重複してくること、画像診断でも脳幹と小脳の萎縮や線条体の異常等の所見が認められ、かつ組織病理も共通していることから多系統萎縮症と総称されるようになった。(※参考:「17 多系統萎縮症」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

 

 

27 手の腱損傷後の運動機能評価で適切なのはどれか。

1.DAS28(disease activity score 28)
2.Lansburyの活動性指数
3.MFT(manual function test)
4.MODAPTS(modular arrangement of predetermined time standards)
5.TAM(total active motion)

解答5

解説
1.× DAS28(disease activity score 28)は、「手の腱損傷後の運動機能評価」ではなく、関節リウマチの活動性の指標である。観察対象関節は、肩関節2、肘関節2、手関節2、手指(DIP除く)20、膝関節2で、合計28関節を評価する。
2.× Lansburyの活動性指数(ランズベリー)は、「手の腱損傷後の運動機能評価」ではなく、関節リウマチの活動性の指標である。
3.× MFT(manual function test)は、「手の腱損傷後の運動機能評価」ではなく、脳卒中上肢機能検査である。「上肢の前方挙上」、「上肢の側方挙上」、「手掌を後頭部へ」、「手掌を背部へ」、「握る」、「つまむ」ができるか否か、および「立方体運び」と「ペグボード」の規定時間内の達成数を得点化し(32点満点)、これを100点満点に換算する。
4.× MODAPTS(モダプツ:modular arrangement of predetermined time standards)は、「手の腱損傷後の運動機能評価」ではなく、作業能力評価法である。作業動作時間測定法であるMTM(Methods Time Measurement)に改良を加えた簡便な作業能力評価法である。
5.〇 正しい。TAM(total active motion)は、手の腱損傷後の運動機能評価である。自動可動域での(MP + PIP + DIPの屈曲総和角度)-(MP + PIP + DIPの伸展不足総和角度)により求められる。ほかに、TPD(tip palmar distance)があり、手掌の距離により求められる。

 

 

 

 

 

28 発症後3時間での脳梗塞の検出に有用なMRI撮像法はどれか。

1.FLAIR像
2.T1強調像
3.T2強調像
4.T2*(スター)強調像
5.拡散強調像

解答5

解説
1.× FLAIR像は、急性期(発症24時間~1週間)において梗塞巣を確認しやすい。FLAIR画像は、基本的には水の信号を抑制したT2強調画像(脳室が黒く見えるT2WI風の画像)であり、脳室と隣接した病巣が明瞭に描出される。ラクナ梗塞に代表されるかくれ脳梗塞や血管性認知症にみられるビンスワンガー型白質脳症などの慢性期の脳梗塞部位(白色に描出される)確認に有用である。
2.× T1強調像は、急性期(発症24時間~1週間)において梗塞巣を確認しやすい。T1強調像では、水は黒く低信号で描出され(脳室は黒色)、CTとよく似た画像を呈し、大脳皮質と白質などの解剖学的な構造が捉えやすいという特徴がある。
3.× T2強調像は、急性期(発症24時間~1週間)において梗塞巣を確認しやすい。T2強調像では、水は白く高信号で描出され(脳室は白色)、多くの病巣が高信号で描出されるため、病変の抽出に有用とされている。
4.× T2*(スター)強調像は、出血性病変の検出力が極めて高く(黒色に描出される)、過去に発症した出血巣の確認無症候性微小出血の検出に優れている。
5.〇 正しい。拡散強調像(DWI画像)は、発症後1~3時間以内の超急性期の梗塞巣を確認できるとされる。水分子の拡散運動(自由運動度)を画像化したもの。拡散が低下した領域が高信号として描出される。なお、急性期の脳出血はCTで確認するのが一般的である。発症から4~5時間以内の脳梗塞に対しては、血栓溶解療法(t-PA療法)という治療が行われる。初期対応は予後に大きく関わるため迅速に対応する必要がある。

 

 

 

 

 

 

29 小児における能力低下の評価はどれか。

1.CARS(childhood autism rating scale)
2.DAM
3.GMFM
4.MMPI
5.PEDI

解答5

解説
1.× CARS(カーズ:childhood autism rating scale:小児自閉症評定尺度)は、小児自閉症について評価する尺度である。小児を対象とし、自閉症児と自閉症症候群以外の発達障害児とを鑑別するために開発されたもので、15項目からなる行動を通して評定する尺度である。さらに、自閉症児を軽中度と中重度に分類できる。
2.× DAM(Draw-a-Man Test:グッドイナフ人物画検査)は、3~10歳までの動作性の知能発達をみる検査である。人物画を描かせ、描かれた身体部位や比率などで精神年齢を判断する。
3.× GMFM(Gross Motor Function Measure)は、脳性麻痺児の粗大運動能力の尺度である。治療効果の評価などに用いる。
4.× MMPI(Minnesota Multiphasic Personaliy Inventory:ミネソタ多面人格検査)は、質問紙法による人格検査の代表的なものである。適用年齢は15歳以上である。質問紙法の心理検査で、550の質問に対して「あてはまる」、「あてはまらない」、「どちらでもない」を選択する3件法が用いられる。基礎尺度(妥当性尺度・臨床尺度)と追加尺度があり、その最大の特徴の1つが妥当性尺度(でたらめな回答や、故意の回答歪曲を検出するために挿入される尺度)である。
5.〇 正しい。PEDI(Pediatric Evaluation of Disabiliy Inventory:リハビリテーションのための子どもの能力低下評価法)は、セルフケア・移動・社会的機能の3つの領域の日常生活における機能的スキルと複合活動を評価するものである。生後6か月から7歳6か月までの子どもが対象の能力低下評価法である。

 

 

 

 

 

 

30 筋力増強訓練で正しいのはどれか。

1.遠心性収縮は筋が短縮する。
2.等尺性収縮は関節の動きを伴う。
3.等張性収縮は心疾患に禁忌である。
4.求心性収縮は抵抗が筋張力より大きいときに生じる。
5.等運動性収縮は可動域全体で筋力強化が可能である。

解答5

解説
1.× 遠心性収縮は、「筋が短縮する」のではなく、筋が収縮しながら伸張されていく運動である。つまり、外力が筋力より勝っている状態である。遠心性収縮の特徴として、①筋力増強効果が高い、②筋損傷も起こりやすいことがあげられる。
2.× 等尺性収縮(静止性収縮)は、関節の動きを伴わない運動である。筋が収縮しているにもかかわらず筋の全長に変化のない状態で、負荷に対して静止姿勢を保つときなどに生じる。等尺性収縮の特徴として、毛細血管圧迫による血流遮断が起こり血圧が上昇しやすい。
3.× 心疾患に禁忌であるのは、「等張性収縮」ではなく等尺性収縮(静止性収縮)である。等張性収縮は、筋の収縮力(張力)が変化しないままに、筋の全長が変化する状態である。おもりなどをつけての筋力トレーニングに応用されている。等張性収縮の特徴として、筋の収縮・弛緩の反復によるポンプ効果で、血液循環がよくなる。
4.× 求心性収縮は抵抗が筋張力より、「大きい」のではなく小さいときに生じる。なぜなら、求心性収縮とは、筋収縮時に筋の起始部と停止部が近づく関節運動であるため。つまり、筋力が抵抗より勝っている状態で起こる。
5.〇 正しい。等運動性収縮(等速性収縮)は、可動域全体で筋力強化が可能である。等運動性収縮(等速性収縮)は、関節の運動速度が一定に保たれている運動である。したがって、可動域全般にわたり負荷が可能である。しかし、等運動性収縮(等速性収縮)の欠点として、バイオデックスなどの特殊な機器を必要とする。

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