第49回(H26) 作業療法士国家試験 解説【午後問題31~35】

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31 慢性閉塞性肺疾患の患者に対するADL・IADLの指導で適切でないのはどれか。

1.歩行:歩行開始前に呼気をし、吸気と同時に歩行を開始する。
2.更衣:椅子座位で開排位に足を組み靴下を着脱する。
3.洗濯:胸の高さに洗濯物を干す。
4.洗体:長めのタオルを使用する。
5.食事:軽い食器を使用する。

解答1

解説
1.× 歩行開始前に呼気をし、吸気と同時に歩行を開始するのは、慢性閉塞性肺疾患の患者に対するADL・IADLの指導で不適切である。運動(筋収縮)は、呼気合わせて行う。つまり、歩行開始前(運動開始前)に吸気をし、呼気と同時に歩行を開始する。
2.〇 正しい。更衣は、椅子座位で開排位に足を組み靴下を着脱する。安定した座位で、腹部は圧迫しないように開排位で足を組んで行う。
3.〇 正しい。洗濯は、胸の高さに洗濯物を干す。慢性閉塞性肺疾患は、呼吸が乱れやすいため上肢を上げる動作をなるべく控える。
4.〇 正しい。洗体は、長めのタオルを使用する。短い洗体タオルよりも長めの方が、上肢をあまり動かさなくでも洗うことができるので呼吸苦が少ない。
5.〇 正しい。食事は、軽い食器を使用する。なぜなら、上肢運動は呼吸困難につながりやすいため。また、上肢運動の負担を軽減する。

 

 

 

 

 

 

32 前腕能動義手のパーツと役割の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

1.三角筋パッド:ハウジングの角度を調節する。
2.リテーナー:ハーネスの装着感を向上させる。
3.ケーブル:手先具に力を伝達する。
4.ソケット:切断部の長さを代償する。
5.手継手:手先具の開閉効率を向上させる。

解答3/4

解説

1.× ハウジングの角度を調節するのは、「三角筋パッド」ではなくリテーナーである。
2.× ハーネスの装着感を向上させるのは、「リテーナー」ではなく三角筋パッドである。リテーナーはケーブルの肘関節の動きに影響を受けずに効果的な機能を発揮する。
3.〇 正しい。ケーブルは、手先具に力を伝達する。ケーブルは上肢帯や体幹の運動を手先具や肘継手に伝達する。
4.〇 正しい。ソケットは、切断部の長さを代償する。義手では殻構造をとることがほとんどで、ソケットは切断部の長さを代償する。
5.× 手継手は、手先具を前腕部に結合し、掌背屈・回旋などの運動機能を付加したり、手先具を交換できる機能を付加するために用いる。

 

 

 

 

 

33 関節リウマチの関節保護で適切でないのはどれか。

1.コップの取っ手のみではなくコップ本体を持つ。
2.机の雑巾がけで尺側方向に拭く。
3.広口瓶は手掌で開ける。
4.食器をワゴンで運ぶ。
5.補高便座を使用する。

解答2

解説

 関節リウマチは関節の変形、疼痛をきたす疾患であるため、日常生活上で関節保護が重要になる。上肢では手関節の尺側変位やスワンネック変形などの手指変形が代表的であり、尺側への運動を避ける、手指の関節への負担を軽減させるなど工夫が必要である。 

1.〇 コップの取っ手のみではなくコップ本体を持つ。コップは取っ手の部分に指をかけたりせず、両手で本体を持つことで関節の保護につながる。
2.× 雑巾がけ、布巾がけ動作は、「尺側方向」ではなく橈側方向へ拭くように指導される。なぜなら、尺側方向への運動は手関節の尺側偏位を助長するため。
3.〇 広口瓶は手掌で開ける。こうすることで、指の関節の負担を軽減する。ボトルオープナーなどを用いるとなおよい。尺側変位の予防のため、右手で開け、左手で閉めることが望ましい。
4.〇 食器をワゴンで運ぶ。こうすることで、指先で食器を持つことなどによる関節への負担を軽減できる。
5.〇 補高便座を使用する(座面を高くする)ことで、膝関節などの下肢関節への負担が軽減できる。立ち上がりなど上肢で支持する際は、手指ではなく、前腕部を使う。

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34 終末期の筋萎縮性側索硬化症の患者が環境制御装置を使用する際に最も適しているのはどれか。

1.眼瞼
2.口唇
3.呼気
4.舌
5.顎

解答1

解説

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋委縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

1.〇 眼球・眼瞼運動は、終末期の筋萎縮性側索硬化症の患者が環境制御装置を使用する際に最も適している。なぜなら、眼球・眼瞼運動は、終末期でも保たれることが多いため。透明文字盤などを用いてのコミュニケーションや、視線入力装置を介しての環境制御装置の操作が可能である。
2~5.× 口唇/呼気/舌/顎運動は、終末期では障害される。四肢の動きが悪い程度であれば、マイクロスイッチなどのコミュニケーションツールは有用である。ちなみに、呼吸筋麻痺はALS患者の死因の一つである。

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35 人工股関節置換術後の深部静脈血栓症の予防で誤っているのはどれか。

1.弾性ストッキング着用
2.間欠的空気圧迫
3.足関節の底背屈
4.マッサージ
5.安静

解答5

解説

深部静脈血栓症の予防方法

 手術を行った後や脊髄損傷の急性期、長期臥床などにより、静脈血がうっ滞することによって深部静脈血栓症が起こりやすい。未治療の運動療法は肺塞栓症を生じる可能性もある。その予防法についは以下のものがあげられる。
①下肢挙上し、重力による静脈還流を促す。
②弾性ストッキングや弾性包帯の利用
③下肢の運動(足部の運動、膝の等尺性運動)

1.〇 弾性ストッキングの着用は、血流停滞を減らすため、予防法として有用である。
2.〇 間欠的空気圧迫(下肢を圧迫すること)は、静脈還流を促すため、予防法として有用である。
3.〇 足関節の底背屈運動をすると、筋収縮(筋ポンプ作用)により静脈還流を促すため、予防法として有用である。
4.〇 マッサージは、静脈還流を促すため、予防法として有用である。
5.× 安静は、人工股関節置換術後の深部静脈血栓症の予防で誤っている。むしろ、静脈血がうっ滞するため深部静脈血栓症のリスクの原因となる。

 

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