第48回(H25) 作業療法士国家試験 解説【午後問題6~10】

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次の文により6、7の問いに答えよ。
 50歳の女性。右上腕短断端切断。受傷後3か月経過。図のような上腕義手を製作した。

6 パーツの名称で正しいのはどれか。

1.①ミュンスター型ソケット
2.②単軸肘ブロック継手
3.③肘コントロールケーブル
4.④ターミナル(回り端子)
5.⑤能動ハンド

解答4

解説
1.× 図①は、ミュンスター型ソケットではなく、上腕義手の標準断端用差し込みソケットである。ちなみに、ミュンスター型ソケットは、極断端に用いられる前腕義手用のソケットである。
2.× 図②は、単軸肘ブロック継手ではなく、肘継手である。
3.× 図③は、肘コントロールケーブルではなく、ケーブルハウジング(ケーブルの動きを保護するチューブ)である。
4.〇 正しい。図④は、ターミナル(回り端子)である。ターミナル(回り端子)は、手先具を開くためのケーブル末端にあり、駆動力を伝える。
5.× 図⑤は、能動ハンドではなく、能動フックである。能動フックの特徴として、金属製の2本の手鈎を有する。ちなみに、能動ハンドは、五本指を有する手の形をした手先具である。

 

 

 

 

 

 

次の文により6、7の問いに答えよ。
 50歳の女性。右上腕短断端切断。受傷後3か月経過。図のような上腕義手を製作した。

7 義手操作練習時、肘90°屈曲位で手先具を完全に開くことができなかった。
 対応で正しいのはどれか。

1.肘継手を交換する。
2.9字ハーネスに変える。
3.手先具の力源ゴムを増やす。
4.ケーブルハウジングを短くする。
5.リフトレバーの位置を遠位にする。

解答4

解説

屈曲位で手先具が完全に開閉することができない原因

①ケーブルシステムの不良(走行不良、またはハウジングが長すぎる場合が多い)。
②ハーネスの調整不良。
③力源となる肩甲帯の問題。

1.× 肘継手を交換する必要はない。肘90°屈曲位が困難な場合に肘継手を交換する。
2.× 9字ハーネスに変える必要はない。9字ハーネスは、前腕義手(自己懸垂型ソケット)用である。
3.× 手先具の力源ゴムを増やす必要はない。なぜなら、力源ゴムは把持力を調整するものであるため。
4.〇 正しい。ケーブルハウジングを短くする。屈曲位で手先具が完全に開閉することができない原因として、①ケーブルシステムの不良(走行不良、またはハウジングが長すぎる場合が多い)、②ハーネスの調整不良、③力源となる肩甲帯の問題があげられる。
5.× リフトレバーの位置を遠位にする必要はない。なぜなら、リフトレバーの位置は、一直線であればどこであっても効果は同じであるため。リフトレバーの位置は、ハーネスから手先具まで一直線となる位置となれば良く、リフトレバーを遠位にずらしても効果はない。

 

 

 

 

 

8 56歳の男性。大工で上肢をよく使用する。3年前から左手の感覚障害と筋力低下を自覚していた。左手の写真を下図に示す。
 図に示す装具で、この患者に必要なのはどれか。

解答2

解説

写真から、環指・小指の①MP関節伸展制限、②PIP・DIP関節屈曲位である。したがって、尺骨神経麻痺であることが分かる。

1.× 図①は、Rancho型短対立装具である。母指を対立位に保持する働きを持ち、正中神経麻痺に適応となる。
2.〇 正しい。図②は、虫様筋カフであり、この患者に必要である。MP関節屈曲位に保持する働きを持ち、尺骨神経麻痺に適応となる。
3.× 図③は、肘関節装具である。①肘関節の拘縮、②骨折や関節不安定性の治療、③関節炎の治療などに用いられる。
4.× 図④は、逆ナックルベンダー(MP伸展補助装具)である。MP関節を伸展位に保持する働きを持ち、橈骨神経麻痺(低位型)に適応となる。
5.× 図⑤は、コックアップ・スプリントである。手関節背屈位に保持する働きを持ち、橈骨神経麻痺に適応となる。

 

 

 

 

 

 

9 Duchenne型筋ジストロフィー患者。ステージ6(厚生省筋萎縮症研究班の機能障害度分類による)の食事動作を図に示す。
 動作方法や環境の調整方法として適切なのはどれか。

1.深い皿を使用する。
2.テーブルを高くする。
3.柄の太いスプーンを使用する。
4.車椅子の背シートを後ろに倒す。
5.手関節をスプリントで固定する。

解答2

解説

厚生省「筋萎縮症」対策研究会による障害段階分類

ステージ1 歩行可能 介助なく階段昇降可能(手すりも用いない)
ステージ2 階段昇降に介助(手すり、手による膝おさえなど)を必要とする
ステージ3 階段昇降不能 平地歩行可能 通常の高さのイスからの立ち上がり可能
ステージ4 歩行可能 イスからの立ち上がり不能
ステージ5 歩行不能 四つ這い可能
ステージ6 四つ這い不能だが、いざり移動可能(上肢挙上困難レベル)
ステージ7 這うことはできないが、自力で坐位保持可能
ステージ8 ベッドに寝たままで体動不能 全介助

図は、上肢(肩関節屈曲・肘関節屈曲)の筋力低下により、スプーンを口元まで運ぶために左上肢で右上肢を補助している。

1.× 深い皿ではなく、浅い皿を使用する。なぜなら、本症例はスプーンを使用しており食物がすくいやすくなるため。
2.〇 正しい。テーブルを高くする。本症例は、上肢の筋力の低下により、スプーンを口元まで運ぶために左上肢で右上肢を補助している。したがって、テーブルを高くすることで動作の軽減が図られる。
3.× 柄の太いスプーンを使用する必要はない。なぜなら、Duchenne型筋ジストロフィーでは、近位筋から障害され、下肢より上肢、末梢の筋の機能は末期まで保たれやすいため。スプーンに工夫をする場合は、柄の長いものにするのがよい。
4.× 車椅子の背シートを後ろに倒す必要はない。なぜなら、テーブルとの距離も開くため。また、体幹・頚部伸展位は誤嚥しやすくなる。
5.× 手関節をスプリント(装具)で固定する必要はない。なぜなら、本症例はDuchenne型筋ジストロフィーで筋力低下が主たる疾患であるため。

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10 25歳の男性。交通事故で脊髄損傷となった。現在のベッド上でのズボンの着衣は、図に示す矢印の順で可能であった。
 このような更衣が獲得できる頸髄損傷の最上位のZancolli のレベルはどれか。
 ただし、両側の障害レベルは同一であり、完全損傷とする。

1.C 5 A
2.C 5 B
3.C 6 B 3
4.C 7 A
5.C 8 B 1

解答3

解説

1~2.× C 5 A/C 5 Bでは、手関節背屈や肘伸展が不能である。したがって、C 5 A/C 5 Bの場合、図の2コマ目以降のズボンに手をひっかける動作ができない。また、ズボンの着脱操作では、寝返りや下肢を体幹に引き寄せる際の座位バランス必要となるため、C6レベル以上の機能が必要とされる。
3.〇 正しい。C 6 B 3で、ベッド上でのズボンの着脱は可能となる。手関節背屈や肘伸展が可能であり、一連の更衣動作(ズボンを広げる、脚を通す、ズボンを押し上げるなど)が可能である。
4~5.× C 7 A/C 8 B 1は、つかみ動作が可能となるため、行為動作の際はズボンをつまんで行うことが多い。また、車椅子にて日常生活のほとんどが自立可能となる。

 

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