第48回(H25) 作業療法士国家試験 解説【午後問題11~15】

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11 3歳の女児。痙直型脳性麻痺。立位姿勢を図に示す。
 この児に適応となる装具はどれか。

解答2

解説

図の女児の立位姿勢では、右の反張膝がみられている。

反張膝になる原因

①膝関節伸展筋の筋力低下
②固有感覚障害による代償
③足関節底屈筋の痙性
④足関節底屈拘縮

1.× 図は、長下肢装具である。重度の片麻痺(弛緩性)に適応となる。
2.〇 正しい。クレンザック足継手付短下肢装具である。足関節底背屈制限の機能のついた短下肢装具である。本症例の場合、痙直型脳性麻痺であるため、足関節底屈筋の痙性が原因で反張膝になっている可能性が高い。したがって、足関節底屈制限の機能を利用することにより、反張膝を制御することができる。
3.× 膝装具である。膝関節の伸展制限がある際に用いる。ターンバックルがついているため、反張膝を制限できるが、一緒に膝の動きも固定される。
4.× 免荷装具である。下腿~足部にかかる負荷を減少できる。
5.× 靴型装具である。補高により反張膝は起こりにくくなるが、尖足を助長するため不適切である。主に靴型装具は、起立・歩行を目的とし、足の変形矯正、除痛、足底接地等のために使用される。

反張膝に対する方法

装具療法:①足関節底屈制動、②膝の安定化、③患側の補高。
運動療法:①筋力増強、②持続伸張、③立位体重支持運動。

 

 

 

 

 

 

12 22歳の男性。頸髄損傷(第6頸髄節まで機能残存)。車椅子は床から390 mm の座面に100 mm の低反発素材のクッションを使用している。移乗は、車椅子から前・後方移動で自立し、ADLは環境整備の上で自立が見込めるようになった。1人暮らしを目的にした住宅改修を図に示す。
 正しいのはどれか。

1.①入口のスロープ傾斜を1/8とした。
2.②便器の高さを床から400 mm とした。
3.③移乗の車椅子操作のために回転半径を600 mm 確保した。
4.④浴槽のふちの高さを洗い場から150 mm とした。
5.⑤テラスへの出入り口は埋め込みレールとした。

解答5

解説

本症例は、C6レベルでプッシュアップ動作困難である。主に車椅子操作で、段差の高さやスロープを乗り越えることに難渋する可能性が高い。

1.× ①入口のスロープ傾斜を1/8ではなく、1/12(屋内)~1/15(屋外)が推奨されている。
2.× ②便器の高さを床から400 mm だと高すぎる。車椅子の座面の高さ390mmとクッションの高さ100mmである。したがって、体重によるクッションの沈み込みを踏まえると、便器と車椅子の移乗場面において、高低差が生じる。
3.× ③移乗の車椅子操作のために回転半径を600 mm(直径120cm) 確保だと不十分である。車椅子の回転直径は150cmが望ましい。
4.× ④浴槽のふちの高さを洗い場から150 mm にするのではなく、ふちと洗い場を同じ高さに設定する。
5.〇 正しい。⑤テラスへの出入り口は埋め込みレールとした。なぜなら、埋め込みレール使用により、テラスへの出入り口の段差が解消されるため。

車椅子の通行幅

数値:【建築物移動等円滑化基準】(建築物移動等円滑化誘導基準)
玄関出入口の幅:【80cm】(120cm)
居室などの出入口:【80cm】(90cm)
廊下幅:【120cm】(180cm)※車椅子同士のすれちがいには180cm
スロープ幅:【120cm】(150cm)
スロープ勾配:【1/12以下】(1/12以下、屋外は1/15)
通路の幅:【120cm】(180cm)
出入口の幅:【80cm】(90cm)
かごの奥行:【135cm】(135cm)
かごの幅(一定の建物の場合):【140cm】(160cm)
乗降ロビー:【150cm】(180cm)

(※参考:「バリアフリー法」国土交通省HPより)
(※参考:「主要寸法の基本的な考え方」国土交通省様HPより)

 

 

 

 

 

次の文により13、14の問いに答えよ。
 17歳の女子。統合失調症。授業中に突然叫び声をあげ、教科書と筆記用具を窓から投げ捨てた。両親が付き添い精神科病院に入院し、陽性症状の落ち着いた3週目に退院となり、精神科ショートケアに紹介された。

13 この時期の精神科ショートケア利用の目的はどれか。

1.仲間づくり
2.居場所づくり
3.社会資源の利用
4.対人交流技能の改善
5.基本的生活リズムの回復

解答5

解説

1~2.× 仲間づくり/居場所づくりは、維持期の目的である。
3.× 社会資源の利用/対人交流技能の改善は、回復期後期の目的である。
5.〇 正しい。基本的生活リズムの回復は、この時期の精神科ショートケア利用の目的である。急性期の統合失調症の患者では、規則正しい生活リズムが障害されていることも多い。ただし、生活リズムの回復は、亜急性期と回復期に共通の作業療法の目的である。亜急性期は、幻聴・妄想などが活発な急性期を過ぎ、多少の精神症状は残存していても睡眠覚醒などの生活リズムが確立しているが、疲労感が強い時期である。一方、回復期は、疲労感が軽減してこれから社会復帰の準備を始めようとする時期であり、服薬や金銭の自己管理を支援し、学校や職場との連携を図る時期である。それぞれ亜急性期は睡眠リズムの確立、回復期は社会復帰を目指す日常生活リズムの獲得の意味合いに持つ。

”統合失調症とは?”

統合失調症とは、幻覚・妄想・まとまりのない発語および行動・感情の平板化・認知障害ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが、遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。好発年齢は、青年期に始まる。治療は薬物療法・認知療法・心理社会的リハビリテーションを行う。早期発見および早期治療が長期的機能の改善につながる。統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。統合失調症患者の約5~6%が自殺し,約20%で自殺企図がみられる。したがって、うつ症状にも配慮して、工程がはっきりしたものや安全で受け身的で非競争的なものであるリハビリを提供する必要がある。
(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)

 

 

 

 

 

 

次の文により13、14の問いに答えよ。
 17歳の女子。統合失調症。授業中に突然叫び声をあげ、教科書と筆記用具を窓から投げ捨てた。両親が付き添い精神科病院に入院し、陽性症状の落ち着いた3週目に退院となり、精神科ショートケアに紹介された。

14 通所2か月目から復学に向けた支援を開始した。
 適切でないのはどれか。

1.心理教育に参加させる。
2.特別支援学校に転校させる。
3.再発防止プランを作成させる。
4.修業年限の延長を視野に入れた計画を立てる。
5.担当教師、家族および本人を交えたケア会議を開催する。

解答2

解説
1.〇 正しい。心理教育に参加させる。心理教育は、疾病や治療、生活に対する正しい理解を図ることを目的としている。
2.× 特別支援学校に転校させる必要はない。なぜなら、本症例は統合失調症で、知的または身体的に問題があるとは考えにくいため。復学に向けて学校と連携して支援し、再発防止のための援助も重要である。ちなみに、特別支援学校とは、障害者等が「幼稚園、小学校、中学校、高等学校に準じた教育を受けること」と「学習上または生活上の困難を克服し自立が図られること」を目的とした日本の学校である。
3.〇 正しい。再発防止プランを作成させる。なぜなら、疾病を理解し、再発を防止することが望ましいため。
4.〇 正しい。修業年限の延長を視野に入れた計画を立てる。なぜなら、本症例は、急性期であり、ゆっくり時間をかけ、将来を考える必要があるため。復学を急ぎ過ぎると、症状の悪化・再燃につながる可能性もある。
5.〇 正しい。担当教師、家族および本人を交えたケア会議を開催する。ケア会議は、関係者間での情報および目標の共有、理解を深めることを目的として実施する。

 

 

 

 

 

 

次の文により15、16の問いに答えよ。
 40歳の男性。うつ病。意欲低下と睡眠障害が出現し会社を休職した。アパートで1人暮らしをしながらデイケア通所していたが、この1週間、デイケアも休みがちになり訪問の指示が出た。

15 訪問時の評価で優先するのはどれか。

1.生活リズム
2.金銭の管理
3.服薬の管理
4.症状の再燃
5.身辺処理技能

解答4

解説
1.× 生活リズムより優先度が高いものが他にある。睡眠障害により生活リズムが乱れている可能性があるが、まずはうつ病の症状が再燃しているかを確認する必要がある。そうすることで、うつ病による睡眠障害の生活リズムの乱れなのか評価もできる。
2.× 金銭の管理ができなくなるのは、うつ病よりも認知症があげられる。
3.× 服薬の管理より優先度が高いものが他にある。患者の判断により、うつ病の症状が良くなったタイミングで減薬や服薬を辞めてしまい症状が悪化していることがよくある。ただし、最初から服薬の管理を疑うより、まずはうつ病の症状が再燃しているかを確認し、いくつかの原因を客観的に判断できたほうが良い。
4.〇 正しい。症状の再燃は、訪問時の評価で優先する。まず、症状が再燃したかどうかを疑い、精神状態を評価する。
5.× 身辺処理技能より優先度が高いものが他にある。うつ病の場合、意欲低下は見られるものの身辺処理技能が落ちることは少ない。うつ病よりも認知症があげられる。

うつ状態に特徴的な症状

①興味・喜びの著しい減退、②体重減少もしくは増加、③不眠もしくは睡眠過多、④易疲労性、⑤無価値観、⑥決断困難・集中力の低下、⑦自殺念慮など

 

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