第48回(H25) 作業療法士国家試験 解説【午後問題16~20】

 

次の文により15、16の問いに答えよ。
 40歳の男性。うつ病。意欲低下と睡眠障害が出現し会社を休職した。アパートで1人暮らしをしながらデイケア通所していたが、この1週間、デイケアも休みがちになり訪問の指示が出た。

16 訪問が継続されることになった。
 訪問時の対応で正しいのはどれか。

1.退職を勧める。
2.SST を勧める。
3.心配事を聞く。
4.服薬の変更を勧める。
5.職場適応訓練を開始する。

解答3

解説
1.× 退職を勧める必要はない。なぜなら、うつ病の急性期には、重要な決断は先延ばしにするのが原則であるため。
2.× SST(Social Skills Training:生活技能訓練)を勧める必要はない。SST(Social Skills Training:生活技能訓練)とは、主に統合失調患者を対象とした、日常生活場面において適切な行動が取れるよう生活技能を習得するためのものである。
3.〇 正しい。心配事を聞く。まず、不安や心配を受け入れ、共感することが重要である。患者がすでに長い間、つらい思いをしてきたということを受け入れ、共感する態度が重要である。
4.× 服薬の変更を勧める必要はない。なぜなら、内服薬の調整は、主治医が症状をみながら行うものであるため。ましてや患者の判断で行えるものではない。
5.× 職場適応訓練を開始する必要はない。なぜなら、休職中のうつ病患者であり、復職の可能性のある状況では、職場適応訓練の対象とならないため。職場適応訓練とは、実際の職場で作業について訓練を行うことにより、作業環境に適応することを容易にさせ、訓練を行った職場に雇用してもらうことを期待して行うものである。職場の事業主と訓練者に支給金がある。

 

 

 

 

 

 

次の文により17、18の問いに答えよ。
 19歳の女性。大学入学後、ファッションモデルに憧れてダイエットを始めた。身長は162 cm、体重は半年間で52 kgから33 kgに減少した。ランニング中に意識を失って救急搬送された。その後、精神科に入院し、作業療法が開始された。

17 この疾患の特徴はどれか。

1.活動性が低い。
2.病識を有する。
3.躁状態になりやすい。
4.自分の感情に鈍感である。
5.人からの評価を気にしない。

解答4

解説

本症例は、52kgから33kgとなっている。標準体重-20%を下回る過度な体重減少がみられ、過度のダイエットと運動により体重減少を図ろうとすることから、神経性無食欲症と考えられる。神経性無食欲症は、思春期~青年期の若い女性に発症しやすい。神経性無食欲症の主な特徴は以下の通りである。①病的な痩せ願望、②ボディーイメージのゆがみ、③極端な食べ物制限と下剤などの乱用、④月経の停止、うぶげの増加、⑤乳房委縮はみられない、⑥性格的には頑固で競争心が強い、⑦母親との心的葛藤をみることがある。

1.× 活動性が低いのではなく、過活動になりやすい。なぜなら、体重減少を目的に過度の運動を行うため。
2.× 病識を有することより、欠如していることが多い。病的な痩せ願望とボディーイメージのゆがみが認められる。
3.× 躁状態になりやすいわけではない。躁状態の特徴として、病的なまでに気分が高揚して、開放的になったり怒りっぽくなったりした状態で、尊大な振る舞いをする、延々しゃべり続ける、考えが次々飛躍する、注意が散漫になる、活発に活動し寝なくても平気なほどになる、焦燥感が目立つ、といった様子もみられる。神経性無食欲症では、過活動はみられるが、自己評価は低いことが特徴的で躁状態に該当しない。
4.〇 正しい。自分の感情に鈍感である。摂食障害では、異常なまでに痩せることで様々な身体的不調があるはずであるが、自分自身ではそれに気付かなくなってしまう状態(失感情)に陥りやすい。
5.× 逆である。人からの評価を気にする。人からの評価に敏感であり、自己評価が低い、そのためいつも体重を量り、身の体型・体重を気にする。

 

 

 

 

 

 

次の文により17、18の問いに答えよ。
 19歳の女性。大学入学後、ファッションモデルに憧れてダイエットを始めた。身長は162 cm、体重は半年間で52 kgから33 kgに減少した。ランニング中に意識を失って救急搬送された。その後、精神科に入院し、作業療法が開始された。

18 作業療法開始時の方針として適切なのはどれか。

1.調理実習を行う。
2.ウォーキングを行う。
3.ファッションを学ぶ。
4.自己主張の仕方を学ぶ。
5.小集団活動から開始する。

解答4

解説

1.× 調理実習を行う必要はない。なぜなら、神経性無食欲症(摂食障害)の患者は、常に食べ物のことを考えているため。食べ物から距離を置くよう促していく。
2.× ウォーキングを行う必要はない。なぜなら、神経性無食欲症の患者はやせるために過活動になっていることが多いため。ウォーキング等の身体運動はやり過ぎてしまう傾向がある。
3.× ファッションを学ぶ必要はない。なぜなら、神経性無食欲症の患者は常に体重を量り、自身の体型・体重を気にしているため。ファッションを学ぶことは、症状悪化を助長する可能性が高い。
4.〇 正しい。自己主張の仕方を学ぶ。なぜなら、神経性無食欲症の患者は、自己評価が低く、認知の歪みがみられるため。自己表現を促すことで自己肯定感を高めることにつながる。
5.× 小集団活動から開始する必要はない。なぜなら、神経性無食欲症の患者は、導入時にグループ活動を行うと、他のメンバーと自身を比較し、よりやせようとするため。

 

 

 

 

 

 

次の文により19、20の問いに答えよ。
 26歳の男性。Asperger症候群。小学校でいじめに遭い、以後、学校では友人はほとんどできなかった。大学卒業後、建築関連の会社に就職したが、同僚からは「融通がきかない、人の気持ちを逆なでする」などと責められることが多く、ストレスから徐々に抑うつ気分が強くなった。欠勤が続いたため、上司が精神科クリニックを紹介し、復職を目標にデイケアに通うことになった。

19 この患者にみられやすい特徴はどれか。

1.運動が得意である。
2.興味・関心の幅が広い。
3.予定が変わると混乱する。
4.相手の気持ちに敏感である。
5.決められたルールを守れない。

解答3

解説

Asperger症候群(アスペルガー症候群)とは?

Asperger症候群(アスペルガー症候群)の特徴(小児自閉性障害と異なる点)
 ①言語発達の遅れはない、②知能は正常であることが多い、③対人接触に無関心というよりはむしろ常軌を逸し一方的に接近しようとする、などのことが挙げられる。
 また、興味・関心の幅が狭いので新たな作業の導入には抵抗が強く、その一方で同じ作業を続ける力はもともと(こだわりが)ある。作業や通所が続かなくなる理由には、対人関係技能が低下しているために、困っていても援助を求める方法を知らないため、本人の無理のない範囲でコミュニケーション能力をつけていく作業療法が必要である。

1.× 運動は、得意ではなく苦手である。身体的不器用さ、ぎこちなさがみられる。
2.× 興味・関心の幅が広いのではなく狭い。また、こだわりが強い。
3.〇 正しい。予定が変わると混乱する。順番や物の位置へのこだわりが強く、環境の変化を好まない。したがって、予定が変わると対応できないことが多い。
4.× 相手の気持ちに、敏感ではなく鈍感である。他者の気持ちに気付きにくく、他者と社会的関係を築くことが難しい。したがって、対人関係をうまく築くことができない。
5.× 決められたルールは、守れないのではなく融通が利かないほどよく守る。ちなみに、決められたルール(順番が待てないなど)を守れないのは、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の特徴である。

 

 

 

 

 

 

次の文により19、20の問いに答えよ。
 26歳の男性。Asperger症候群。小学校でいじめに遭い、以後、学校では友人はほとんどできなかった。大学卒業後、建築関連の会社に就職したが、同僚からは「融通がきかない、人の気持ちを逆なでする」などと責められることが多く、ストレスから徐々に抑うつ気分が強くなった。欠勤が続いたため、上司が精神科クリニックを紹介し、復職を目標にデイケアに通うことになった。

20 デイケアで行う支援で適切なのはどれか。

1.コミュニケーションのマナーについてマニュアルを作成する。
2.職場の同僚には障害のあることを伏せる。
3.ミーティングで自由な発言を促す。
4.就労支援事業所の利用を勧める。
5.多様な作業を経験させる。

解答1

解説

本症例は、設問から復職を目標にデイケアに通うことになっていることが分かる。精神科デイケアは、外来治療のーつであり、社会復帰を目指してレクリエーションや社会生活技能訓練(SST)などを行う。

1.〇 正しい。コミュニケーションのマナーについてマニュアルを作成する。本症例は、他者と社会的関係をうまく築いていくことが難しく、職場でもトラブルになっている。マニュアルは、対人関係技能を高める上で有用である。
2.× 職場の同僚には障害のあることを伏せる必要はない。むしろ、障害に対する周囲の理解が欠かせないため、本人の承諾を得たうえで職場に障害のあることを伝え、理解を求める。
3.× ミーティングで自由な発言を促す必要はない。なぜなら、周囲の状況を見ながら他者とのコミュニケーションを図っていくことが苦手であるため。
4.× 就労支援事業所の利用を勧める必要はない。なぜなら、本症例は休職中ではあるが、就労しているため。まずは、トラブルにもなった対人関係技能の向上を図ることが重要である。
5.× 多様な作業を経験させる必要はない。なぜなら、本症例は、興味・関心の幅が狭く、多様な作業を行うことは本人にとって負担になるため。また、現在問題となっている対人関係トラブルの改善を図ることにつながる可能性は低い。

 

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