第48回(H25) 理学療法士国家試験 解説【午後問題46~50】

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46 うっ血性心不全の際にみられるのはどれか。

1.皮膚紅潮
2.咳嗽
3.初期の体重減少
4.頸動脈雑音
5.心胸郭比40%

解答2

解説

 うっ血性心不全とは、心臓のポンプ機能が弱まり、充分な量の血液を全身に送れなくなって、血液の滞留(うっ血)が起こしている状態。 このため、呼吸困難や倦怠感、むくみなどが生じる。

1.× 「皮膚紅潮」ではなくチアノーゼ(蒼白)が生じる。
2.〇 正しい。(湿性)咳嗽が生じる。そのため、呼吸困難、息切れ、起座呼吸を伴う。
3.× 初期でも「体重減少」ではなく増加する。なぜなら、体液が貯留するため。
4.× 頸動脈は、「雑音」ではなく怒張する。頸動脈の雑音は、血管の閉塞や動脈硬化で生じる。
5.× 心胸郭比「40%」ではなく50%以上(拡大)する。なぜなら体内水分貯蓄量が増加するため。

 

 

 

 

 

47 筋萎縮性側索硬化症患者で安静臥位時のPaO2が60Torrであった。
 呼吸理学療法で適切なのはどれか。

1.呼吸筋増強訓練
2.舌咽呼吸の指導
3.端座位保持訓練
4.腹筋の筋力増強訓練
5.頸部筋リラクセーション

解答5

解説

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋委縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

本症例は、PaO2が60Torrであることから呼吸障害を生じている。基準値は80~100Torr、60Torr以下で呼吸不全と判断できる。

1.× 呼吸筋増強訓練は、優先度が低い。なぜなら、筋萎縮性側索硬化症は進行性の神経変性疾患であり、すでに呼吸障害を呈しているため。残存筋力の維持訓練を行っていく。
2.× 舌咽呼吸の指導は、優先度が低い。なぜなら、舌咽呼吸(カエル呼吸)は、肺活量が低下した患者が嚥下機能を用いて代償的に行う呼吸法であるため。本症例は、嚥下機能も低下しているため舌咽呼吸を習得できるかが疑問である。
3.× 端座位保持訓練は、優先度が低い。なぜなら、呼吸障害を呈している現状態は、すでに体幹の支持性も低下していると考えられるため。端坐位を保持するのが難しいか、できたとしても過用性の筋力低下をきたす可能性も懸念される。
4.× 腹筋の筋力増強訓練は、優先度が低い。選択肢3と同様に、過用性の筋力低下をきたす可能性も懸念されるため。
5.〇 正しい。頸部筋リラクセーションは、選択肢の中では一番優先度が高い残存呼吸の機能を効率よく用いるために重要である。

類似問題です↓
【PT共通】筋萎縮性側索硬化症についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

 

48 1日の消費エネルギーは2,000kcal。
 1週間で1kgの減量(7,000kcal)をするため、1日に200kcalの運動を行う場合の、1日当たりの摂取カロリーはどれか。

1.1,000kcal
2.1,100kcal
3.1,200kcal
4.1,300kcal
5.1,400kcal

解答3

解説

1週間の総摂取カロリーが総消費カロリーよりも、1㎏の減量:7000kcal少なく設定する。

1週間の総摂取カロリーは、2000kcal(1日の消費エネルギー)+200kcal(1日の運動量)を7日でかける。
つまり、1週間の総摂取カロリーは、15400kcalである。

この1週間の総摂取カロリー(15400kcal)から、1週間で1㎏減量(7000kcal)減らす必要がある。
15400kcal-7000kcal=8400kcal

つまり、1週間で8400kcalしか食べられない。

これを7日で割ると、1日当たりの摂取カロリーを求められる。
8400kcal ÷ 7日 = 1200kcalである。

 

したがって、選択肢3.1,200kcalとなる。

 

 

 

 

 

49 100人の中に転倒経験者が50人いて、そのうちの40人はバランス検査で異常を指摘されていた。また、検査で異常を指摘されない転倒未経験者は30人いる。
 この検査の陽性尤度比はどれか。
 ただし、陽性尤度比は感度/(1-特異度)で表される。

1.0.6
2.0.7
3.0.8
4.1.0
5.2.0

解答5

解説

 ・疾病を有するものを正しく疾病ありと診断する確率を「感度」という。
 ・疾病を有さないものを正しく疾病なしと診断する確率を「特異度」という。

問題文より、上の表を作成できる。
表より、この検査における感度(転倒経験ありの人が検査で陽性になる確率)は、40/50である。
特異度(転倒経験なしの人が検査で陰性になる確率)は、30/50である。

問題文より、陽性尤度比は感度/(1-特異度)と定義されているため、ここに代入することで求められる。

40/50 ÷ (1-30/50)= 2.0

したがって、選択肢5.2.0が正しい。

 

 

 

 

 

50 理学療法士及び作業療法士法で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.罰金刑を科せられても欠格条項には抵触しない。
2.一旦免許を取得すれば、後に取り消されることはない。
3.守秘義務は理学療法士でなくなった後にも適用される。
4.麻薬中毒者は理学療法士免許を与えられないことがある。
5.理学療法士でない者が機能療法士の名称を用いても良い。

解答3/4

解説

1.× 罰金刑を科せられた場合、欠格条項となる。(第4条)
2.× 免許を取得後でも、欠格事由に該当した場合、取り消されることがある。(第7条)
3.〇 正しい。守秘義務は、理学療法士でなくなった後にも適用される。もちろん理学療法士として業務に従事しているときも適応となる。(第16条)
4.〇 正しい。麻薬中毒者は、理学療法士免許を与えられないことがある。(第4条)大麻だけでなく、アヘン中毒者も欠格事由に該当する。
5.× 理学療法士でない者が、機能療法士の名称を用いてはならない。なぜなら、理学療法士は名称独占があるため。無資格者が資格の名称や紛らわしい名称を使用することを禁止している。(第17条)

欠格事由

①罰金以上の刑に処せられた者
②作業療法士(理学療法士)の業務に関し犯罪もしくは不正の行為があった者
③心身に障害があって業務を適正に行うことができない者
④麻薬、大麻又はあへんの中毒者

 

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