第47回(H24) 作業療法士国家試験 解説【午後問題46~50】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

46 精神科デイケアについて正しいのはどれか。

1.学童も対象になる。
2.保険診療の対象ではない。
3.在宅高齢者は対象ではない。
4.グループホーム利用者は対象ではない。
5.対象疾患で最も多いのは認知症である。

解答

解説

精神科デイケアとは?

精神科デイケアとは、精神科に通院している患者を対象に、①居場所を提供したり、②疾患の再発予防、③日常生活技能の改善、④社会復帰のための援助を目的とした施設である。病院内に設置されていることが多い。目標に向けて提供するリハビリテーションは変わるが、おもにレクリエーションや社会生活技能訓練(SST)などを行う。

1.〇 正しい。学童も対象になる。対象年齢に制限はない。
2.× 保険診療の対象である。保険診療とは、健康保険に加入している全ての患者が、どの医療機関であっても同じ内容の診療を、同じ金額で受けることができる仕組みのことである。精神科デイケアは外来治療の位置付け(精神障害者の社会生活機能の回復を目的として、個々の患者に応じたプログラムに従ってグループごとに治療する)のため、健康保険の適用範囲となる。
3~4.× 在宅高齢者/グループホーム利用者も対象である。対象年齢に制限はない。
5.× 対象疾患で最も多いのは、「認知症」ではなく「統合失調症」である。約7割を占める。

 

 

 

 

 

 

 

47 症例報告における個人情報保護で適切なのはどれか。

1.患者名はイニシャルを表記する。
2.患者の生年月日を表記する。
3.現病歴では受診医療機関名を表記する。
4.職歴では会社名を表記する。
5.治療経過では実年齢を表記する。

解答

解説

個人情報保護法とは?

個人情報保護法とは、個人情報の保護に関する法律の略称である。個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とした個人情報の取扱いに関連する日本の法律である。定義(第2条)には、「この法律において『個人情報』とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述などにより特定の個人を識別できるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む)をいう」とされている。

1~2.× 患者名はイニシャル/患者の生年月日を表記してはならない。なぜなら、イニシャル/生年月日や病名などその他の情報を組み合わせることで、患者の特定は容易であるため。また、患者個人の特定可能な氏名(あだ名を含む)や入院番号も個人情報である。患者氏名/生年月日をあえて載せたい場合は、A氏(別名)と記載したり、年月までの記載に留めておく。ちなみに、事例報告に必要な日付は、原則として初診時を X 年とし、X-3 年、X+2 年などと記載する。ただし、日付が病態に関与する場合に限り、日付を記載してよいこととなっている。
3.× 現病歴での受診医療機関名は、省略するか大まかな記述法にする。(「近医内科を受診など」)
4.× 職歴では会社名を表記してはならない。施設名・会社名は個人情報である。
5.〇 正しい。治療経過では実年齢を表記する。ただし、年齢は、50歳代前半など大まかな記述法にする。年齢、性別、年収、最終学歴、趣味、家族構成、血液型、身長、体重、出生地、本籍地等は、氏名と結びつく限り個人情報となる。

 

 

 

 

 

 

 

48 SOAPによる医療記録について誤っているのはどれか。

1.S(Subjective)では、治療の目的を記す。
2.O(Objective)では、検査や観察などの客観的データを記す。
3.A(Assessment)では、情報に基づく判断や解釈を記す。
4.P(Plan)では、問題解決のための方針を記す。
5.問題指向型の医療記録を指す。

解答

解説

SOAP(subjective, objective, assessment, plan)とは?

SOAP(subjective, objective, assessment, plan)とは、叙述的経過記録方式の問題指向型記録のことである。

S=主観的データ(自覚症状などの患者の訴え)
O=客観的データ(他覚所見:診察所見・血液検査・検査所見)
A=評価(S・Oをもとにした患者の状態の評価・考察)
P=計画(Aをもとにした今後の検査・治療・患者教育の計画・方針)

で、経過を記録する。

1.× S(Subjective)では、「治療の目的」ではなく「患者の自覚症状や訴え」を記す。主観的なデータである。
2.〇 正しい。O(Objective)では、「検査や観察など(他覚所見)」の客観的データを記す。
3.〇 正しい。A(Assessment)では、「情報に基づく判断や解釈(評価)」を記す。
4.〇 正しい。P(Plan)では、「問題解決のための方針(計画)」を記す。
5.〇 正しい。問題指向型の医療記録を指す。SOAP(subjective, objective, assessment, plan)とは、叙述的経過記録方式の問題指向型記録のことである。

 

 

 

 

 

49 精神医療における人名と業績の組合せで誤っているのはどれか。

1.貝原益軒:養生訓
2.呉秀三:移導療法
3.古沢平作:精神分析
4.加藤普佐次郎:作業治療
5.小林八郎:生活臨床

解答

解説
1.〇 正しい。貝原益軒(かいばら えきけん)の養生訓(ようじょうくん)は、健康・長寿を保つための心構えなどについて書かれている。日本人の健康観に影響を与えた。
2.〇 正しい。呉秀三(くれ しゅうぞう)は移導療法を実践した。隔離拘束が中心であった精神病患者の処遇を解放化に向け、作業療法の一種である移導療法(病的な観念を作業に集中させることで頭から移導させること)を行った。
3.〇 正しい。古沢平作(こさわ へいさく)は、精神分析をもたらした。日本の精神分析の先駆者として、力動的な臨床精神医学の基礎をつくることに貢献した。精神分析の祖フロイトから直接教えを受けている。
4.〇 正しい。加藤普佐次郎(かとう ふさじろう)は、作業治療を進めた。精神病患者に対して、体を動かす作業だけでなく、精神的動やレクリエーションをも治療方法とし「作業治療」を進めた。
5.× 小林八郎(こばやし はちろう)は、「生活臨床」ではなく「生活療法(くらし療法)」という言葉を用いた。入院患者の治療として、従来行われていた作業療法をより拡大して、患者の院内作業や院外勤務も進めていった。ちなみに、生活臨床は江熊要一(えぐま よういち)、台弘(うてなひろし)らが行ったもので、患者の症状と生活状況が大きく関係し、患者を地域生活の中で治療していこうとするものである。

 

 

 

 

 

 

50 神経症性無食欲症と神経症性大食症の患者に共通してみられやすいのはどれか。

1.過活動
2.低栄養
3.肥満恐怖
4.病気の認識
5.集中力の低下

解答

解説

摂食障害とは?

摂食障害には、拒食症(神経性無食欲症)と過食症(神経性過食症)がある。思春期~青年期の若い女性に発症しやすい。病的な痩せ願望があり、ゆがんだボディーイメージ(痩せているのに太っていると思い込む)のために極端な食事制限や下剤の乱用を行う。その結果、極端なやせ、月経の停止、うぶ毛の増加などがみられる。性格的には頑固で競争心が強く、活動性も高いため、学業成績は優秀なことであることが多い。

1.× 過活動は、神経症性無食欲症に限る。神経症性大食症では活動性の低下がみられる。
2.× 低栄養は、神経症性無食欲症に限る。低栄養に伴い低アルブミン血症や無月経をきたす。神経症性大食症では月経異常をきたすことはあるが、通常、無月経はきたさない。
3.〇 正しい。肥満恐怖は、神経症性無食欲症と神経症性大食症の患者に共通してみられやすい。病的な痩せ願望があり、ゆがんだボディーイメージ(痩せているのに太っていると思い込む)のために極端な食事制限や下剤の乱用を行う。
4.× 病気の認識は、神経症性大食症に限る。一方で、神経症性無食欲症では病識がみられない(病死の欠如)。
5.× 集中力の低下は、神経症性無食欲症に限る。低栄養やうつ症状が出やすいため。一方で、神経症性大食症ではみられない。

神経性無食欲症と神経性過食症

【共通の症状】
①肥満への病的な恐怖があるため、目標とする体重は、標準体重よりかなり低い。
②やせるため、自己誘発性嘔吐、利尿薬・下剤の使用、絶食を行う。そのため、電解質異常と代謝性アルカローシスがみられることがある。

【神経性無食欲症】
①体重が標準より15%以上下回るか、BMIが17.5以下という診断基準がある。
②低栄養のため、内分泌系に異常をきたし、無月経のことが多い。
③活動的である。
④病識が欠如している。

【神経性過食症】
①過食のエピソードが必ずある。
②発症年齢はやや高い。
③月経異常をきたすことはあるが、通常、無月経はきたさない。
④活動性は低下する。
⑤病識を有している。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)