第47回(H24) 作業療法士国家試験 解説【午後問題41~45】

 

41 境界性パーソナリティー障害の作業療法の目的でないのはどれか。

1.枠組みの提供
2.行動化の促進
3.依存欲求の充足
4.探索行動の促進
5.対象恒常性の改善

解答

解説

境界性パーソナリティ障害とは?

 境界性パーソナリティ障害では、感情の不安定性と自己の空虚感が目立つ。こうした空虚感や抑うつを伴う感情・情緒不安定の中で突然の自殺企図、あるいは性的逸脱、薬物乱用、過食といった情動的な行動が出現する。このような衝動的な行動や表出される言動の激しさによって、対人関係が極めて不安定である。見捨てられ不安があり、特定の人物に対して依存的な態度が目立ち、他者との適切な距離が取れないなどといった特徴がある。

【関わり方】
患者が周囲の人を巻き込まないようにするための明確な態度をとる姿勢が重要で、また患者の自傷行為の背景を知るための面接が必要である。

1.〇 枠組みの提供は、境界性パーソナリティー障害の作業療法の目的である。枠組みがあることで、患者の要求のエスカレートを防ぐことができるため。患者が周囲の人を巻き込まないようにするための明確な態度をとる姿勢が重要で、また患者の自傷行為の背景を知るための面接が必要である。
2.× 行動化の促進は優先度が低い。なぜなら、行動化とは、情緒的葛藤やストレス因子に対して内省することによってではなく、行為によって対処するもので、不適切な形で現れた防衛機制の1つであるため。具体例として、診察室から出ていってしまったり、診察の場で沈黙を続けたりするなどである。したがって、行動化は、自己破壊的な側面(睡眠薬の自殺やリストカット)を助長する可能性がある。治療では衝動性をコントロールし、より高い自律性の獲得を目標とする。
3.〇 依存欲求の充足は、境界性パーソナリティー障害の作業療法の目的である。なぜなら、境界性パーソナリティー障害は、強い依存欲求や見捨てられ不安がみられるため。依存欲求とは、「是認、支持、助力、保証などの源泉として他人を利用ないし頼りにしたいという欲求 (竹澤・小玉 , 2004)」と定義され、依存には自己の許容を相手に求める欲求があると考えられる。充足とは、十分に補い満たすこと。また、満ち足りることである。依存というとネガティブな印象であるが、自立的・適応的である者が行う依存欲求の充足の仕方に関係するもので望ましい1つの依存のあり方であると考えられている。
4.〇 探索行動の促進は、境界性パーソナリティー障害の作業療法の目的である。探索行動とは、知らない物事に興味を示し、それがどんなものなのかを確かめ、知ろうとする行動のことである。探索行動の促進は問題解決にあたり、物ごとに対する極端な見方を改善することができる。
5.〇 対象恒常性の改善は、境界性パーソナリティー障害の作業療法の目的である。治療者が枠組みの中で、いつも同じ態度で接していくことが重要である。ちなみに、対象恒常性とは、対象とする人がいつも変わらずに自分との関係を維持してくれることをいう。

 

 

 

 

 

 

42 注意欠陥/多動性障害患者の作業遂行の特徴で正しいのはどれか。

1.作品の完成度が高い。
2.何度も説明を求める。
3.整理整頓が得意である。
4.時間を守ることに執着する。
5.興味があることに集中する。

解答

解説

注意欠陥多動性障害(ADHD)とは?

注意欠陥多動性障害(ADHD)とは、発達障害の一つであり、脳の発達に偏りが生じ年齢に見合わない①注意欠如、②多動性、③衝動性が見られ、その状態が6ヵ月以上持続したものを指す。その行動によって生活や学業に支障が生じるケースが多い。治療として、①まず、行動療法を行う。②改善しない場合は、中枢神経刺激薬による薬物療法を用いる。中枢を刺激して、注意力・集中力を上げる。※依存・乱用防止のため、徐放薬が用いられる。

1.× 作品の完成度は、高いのではなく「低い」。なぜなら、注意欠如により作品の作成に費やす時間そのものが少ないため。
2.× 一概に何度も説明を求めるとは言えない。注意欠陥多動性障害(ADHD)の場合、人の話を聞かず、作業を進め、再び説明を求めることを繰り返すこともある。何度も同じ説明を求めることはせず、もし嫌な作業であれば衝動的にその場から立ち去ることが多い。
3.× 整理整頓は、得意ではなく「苦手」である。なぜなら、作業中に次の作業と注意が散漫となるため。片づける間もなく次の作業へと移ることが多い。
4.× 時間を守れないことが多い。日常的に忘れ物や落とし物も多く、うっかりミスをして教師に注意される。授業中は周囲の雑音に注意を削がれて勉強に集中できない。
5.〇 正しい。興味があることに集中する。就労の時、もしハイテク機器に興味があれば、仕事に集中できて作業がはかどることにつながるため、積極的に利用するべきである。

 

 

 

 

 

43 てんかんについて正しいのはどれか。

1.全般発作は意識消失をきたさない。
2.脱力発作は全般発作に分類される。
3.Jackson発作では無意識に歩き回る。
4.運転免許の取得は認められていない。
5.熱性けいれんの半数以上はてんかんに移行する。

解答

解説

てんかん発作とは?

てんかん発作は、大脳皮質における神経細胞の異常な興奮によって痙攣などの症状が出現する。発作型を大きく大別すると①部分発作(脳の一部分が過剰興奮して始まる)と、②全般発作(両側大脳半球が同時に過剰放電する)に分けられる。作業療法の場面では、意識消失・けいえん・無目的な行動(自動症)に注意する。

1.× すべての全般発作が意識消失をきたさないとはいえない。全般発作は、特発性全般発作(①強直間代発作、②欠神発作、③ミオクロニー発作)と続発性全般発作(①点頭てんかん、②レノックス症候群)などがみられる。そのうち、①強直間代発作、②欠神発作は意識消失をきたすが、③ミオクロニー発作は意識消失を伴わない。ミオクロニー脱力発作ともいい、突然全身あるいは一部の筋の収縮が起こるもので、意識障害は伴わないのが特徴である。
2.〇 正しい。脱力発作は全般発作に分類される。Lennox-Gastaut症候群(レノックス・ガストー症候群)は、3~5歳で発症し、急に四肢が硬くなり脱力発作が起こる。知的障害を伴う。
3.× 無意識に歩き回る(自動症)のは、Jackson発作(ジャクソン発作)ではなく「複雑部分発作における精神運動発作(側頭葉てんかん)」でみられる。ちなみに、Jackson(ジャクソン)発作とは運動を司る大脳の一部が過剰に興奮することによって手や足が痙攣し、次第に全身の痙攣に発展してゆく発作である。一次運動野(中心前回)に始まったてんかん発作が隣接部位に進展・波及し、手→腕→肩などと痙攣が移動する。
4.× 運転免許の取得は認められている。薬物療法などでてんかん発作が管理できていれば、医師及び所轄の警察の判断により運転免許は取得できる。
5.× 熱性けいれんからてんかんへの移行は、半数以上ではなく「まれ」である。なぜなら、熱性けいれん(数分間のけいれん発作)は、神経学的な異常を全く残さないため。

熱性けいれんとは?

 熱性けいれんとは、発熱時に痙攣発作すること。熱性けいれんは、数分間の痙攣発作であるが、神経学的な異常を全く残さない点が特徴である。つまり、てんかんには移行しない。

幼児が、熱性けいれんを起こしやすいが、次の3条件を満たす場合は、通常7歳以上になると痙攣発作はみられなくなる。
①年齢が6か月~6歳まで
②発熱が38℃以上
③痙攣が20分以内に治まる。

しかし、この3条件を満たさない場合は、てんかんの疑いがあるため、脳波などの検査を受けることが望ましい。

 

 

 

 

 

 

44 精神障害のある人が地域で生活できるように多職種で行う支援はどれか。

1.ACT
2.IPS
3.OJT
4.OSA
5.SST

解答

解説
1.〇 正しい。ACT(Assertive Community Treatment:包括型地域生活支援プログラム)は、精神障害のある人が地域で生活できるように多職種で行う支援である。重い精神障害を抱えた人が住みなれた場所で安心して暮らしていけるように、様々な職種の専門家から構成されるチームが支援を提供するプログラムである。重度の精神障害をもった人が地域社会の中で生活を送ることができるよう精神科医・看護師・精神保健福祉士・作業療法士など多職種が医療チームをつくり、精神障害者が地域で生活できるように365日24時間体制で支援する仕組みである。訪問が支援活動の中心である。
2.× IPS(Individual Placement and Support:個別就労支援プログラム)とは、就労活動支援と職場定着支援を中心とした就労支援モデルである。特徴は、症状の重さに問題せず、本人の好みや意欲に基づき職を選択し、障害者雇用ではなく一般就労を目指すものである。 
3.× OJT(On-the-job-Training:現任訓練職場内訓練)とは、職場での実践を通じて業務知識を身につける育成手法であり、経験豊富な職場の上司や先輩が、実際の業務を題材に若手社員や後輩に知識や技術を計画的に伝えることで、研修やマニュアルだけではなかなか実践につながらない知識・スキルを身につけることができる。
4.× OSA(Occupational Self Assessment:作業に関する自己評価)とは、人間作業モデルの作業に関する自己評価を行うための方法である。質問紙により、患者が現在の自分自身の作業機能状態を評価し、改善したい項目の優先度を記す。これに基づいて、患者が作業療法士と協働して作業機能を高めていくものである。
5.× SST(Social Skills Training:生活技能訓練社会生活技能訓練)とは、認知行動療法に基づいたリハビリテーション技法である。精神に障害を持ったひとが社会で生活していくために、対人関係を良好に維持する技能を身につけ、自信を回復し、ストレス対処や問題解決ができるスキルを習得する目的である。①教示、②モニタリング、③リハーサル、④フィードバック、⑤一般化を行っていく。

IPSとは?

IPSとは、個別の就労活動支援と職場定着支援を中心とした就労支援モデルです。正式名称は「Individual Placement and Support」といい、日本語に訳すと「個別職業紹介とサポート」になります。IPSモデルの理念は、「どんなに重い精神障害を持つ人であっても、本人に働きたいという希望さえあれば、本人の興味、技能、経験に適合する職場で働くことが出来る」「就労そのものが治療的であり、リカバリーの重要な要素となる」という信念に基づいています。

IPSモデルの基本原則
IPSには下記7つの基本原則があります
① 就労支援対象についての除外基準なし
② 短期間、短時間でも企業への就労を目指す
③ 施設内でのトレーニングやアセスメントは最小限とし、迅速に職場開拓(就職活動など)を実施する
④ 就労支援と医療保健の専門家でチームを作る
⑤ 職探しは本人の技能や興味に基づく
⑥ 就労後のサポートは継続的に行う
⑦ 生保や年金など経済的側面の相談、支援も行う

(引用:「IPSモデルとは?」多摩地域IPS就労支援センター様HPより)

 

 

 

 

 

 

45 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(医療観察法)の対象となる行為でないのはどれか。

1.殺人
2.放火
3.傷害
4.自傷
5.強姦

解答

解説

医療観察法とは?

 医療観察法とは、重大な他害行為を行った精神障害者に医療を受けさせ、犯罪の再発を防ぎ社会復帰の促進が目的である。平成15年に制定され、平成17年施行した。「重大な他害行為」とは、①殺人、②放火、③強盗、④強姦、⑤強制わいせつ、⑥傷害の6つである。鑑定入院の後で、裁判官と精神保健審判員からなる合議体(裁判官と精神保健審判員からなる)が処罰の審判を下す。

1~3.5.〇 殺人/放火/傷害/強姦は、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(医療観察法)の対象となる行為である。
4.× 自傷(自傷行為)とは、自分で自分のからだをわざと傷つけることである。医療観察法は、他害行為が対象であるため自傷は含まれない。

 

3 COMMENTS

大川 純一

コメントありがとうございます。
ご指摘どおり間違えておりました。
修正いたしましたのでご確認ください。
今後ともよろしくお願い致します。

返信する

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)