第47回(H24) 理学療法士国家試験 解説【午後問題26~30】

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26 測定値が小さい場合にバランス機能が良好であると判断できるのはどれか。2つ選べ。

1.片足立ち保持時間
2.Functional Reach Test
3.Timed Up and Go Test
4.Cross Test による軌跡長
5.静止立位時の重心動揺面積

解答3/5

解説

1.× 片足立ち保持時間は長いほど、バランス機能は良好である。
2.× Functional Reach Test(ファンクショナルリーチテスト:FRT)は長いほど、バランス機能は良好である。Functional Reach Test(ファンクショナルリーチテスト:FRT)とは、前方へリーチする限界の距離を測定する。
3.〇 正しい。Timed Up and Go Test(TUG)は、測定値が小さい場合にバランス機能が良好であると判断できる。Timed Up and Go Test(TUG)は、椅子から3m離れたところにコーンなどを置き、被検者が椅子から立ち上がりコーンを回って戻り再び椅子に座るまでの時間を測定する。転倒予測(運動器不安定症)のカットオフは、11秒程度である。
4.× Cross Test(クロス テスト)による軌跡長は長いほど、バランス機能は良好である。Cross Test(クロス テスト)とは、床反力計上で身体を随意的に前後左右に動かし、この時の両足の作用点軌跡を計測する。
5.〇 正しい。静止立位時の重心動揺面積は、測定値が小さい場合にバランス機能が良好であると判断できる。重心動揺面積に加え、重力動揺軌跡長の値が小さいほど、立位姿勢が安定していることを示す。

 

 

 

 

 

 

27 40歳の男性。運動療法を実施していたところ、心拍数が120 /分となった。
 安静時心拍数が60/分であった場合のKarvonenの方法による運動強度(%)はどれか。
 ただし、最大心拍数は220-年齢とする。

1.20
2.30
3.40
4.50
5.60

解答4

解説

Karvonenの方法による運動強度の算出

運動強度(%) = (心拍数 - 安静時心拍数)÷(最大心拍数 - 安静時心拍数)×100

最大心拍数を求める。
220 - 40(年齢)
= 180(最大心拍数)

②Karvonenの方法による運動強度を算出する。
(120 - 60) ÷(180 - 60)×100
= 50 (%)

したがって、選択肢4.50が正しい。

 

 

 

 

 

28 椅子に座ろうとして殿部をつく際に、強い衝撃を伴った。
 こうした動作となる本質的な原因として正しいのはどれか。
 ただし、関節可動域自体に制限はないものとする。

1.体幹の前傾が十分でない。
2.足関節の背屈が十分でない。
3.運動初期の体重心の加速が十分でない。
4.大腿四頭筋の求心性筋力の発揮が十分でない。
5.動作中の足圧中心の制御が十分でない。

解答2

解説

1.× 体幹の前傾が十分でない場合は、椅子からの立ち上がりが困難となる。着座に至っては、下肢筋での代償が可能であり、着座スピードはある程度調節可能である。
2.〇 正しい。足関節の背屈が十分でない場合は、着座時に強い衝撃を伴う。なぜなら、足関節背屈筋が不十分であると、着座スピードが調節できないため。関節可動域自体に制限はない中で、足関節の背屈が十分でない場合は、足関節背屈の筋力低下が考えられ、重心が後方に位置する。
3.× 運動初期の体重心の加速が十分でない場合は、着座により時間がかかる。また、運動中期~後期にかけても、体重心の加速が十分でない場合、着座がゆっくりとなる。逆に、体重心の加速が大きいと、強い衝撃が走る恐れがある。
4.× 着座は、大腿四頭筋の「求心性筋力」ではなく遠心性筋力が求められる。したがって、大腿四頭筋は遠心性筋力の発揮が十分でない場合、椅子に座ろうとして殿部をつく際に、強い衝撃を伴う。
5.× 動作中の足圧中心の制御が十分でない場合、動作全体に動揺がみられる。ただし、強い衝撃を伴うまでには至らないと考えられる。なぜなら、動作中の足圧中心の制御が十分でない場合は、足底の感覚障害や失調などが考えられるが、下肢の筋力や視覚からのフィードバックなどの代償により、ある程度着座スピードをコントロールできるため。

 

 

 

 

 

 

29 車椅子で50m移動できるが、敷居の段差を越えるときのみ介助を要する。
 このときのFIMの移動項目の得点はどれか。

1.6点
2.5点
3.4点
4.3点
5.2点

解答3

解説

【車いすのFIMの点数】
6点:50m以上の移動を介助者不要(自立)で可能。
5点:①50m未満15m以上の移動を自立している場合、②50m以上の移動を監視・準備・促しが必要な場合。
4点:50mの移動に最小介助が必要な場合。

したがって、本症例は、敷居の段差を越えるときのみ介助を要する(最小介助)ため、4点となる。したがって、選択肢3.4点が正しい。ちなみに、車椅子自走が15m以下であれば2点以下となる。

FIMの採点方法

「介助者なしの自立レベル」
7 完全自立(時間、安全性を含めて)
6 修正自立(補装具などを使用)

「介助者ありの部分自立レベル」
5 監視や準備だけをすれば可能
4 最少介助(患者自身で75%以上可能)
3 中等度介助(患者自身で50%以上可能)

「完全介助レベル」
2 最大介助(患者自身で25%以上可能)
1 全介助(患者自身で25%未満)

類似問題です↓
【PT専門のみ】FIMについての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

 

30 高齢者の筋力について誤っているのはどれか。

1.筋断面積は経年的に減少する。
2.上肢よりも下肢の筋力低下が大きい。
3.筋力強化によって筋線維の肥大が期待できる。
4.タイプⅡ線維よりもタイプⅠ線維の萎縮が優位である。
5.筋力強化の初期効果は動員される運動単位が増加することによる。

解答4

解説

1.〇 正しい。筋断面積は、経年的に減少する。筋断面積は80歳で、30歳の1/3に減少する。なぜなら、加齢とともに①筋線維の萎縮、②筋線維数の減少するため。
2.〇 正しい。上肢よりも下肢の筋力低下が大きい。なぜなら、高齢者では上肢よりも下肢の方が、日常生活での使用が少ないため。日常生活では上肢を使う動作が多く、上肢の筋力は比較的保たれやすい。
3.〇 正しい。筋力強化によって筋線維の肥大が期待できる。研究により、筋力強化による筋線維の肥大は高齢者でも起こることが報告された。
4.× 逆である。タイプⅠ線維(遅筋線維)よりもタイプⅡ線維(速筋線維)の萎縮が優位である。タイプⅡ線維(速筋線維)の特徴として、短距離型の筋肉で収縮速度は速く、発揮する力は強いが、疲れやすい。日常生活では使うことが少ないため、老化とともに萎縮しやすい。
5.〇 正しい。筋力強化の初期効果は、動員される運動単位が増加することによる。初期における筋力の増加は、中枢神経系の働き(①活動する運動単位の増加や②複数の運動単位の活動との同期化など)によるものが大きい。

類似問題です↓
【PT/共通】骨格筋、筋収縮、運動単位についての問題「まとめ・解説」

 

2 COMMENTS

匿名

コメント失礼します。
問29の解説について質問させていただきます。
「車椅子で50m移動(15m以上)を自立していれば5点である。」との記載がありますが、50m以上の移動を介助者不要で車椅子を使用している際は6点ではないでしょうか。
確かに50m未満15m以上の移動を自立している場合は5点の判定で間違いないと思いますが、問題本文では「車椅子で50m移動できる」との記載があり、50m”以上”はその値を含む意の為、6点かと思います。

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大川 純一

コメントありがとうございます。
ご指摘通り間違えておりました。
修正致しましたのでご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

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