第47回(H24) 理学療法士国家試験 解説【午後問題31~35】

 

31 開胸・開腹術が予定されている場合に、実施する必要性が高い術前リハビリテーションはどれか。

1.咳嗽訓練
2.呼吸介助
3.発声練習
4.体位ドレナージ
5.持続性気道陽圧法(CPAP)

解答1

解説

開胸・開腹術とは?

開胸・開腹術は、心臓や大血管の疾患、 胸腹部のがんに対して行われる。医療者側のメリットとしては、大きい視野で行えること。デメリットは、手術侵襲が大きいことがあげられる。したがって、術後は、創部痛や横隔膜の運動の低下によって痰の排出が困難になり、無気肺や肺炎といった術後合併症を引き起こしやすい。そのため、術前から咳嗽や呼吸訓練を(肺を十分広げる訓練)をする。

1.〇 正しい。咳嗽訓練は、術前リハビリテーションとして優先度が高い。なぜなら、術後の排痰がスムーズに行えるように術前から訓練する必要があるため。術後は、創部痛や横隔膜の運動の低下によって痰の排出が困難になり、無気肺や肺炎といった術後合併症を引き起こしやすい。
2.× 呼吸介助は、術後に行う。呼吸介助とは、介助者が手のひらで患者の胸を包みこむようにし、患者が息を吐くときにタイミングを合わせて
軽く押し、息を吐くことを介助することで肺胞に貯留した痰を排出しやすくする。ちなみに、呼吸介助の1つに、squeezing(スクイージング)がある。squeezing(スクイージング)とは、痰のある胸郭を呼気時に圧迫することにより呼気流速を高め、痰の移動を促進し、反動による吸気時の肺の拡張を促す手技のことを言う。
3.× 発声練習は優先度が低い。なぜなら、開胸・開腹術が予定されている場合に限ったことではないため。発声練習の目的は、発声を通して咳嗽や嚥下障害の改善をはかる
4.× 体位ドレナージは、術後に行う。体位ドレナージは、重力を利用して痰の排出を図る方法である。痰貯留部位が上、気管支が下となる体位をとり、痰を排出する。
5.× 持続性気道陽圧法(Continuous Positive Airway Pressur:CPAP:シーパップ)は、術後に行う。なぜなら、持続性気道陽圧法は、気道内圧を呼吸相全般にわたって常に一定の陽圧に(大気圧よりも高く)保ち、換気は機械的な換気補助なしに患者の自発呼吸にまかせて行う換気様式のことである。機械で圧力をかけた空気を鼻から気道(空気の通り道)に送り込み、気道を広げて睡眠中の無呼吸を防止できる。

 

 

 

 

 

 

32 水面が前胸部の深さのプール内で前方に歩行中、水面から前胸部が受ける力はどれか。

1.静水圧
2.摩擦抵抗
3.粘性抵抗
4.渦抵抗
5.造波抵抗

解答5

解説

1.× 静水圧は、水が静止している状態で働く圧である。浮腫の改善につながる。
2.× 摩擦抵抗は、物体が水中を進むとき、その物体の表面と周囲の水との間に生じる抵抗のこと。
3.× 粘性抵抗は、摩擦抵抗渦抵抗がある。物体が水中を進むとき、水から粘性抵抗を受ける。
4.× 渦抵抗は、物体が水中を進むとき、水中に渦が生じた抵抗のことである。
5.〇 正しい。造波抵抗は、水面が前胸部の深さのプール内で前方に歩行中、水面から前胸部が受ける力である。造波抵抗は、物体の一部が水面に出た状態で進むとき水面には波が生じた抵抗のことである。例えば、船が進むとき波をおこすことによって受ける抵抗のことである。

 

 

 

 

 

 

33 短距離走で下腿の肉離れを起こした患者に対して、受傷現場で優先して行うべき処置として適切なのはどれか。

1.下腿のストレッチ
2.下腿の温湿布
3.鎮痛薬の服用
4.患肢の挙上
5.マッサージ

解答4

解説

RISE処置とは?

R(Rest):安静
I(Ice):冷却
C(Compression):固定
E(Elevatiom):挙上

1.× 下腿のストレッチは優先度が低い。なぜなら、外傷後のストレッチは、断裂した筋(肉離れ)をさらに悪化させるおそれがあるため。下腿のストレッチは、スポーツ外傷の予防に行うものである。
2.× 下腿の温湿布は優先度が低い。なぜなら、温湿布は温める効果があるため。肩こりや腰痛・神経痛など、慢性的な痛みに効果的で、主に、血行の改善を目的としている。
3.× 鎮痛薬の服用は優先度が低い。なぜなら、安静が求められるため。鎮痛薬は痛みを抑え、活動を促すことを目的の1つとしてあげられる。また、受傷現場では、疼痛の他にも、腫脹や発赤、熱感など(炎症4徴候)が認められるため、痛みだけにフォーカスしないことが大切である。
4.〇 正しい。患肢の挙上は、受傷現場で優先して行うべき処置として行う。
5.× マッサージは行わない。なぜなら、内出血や炎症、疼痛をさらに悪化させるおそれがあるため。

 

 

 

 

 

 

34 短期間の固定後に生じた肘伸展制限に対する関節可動域運動で適切でないのはどれか。

1.上腕二頭筋の収縮を利用する。
2.上腕三頭筋の収縮を利用する。
3.前処置として温熱を加える。
4.手関節の可動域運動を行う。
5.短時間に強い伸張を加える。

解答5

解説

1.〇 正しい。上腕二頭筋の収縮を利用する。ホールドリラックス(最大収縮後の弛緩)を行う。
2.〇 正しい。上腕三頭筋の収縮を利用し、純粋に肘関節伸展の主動作筋として関節可動域運動を実施する。
3.〇 正しい。前処置として温熱を加える。軟部組織の伸張と筋緊張を軽減できる。
4.〇 正しい。手関節の可動域運動を行う。なぜなら、肘関節周囲には手関節をまたぐ2関節筋(橈側手根屈筋など)があるため。両方の関節にアプローチする。
5.× 短時間強い伸張を加える必要はない。なぜなら、痛みが発生しやすく防御的収縮が関節可動域拡大の阻害になるため。したがって、痛みが出てもすぐに寛解する程度の強さおよび範囲で、緩徐に、愛護的に行う必要がある。

 

 

 

 

 

 

35 膝関節前十字靱帯再建術後4週の時点に行う患肢の筋力増強訓練として誤っているのはどれか。

1.レッグカール
2.ハーフスクワット
3.バイクエクササイズ
4.大腿四頭筋セッティング
5.大腿部筋群の等運動性収縮訓練

解答5

解説

膝関節前十字靱帯再建術後の理学療法

その施設や病院により、許可されていく運動内容は異なる。また、術後何週になったら何を許可するといった考えがない施設もある。なぜなら、個人個人の膝の状態に最も適したリハビリテーションを行うため。常に膝の状態を見ながら、各段階をクリアしてから次の段階にステップアップする。

ただし、一般的な術後4週は保護期であり、荷重練習を実施していく時期である。関節可動域も拡大していき、安静から運動療法実施へのちょうど切り替わりの時期、靭帯保護のため装具の装着が必要である。訓練内容は、前十字靭帯に負荷がかかる訓練は避けるべきである。脛骨が前方に偏位しないよう気を付ける。

1.〇 正しい。レッグカールは実施可能である。レッグカールとは、腹臥位で肘関節屈曲を行う運動のことである。ハムストリングスの筋力強化となる。術後早期(1W~)から実施できる。
2.〇 正しい。ハーフスクワットは実施可能である。ハーフスクワットは、膝関節30°~90°屈曲位の範囲で行うスクワットのことである。前十字取帯への負担が少なく、大腿四頭筋の筋力強化となる。術後早期(3W~)から実施できる。
3.〇 正しい。バイクエクササイズ(自転車エルゴメーター)は実施可能である。前十字取帯への負担が少なく、大腿四頭筋の筋力強化となる。術後早期(3W~)から実施できる。
4.〇 正しい。大腿四頭筋セッティングは実施可能である。術後翌日から行えることが多い。
5.× 大腿部筋群の等運動性収縮(等速性運動)訓練は行えない。等運動性収縮(等速性運動)訓練は、運動機器(アイソキネティックマシン)を利用する。遠心力がかかることに加え、膝関節伸展筋・屈筋の交互の収縮を繰り返すため靭帯への負担が大きい。したがって、現時点では時期尚早といえる。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)