第46回(H23) 作業療法士国家試験 解説【午前問題6~10】

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6 52歳の女性。関節リウマチ。SteinbrockerのステージⅡ、クラス2。日常生活上での手関節と手指との痛みを訴えている。観察された動作を図に示す。
 関節保護の指導をすべき動作はどれか。2つ選べ。

1.カップを持つ
2.茶碗を持つ
3.ビンの蓋をあける
4.フライバンを持つ
5.ポットでお湯を注ぐ

解答4・5

解説

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

関節保護の原則とは?

関節リウマチ患者に対する日常生活の指導は、関節保護の原則に基づき行う。関節保護の原則とは、疼痛を増強するものは避けること、安静と活動のバランスを考慮すること、人的・物的な環境を整備することがあげられる。変形の進みやすい向きでの荷重がかからないように手を使う諸動作において、手関節や手指への負担が小さくなるように工夫された自助具が求められる。

1.〇 両手でカップを持てている。手指関節への過度な負担が少なく行える。
2.〇 手掌全体で茶碗を持てている。手指関節への過度な負担が少なく行える。
3.〇 手掌全体でビンの蓋をあけている。また、左手でピンを支え、右手で蓋を回す(右手は橈側へ動かす)ため、尺側偏位の助長も少なくて済む。
4.× 図のようなフライバンを持つ動作は関節保護の指導をすべき動作である。なぜなら、手関節の尺側偏位の助長を促しているため。両手鍋や両手でフライパンを使用するよう指導する。
5.× 図のようなポットでお湯を注ぐ動作は関節保護の指導をすべき動作である。なぜなら、手関節の尺側偏位の助長を促しているため。両手鍋や両手でフライパンを使用するよう指導する。ポットは、取っ手が上についているものを使用し、両手掌で把持するように指導する。

Steinbrockerの病気分類

【ステージ分類:リウマチの病期】
ステージⅠ:X線検査で骨・軟骨の破壊がない状態。
ステージⅡ:軟骨が薄くなり、関節の隙間が狭くなっているが骨の破壊はない状態。
ステージⅢ:骨・軟骨に破壊が生じた状態。
ステージⅣ:関節が破壊され、動かなくなってしまった状態。

【クラス分類:機能障害度】
クラスⅠ:健康な方とほぼ同様に不自由なく生活や仕事ができる状態。
クラスⅡ:多少の障害はあるが普通の生活ができる状態。
クラスⅢ:身の回りのことは何とかできるが、外出時などには介助が必要な状態。
クラスⅣ:ほとんど寝たきりあるいは車椅子生活で、身の回りのことが自分ではほとんどできない状態。

類似問題はこちら↓

【OT専門のみ】関節リウマチについての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

 

7 56歳の男性。大工で上肢をよく使用する。3年前から左手の感覚障害と筋力低下とを自覚していた。左手の写真を下図に示す。
 必要な装具はどれか。

1.短対立装具
2.虫様筋カフ
3.肘関節装具
4.フィラデルフィアカラー
5.コックアップ・スプリント

解答

解説

本症例のポイント

写真から、環指・小指の①MP関節伸展制限、②PIP・DIP関節屈曲位である。したがって、尺骨神経麻痺であることが分かる。

1.× 短対立装具は、正中神経麻痺低位型に適応である。母指を対立位に保持し、第1・第2中手骨の間を一定に保つ。
2.〇 正しい。虫様筋カフは必要な装具である。虫様筋カフは、尺骨神経麻痺で生じる鷲手に適応となる。指の基節骨の背側に装着し、MP関節の伸展を防止する。
3.× 肘関節装具は、①肘関節の拘縮、②骨折や関節不安定性の治療、③関節炎の治療などに用いられる。
4.× フィラデルフィアカラーは頸椎装具である。下顎から頚部・肩までの固定により前後屈および側屈、回旋を制限するが、固定力は弱く、重さの支持も弱い。頚椎術後、頚髄損傷などで用いられる。
5.× コックアップ・スプリント(手背屈装具)は、橈骨神経麻痺で適応となる。手関節を軽度背屈位にして、安定保持を目的とした装具である。

 

 

 

 

 

8 頸髄損傷患者。握力は測定不能で、ごく軽い物品は図Aのように把持できる。図Bのように肩関節外転を伴って、前腕を回内することができる。「顔にかかった掛け布団を払いのけることができない」と訴える。
 この患者の車椅子使用で正しいのはどれか。

1.フットサポートに手を届かせる方法はない。
2.車椅子上での殿部の除圧は自力ではできない。
3.車椅子前進駆動のために上腕三頭筋を用いる。
4.ADL自立のためには電動車椅子が必須である。
5.適度な摩擦が得られればノブ付きハンドリムは不要である。

解答

解説

Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979

本症例のポイント

・頸髄損傷患者。
・握力は測定不能(ごく軽い物品はテノデーシスアクションで把持できる。)
・肩関節外転を伴って、前腕を回内することができる。
・顔にかかった掛け布団を払いのけることができない。
→C6残存機能レベルの頸髄損傷患者である。

1.× フットサポートに手を届かせる方法として「車椅子の押し手に手関節をロックさせることで、体幹を固定し、反対側の上肢でフットサポートに手を届かせる方法」がある。
2.× 車椅子上での殿部の除圧をする方法として、「車椅子の押し手に肘を引っかけ上腕をロックさせ、体幹を側屈させ除圧する方法」がある。
3.× 車椅子前進駆動のために、上腕三頭筋を用いる必要はない。本症例は、そもそも上腕三頭筋の発揮を見込めない。車いす用グローブの利用などにて適度な摩擦が得られれば肩関節の動きを利用して駆動することが可能である。
4.× ADL自立のための電動車椅子は必須とはいえない。なぜなら、電動車椅子適応はC5までであるため。C6レベルでは車椅子を自走することが可能である。
5.〇 正しい。適度な摩擦が得られればノブ付きハンドリムは不要である。車いす用グローブの利用などにて適度な摩擦が得られれば肩関節の動きを利用して駆動することが可能である。ちなみに、ハンドリムのノブは握りの弱さを補うためのものである。

(画像引用:松永製作所様HP〜ノブ付きハンドリム〜)

 

 

 

 

 

 

次の文により9、10の問いに答えよ。
 62歳の女性。脳梗塞発症後3日目。早期の離床とADL獲得を目標に作業療法が開始された。初回の訪室時、目を閉じていたが呼びかけると開眼した。発語は聞き取れるが内容に一貫性がみられない。運動の指示に応じた動きは見られず、四肢は屈曲する傾向がある。

9 このときのGCS(Glasgow Coma Scale)はどれか。

1.E4V3M4
2.E4V4M5
3.E3V3M4
4.E3V4M3
5.E3V5M5

解答

解説

本症例のポイント

E3:目を閉じていたが呼びかけると開眼した。
V3:発語は聞き取れるが内容に一貫性がみられない。
M4:運動の指示に応じた動きは見られず、四肢は屈曲する。

1〜2.× E4V3M4/E4V4M5ではない。なぜなら、E4:自発的に開眼している状態であるため。
3.〇 正しい。E3V3M4があてはまる。
4〜5.× E3V4M3/E3V5M5ではない。なぜなら、V4:混乱した会話であり、V5:見当識がある状態であるため。

参考にどうぞ↓

【暗記用】意識障害の評価(JCS・GCS)を完璧に覚えよう!

 

 

 

 

 

 

次の文により9、10の問いに答えよ。
 62歳の女性。脳梗塞発症後3日目。早期の離床とADL獲得を目標に作業療法が開始された。初回の訪室時、目を閉じていたが呼びかけると開眼した。発語は聞き取れるが内容に一貫性がみられない。運動の指示に応じた動きは見られず、四肢は屈曲する傾向がある。

10 バイタルサインは、体温37.1℃、脈拍98/分、不整脈は認めず、血圧140/98mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)は98%であった。問いかけへの返答があいまいで自覚症状を十分に聴取できなかったため、主治医に確認した上で、リハビリテーションの中止基準(日本リハビリテーション医学会による)を遵守することを前提に離床させることとなった。
作業療法開始後、中止する必要があるのはどれか。2つ選べ。

1.脈拍が140/分を超えたとき
2.不整脈が出現したとき
3.拡張期血圧が110mmHgとなったとき
4.収縮期血圧が170mmHgとなったとき
5.SpO2が95%になったとき

解答1・2

解説
1.〇 正しい。脈拍が140/分を超えたときは、作業療法を中止する必要がある。途中でリハを中止する場合の[2]に該当する。
2.〇 正しい。不整脈が出現したときは、作業療法を中止する必要がある。積極的なリハを実施しない場合の[7]に該当する。
3〜4.× 拡張期血圧が110mmHg/収縮期血圧が170mmHgとなったときでもそのまま作業療法を実施できる。途中でリハを中止する場合は、[3]運動時収縮期血圧が 40mmHg 以上,または拡張期血圧が 20mmHg 以上上昇した場合である。本症例の安静時の血圧は、血圧140/98mmHgであり、収縮期血圧30mmHgの上昇拡張期血圧12mmHgの上昇が認められている。
5.× SpO2が95%になったときでもそのまま作業療法を実施できる。積極的なリハを実施しない場合は、[12]安静時酸素飽和度(SpO2)90%以下である。本症例のSpO2は98%である。運動中のSpO2の明確な設定は設けられていない。

リハビリテーションの中止基準

1. 積極的なリハを実施しない場合
[1] 安静時脈拍 40/分以下または 120/分以上
[2] 安静時収縮期血圧 70mmHg 以下または 200mmHg 以上
[3] 安静時拡張期血圧 120mmHg 以上
[4] 労作性狭心症の方
[5] 心房細動のある方で著しい徐脈または頻脈がある場合
[6] 心筋梗塞発症直後で循環動態が不良な場合
[7] 著しい不整脈がある場合
[8] 安静時胸痛がある場合
[9] リハ実施前にすでに動悸・息切れ・胸痛のある場合
[10] 座位でめまい,冷や汗,嘔気などがある場合
[11] 安静時体温が 38 度以上
[12] 安静時酸素飽和度(SpO2)90%以下

2. 途中でリハを中止する場合
[1] 中等度以上の呼吸困難,めまい,嘔気,狭心痛,頭痛,強い疲労感などが出現した場合
[2] 脈拍が 140/分を超えた場合
[3] 運動時収縮期血圧が 40mmHg 以上,または拡張期血圧が 20mmHg 以上上昇した場合
[4] 頻呼吸(30 回/分以上),息切れが出現した場合
[5] 運動により不整脈が増加した場合
[6] 徐脈が出現した場合
[7] 意識状態の悪化

3. いったんリハを中止し,回復を待って再開
[1] 脈拍数が運動前の 30%を超えた場合。ただし,2 分間の安静で 10%以下に戻らないときは以後のリハを中止するか,または極めて軽労作のものに切り替える
[2] 脈拍が 120/分を越えた場合
[3] 1 分間 10 回以上の期外収縮が出現した場合
[4] 軽い動悸,息切れが出現した場合

 

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