第46回(H23) 作業療法士国家試験 解説【午前問題11~15】

 

11 56歳の女性。脳梗塞による左片麻痺。Brunnstrom法ステージは左上肢Ⅲ、左手指Ⅲ、左下肢V。
 この患者で実用的にできる動作はどれか。

解答

解説

1.× タオルでの背中洗いは、上肢Ⅲでは難しい。なぜなら、肩関節の90°以上の屈曲と分離動作が要求されるため。
2.〇 正しい。上衣操作は、実用的にできる動作である。上衣を着る時は患側から通すことで、本症例(左上肢Ⅲ、左手指Ⅲ、左下肢V)でも行える。
3.× 下衣操作は、上肢Ⅲ・手指Ⅲでは難しい。なぜなら、肩関節伸展と社会の窓のチャックやボタン閉めの分離動作が要求されるため。
4~5.× 食事動作/飲水動作は、手指Ⅲでは難しい。茶碗を持てるにはステージⅤ以上が必要である。

 

 

 

 

 

 

12 20歳の男性。Duchenne型筋ジストロフィーのステージ7(厚生省筋萎縮症研究班の機能障害度分類による)。両上肢筋力は肩関節2-、肘関節2-、手関節2、手指3。握力は測定不能だが、右手を利き手として使っている。体幹筋力1。自力端座位は困難だが、車椅子では体幹サポートがあるため座位保持が可能で、右手でジョイスティックを用いて自操している。この患者がコップで飲水する動作を下図に示す。
 コップを持ち上げる動作の説明で正しいのはどれか。

1.対称性緊張性頸反射
2.前腕を支点としたてこ
3.体幹前屈による慣性運動
4.コップの重さによる感覚フィードバック
5.上肢の屈曲-回内-内旋による神経筋促通

解答

解説

本症例のポイント

・20歳の男性(Duchenne型筋ジストロフィー)
・ステージ7:這うことはできないが、自力で坐位保持可能。

1.× 対称性緊張性頸反射(STNR)はみられない。対称性緊張性頸反射(STNR)は、腹臥位(水平抱き)で頭部を伸展させると、頸部筋の固有感覚受容器の反応により、上肢は伸展、下肢は屈曲し、頭部を屈曲させると逆に上肢は屈曲、下肢は伸展する。4~6 ヵ月に出現、8~12ヵ月までに消失する。主に、脳性麻痺などの中枢神経の疾患でみられ、筋疾患である筋ジストロフィーではみられにくい。
2.〇 正しい。前腕を支点としたてこをコップを持ち上げる動作で用いている。ちなみに、てこは3種類あり、第1:荷重点 (作用点)と力点の間に支点がある(例:シーソー、ハサミ)。第2:支点と力点の間に荷重点(作用点) がある(例:栓抜き、ボートのオール)。第3:支点と荷重点(作用点)の間に力点がある(例:ピンセット、トング)。
3.× 体幹前屈による慣性運動はみられない。慣性運動とは、力を加えない限り、静止している物体はそのまま止まり続け、動いている物体はその速度を保ったまま同じ速さでまっすぐ進み続けるという物理的な性質を表した法則である。
4.× コップの重さによる感覚フィードバックは、コップを持ち上げる動作の説明としては当てはまらない。内部モデルの形成には、感覚フィードバック(内在的フィードバック)が必要である。内部モデルとは、運動に見合った運動指令を出力するシステムのことである。つまり、運動学習が必要不可欠となり、そのためには感覚フィードバック(内在的フィードバック)が必要になる。
5.× 上肢の屈曲-回内-内旋による神経筋促通はあまり一般的ではない。なぜなら、上肢の屈曲による神経筋促通パターンは屈曲-回外-外旋であるため。したがって、屈曲-回内-内旋の一連の動作が神経筋促通より行えているとは考えられない。

厚生省「筋萎縮症」対策研究会による障害段階分類

ステージ1 歩行可能 介助なく階段昇降可能(手すりも用いない)
ステージ2 階段昇降に介助(手すり、手による膝おさえなど)を必要とする
ステージ3 階段昇降不能 平地歩行可能 通常の高さのイスからの立ち上がり可能
ステージ4 歩行可能 イスからの立ち上がり不能
ステージ5 歩行不能 四つ這い可能
ステージ6 四つ這い不能だが、いざり移動可能
ステージ7 這うことはできないが、自力で坐位保持可能
ステージ8 ベッドに寝たままで体動不能 全介助

 

 

 

 

 

 

13 70歳の女性。上腕骨近位端骨折後の肩関節拘縮に対して作業療法を開始した。訓練の翌日に「昨夜は肩が痛くて眠れませんでした」と訴えた。
 作業療法士の対応で共感的態度はどれか。

1.「私の治療法が悪かったとお考えなのですか」
2.「肩の炎症が痛みの原因であると考えられますね」
3.「昨日が訓練の初日だったから痛かったのでしょう」
4.「痛みで眠れないということは大変つらかったでしょうね」
5.「痛み止めの薬を出してもらえるよう医師に相談しますね」

解答

解説

共感とは?

共感とは、「それはさぞ心配でしょう」など患者の感情についての理解を伝えることである。感情とは、ヒトなどの動物がものごとや対象に対して抱く気持ちのことで、喜び、悲しみ、怒り、諦め、驚き、嫌悪、恐怖などがある。

1.× 「私の治療法が悪かったとお考えなのですか」は、共感というより逆質問した返しである。患者の言葉を自分への非難と受け取っており、患者に対して敵意のある言葉を返している。
2.× 「肩の炎症が痛みの原因であると考えられますね」は、共感というより断定した返しである。患者の不安に対する共感的程度ではない。
3.× 「昨日が訓練の初日だったから痛かったのでしょう」は、共感というより解釈した返しである。患者の不安に対する共感的程度ではない。
4.〇 正しい。「痛みで眠れないということは大変つらかったでしょうね」は、共感的態度である。「昨夜は肩が痛くて眠れませんでした」という事実に対し、不安の共有をし、相手の境遇を理解している。
5.× 「痛み止めの薬を出してもらえるよう医師に相談しますね」は、共感というより解決的な返しである。患者によっては、作業療法士から見放されたと考える可能性もある。

 

 

 

 

 

 

次の文により14、15の問いに答えよ。
 50歳の男性。アルコール依存症。30歳代後半から仕事上のストレスで飲酒量が増えた。遅刻や欠勤を繰り返し、2年前にリストラされてからは昼夜を問わず連続飲酒の状態となった。妻に付き添われて精神科を受診し、アルコール専門病棟へ入院した。入院後2週経過し、離脱症状が落ち着いたため作業療法が開始された。

14 この患者の導入期評価で優先度が高いのはどれか。

1.認知機能
2.作業能力
3.金銭管理
4.基礎体力
5.対人関係

解答

解説

本症例のポイント

・50歳の男性(アルコール依存症)
・入院後2週経過し、離脱症状が落ち着いたため作業療法が開始。
→アルコール依存症の初期治療では、身体的治療・離脱症状の管理と治療が行われる。これらの治療が終わった後は、生活リズムをつくることや、体力作りが作業療法の中心となる。その後は、心理教育、内省などによって治療への動機づけを行いながら、仲間づくりや断酒会などの自助グループへの参加、生活設計の立て直しを行っていく。

アルコール依存症とは、少量の飲酒でも、自分の意志では止めることができず、連続飲酒状態のことである。常にアルコールに酔った状態でないとすまなくなり、飲み始めると自分の意志で止めることができない状態である。

【合併しやすい病状】
①離脱症状
②アルコール幻覚症
③アルコール性妄想障害(アルコール性嫉妬妄想)
④健忘症候群(Korsakoff症候群)
⑤児遺性・遅発性精神病性障害 など

1.× 認知機能は優先度が低い。なぜなら、本症例は離脱症状が落ち着いているため。ちなみに、離脱症状が遷延した場合は、アルコール性の健忘症候群に移行する可能性がある。
2.× 作業能力は優先度が低い。なぜなら、回復期での評価であるため。
3.5.× 金銭管理/対人関係は優先度が低い。なぜなら、回復期の後期(退院に向けての社会復帰期)での評価であるため。現時点での実施は負担が大きい。
4.〇 正しい。基礎体力は、この患者の導入期評価で優先度が高い。なぜなら、アルコール依存症では、入院前は一般に過度のアルコール摂取に伴って低栄養状態であることが多いため。

 

 

 

 

 

 

次の文により14、15の問いに答えよ。
 50歳の男性。アルコール依存症。30歳代後半から仕事上のストレスで飲酒量が増えた。遅刻や欠勤を繰り返し、2年前にリストラされてからは昼夜を問わず連続飲酒の状態となった。妻に付き添われて精神科を受診し、アルコール専門病棟へ入院した。入院後2週経過し、離脱症状が落ち着いたため作業療法が開始された。

15 回復期の作業療法で適切でないのはどれか。

1.家族同伴の心理教育を行う。
2.集団内の仲間意識を育てる。
3.自助グループへの参加を促す。
4.医療機関の利用終了を目指す。
5.退院後の生活について助言する。

解答

解説

アルコール依存症の治療

 アルコール依存症の集団精神療法では、自己の飲酒問題を認め、断酒の継続を行うことが治療上極めて有効である。自助グループ(セルフヘルプグループ、当事者グループ)に、同じ問題や悩みを抱える者同士が集まり、自分の苦しみを訴えたり、仲間の体験談を聞いたりすることで問題を乗り越える力を養っていく。断酒継続のための自助グループ(当事者グループ)としてよく知られているものに、断酒会とAA(Alcoholics Anonymous:アルコール依存症者匿名の会)がある。断酒会は日本独自のもので、参加者は実名を名乗り、家族の参加も可能である。AAはアメリカで始まり、世界各地にある。匿名で参加し、家族は原則として同席しない。

1.〇 家族同伴の心理教育を行う。家族心理教育を行うことで再発率が低下する。家族心理教育とは、家族が病気を正しく理解し、適切な対応や望ましい接し方を身につけることを目的とする。病気による行動特性を理解し、症状に対する適切な対応と接し方を学ぶことができ、治療効果の増進・再発防止にもつながる。
2.〇 集団内の仲間意識を育てる。同じ悩みを抱える仲間と活動することで、信頼関係をつくり、励ましあうことができる集団内の仲間意識はアルコール依存症に回復には欠かせない。
3.〇 自助グループへの参加を促す。回復期から自助グループへの参加を促すことで、退院後も自発的に自助グループに通うことができる可能性が高い。ちなみに、自助グループとは、患者たちが自主的に運営するグループのことである。
4.× 医療機関の利用終了を目指す必要はない。なぜなら、退院後も断酒や服薬の維持、定期的な指導を継続することが多いため。つまり通院は必要である。
5.〇 退院後の生活について助言する。なぜなら、退院後の生活が入院前と同じ環境であると断酒が難しいため。助言の内容として、①歓送迎会での参加は控える。②酒屋の前を歩かないなど。

 

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