第46回(H23) 理学療法士国家試験 解説【午後問題31~35】

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31.スポーツ外傷と筋力訓練の目標とすべき筋との組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

1.肩鎖関節脱臼:上腕二頭筋
2.肩関節前方脱臼:肩甲下筋
3.肘関節尺側側副靱帯損傷:尺側手根伸筋
4.膝関節内側膝蓋大腿靱帯損傷:大腿四頭筋
5.足関節前距腓靱帯損傷:後脛骨筋

解答2/4

解説
1.× 肩鎖関節脱臼は、「上腕二頭筋」ではなく三角筋・僧帽筋・肩甲挙筋を強化する。なぜなら、肩甲骨の下方変位を防ぐため。ちなみに、肩鎖関節脱臼は、肩峰が下方に、相対的に鎖骨遠位端が上方に脱臼した状態である。
2.〇 正しい。肩関節前方脱臼は、肩甲下筋を強化する。なぜなら、肩関節前方脱臼は、肩関節に外転外旋力が強く働く場合に起こるため。したがって、肩甲下筋の他にも、肩関節内転筋(棘下筋や上腕二頭筋、烏口腕筋)、肩関節内旋筋(大円筋)を強化する。ただし、臨床では、肩関節内旋筋を主に鍛えることはあまり行わないことが多く、回旋筋トレーニングとしてバランスを見ながら行うことが多い。
3.× 肘関節尺側側副靱帯損傷は、「尺側手根伸筋」ではなく「上腕骨内側上を起始とする手関節屈筋群」である。主に、橈側・尺側手根屈筋、長掌筋などである。
4.〇 正しい。膝関節内側膝蓋大腿靱帯損傷は、大腿四頭筋を強化する。膝関節内側膝蓋大腿靱帯損傷とは、基本的には膝蓋骨が外側へ脱臼した際に損傷する。膝蓋骨の脱臼は膝が軽度曲がった状態から膝が内側に入った状態(knee-in)で、膝を伸ばす筋肉(大腿四頭筋)に力が入った際に起こる。内側靭帯の損傷により膝蓋骨は外側へ変位するため、特に内側広筋の増強が必要である。
5.× 足関節前距腓靱帯損傷は、「後脛骨筋」ではなく長・短腓骨筋を強化する。ちなみに、前距腓靱帯は足関節の外側に付着し、内がえし方向の捻挫を防いでいる。したがって、外返しに働く筋群を強化することで、足関節内反傾向を回避することができる。

 

 

 

 

 

 

32.急激に大きな力が働くことによって起こるスポーツ外傷はどれか。

1.野球肩
2.投球骨折
3.テニス肘
4.ジャンパー膝
5.脛骨疲労骨折

解答2

解説
1.× 野球肩は、反復した投球動作によって起こる。使いすぎ障害として徐々に発症する場合が多い。滑液包炎、棘上筋腱炎、上腕二頭筋腱炎、肩甲上神経麻痺による棘下筋萎縮、インピンジメント症候群、上腕骨骨端線障害(リトルリーグ肩)など多くが含まれる。
2.〇 正しい。投球骨折は、投球時に上腕骨近位と遠位で逆向きの外力が急激に加わったことにより生じる螺旋骨折である。
3.× テニス肘は、反復したストローク動作によって起こる。一般的には、上腕骨外側上顆炎を指すことが多いが、臨床的には外側型と内側型がある。外側型はバックハンドによって上腕骨外側上顆に、内側型はフォアハンド、サーブによって上腕骨内側上顆に疼痛が出現する。
4.× ジャンパー膝(膝蓋靭帯炎)は、反復したジャンプ動作によって起こる。バレーボール・バスケットボールの選手などに多く発症し、膝蓋骨遠位部に圧痛を認める。
5.× 脛骨疲労骨折は、通常では骨折しない程度の外力が加わり続けることによって起こる。

 

 

 

 

 

33.関節リウマチ患者の関節保護の方法で誤っているのはどれか。

1.レバーによる蛇口の開閉
2.両手を使用した茶碗の把持
3.手掌部による車椅子のブレーキ操作
4.食事の際の頸部前屈によるリーチ代償
5.補高マットを利用した椅子からの立ち上がり

解答4

解説

関節保護の原則とは?

関節リウマチ患者に対する日常生活の指導は、関節保護の原則に基づき行う。関節保護の原則とは、疼痛を増強するものは避けること、安静と活動のバランスを考慮すること、人的・物的な環境を整備することがあげられる。変形の進みやすい向きでの荷重がかからないように手を使う諸動作において、手関節や手指への負担が小さくなるように工夫された自助具が求められる。

1〜3.〇 正しい。レバーによる蛇口の開閉/両手を使用した茶碗の把持/手掌部による車椅子のブレーキ操作は、関節リウマチ患者の関節保護の方法である。手を使う諸動作において、手関節や手指への負担が小さくなるように、工夫された自助具や握らなくてもいいように指導することが求められる。
4.× 食事の際の頸部前屈によるリーチ代償は控えたほうが良い。なぜなら、環軸椎亜脱臼を誘発するため。
5.〇 補高マットを利用した椅子からの立ち上がりは、関節リウマチ患者の関節保護の方法である。なぜなら、補高マットを利用することで、椅子を高くすることができる。したがって、股・膝・足関節への負荷を軽減することができる。

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

 

34.Zancolliの四肢麻痺上肢機能分類C6B3で機能しないのはどれか。

1.円回内筋
2.上腕二頭筋
3.尺側手根伸筋
4.橈側手根屈筋
5.長橈側手根伸筋

解答3

解説


1.〇 円回内筋はC6B2で機能する。
2.〇 上腕二頭筋はC5Aで機能する。
3.× 尺側手根伸筋はC6B3で機能しない。C7で機能する。
4.〇 橈側手根屈筋はC6B3で機能する。
5.〇 長橈側手根伸筋はC6Aで機能する。

 

 

 

 

 

 

35.脊髄損傷の機能残存レベルと知覚障害との組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。(不適切問題:解なし)

1.T5:乳頭以下の痛覚脱失
2.T10:剣状突起以下の痛覚脱失
3.T12:臍部以下の痛覚脱失
4.L2:鼠径部以下の痛覚脱失
5.S2:会陰部サドル型痛覚脱失

解答 なし(採点除外)
理由:選択肢に誤りがあり正解が得られないため。

解説

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」より)

1.× 乳頭以下の痛覚脱失は、「T5」ではなくT4である。
2.× 剣状突起以下の痛覚脱失は、「T10」ではなくT5である。ちなみに、T10では臍レベルである。
3.× 臍部以下の痛覚脱失は、「T12」ではなくT10である。ちなみに、T12は鼠径部レベルである。
4.× 鼠径部以下の痛覚脱失は、「L2」ではなくT12である。ちなみに、L2は大腿部レベルである。
5.× 会陰部サドル型痛覚脱失は、「S2」ではなくS3である。ちなみに、S2は大腿後面レベルである。

 

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