第46回(H23) 理学療法士国家試験 解説【午後問題26~30】

 

26.脳卒中患者の症状と障害との組合せで誤っているのはどれか。

1.知っている人なのに声を聞かないとわからない。:相貌失認
2.閉眼と挺舌の動作を同時にできない。:運動維持困難
3.移動時、左側の物によくぶつかる。:左半側空間無視
4.指示による敬礼のまねができない。:観念失行
5.上着の左右を間違えて袖を通す。:着衣失行

解答4

解説
1.〇 相貌失認(知っている人なのに声を聞かないとわからない状態)は、右後頭葉の視覚前野から側頭葉の側頭連合野にかけて(腹側視覚路)の障害で生じる。
2.〇 運動維持困難(閉眼と挺舌の動作を同時にできない状態)は、一つ一つの動作は可能であるが、それを継続できない状態のことである。運動維持困難の障害病巣は右前頭葉、右頭頂葉と言われている。また、前頭葉、側頭葉、頭頂葉を含む中大脳動脈領域の病変に起こりやすい。
3.〇 左半側空間無視(移動時、左側の物によくぶつかる状態)は、劣位半球の側頭葉の障害でみられる。
4.× 指示による敬礼のまねができない状態は、観念失行ではなく観念運動失行である。角回の障害で出現する。ちなみに、観念失行は物の使い方や順序が分からなくなる病態をさす。
5.〇 着衣失行(上着の左右を間違えて袖を通す状態)は、右の頭頂葉後方の障害で起こることが多い。

失行

観念失行:使用すべき対象物(道具・物品)の使用障害である。
観念運動失行:習慣的な動作を言語命令に従ったり、模倣で遂行することができない状態である。

 

 

 

 

 

 

27.脳卒中後の肩手症候群について正しいのはどれか。

1.体温上昇を伴う。
2.脳卒中発症直後から生じる。
3.重度の片麻痺で多くみられる。
4.患側手背に限局した疼痛を認める。
5.早期には上肢全体に高度な浮腫を認める。

解答3

解説

肩手症候群とは?

肩手症候群は、複合性局所疼痛症候群(CRPS)の1つと考えられており、脳卒中後片麻痺に合併することが多い。他にも骨折や心臓発作などが誘因となる。症状は、肩の灼熱性疼痛と運動制限、腫脹などを来す。それら症状は、自律神経障害によるものであると考えられている。

第1期:症状が強い時期。
第2期:痛みや腫脹が消失し、皮膚や手の萎縮が著明になる時期。
第3期:手指の拘縮と骨粗懸症が著明になる時期の経過をとる。

治療目的は、①疼痛緩和、②拘縮予防・軽減である。
治療は、①星状神経節ブロック、②ステロイド治療、③アームスリング装着を行う。
リハビリは、①温熱療法、②マッサージ、③関節可動域訓練(自動他動運動)、④巧級動作練習を行う。
『脳卒中治療ガイドライン2009』では、「麻痺の疼痛・可動域制限に対し、可動域訓練は推奨される(グレードB:行うよう勧められる)」としている。

1.× 体温上昇を伴わない。局所の熱感を生じる。
2.× 脳卒中発症「直後」ではなく「3日〜6ヵ月」から生じる。ただし、ほとんどが脳卒中後「2週間〜3ヵ月」までに発症する。
3.〇 正しい。重度の片麻痺で多くみられる。ブルンストローム法ステージ上肢Ⅲ以下で起こりやすい。
4.× 疼痛は、「患側手背に限局した」ものではなく、手部にとどまらず肩・上肢全体にみられる。疼痛だけではなく灼熱痛も同様である。
5.× 早期には、上肢全体には「浮腫」ではなく「疼痛運動制限」を認める。早期の手部の症状として、腫脹や灼熱痛、骨萎縮などがある。

 

 

 

 

 

 

28.Parkinson病に対する包括的な評価指標であるUPDRS(Unified Parkinson’s Disease Rating Scale)の説明で正しいのはどれか。

1.ICFの構成要素に準じている。
2.疲労に関する項目が含まれる。
3.薬物の効果判定には使用しにくい。
4.簡便な指標のため3分以内で判定できる。
5.状態の良い時間帯と悪い時間帯で評価する。

解答5

解説

 パーキンソン病統一スケール(Unified Parkin-son’s Disease Rating Scale:UPDRS)は、1987年にパーキンソン病の方の病態把握のための評価尺度としてFahnらにより開発された。評価項目はⅣ部に分けられ、Ⅰ部:認知・情動状態(知的機能)、Ⅱ部:ADL(歩行)、Ⅲ部:運動機能(姿勢)、Ⅳ部:薬剤の副作用の項目(ジスキネジア)を評価する。全42項目を0~4の5段階で行い、評価尺度は順序尺度である。

1.× ICFの構成要素に準じているものではない。パーキンソン病統一スケール(Unified Parkin-son’s Disease Rating Scale:UPDRS)の評価項目は、Ⅳ部に分けられ、Ⅰ部:認知・情動状態(知的機能)、Ⅱ部:ADL(歩行)、Ⅲ部:運動機能(姿勢)、Ⅳ部:薬剤の副作用の項目(ジスキネジア)を評価する。一方で、ICF(国際生活機能分類)は、「生活機能と障害 (3つ)」、 「背景因子 (2つ)」の2つの部門がある。
2.× 疲労に関する項目が含まれない。パーキンソン病統一スケール(Unified Parkin-son’s Disease Rating Scale:UPDRS)の評価項目は、Ⅳ部に分けられ、Ⅰ部:認知・情動状態(知的機能)、Ⅱ部:ADL(歩行)、Ⅲ部:運動機能(姿勢)、Ⅳ部:薬剤の副作用の項目(ジスキネジア)を評価する。
3.× 薬物の効果判定に使用しやすい。なぜなら、評価項目に、Ⅳ部:薬剤の副作用の項目が含まれているため。その中には、治療薬による合併症やon-off現象の日内変動に関する項目もある。
4.× 「簡便な指標のため3分以内で判定できる」ものではなく、評価時間は30分程度かかる。
5.〇 正しい。状態の良い時間帯悪い時間帯で評価する。Ⅱ部「日常生活動作」は、on時とoff時で分けて評価することとなっている。

 

 

 

 

 

 

29.筋萎縮性側索硬化症患者の球症状に対するプログラムとして適切でないのはどれか。

1.呼吸訓練
2.食物形態の指導
3.舌筋の抵抗運動
4.食事姿勢の指導
5.コミュニケーション手段の獲得

解答3

解説

”筋萎縮性側索硬化症とは?”
 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋委縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

1.5.〇 呼吸訓練/コミュニケーション手段の獲得を実施する。球症状とは、延髄にある神経核が障害された状態を指す。舌咽・迷走・舌下神経が障害されるため、嚥下・構音障害・舌萎縮・線維束性攣縮などがみられる。このためコミュニケーション、呼吸、嚥下の訓練が必要となる。
2.4.〇 食物形態の指導/食事姿勢の指導を実施する。なぜなら、嚥下障害に対して、誤嚥の予防が必要であるため。
3.× 舌筋の抵抗運動を実施する優先度は低い。なぜなら、球症状として舌の弛緩性麻痺および萎縮がおこるため。ちなみに、舌の萎縮の予防として、舌自動運動により唾液の分泌促進を促したり、舌のストレッチ運動を行う。

球症状とは?

球症状とは、延髄にある神経核が障害された状態を指す。舌咽・迷走・舌下神経が障害されるため、嚥下・構音障害・舌萎縮・線維束性攣縮などがみられる。このためコミュニケーション、呼吸、嚥下の訓練が必要となる。

 

 

 

 

 

 

30.疾患と徴候との組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

1.腱板断裂:drop arm sign
2.手根管症候群:Froment sign
3.大腿四頭筋麻痺:Trendelenburg sign
4.膝関節内側側副靱帯損傷:anterior drawer sign
5.アキレス腱断裂:Thompson sign

解答1/5

解説
1.〇 正しい。腱板断裂の場合、drop arm signは陽性となる。方法は、座位で被験者の肩関節を90°より大きく外転させ、検者は手を離す。
2.× Froment sign(フローマン サイン)の陽性は、手根管症候群(正中神経麻痺)ではなく、尺骨神経麻痺を疑う。ちなみに、正中神経麻痺は、涙のしずくサイン(母指と示指の屈曲が障害され、指尖つまみが困難)がみられる。
3.× Trendelenburg signは、大腿四頭筋麻痺ではなく中殿筋が筋力低下で生じる。ちなみに、大腿四頭筋麻痺だと、反張膝が見られやすい。
4.× anterior drawer sign(前方引き出しサイン)は、膝関節内側側副靱帯損傷ではなく前十字靭帯損傷で生じる。ちなみに、膝関節内側側副靱帯損傷は、主に外反動揺性テストを用いる。
5.〇 正しい。アキレス腱断裂の場合、Thompson sign(トンプソン サイン)は陽性となる。被検者の腓腹筋を検者がつまみ、足関節底屈するかどうかをみる検査である。

 

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