第46回(H23) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午後問題86~90】

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86.腰椎椎間板ヘルニアについて正しいのはどれか。

1.椎間板の前側方突出が多い。
2.第3・4腰椎間で最も多く発生する。
3.第3・4腰椎間で生じると膝蓋腱反射が亢進する。
4.第4・5腰椎間で生じると下腿三頭筋の筋力低下を認める。
5.第5腰椎・第1仙椎間で生じるとアキレス腱反射が低下する。

解答5

解説
1.× 椎間板の「前側方」ではなく後方突出が多い。側方突出は神経根症状を起こしやすい。一方で後方突出は脊髄圧迫症状を起こしやすい。
2.× 最も多く発生するのは、「第3・4腰椎間」ではなく第4・5腰椎間で好発する。
3.× 第3・4腰椎間で生じると膝蓋腱反射は、「亢進」ではなく低下する。
4.× 下腿三頭筋の筋力低下を認めるのは、「第4・5腰椎間」ではなく、第5腰椎・第1仙椎間である。
5.〇 正しい。第5腰椎・第1仙椎間で生じるとアキレス腱反射が低下する。

 

 

 

 

 

 

87.Wallenberg症候群を起こす病態で正しいのはどれか。2つ選べ。(※不適切問題:採点対象外)

1.橋出血
2.ラクナ梗塞
3.脳動静脈奇形
4.脳底動脈解離
5.内頸動脈閉塞症

解答2/4(採点対象外)
理由:受験者レベルとしては難しすぎるため。

 

解説

Wallenberg症候群(延髄外側症候群)とは?

Wallenberg症候群(延髄外側症候群)は、椎骨動脈、後下小脳動脈の閉塞により延髄外側の梗塞を来す疾患である。①梗塞と同側の顔面感覚障害(温痛覚)、②梗塞と同側の運動失調(上下肢の動かしづらさ)、③梗塞と同側のホルネル(Horner)症候群(一側眼の瞼裂狭小化、縮瞳、眼球陥凹)、④梗塞と反対側の半身感覚障害(頸から下の温痛覚)、⑤嗄声、嚥下障害、⑥回転性めまい、眼振、⑦味覚障害が生じる。

(※参考:「脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告書」厚生労働省HPより)

1.× 橋出血は、Wallenberg症候群を起こす可能性は低い。脳出血の約1割にみられる。症状として、急激に意識を失う意識障害、呼吸障害、四肢のマヒ、眼球運動障害などがみられる。 
2.〇 正しい。ラクナ梗塞が延髄の外側領域で起これば、Wallenberg症候群がみられる。ラクナ梗塞とは、脳の深部の極めて細い血管(穿通枝と呼ばれる血管)がつまるタイプの脳梗塞である。
3.× 脳動静脈奇形は、Wallenberg症候群を起こす可能性は低い。脳動静脈奇形とは、脳の中で異常な動脈と静脈が毛細血管を介さず直接つながり、この部分がとぐろを巻いたような塊(ナイダス)となっている状態の血管奇形である。 正常な血管に比べて壁が薄く、破れやすいため、破れると脳出血くも膜下出血となる。
4.〇 正しい。脳底動脈解離によって、椎骨動脈系の虚血が生じ後下小脳動脈支配の延髄外側領域が梗塞することでWallenberg症候群がみられる。脳底動脈解離とは、動脈の壁が2枚になった状態で、動脈壁に入り込んだ血流が、裂けた動脈壁の内腔側を内腔に向かって、外腔側を外側に向かって押し出し、解離部分の動脈の外観は膨らんで、内腔は狭窄する状態のことである。
5.× 内頸動脈閉塞症は、Wallenberg症候群を起こす可能性は低い。なぜなら、延髄の外側領域は内頸動脈によらず、主に椎骨動脈系の後下小脳動脈の閉塞によって起こるため。

 

 

 

 

88.第5胸髄レベルの脊髄横断面模式図に損傷部位を斜線で示す。
 右下肢にみられる症状はどれか。

1.運動麻痺
2.痛覚鈍麻
3.位置覚異常
4.振動覚低下
5.腱反射亢進

解答2

解説

Brown-Séquard症候群とは?

Brown-Sequard 症候群(ブラウン・セカール症候群:脊髄半側症候群)は、損傷髄節よりも下位の反対側に温痛覚障害が生じ、同側に触覚の低下・痙性麻痺・深部感覚障害が生じる。

1.× 運動麻痺は、第5胸髄レベル以下の左下肢にみられる。
2.〇 正しい。痛覚鈍麻は、第5胸髄レベル以下の右下肢にみられる。
3~5.× 位置覚異常/振動覚低下/腱反射亢進は、第5胸髄レベル以下の左下肢にみられる。

苦手な方向けにまとめました。参考にしてください↓

【PT/OT/共通】解剖・横断図についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

 

89.分娩麻痺で正しいのはどれか。

1.低出生体重児に多い。
2.下位型は頸部が伸展されて起こる。
3.頭位分娩による上位型の予後は良い。
4.頭位分娩では上位型よりも下位型が多い。
5.両側例は骨盤位分娩よりも頭位分娩に多い。

解答3

解説

分娩時損傷とは?

分娩時損傷とは、分娩時の外傷のことで、骨折・分娩麻痺・出血などがある。
好発:巨大児分娩、骨盤位分娩、鉗子分娩、吸引分娩、急遂分娩など。
症状:鎖骨骨折が最多であり、次いで顔面神経麻痺、腕神経叢麻痺、頭蓋内出血が多い。

1.× 「低出生体重児」ではなく、4000g以上の巨大児に多い。なぜなら、巨大児は産道の通過が困難であるため。
2.× 頸部が伸展されて起こるのは、下位型「」ではなく上位型である。ちなみに、下位型麻痺(Klumpke麻痺)は、下位神経根に強い麻痺が残存したものである。下位型は非常にまれで予後は悪い。上位はC5~6、下位はC8~T1である。
3.〇 正しい。頭位分娩による上位型の予後は良い。最も予後良好で、ほとんどが自然に回復する。胎位の異常には、頭位、骨盤位、横位、斜位があります。
4.× である。頭位分娩では、下位型よりも上位型が多い。下位型は非常にまれで予後は悪い。
5.× である。両側例は、頭位分娩よりも骨盤位分娩に多い。骨盤位とは、子宮口に対して胎児が下半身を下に向けた体位(いわゆる逆子)である。一方、頭位とは、普通の状態で、頭を下に向けた体位をいう。腕神経叢損傷の多くは、骨盤位分娩による無理な上肢挙上位による。

MEMO

分娩麻痺は臨床症状によって、上位型麻痺(Erb麻痺)、全型麻痺、及び下位型麻痺(Klumpke麻痺)に分類されます。分類はおおむね1か月を経過した時点で行います。これらの典型的な症状は下記の通りですが、実際の症状は損傷の程度、自然回復の混在によって修飾され多彩です。

上位型麻痺(「Erb麻痺」とも呼ばれます):C5、C6、時にこれらに加えてC7神経根に損傷を受けた場合に生じる麻痺です。肩の外転・外旋、肘の屈曲が主に侵されます。手をそらすことができていればC7神経根は損傷を免れていると考えられます。
全型麻痺:上位型麻痺に加えてC8、T1神経根にまで損傷が及んだ場合に生じます。典型的には上肢全体が完全麻痺となりますが、T1神経根が損傷を免れている場合は指の屈曲のみ可能で他が完全麻痺となります。
下位型麻痺(「Klumpke麻痺」とも呼ばれます):生下時より下位型を呈する麻痺は非常にまれで、大部分は全型麻痺で出生し上位神経根に回復が認められ下位神経根に強い麻痺が残存したものです。

(引用:大阪母子医療センター様HPより~分娩麻痺について~

 

 

 

 

 

 

 

90.Guillain-Barré症候群について正しいのはどれか。2つ選べ。

1.罹患した部位に痙縮がみられる。
2.ウイルス感染が先行することが多い。
3.軸索変性型は脱髄型よりも予後が良い。
4.蛋白が高値で細胞増加がない髄液所見を伴う。
5.症状は数か月かけて徐々に進行することが多い。

解答2/4

解説

”Guillain-Barré症候群とは?”

Guillain-Barré(ギラン・バレー)症候群は、先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。一般的には細菌・ウイルスなどの感染があり、1~3週後に両足の筋力低下(下位運動ニューロン障害)や異常感覚(痺れ)などで発症する。感覚障害も伴うが、運動障害に比べて軽度であることが多く、他覚的な感覚障害は一般に軽度である。初期症状として、歩行障害、両手・腕・両側の顔面筋の筋力低下、複視、嚥下障害などがあり、これらの症状はピークに達するまでは急速に悪化し、時には人工呼吸器が必要になる。症状が軽い場合は自然に回復するが、多くの場合は入院により適切な治療(免疫グロブリン静注療法や血液浄化療法など)を必要とする。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い。臨床検査所見として、①髄液所見:蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示す。②電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。複合筋活動電位が消失あるいは著明な低下し、早期から脱神経所見を示す症例は、一般に回復が悪く機能的予後も不良である。

(※参考:「重篤副作用疾患別対応マニュアル ギラン・バレー症候群」厚生労働省様HPより)

1.× 罹患した部位は、「痙縮」ではなく弛緩性麻痺がみられる。重症化すると呼吸筋麻痺をきたし、呼吸器管理が必要となる。
2.〇 正しい。ウイルス感染が先行することが多い。ウイルス感染の例としては、①サイトメガロウイルス、②EBウイルスなどのウイルス、③カンピロバクター(細菌)、④マイコプラズマ(微生物)などであり、上気道感染症や胃腸炎、下痢などの先駆症状がみられることが多い。
3.× である。脱髄型軸索変性型よりも予後が良い。脱髄型は運動神経のみが障害される。一方、軸索変性型は運動神経のみならず感覚神経も障害される。したがって、軸索変性型のほうが予後不良である。
4.〇 正しい。蛋白が高値で、細胞増加がない髄液所見を伴う。
5.× 症状は、「数か月かけて徐々に進行する」のではなく、急速であることが多い。発症後2週間以内にピークとなり、数週~数ヵ月以内に治癒することが多い。

類似問題です↓
【共通問題のみ】Guillain-Barré症候群についての問題「まとめ・解説」

 

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