第45回(H22) 作業療法士国家試験 解説【午前問題16~20】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

次の文により15、16の問いに答えよ。
 30歳の男性。統合失調症。高校時代から体調不良を訴えるようになり、自宅に引きこもっていた。5年前に幻覚妄想状態のため入院し作業療法を継続していたが、最近、「退院したい」と意欲を見せ始めた。

16 作業療法種目を変更した3日後に患者が身体的不調を訴え始めた。
 対応で適切なのはどれか。

1.休憩の時間を増やす。
2.以前の作業種目に戻す。
3.直ちに作業療法を中止する。
4.他の作業療法士が担当する。
5.就労意欲を高める種目に変更する。

解答

解説
1.〇 正しい。休憩の時間を増やす。作業療法種目の変更に伴い、思者の負担も大きくなり、不調を訴えることはよくある。作業療法士は焦らず、徐々に新しい種目に慣れるよう疲労度に応じて休憩を多く取る。
2~3.× 以前の作業種目に戻す/直ちに作業療法を中止する優先度は低い。なぜなら、以前の種目に戻したり、直ちに作業療法を中止すると患者は挫折感や敗北感を味わい、より自信を喪失してしまう恐れがあるため。疲労度に応じて休憩を多く取るなどして、現在の作業を続けるのがよい。
4.× 他の作業療法士が担当する優先度は低い。なぜなら、患者が身体的不調を訴え始めた原因は、作業療法士である可能性は低いため。むしろ設問から「作業療法種目を変更」したこととされているため、ここで作業療法士を変更すると、患者の戸惑いが増すばかりである。
5.× 就労意欲を高める種目に変更する優先度は低い。なぜなら、本症例の就労は時期尚早であるため。就労意欲を高める種目に変更すると、むしろ就労への焦りが増す可能性が高い。

 

 

 

 

 

 

次の文により17、18の問いに答えよ。
 25歳の会社員。通勤中に電車内で突然の心悸亢進、発汗、身体のふるえ及び窒息感におそわれ搬入された。心電図、脳波および血液検査で異常を認めなかったため自宅に戻った。その後も週2、3回同様の発作が生じ、外出が困難となったため精神科を受診した。

17 この疾患の特徴はどれか。

1.男性に多い。
2.発作は人前で起こる。
3.背景に身体疾患がある。
4.予期不安が生じやすい。
5.意識障害を伴いやすい。

解答

解説

本症例のポイント

・25歳の会社員。
・通勤中に電車内で突然の心悸亢進、発汗、身体のふるえ及び窒息感。
・心電図、脳波および血液検査で異常なし。
・その後も週2、3回同様の発作が生じ、外出が困難。
パニック障害を疑える。パニック障害とは、パニック発作が予想できずに頻回に起こり、それらが起こりそうな場所に行くことを避け(広場恐怖)、また同じような強い不安に襲われるのではないかという恐れ(予期不安)を伴うものをいう。

1.× 「男性に多い」のではなく、日本では男女比は「ほぼ1:1」といわれている。ただし、外国での男女比は1:2で女性のほうが多い。
2.× 必ず発作は人前で起こると一概にいいにくい。なぜなら、パニック障害は、パニック発作が予想できずに頻回に起こるため。デパートや電車の中など、容易に外に出られない人ごみの中で起こることも多いが、運転中の車の中など、一人でいる時にも起こる。
3.× 背景に身体疾患はない
4.〇 正しい。予期不安が生じやすい。パニック障害とは、パニック発作が予想できずに頻回に起こり、それらが起こりそうな場所に行くことを避け(広場恐怖)、また同じような強い不安に襲われるのではないかという恐れ(予期不安)を伴うものをいう。
5.× 意識障害を伴わない。誘因なく、突然起こる発作(動悸、発汗、胸痛、息切れ、めまい、窒息感などの自律神経症状、それらの症状から2次的に起こる、気が狂うのではないか、死ぬのではないかという恐怖)が起こる。ちなみに、パニック発作の持続時間は通常数分間である。

 

 

 

 

 

次の文により17、18の問いに答えよ。
 25歳の会社員。通勤中に電車内で突然の心悸亢進、発汗、身体のふるえ及び窒息感におそわれ搬入された。心電図、脳波および血液検査で異常を認めなかったため自宅に戻った。その後も週2、3回同様の発作が生じ、外出が困難となったため精神科を受診した。

18 この患者に対する作業療法で適切でないのはどれか。

1.生活リズムを整える。
2.身体運動を取り入れる。
3.外出の練習を取り入れる。
4.リラクセーションの練習をする。
5.社会生活技能訓練(SST)を行う。

解答

解説

本症例のポイント

・25歳の会社員。
・通勤中に電車内で突然の心悸亢進、発汗、身体のふるえ及び窒息感。
・心電図、脳波および血液検査で異常なし。
・その後も週2、3回同様の発作が生じ、外出が困難。
パニック障害を疑える。パニック障害とは、パニック発作が予想できずに頻回に起こり、それらが起こりそうな場所に行くことを避け(広場恐怖)、また同じような強い不安に襲われるのではないかという恐れ(予期不安)を伴うものをいう。治療として、①SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、②抗不安薬、③認知行動療法(セルフコントロール)などである。

1~3.〇 正しい。生活リズムを整える/身体運動を取り入れる/外出の練習を取り入れる。なぜなら、パニック障害の広場恐怖により、引きこもりがちになっていることがあるため。また、外出の練習により、発作を起こしそうな場所に馴れていくことで恐怖感が軽減し、一人で外出する自信をつけることができる
4.〇 正しい。リラクセーションの練習をする。なぜなら、リラクセーションで緊張感の軽減ができるため。認知行動療法(セルフコントロール)につながる。
5.× 「74様 コメントありがとうございました」。社会生活技能訓練(SST)より優先されるものがほかにある。なぜなら、社会生活技能訓練(SST)は、主に回復期以降の統合失調症患者などが対象であり、その他の疾患でも用いられることはあるが、一般的に(急性期)のパニック障害には用いられないため。これはより、安定しないうちに行った場合、症状が悪化する恐れがあるためである。なお、同じ神経症性障害である「社会不安障害」に対しても社会生活技能訓練(SST)が用いられることもある。SST(Social Skills Training:社会生活技能訓練)とは、社会生活を送るうえでの技能を身につけ、ストレス状況に対処できるようにする集団療法の一つである。社会生活の中で、患者が苦悩すると思われる場面を具体的に想起し、解決するための技能を訓練する目的で行われるものであり、パニック障害を起こしやすい状況でもパニックを起こさないような技能を身につけるのに有効である。

(※図:「統合失調症の回復過程と対応」)

 

 

 

 

 

 

次の文により19、20の問いに答えよ。
 25歳の男性。幼いころから言語発達と学業成績は良好であったが、固執性が強く友人との関係は保てなかった。製造業に就職し業務成績も良かったが、研修中に状況を無視した言動によって同僚とのトラブルが増え、上司に伴われて精神科を受診した。

19 考えられるのはどれか。

1.自閉症
2.学習障害
3.Rett症候群
4.Asperger症候群
5.注意欠陥多動性障害

解答

解説

本症例のポイント

・25歳の男性。
・言語発達、学業成績、業務成績は良好。
・固執性が強く友人との関係は保てなかった。
・研修中に状況を無視した言動によって同僚とのトラブルあり。
Asperger症候群を疑える。

1.× 自閉症(小児自閉症障害)は、対人関係を築けない、活動や興味の極端な限定がみられる、男児に多いなどのAsperger症候群に類似した特徴を持つが、言語発達の遅れ知能低下がみられる点でAsperger症候群区別される。
2.× 学習障害とは、読む、書く、話すなどのある特定の学習能力が同じ年齢・知能の者と比較したときに期待される水準に達しない状態を指す。特定の学習能力が年齢や知能レベル、教育レベルから期待されるものより著しく低いものをいい、学習機会がなかった者や、精神遅滞は除外する。
3.× Rett症候群(レット症候群)は、女子のみに発症する進行型の脳障害である。生後5ヶ月までは正常に発達するが、その後は頭部の発達が遅くなり、常同的な手の動き(手を揉む、手を洗うような動作)、歩行困難、対人関係の消失がみられ、会話ができなくなり重篤な精神遅滞を伴う。
4.〇 正しい。Asperger症候群が考えられる。Asperger症候群(アスペルガー症候群)の特徴して、①言語発達の遅れはない、②知能は正常であることが多い、③対人接触に無関心というよりはむしろ常軌を逸し一方的に接近しようとする、などのことが挙げられる。また、興味・関心の幅が狭いので新たな作業の導入には抵抗が強く、その一方で同じ作業を続ける力はもともと(こだわり)がある。
5.× 注意欠陥多動性障害(ADHD)とは、発達障害の一つであり、脳の発達に偏りが生じ年齢に見合わない①注意欠如、②多動性、③衝動性が見られ、その状態が6ヵ月以上持続したものを指す。男児に圧倒的に多く、他の疾患との合併がなければ知能は正常である。その行動によって生活や学業に支障が生じるケースが多い。治療として、①まず、行動療法を行う。②改善しない場合は、中枢神経刺激薬による薬物療法を用いる。中枢を刺激して、注意力・集中力を上げる。※依存・乱用防止のため、徐放薬が用いられる。

 

 

 

 

 

 

次の文により19、20の問いに答えよ。
 25歳の男性。幼いころから言語発達と学業成績は良好であったが、固執性が強く友人との関係は保てなかった。製造業に就職し業務成績も良かったが、研修中に状況を無視した言動によって同僚とのトラブルが増え、上司に伴われて精神科を受診した。

20 この患者に対する作業療法で適切なのはどれか。

1.集中力を高める。
2.耐久性の向上を図る。
3.対人関係技能を高める。
4.複数の作業を同時に行う。
5.多くの感覚刺激を取り入れる。

解答

解説

本症例のポイント

・25歳の男性。
・言語発達、学業成績、業務成績は良好。
・固執性が強く友人との関係は保てなかった。
・研修中に状況を無視した言動によって同僚とのトラブルあり。
→Asperger症候群を疑える。

1~2.× 集中力を高める/耐久性の向上を図ることの優先度は低い。なぜなら、Asperger症候群の特徴として固執性があり、自分が好むことへの集中力・耐久力は保たれるため。
3.〇 正しい。対人関係技能を高める。本症例は設問から「同僚とのトラブルが増え、上司に伴われて精神科を受診した」経緯がある。友人や同僚とのトラブルが多く、対人関係技能に問題がみられるため、対人関係技能を高める作業療法が適切である。
4.× 複数の作業を同時に行う優先度は低い。なぜなら、Asperger症候群の特徴として、特定の物事へのこだわりがあるため。複数の作業を同時に行うことは、より混乱が生じかねない。
5.× 多くの感覚刺激を取り入れる優先度は低い。なぜなら、Asperger症候群の特徴として、感覚の過敏さ、鈍感さがある(うるさい場所にいるとイライラしやすい)ことがあげられるため。本症例の設問には、「感覚の過敏さ」の記載はないが、Asperger症候群の一般的な症状をおさえておく。

 

2 COMMENTS

74

いつも勉強の道標として活用させていただき、励みになっております。素敵なブログを開設いただいていることに感謝です。

18問目選択肢5について分かった事がありましたので、今回コメントさせていただくに至りました。
釈迦に説法な部分もあるかと思いますが、参考になりましたら嬉しく思います。

◎18問目選択肢5
本症例:突然の心悸亢進、発汗、身体のふるえ等があり、その後も週数回同様の発作が生じていることから、パニック障害であると考えられる。
SSTは主に慢性の統合失調症患者などが対象であり、その他の疾患でも用いられることはあるが、一般的にパニック障害には用いられない。
なお、同じ神経症性障害である「社会不安障害」に対してはSSTが用いられる。

◎第47回午前15問目選択肢2について
症例は、「大学のクラスの中で強い緊張感を感じ(人前にでると過度に緊張する)、身体の震えや手汗が止まらなくなった」ことから、「社会不安障害」であると考えられる。
SSTは、ストレス-脆弱-処理機能モデルに基づき、患者が環境と好ましい関係を持てるように
することを目的とする→社会不安障害に用いられる。

◎パニック障害と社会不安障害のちがい
パニック障害→急に、何の理由もなくパニック発作が起こる。
社交不安障害(社会不安障害)→その人が恐れているような「特定の状況」(人の前で話す等)に対して、強度の不安感に襲われ、動悸、震え、発汗、赤面、下痢、緊張、混乱などのさまざまな症状が現れる。

返信する
大川 純一

コメントありがとうございます。
とても参考になりました。
コメントを参考に解説も一部修正致しましたのでご確認ください。
また、「第47回午前15問目」についてですが、「パニック障害」ではなく「社会不安障害」とご指摘をいただいたのですが、「回避性パーソナリティ障害」ではないかと再考しております。
といいいますのも、「社会不安障害」で解いていった場合、14問目の選択肢1「思春期に好発する」が当てはまり複数回答となってしまうためです。またお時間あるときに、第47回の解説も一読くだされば幸いです。
今後ともよろしくお願いいたします。

返信する

大川 純一 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)