第45回(H22) 作業療法士国家試験 解説【午前問題11~15】

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11 Duchenne型筋ジストロフィー患者が図のような方法で食事をとっている。
 この方法で食事が可能なステージ(厚生省筋萎縮症研究班の機能障害度分類による)の限界はどれか。

1.4a
2.4b
3.5
4.6
5.7

解答

解説

厚生省「筋萎縮症」対策研究会による障害段階分類

ステージ1 歩行可能 介助なく階段昇降可能(手すりも用いない)
ステージ2 階段昇降に介助(手すり、手による膝おさえなど)を必要とする
ステージ3 階段昇降不能 平地歩行可能 通常の高さのイスからの立ち上がり可能
ステージ4 歩行可能 イスからの立ち上がり不能
(A:独歩で5m以上歩行ができる)
(B:一人では歩けないが、モノにつかまれば歩ける。)
ステージ5 歩行不能 四つ這い可能
ステージ6 四つ這い不能だが、いざり移動可能
ステージ7 這うことはできないが、自力で坐位保持可能
ステージ8 ベッドに寝たままで体動不能 全介助

1.× 4aは、独歩で5m以上歩くことができるレベルである。
2.× 4bは、もの(手すり)を用いれば5m以上歩行可能なレベルである。
3.× 5は、歩行不能、四つ這い可能である。
4.〇 正しい。ステージ6が、この方法で食事が可能なステージの限界である。6は、四つ這い不能だが、いざり移動可能である。本症例は、テーブルにもたれながら座位をとり食事をとっている。ベッド上背臥位からいざり動作を行い、オーバーテーブルの前で座位をとっていると推測できステージ6までと考えられる。
5.× 7は、這うことはできないが、自力で坐位保持可能である。つまり、ベッド上での移動は困難である。

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12 75歳の女性。右大腿骨頸部骨折による人工関節置換術後2週で回復期リハビリテーション病棟に転棟した。
 初回訓練時での作業療法士の発言で適切でないのはどれか。

1.「こんにちは。〇〇太郎さんですか。担当する作業療法士の◇◇花子と申します」
2.「ご自宅で転んで右脚の付け根の骨を骨折して、大きな手術を受けられたと聞きましたが、本当に大変でしたね」
3.「手術を受けてから2週間が過ぎましたが、右股関節拘縮と筋力低下のために歩行障害を起こしているのですね」
4.「今日は右足の力を強くして、バランスをよくするために立ち上がりと輪投げを行います。関節に痛みを感じたりお疲れになりましたら、遠慮せずにおっしゃってください」
5.「今日はこのくらいで終了といたします。明日はもう少し楽しくできる種目を考えようと思いますので、ご趣味などについてお聞かせください」

解答

解説
1.〇 正しい。「こんにちは。〇〇太郎さんですか。担当する作業療法士の◇◇花子と申します」と相手の名前を確認し、自己紹介をすることは必要である。本症例は、女性であるが、一般的に男性に用いられている「〇〇太郎さん」という名前である。こういった状況で患者の間違いが起こるためしっかり名前を確認することが大切である。
2.〇 正しい。「ご自宅で転んで右脚の付け根の骨を骨折して、大きな手術を受けられたと聞きましたが、本当に大変でしたね」と共感的な態度で接することは必要である。共感されることによって不安な気持ちを理解してもらえたと思うことは安心感につながる。
3.× 「手術を受けてから2週間が過ぎましたが、右股関節拘縮筋力低下のために歩行障害を起こしているのですね」との発言は不適切である。なぜなら、「右股関節拘縮」、「筋力低下」、「歩行障害」と専門用語であるため、患者は理解しにくく相互の理解に幅が生じてしまうため。本問題は初回訓練での対象者の持つ不安への配慮が求められている。 相手との信頼関係を築くためにも対象者の不安を和らげ、回復への意欲を持たせることが必要である。
4.〇 正しい。「今日は右足の力を強くして、バランスをよくするために立ち上がりと輪投げを行います。関節に痛みを感じたりお疲れになりましたら、遠慮せずにおっしゃってください」とリハビリの内容をあらかじめ伝えることや痛みや疲れに対する配慮があると患者の安心につながる。
5.〇 正しい。「今日はこのくらいで終了といたします。明日はもう少し楽しくできる種目を考えようと思いますので、ご趣味などについてお聞かせください」と、リハビリの内容を患者の興味・関心・趣味に寄せることは、患者の価値観を共有でき作業療法の意欲向上につながる。

 

 

 

 

 

次の文により13、14の問いに答えよ。
 81歳の女性。1人暮らし。1年前からたびたび鍋をこがしたり同じ内容の電話を何回もかけたりすることがあった。娘が自宅を訪ねると、冷蔵庫の中に同じ食材がたくさん詰め込まれており、室内に衣服が散乱していた。本人が生気のない表情で座り込んでいたため来院した。

13 最初に行うべき評価はどれか。

1.P-Fスタディ
2.三宅式記銘力検査
3.PGCモラールスケール
4.MMSE(Mini-Mental State Examination)
5.PANSS(Positive and Negative Syndrome Scale)

解答

解説

MEMO

・81歳の女性(1人暮らし)
・1年前:鍋をこがす。同じ内容の電話を何回もかける。
・娘が自宅を訪ねると、冷蔵庫の中に同じ食材がたくさん詰め込まれており、室内に衣服が散乱していた。本人が生気のない表情で座り込んでいた。
認知症の疑いがある。したがって、認知症に対する評価を最初に行うべきである。

1.× P-Fスタディ(Picture Frustration Study:絵画欲求不満テスト)は、心理検査(性格特性を把握する検査)である。欲求不満の場面の柄を24枚見せて応答する場面を想定して文章を書いてもらう。ある場面が描かれており、それにどのような対応をするのか吹き出しの空欄にセリフを書き込む。用紙は3種類あり、児童用・青年用・成人用である。
2.× 三宅式記銘力検査とは、記憶の形成・保持・再生と注意機能を評価する検査である。2つずつ対にした「有関連対語10対」と「無関係対語10対」を読んで聞かせたあとに、片一方を読んでもう一方を想起させて10点満点の得点とし、同じことを3回繰り返す。
3.× PGCモラールスケールは、主観的幸福感を評価できる。高齢者のQOL評価尺度である。高齢者が自分の人生に対してどの程度幸福に感じているかを測定するものとなっている。自分自身の幸福感に対する17項目の質問により構成されており、はい/いいえで解答し、点数化され、最高点は17点である。
4.〇 正しい。MMSE(Mini-Mental State Examination)は、最初に行うべき評価である。認知症の知的・認知機能評価である。内容は、見当識・記銘力・注意と計算・想起・言語・組み立ての各項目があり、30点満点で評価する。26点以下で軽度認知障害の疑いを示し、23点以下では認知障害の可能性が高いことを示す。
5.× PANSS(Positive and Negative Syndrome Scale:陽性・陰性症状評価尺度)は、統合失調症の急性期において、治療効果をみるのに最も有効である。統合失調症を対象に、精神状態を全般的に把握することを目的として作成された評価尺度である。30項目について陽性尺度、陰性尺度、総合精神病理尺度を医師が評定する。

 

 

 

 

 

 

次の文により13、14の問いに答えよ。
 81歳の女性。1人暮らし。1年前からたびたび鍋をこがしたり同じ内容の電話を何回もかけたりすることがあった。娘が自宅を訪ねると、冷蔵庫の中に同じ食材がたくさん詰め込まれており、室内に衣服が散乱していた。本人が生気のない表情で座り込んでいたため来院した。

14 この患者が外来作業療法に通うことになった。
 この時期の作業療法の目的で優先されるのはどれか。

1.作業遂行機能
2.対人関係
3.知的機能
4.役割遂行
5.環境適応

解答

解説

MEMO

・81歳の女性(1人暮らし)
・1年前:鍋をこがす。同じ内容の電話を何回もかける。
・娘が自宅を訪ねると、冷蔵庫の中に同じ食材がたくさん詰め込まれており、室内に衣服が散乱していた。本人が生気のない表情で座り込んでいた。
認知症の疑いがある。本症例は、設問から「生気のない表情」で精神機能が低下している様子もあった。日中に過ごす場所を提供し、生活リズムを保つことが大切になる。また、認知症の作業療法は、①自信や安心感を取り戻せる、②リハビリと感じにくいもの、③馴染みの作業(混乱・困惑を防ぐ)ことが望ましい。

1~3.× 作業遂行機能/対人関係/知的機能の優先度は低い。なぜなら、本症例は外来作業療法に通い立てであるため。ただでさえ新しい環境や行うべきことが増えるためまずは①自信や安心感を取り戻せることが望ましい。
4.× 役割遂行の優先度は低い。なぜなら、本症例は1人暮らしをされており、何の役割を遂行するのか設問からは読み取れないため。
5.〇 正しい。環境適応は、この時期の作業療法の目的で優先される。なぜなら、まずは作業療法を継続できるようにするため。本症例は、設問から「生気のない表情」で精神機能が低下している様子もあった。日中に過ごす場所を提供し、生活リズムを保つことが大切になる。また、認知症の作業療法は、①自信や安心感を取り戻せる、②リハビリと感じにくいもの、③馴染みの作業(混乱・困惑を防ぐ)ことが望ましい。

 

 

 

 

 

 

次の文により15、16の問いに答えよ。
 30歳の男性。統合失調症。高校時代から体調不良を訴えるようになり、自宅に引きこもっていた。5年前に幻覚妄想状態のため入院し作業療法を継続していたが、最近、「退院したい」と意欲を見せ始めた。

15 この時期の作業療法の目的で適切なのはどれか。

1.就労準備
2.趣味の拡大
3.心身機能の回復
4.生活リズムの改善
5.自己管理技能の改善

解答

解説

本症例のポイント

・30歳の男性(統合失調症)
・高校時代:体調不良を訴え、引きこもり。
5年前:幻覚妄想状態のため入院。
・最近、「退院したい」と意欲あり。
→本症例は維持期である。ただし、5年間入院していることから、急な環境の変化や退院によるストレスが加わり再発しかねない。まずは、退院後でも確実に生活できる環境を整えたり、評価することが大切となる。

1~2.× 就労準備/趣味の拡大は維持期で行うが、5年間入院していることから、急な環境の変化や退院によるストレスが加わり再発しかねない。まずは、退院後でも確実に生活できる環境を整えたり、評価することが大切となる。ちなみに、維持期は、①再発の防止、②患者がより良い生活を獲得する。
3~4.× 心身機能の回復/生活リズムの改善は、回復期前期の課題であり、すでにクリアしているものと思われる。生活リズムの回復は、亜急性期と回復期に共通の作業療法の目的である。亜急性期は、幻聴・妄想などが活発な急性期を過ぎ、多少の精神症状は残存していても睡眠覚醒などの生活リズムが確立しているが、疲労感が強い時期である。一方、回復期は、疲労感が軽減してこれから社会復帰の準備を始めようとする時期であり、服薬や金銭の自己管理を支援し、学校や職場との連携を図る時期である。それぞれ亜急性期は睡眠リズムの確立、回復期は社会復帰を目指す日常生活リズムの獲得の意味合いに持つ。
5.〇 正しい。自己管理技能(服薬、金銭など)の改善は、この時期の本症例にあった作業療法の目的である。

”統合失調症とは?”

統合失調症とは、幻覚・妄想・まとまりのない発語および行動・感情の平板化・認知障害ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが、遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。好発年齢は、青年期に始まる。治療は薬物療法・認知療法・心理社会的リハビリテーションを行う。早期発見および早期治療が長期的機能の改善につながる。統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。統合失調症患者の約5~6%が自殺し,約20%で自殺企図がみられる。したがって、うつ症状にも配慮して、工程がはっきりしたものや安全で受け身的で非競争的なものであるリハビリを提供する必要がある。

(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)

 

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