第45回(H22) 理学療法士国家試験 解説【午後問題6~10】

 

次の文により5、6の問いに答えよ。
 18歳の男性。サッカーの試合中に方向転換をしようとして膝関節をひねり、疼痛のため歩行不能となった。翌日に撮像したMRIを下図に示す。

6. 2週後に歩行可能となったが、膝関節に不安定感がある。
 適応となる装具はどれか。

解答2

解説

ポイント

本症例は前十字靭帯損傷である。
したがって前十字裂帯 (ACL)損傷で適応となる装具を選択する。

1.× スウェーデン式膝装具である。反張膝に用いる。
2.〇 正しい。前十字靭帯損傷に用いる。
3.× 外反膝(X脚)に用いる。膝関節内側にパッドがある。
4.× 膝蓋骨亜脱臼症候群用装具である。膝蓋骨の外側への移動を抑制する。
5.× 後十字靱帯損傷に用いる。

 

 

 

 

 

7. 35歳の女性。2か月前から腰痛と右殿部痛とが生じ、徐々に右下肢の疼痛が増悪してきた。腰部MRIを下図に示す。
 この患者に認められるのはどれか。

1.椎体骨折
2.腰椎分離症
3.腰椎すべり症
4.椎間板ヘルニア
5.後縦靱帯骨化症

解答4

解説

本症例のポイント

MRI画像においてL5〜S1間に
①腰椎椎間板の突出
②神経の圧迫がみられる。
→椎間板ヘルニアと考えられる。

1.× 椎体骨折(圧迫骨折)の場合は、画像所見で①膨張した椎間板、②魚椎変形(楔状変形)、③骨陰影の減少などがみられる。
2.× 腰椎分離症の場合は、画像所見で椎弓の関節突起間の骨性連続が断たれている。小児〜思春期の男性に好発する疾患である。
3.× 腰椎すべり症の場合は、患部の椎骨が下位の椎体より前方にずれているのが観察される。
4.〇 正しい。椎間板ヘルニアである。L5/S1に腰椎椎間板の突出と脊髄の圧排を認める。
5.× 後縦靱帯骨化症の場合は、後縦靱帯の骨化所見がみられる。骨化により脊柱管が狭くなる。後縦靱帯は、脊椎椎体の後縁を上下に連結する。

 

 

 

 

 

8. 25歳の男性。野球の試合で走塁中に大腿後面に違和感と痛みとを生じた。近くの整形外科を受診したところ、大腿部エックス線写真では骨折を認めなかった。
 物理療法で適切なのはどれか。

1.交代浴
2.極超短波
3.アイシング
4.ホットパック
5.パラフィン浴

解答3

解説

 本症例は、エックス線写真上で骨折はないことから、筋・腱など軟部組織の損傷と推察される。筋や腱の受傷直後の対応は原則、RICE処置を行う。RICE処置とは、①安静(Rest)、②冷却(Ice)、③圧迫(Compression)、③挙上(Elevation)することで、これらの頭文字をとったものである。

1.× 交代浴は、末梢循環を改善させることが目的である。温水と冷水に交互に患部をさらし、自律神経を整える物理療法である。
2.× 極超短波は温熱療法の一つである。加温することで痛みの緩和や筋緊張の軽減、循環の改善などの効果が期待できる。
3.〇 正しい。アイシングは、RICE処置である。
4〜5.× ホットパック/パラフィン浴は温熱療法である。受傷直後の対応はRICE処置を原則に従い、冷却(Ice)が望ましい。

 

 

 

 

 

9. 70歳の男性。頭部を下図に示す。
 この患者の慢性期の症状で最も重度なのはどれか。

1.着衣失行
2.感覚障害
3.運動麻痺
4.不随意運動
5.半側空間無視

解答2

解説

視床出血とは?

視床出血は、被殻出血と並んで頻度の高い脳出血である。脳出血全体の30%程度を占めている。そもそも視床は、感覚路の中継点(対側の四肢体幹および顔面の知覚を中継)である。したがって、麻痺に比べ、感覚障害が強くなる。

1.× 着衣失行(上着の左右を間違えて袖を通す状態)は、劣位半球の頭頂葉の障害で生じる。
2.〇 正しい。感覚障害は、慢性期の症状で最も重度と考えられる。なぜなら、視床は、感覚路の中継点(対側の四肢体幹および顔面の知覚を中継)であるため。
3.× 運動麻痺は、錐体路の障害で生じやすい。したがって、被殻出血などで強く出現する。錐体路は、大脳皮質運動野→放線冠→内包後脚→大脳脚→延髄→(錐体交叉)→脊髄側索→脊髄前角細胞という経路をたどる。
4.× 不随意運動は、脳幹大脳基底核の障害などで生じやすい。
5.× (左)半側空間無視は、劣位 (右) の頭頂葉の障害でみられやすい。

 

 

 

 

 

10. 86歳の女性。軽度の左変形性膝関節症のため杖歩行であったが、ADLは自立していた。突然の右上下肢筋力低下と構音障害とが出現し、歩行不能となったため発症後1時間で緊急入院した。意識は清明で軽度の筋力低下を認めた。入院後2時間で筋力は徐々に元の状態まで改善し、発語も正常となった。頭部MRIとMRAとに明らかな異常を認めなかった。抗凝固薬の調整のため入院を継続した。
 この患者への介入方針で適切なのはどれか。

1.入院後3日間はベッド上安静とする。
2.嚥下障害が疑われるので禁食とする。
3.両下肢筋力増強訓練が必要である。
4.歩行訓練は7日目から開始する。
5.持久性トレーニングは14日目から開始する。

解答3

解説

本症例のポイント

①脳血管障害の症状が出現したが、24時間以内に回復。
②頭部MRIとMRA とに明らかな異常なし。
→一過性脳虚血発作(TIA)が考えられる。

一過性脳虚血発作(transient ischemic attack:TIA)とは、一時的に脳への血流が不十分になった状態である。動脈硬化により引き起こされ、症状は一過性で発作後24時間以内に改善されるものをいう。発作の起こり方は急速である。約1/3が脳血栓症に移行するといわれている。

全身状態が安定していれば、ただちにリハビリを開始する施設が多い。

1.4〜5.× 入院後3日間はベッド上安静とする/歩行訓練は7日目から開始する/持久性トレーニングは14日目から開始すると制限する必要はない。全身状態が安定していれば、ただちにリハビリを開始する施設が多い。脳卒中片麻痺患者の早期理学療法を行うにあたって、意識障害 (JCS)が1桁であることなど、リハビリテーション中止基準(バイタル)をクリアしていれば安定していれば早期から開始する。
2.× 嚥下障害が疑われるので禁食とする必要はない。設問から「入院後2時間で筋力は徐々に元の状態まで改善し、発語も正常」となっている。したがって、嚥下障害の回復が考えられる。ただし、言語聴覚士と相談したり、むせなどにも注意を払いながら行う必要がある。
3.〇 正しい。両下肢筋力増強訓練が必要である。なぜなら本症例は、入院前から軽度の左変形性膝関節症のため杖歩行であるため。設問から「入院後2時間で筋力は徐々に元の状態まで改善」しているものの、元々の下肢筋力が低下していることが懸念される。

 

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