第45回(H22) 理学療法士国家試験 解説【午後問題11~15】

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11. 30歳の女性。多発性硬化症によるL1レベル以下の対麻痺の増悪を認め、Danielsらの徒手筋力テストで下肢筋力は2となったが、ステロイドバルス療法でようやく症状の進行が止まった。
 この時期における理学療法で適切なのはどれか。

1.上肢筋力増強訓練
2.下肢筋力増強訓練
3.関節可動域訓練
4.座位持久性訓練
5.立位訓練

解答3

解説

多発性硬化症とは?

 多発性硬化症は、中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患であり、時間的・空間的に病変が多発するのが特徴である。病変部位によって症状は様々であるが、視覚障害(視神経炎)を合併することが多く、寛解・増悪を繰り返す。視力障害、複視、小脳失調、四肢の麻痺(単麻痺、対麻痺、片麻痺)、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害、有痛性強直性痙攣等であり、病変部位によって異なる。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。脱髄部位は視神経(眼症状や動眼神経麻痺)の他にも、脊髄、脳幹、大脳、小脳の順にみられる。有痛性強直性痙攣(有痛性けいれん)やレルミット徴候(頚部前屈時に背部から四肢にかけて放散する電撃痛)、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)などが特徴である。若年成人を侵し再発寛解を繰り返して経過が長期に渡る。視神経や脊髄、小脳に比較的強い障害 が残り ADL が著しく低下する症例が少なからず存在する長期的な経過をたどるためリハビリテーションが重要な意義を持つ。

(参考:「13 多発性硬化症/視神経脊髄炎」厚生労働省様HPより)

1~2.4~5.× 上肢筋力増強訓練/下肢筋力増強訓練/座位持久性訓練/立位訓練は優先度が低い。なぜなら、運動によりユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)が考えられる。また、過用性の能力低下になる恐れもある。
3.〇 正しい。関節可動域訓練を優先する項目である。痙性の抑制、可動域の維持のために早期から行う。

ステロイドパルス療法とは?

ステロイドパルス療法とは、ステロイドを短期間で大量に用いることにより作用を強め「劇的な効果を得る」ことを目的とした治療法である。治療全体でのステロイドの用量を減少させることができ、短期間の大量投与は副作用も少ないことが知られている。急性期治療後のステロイド内服は長期にならないよう漸減中止することが望ましい。なぜなら、ステロイドの長期内服による合併症を予防するため。

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12. 56歳の女性。10年前に多発性硬化症と診断され、3回の入院歴がある。1年前からベッド上で生活している。1週前から、飲み込みの悪さ、左下肢の脱力感およびしびれの増強を感じるようになった。夕方になると軽度の発熱がある。
 2週に1度の在宅理学療法で訪問した際に優先すべき対応はどれか。

1.全身の保温を促す。
2.腹式呼吸の指導を行う。
3.下肢の筋力増強訓練を行う。
4.直接嚥下訓練を家族に指導する。
5.現状を把握し主治医に連絡する。

解答5

解説

多発性硬化症とは?

 多発性硬化症は、中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患であり、時間的・空間的に病変が多発するのが特徴である。病変部位によって症状は様々であるが、視覚障害(視神経炎)を合併することが多く、寛解・増悪を繰り返す。視力障害、複視、小脳失調、四肢の麻痺(単麻痺、対麻痺、片麻痺)、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害、有痛性強直性痙攣等であり、病変部位によって異なる。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。脱髄部位は視神経(眼症状や動眼神経麻痺)の他にも、脊髄、脳幹、大脳、小脳の順にみられる。有痛性強直性痙攣(有痛性けいれん)やレルミット徴候(頚部前屈時に背部から四肢にかけて放散する電撃痛)、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)などが特徴である。若年成人を侵し再発寛解を繰り返して経過が長期に渡る。視神経や脊髄、小脳に比較的強い障害 が残り ADL が著しく低下する症例が少なからず存在する長期的な経過をたどるためリハビリテーションが重要な意義を持つ。

(参考:「13 多発性硬化症/視神経脊髄炎」厚生労働省様HPより)

1.× 全身の保温を促すのは禁忌である。なぜなら、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)を引き起こす可能性があるため。
2.× 腹式呼吸の指導を行う優先度は低い。基本的に腹式呼吸の指導は、呼吸器疾患に対して行う。多発性硬化症で呼吸器疾患を伴っている場合は行うこともあるかもしれないが、本症例にはそのような記載はなく、そのほかの選択肢に優先度が高いものがほかにある。
3.× 下肢の筋力増強訓練を行うのは禁忌である。なぜなら、運動によりユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)を引き起こす可能性があるため。積極的な機能回復訓練は、症状緩和時に疲労しない程度の強度で開始する。
4.× 直接嚥下訓練を家族に指導する優先度は低い。直接嚥下訓練とは、実際に食べ物を使った摂食訓練のことである。本症例は設問から「1週前から飲み込みの悪さ」と「夕方になると軽度の発熱」を認めている。これは肺炎などの感染性疾患(誤嚥性肺炎)も疑える。ただし直接嚥下訓練は、誤嚥のリスクがあるので、摂食訓練が可能かどうか患者の状態や体調を見極めた上で専門スタッフ(言語聴覚士や看護師)がしっかり付き添いながら行う必要があるため、家族指導で行える段階ではない
5.〇 正しい。現状を把握し主治医に連絡する。なぜなら、箱状の悪化、性肺炎などの可能性が疑われるため。在宅リハビリテーションでは主治医が直接患者に関わることが少なくなるため、頻繁にカンファレンスを行い、症状の変化などを情報交換する必要がある。

 

 

 

 

13.長下肢装具を装着した脊髄損傷者の立ち上がりの行程を図に示す。
 この動作が可能な最も高位の機能残存レベルはどれか。

1.T4
2.T8
3.T12
4.L2
5.L4

解答3

解説

本症例のポイント

①車いす使用(実用レベル)。
②長下肢装具を装着した状態で立ち上がりが可能。
③ロフストランド杖を用いて歩行する(練習レベル)。
※骨盤帯を使用していない。

1~2.× T4/T8は、長下肢装具+ロフストランド杖での歩行困難である。なぜなら、体幹筋の筋力が不十分により歩行するには骨盤帯を使用する必要があるため。
3.〇 正しい。T12が図の動作が可能な最も高位の機能残存レベルである。長下肢装具+ロフストランド杖での歩行は、補助的(練習)レベルにとどまるが可能である。長下肢装具+松葉杖での歩行は安定して可能となる。
4.× L2の場合、長下肢装具+ロフストランド杖での歩行は実用レベルで可能である。車椅子も不必要となる
5.× L4は、短下肢装具での歩行が自立する。

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14.完全脊髄損傷(第12胸髄節まで機能残存)患者で、臥床時に褥瘡を好発しやすい部位はどれか。2つ選べ。

解答1.5

解説

褥瘡とは?

 褥瘡とは、局所の持続的な圧迫により組織に虚血が生じて発生する皮膚・皮下組織の損傷のことである。仙骨部、大転子部、足関節外果、踵部などの骨の突出している場所に好発する。頚髄完全損傷では、自分で除圧できないこと、感覚障害を合併していることより、褥瘡が生じやすい。

1.〇 正しい。仙骨部は臥床時に褥瘡ができやすい。
2~4.× 大腿後面/膝窩部/下腿後面は、仙骨部・踵骨に比べ、好発部位ではない
5.〇 正しい。踵骨は臥床時に褥瘡ができやすい。

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15.図の姿勢をとるようになる時期までに起こる正常発達で正しいのはどれか。

1.Landau反射は消失している。
2.足底把握反射は消失している。
3.頸椎の生理的前弯が生じている。
4.座位での傾斜反応が出現している。
5.自分で起き上がって座れるようになる。

解答3

解説

本症例のポイント

図の姿勢(手で足をつかむことができる)は、生後5か月頃でみられる。

1.× Landau反射(ランドウ反応)は消失していない。Landau反射(ランドウ反応)とは、乳児の腹部を検者の手掌で支えて水平にすると、頭を上げ体幹をまっすぐにし、さらに下肢を伸展する反応である。3つの頭部の立ち直り反応すべての効果が合わさった反応で、第1相:頸部、体幹軽度屈曲、四肢軽度屈曲。第2相:頸部水平、体幹軽度屈曲、四肢軽度屈曲。第3相:頸部伸展挙上、体幹伸展、四肢伸展傾向となる。第1相:0~6週、第2相:7週~3、4 ヵ月、第3相:6 ヵ月から1~2歳で統合される。
2.× 足底把握反射(足趾把握反射)は消失していない。足底把握反射(足趾把握反射)とは、新生児の母趾球を検者の母指で圧迫すると、全趾が屈曲する反射である。3 ヵ月ごろから弱くなり、9 ヵ月ごろには消失。(12 ヵ月とするものもある)
3.〇 正しい。頸椎の生理的前弯が生じている。頸椎の生理的弯曲が生じるのは、頸がすわった後(定頸後)の5ヵ月頃である。
4.× 座位での傾斜反応が出現していない。なぜなら、座位(臥位)での傾斜反応は、 7~8カ月で出現し、生涯継続するものである。ちなみに、長座位での反応は、下方側の上肢が外転、伸展し、体幹と頭部が上方側へ回旋し、下方側の下肢は外転し体幹の支持面を広げようとする。
5.× 自分で起き上がって座れるようにはなっていない。なぜなら、自分で起き上がって座れるようになる(ひとり座り)のは、7~8ヵ月でできるようになるため。

参考にどうぞ↓

【暗記用】姿勢反射を完璧に覚えよう!

 

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