第45回(H22) 理学療法士国家試験 解説【午後問題16~20】

 

16. 70歳の男性。2型糖尿病。心房細動があるが、β遮断薬によって安静時の脈拍70/分前後にコントロールされている。食事療法と運動療法とを通して生活習慣の改善に取り組みはじめた。
 運動処方の内容で適切な組合せはどれか。2つ選べ。

1.種類:ウォーキングによる有酸素運動を行う。
2.強度:運動時の脈拍110/分を目標とする。
3.持続時間:1回の運動で10分を目標とする。
4.実施時間帯:食事の1時間後を目安に開始する。
5.頻度:週に2回を目標とする。

解答1.4

解説

2型糖尿病の理学療法

 1型糖尿病の原因として、自己免疫異常によるインスリン分泌細胞の破壊などがあげられる。一方、2型糖尿病の原因は生活習慣の乱れなどによるインスリンの分泌低下である。運動療法の目的を以下に挙げる。

①末梢組織のインスリン感受性の改善(ぶどう糖の利用を増加させる)
②筋量増加、体脂肪・血中の中性脂肪の減少。(HDLは増加する)
③摂取エネルギーの抑制、消費エネルギーの増加。
④運動耐容能の増強。

【糖尿病患者に対する運動療法】
運動強度:一般的に最大酸素摂取量の40~60%(無酸素性代謝閾値前後)、ボルグスケールで『楽である』〜『ややきつい』
実施時間:食後1〜2時間
運動時間:1日20〜30分(週3回以上)
消費カロリー:1日80〜200kcal
運動の種類:有酸素運動、レジスタンス運動(※対象者にあったものを選択するのがよいが、歩行が最も簡便。)

【運動療法の絶対的禁忌】
・眼底出血あるいは出血の可能性の高い増殖網膜症・増殖前網膜症。
・レーザー光凝固後3~6カ月以内の網膜症。
・顕性腎症後期以降の腎症(血清クレアチニン:男性2.5mg/dL以上、女性2.0mg/dL以上)。
・心筋梗塞など重篤な心血管系障害がある場合。
・高度の糖尿病自律神経障害がある場合。
・1型糖尿病でケトーシスがある場合。
・代謝コントロールが極端に悪い場合(空腹時血糖値≧250mg/dLまたは尿ケトン体中等度以上陽性)。
・急性感染症を発症している場合。

(※参考:「糖尿病患者さんの運動指導の実際」糖尿病ネットワーク様HPより)

1.〇 正しい。種類:ウォーキングによる有酸素運動を行う。運動の種類としては、個人の生活にあった有酸素運動(ラジオ体操、 ジョギング、ウォーキングなど)を行う。
2.× 強度:運動時の「脈拍110/分」ではなく「本症例の場合90回以下」を目標とする。強度の目安として、目標心拍数【最大心拍数(220 – 年齢)× 60~70%】があげられる。これによれば、本症例の場合90~105回となる。しかし本症例の場合、β遮断薬を内服している。つまり、心拍応答が低いことが考えられるため、事前に運動負荷試験を行っていない場合、運動中の目標心拍数をさらに低めに設定する。
3.× 持続時間:1回の運動で「10分」ではなく「20~30分以上」を目標とする。
4.〇 正しい。実施時間帯:食事の(30分後~)1時間後を目安に開始する。なぜなら、食事前は運動により低血糖を引き起こすため。
5.× 頻度:週に「2回」ではなく「毎日」を目標とする。ただし、理想の目標であって、実際は2~4回(隔日)は最低限のラインとして設けている。

 

 

 

 

 

17. 21歳の男性。右上腕骨骨折。図に示す領域の知覚が脱失し、運動麻痺がみられる。
 装着するスプリントで適切なのはどれか。

1.フレクサーヒンジ・スプリント
2.Bennett型長対立スプリント
3.Thomasスプリント
4.ナックルベンダー
5.短対立スプリント

解答3

解説

本症例のポイント

図の領域は橈骨神経領域である。したがって、下垂手がみられる。
橈骨神経麻痺に適応となる装具は、①コックアップスプリント、②Thomasスプリント、③オッペンハイマースプリントがあげられる。

1.× フレクサーヒンジ・スプリントは、C6頸髄損傷で適応となる。腱固定作用(テノデーシスアクション)を補助する。
2.× Bennett型(ベネット型)長対立スプリントは、正中神経麻痺(猿手)C7頸髄損傷などで適応となる。母指を対立位に保持し、手関節を保持する。
3.〇 正しい。Thomasスプリントは、橈骨神経麻痺(下垂手)で適応となる。
4.× ナックルベンダーは、尺骨神経麻痺(鷲手)で適応となる。MP関節屈曲補助機能を持つ。
5.× 短対立スプリントは、正中神経麻痺(猿手)で適応となる。母指を対立位に保持する。

 

 

 

 

 

18.四辺形ソケットを用いた大腿義足装着者の異常歩行とその原因で誤っているのはどれか。

1.後方バンパーが柔らかすぎる
2.義足長が長すぎる
3.膝継手の摩擦が強すぎる
4.坐骨支持の不良
5.ソケット内壁が高すぎる

解答3

解説

1.〇 正しい。後方バンパーが柔らかすぎる場合は、図のようなフットスラップがみられる。足底が床にたたきつけられる歩行となる。
2.〇 正しい。義足長が長すぎる場合は、図のような伸び上り歩行がみられる。伸び上がり歩行は、義足が地面に引っ掛からないように、義足の遊脚相で健側の伸び上りが起こることである。
3.× 図は膝のインパクト現象である。膝継手の摩擦が「強すぎる場合」ではなく、「弱すぎる場合」に起こる。膝のインパクト現象は、遊脚相終期に膝継手が完全伸展したときに、衝撃が起こる現象である。
4.〇 正しい。坐骨支持の不良場合は、図のような過度の腰椎前弯現象がみられる。他の原因として、①ソケットの初期屈曲角不足、②股関節の伸展筋力が弱い場合、③ソケット前壁の支持力不足などが考えられる。
5.〇 正しい。ソケット内壁が高すぎる場合は、図のような体幹の側屈現象がみられる。他の原因として、①会陰部に圧痛や不快感がある、②断端の股関節外転筋力の不足、③ソケット外側壁の支持不足、①外側遠位部に圧痛がある場合、⑤義足長が短い、⑥外転歩行などが考えられる。

 

 

 

 

 

19. 85歳の男性。ADLは「手すりを使えば1階から2階までの上りは自立しており、下りる際には恐怖心のために見守りが必要」であった。
 階段昇降のFIMの得点はどれか。

1. 6点
2. 5点
3. 4点
4. 3点
5. 2点

解答2

解説

本症例のポイント

上がり:手すり把持にて自立
下り:恐怖心のために見守り

2.〇 正しい。5点である。なぜなら、本症例は下りの場合、恐怖心のために見守りが必要であるため。FIMの5点は介助者が必要であるが監視や準備のみ必要とするレベルである。

 

 

 

 

 

20. 44歳の患者。両上肢と体幹とに図のようなⅡ度の熱傷がある。
 受傷後3日目に保持すべき肢位で正しいのはどれか。

1.頸部:中間位
2.肩関節:外転位
3.右前腕:回内位
4.体幹:軽度屈曲位
5.膝関節:軽度屈曲位

解答2

解説

1.× 頸部は、中間位ではなく軽度伸展位とする。なぜなら、頸部屈曲拘縮が起こりやすいため。頸部は首の後ろに巻いたタオル等を挿入してポジションを整える。
2.〇 正しい。肩関節は外転位とする。なぜなら、肩関節は、内転・内旋拘縮しやすいため。肩関節外転・外旋位に整え拘縮を予防する。
3.× 右前腕は、回内位ではなく回外位とする。
4.× 体幹は、軽度屈曲位ではなく軽度伸展位とする。
5.× 膝関節は、軽度屈曲位ではなく伸展位とする。なぜなら、膝関節屈曲拘縮が起こりやすいため。

 

参考にどうぞ↓

理学療法士国家試験 熱傷についての問題7選「まとめ・解説」

 

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