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※問題の引用:厚生労働省より
※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。
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【PT専門のみ】脊髄損傷についての問題「まとめ・解説」
45回 午後12
12 頸髄損傷の残存機能レベルと用いられる装具で適切なのはどれか。
解答4
解説
1.× 図は、コックアップスプリントで橈骨神経麻痺に適応である。手関節を軽度背屈位にして、安定保持を目的とした装具である。C4まで残存に対しては、BFO(Balanced Forearm OrthosisまたはBall bearing Feeder Orthosis)やスプリングバランサーなどを使用する。患者の前腕を支えてごくわずかの力で上肢の有益な運動を行なわせようとする補装具の一種である。
2.× 図は、手関節駆動型把持装具(RIC型)でC6の機能残存に適応である。屈筋腱固定術の原理を利用して、手関節背屈によって示指・中指のMP関節を他動的に屈曲させ、対立位にある母指との間で把持を行わせるものである。
3.× 図は、長対立装具で正中神経麻痺に適応である。母指対立不能、母指・示指の屈曲障害を生じた際に用い、母指を対立位に保持する。C6まで残存は、正中神経麻痺低位型で適応となる短対立装具が適応となる。母指の掌側外転や対立運動の低下のため、第1,2中手骨間を一定に保つ役割を持つ装具である。つまり、母指を対立位に保持し、手関節を保持する。
4.〇 正しい。図は、ナックルベンダーで、主に尺骨神経麻痺に適応である。MP関節屈曲を補助し、鷲手変形を防止する。C7残存機能では、手指伸展が可能なレベルとなる。したがって、MP関節屈曲を補助するナックルベンダーを使用することにより、機能的な手指の使用が可能になる。
5.× 図は、指用スプリント(リングメイト)で関節リウマチの手指変形(スワンネック変形)に適応である。C8残存に対しては、短対立装具にて母指の対立運動を補助する。
(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)
45回 午前9
9 21歳の男性。脊髄損傷(第5頸髄節まで機能残存)。車椅子上での訓練場面を下図に示す。
この訓練姿勢と関連のある日常生活動作はどれか。
1.除圧動作
2.寝返り動作
3.足上げ動作
4.ズボン着脱動作
5.プッシュアップ動作
解答1
解説
第5頚髄節の機能残存レベルは、三角筋と上腕二頭筋が残存しており、肩関節運動、肘関節屈伸・回外が可能である。プッシュアップ動作はできないため、平地では車椅子や電動車椅子を使用する。
1.〇 正しい。除圧動作は、設問の写真と関連のある日常生活動作である。設問の写真の姿勢は側方への倒れ込みであり、除圧をする際に行われる。第5頸髄損傷者が除圧をする際には、写真のように前腕遠位を車椅子のグリップに引っ掛けて体幹を側方に倒れ込ませることによって行う。
2~3.× 寝返り動作/足上げ動作は、写真の動作とは関係は低い。ちなみに、足上げ動作とは、上肢を大腿後面に入れ持ち上げる動作のことである。C6レベルから可能である。
4~5.× ズボン着脱動作/プッシュアップ動作は、写真の動作とは関係は低い。ズボンの着脱およびプッシュアップは手関節の背屈が可能な第6頸髄損傷レベルから可能である。
46回 午後8
8 43歳の女性。頸髄完全損傷。洗濯物干しの作業中の写真を下図に示す。
この患者のZancolliの四肢麻痺上肢機能分類による機能残存レベルはどれか。
1.C5B
2.C6A
3.C6B1
4.C6B2
5.C7A
解答5
解説
(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)
・肘関節がやや屈曲位(肘ロックは行っていない)
・重力に対して肘関節伸展位で保持可能。
→上腕三頭筋が機能している。
本症例の選択物干しの作業中の写真を見ると、上腕三頭筋が働くC6B3 レベル以上と考えられる。したがって、選択肢5.C7Aがこの患者のZancolliの四肢麻痺上肢機能分類による機能残存レベルと考えられる。
46回 午後35
35 頸髄完全損傷患者(第5頸髄節まで機能残存)が可能な動作はどれか。(※不適切問題:解2つ)
1.便器上での自己導尿
2.車椅子上での食事動作
3.ベッド上でのズボン着脱
4.車椅子上での殿部除圧動作
5.床から車椅子への移乗動作
解答2・4
解説
第5頚髄節の機能残存レベルは、三角筋と上腕二頭筋が残存しており、肩関節運動、肘関節屈伸・回外が可能である。プッシュアップ動作はできないため、平地では車椅子や電動車椅子を使用する。
1.× 便器上での自己導尿は、男性の場合C6レベル、 女性の場合C8レベルで可能である。
2.〇 正しい。車椅子上での食事動作は、自助具(万能カフ)などを用いればC5レベル以上で行える。
3.× ベッド上でのズボン着脱は、C6レベル以上で可能になる。
4.〇 正しい。車椅子上での殿部除圧動作は、C5レベル以上で行える。両上肢を伸展させることにより、体幹を伸展、殿部を前にずらして行う。
5.× 床から車椅子への移乗動作は、C8レベルで可能である。
46回 午後36
36 脊髄損傷の機能残存レベルと可能な動作との組合せで正しいのはどれか。
ただし、機能残存レベルから下位は完全麻痺とする。
1.C4:万能カフを用いた食事
2.C5:標準型車椅子の操作
3.C6:腱固定効果を利用した把持
4.C7:橈側-手掌握り
5.C8:指尖つまみ
解答3
解説
(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)
1.× 万能カフ(自助具など)を用いた食事は、「C4」ではなく「C5以上」で可能となる。
2.× C5は、標準型車椅子にハンドリムを工夫する必要がある。ちなみにC4は、チンコントロール電動車椅子の適応である。標準型車椅子を使用するのは、C6である。
3.〇 正しい。腱固定効果(テノデーシス作用)を利用した把持は、C6で可能である。手関節背屈による把持作用をテノデーシスアクション(腱固定作用)が可能である。
4.× 橈側-手掌握りは、「C7」ではなく「C8」である。
5.× 指尖つまみは、「C8」ではなく「T1」である。指尖つまみは母指、示指の対立運動で成り立つ。ちなみに、C8は、①指屈筋により握り、②かぎかけ、③横つまみが可能である。Th1は、①指腹つまみ、②指尖つまみなど手の巧緻動作のつまみが可能である。
前腕回内と同時に手関節の背屈が起きると、掌の腱が引っ張られ指の関節が屈曲すること。
47回 午後1
1 脊髄損傷患者(第4頸髄節まで機能残存)に対して、図のようにBFOを設置した。
BFOを利用して肘関節屈曲の動きを獲得するために、筋力を強化すべきなのはどれか。
1.三角筋
2.肩甲挙筋
3.大菱形筋
4.上腕二頭筋
5.僧帽筋下部
解答5
解説
(引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)
BFO(balanced forearm orthosis:非装着式上肢装具)による良肢位の保持は、第4〜5頸椎レベル損傷の場合に用いる。BFO(balanced forearm orthosis:非装着式上肢装具)は、前腕を支持することにより、上肢の重さを軽減させ、弱い力で上肢の動きを引き出す自助具である。
1~4.× 三角筋/肩甲挙筋/大菱形筋/上腕二頭筋は、C5レベルである。
5.〇 正しい。僧帽筋下部は、BFOを利用して肘関節屈曲の動きを獲得するために、筋力を強化すべきである。僧帽筋下部の髄節レベルはC4である。作用は肩甲骨の下制である。C4頸髄損傷の肘関節屈曲動作について、僧帽筋下部の収縮により肩甲骨を下制させる。そうすることで、肩甲骨関節上結節には上腕二頭筋長頭が付着しており、上腕二頭筋を介して肘関節を屈曲することができる。
47回 午後11
11 28歳の男性。交通事故で胸髄損傷(第7胸髄まで機能残存)を受傷後、2か月が経過した。受傷時には頭部外傷を認めなかった。現在は、全身状態は良好で、車椅子で院内の移動や身辺動作は自立しているが、自排尿と尿失禁とはみられない。
この時点の排尿管理として適切なのはどれか。
1.膀胱留置カテーテル
2.膀胱瘻
3.コンドーム型収尿器
4.自己導尿
5.圧迫排尿
解答4
解説
・28歳の男性。
・交通事故で胸髄損傷(第7胸髄まで機能残存)
・頭部外傷を認めない。
・現在:全身状態は良好、車椅子で身辺動作自立。
・自排尿と尿失禁とはみられない。
1.× 膀胱留置カテーテルは優先度が低い。なぜなら、膀胱留置カテーテルは、長期間の使用で感染リスクがあるため。本症例は受傷後、2か月経過しており、身辺動作が自立している。ちなみに、膀胱留置カテーテルとは、尿道に留置する方法である。長期の留置により、膀胱が膨らみにくくなるため、他の方法が選択できるのであれば、長期留置は避けるべきである。
2.× 膀胱瘻(ぼうこうろう)は優先度が低い。なぜなら、膀胱瘻は膀胱留置カテーテルを長期に渡って留置せざるを得ない場合に適応となるため。ちなみに、膀胱瘻とは、恥骨上部の下腹部から腹壁を通して膀胱との瘻孔をつくり、膀胱内にカテーテルを挿入し、永久もしくは一定期間尿を体外に排出する方法である。 通常、カテーテル排尿が必要な場合で、経尿道的な膀胱留置カテーテルによる排尿に問題がある場合(尿道皮膚瘻など)が膀胱瘻の適応である。
3.× コンドーム型収尿器は優先度が低い。なぜなら、本症例は自排尿と尿失禁とはみられないため。コンドーム型収尿器は、失禁があり尿閉がない場合に適応となる。装着・交換するが間欠的導尿用は楽である。代用としておむつである。
4.〇 正しい。自己導尿は、現時点の排尿管理では第一選択肢である。男性の場合C6レベル、 女性の場合C8レベルで可能である。自己導尿は、時間を決めて自分で導尿を行うものである。セルフカテーテルを尿道に入れるため、つかみ(ピンチ)動作ができること、両手動作ができること、清潔管理ができることが必要になる。
5.× 圧迫排尿は優先度が低い。なぜなら、圧迫排尿は自排尿がみられるが、残尿もある場合に適応となるため。完全尿閉では膀胱破裂の可能性がある。
47回 午後34
34 頸髄完全損傷患者(第5頸髄節まで機能残存)で機能するのはどれか。
1.横隔膜
2.腹直筋
3.外肋間筋
4.内肋間筋
5.外腹斜筋
解答1
解説
第5頚髄節の機能残存レベルは、三角筋と上腕二頭筋が残存しており、肩関節運動、肘関節屈伸・回外が可能である。プッシュアップ動作はできないため、平地では車椅子や電動車椅子を使用する。
1.〇 正しい。横隔膜の支配神経は、横隔神経と副横隔神経(C3~C5)である。
2.× 腹直筋の支配神経は、肋間神経・腸骨下腹神経(T7~T12)である。
3~4.× 外肋間筋/内肋間筋の支配神経は、肋間神経(T1~T11)である。
5.× 外腹斜筋の支配神経は、肋間神経・腸骨下腹神経(T5~L1)である。
参考にどうぞ↓
48回 午後12
12 22歳の男性。頸髄損傷(第6頸髄節まで機能残存)。車椅子は床から390 mm の座面に100 mm の低反発素材のクッションを使用している。移乗は、車椅子から前・後方移動で自立し、ADLは環境整備の上で自立が見込めるようになった。1人暮らしを目的にした住宅改修を図に示す。
正しいのはどれか。
1.①入口のスロープ傾斜を1/8とした。
2.②便器の高さを床から400 mm とした。
3.③移乗の車椅子操作のために回転半径を600 mm 確保した。
4.④浴槽のふちの高さを洗い場から150 mm とした。
5.⑤テラスへの出入り口は埋め込みレールとした。
解答5
解説
本症例は、C6レベルでプッシュアップ動作困難である。主に車椅子操作で、段差の高さやスロープを乗り越えることに難渋する可能性が高い。
1.× ①入口のスロープ傾斜を1/8ではなく、1/12(屋内)~1/15(屋外)が推奨されている。
2.× ②便器の高さを床から400 mm だと高すぎる。車椅子の座面の高さ390mmとクッションの高さ100mmである。したがって、体重によるクッションの沈み込みを踏まえると、便器と車椅子の移乗場面において、高低差が生じる。
3.× ③移乗の車椅子操作のために回転半径を600 mm(直径120cm) 確保だと不十分である。車椅子の回転直径は150cmが望ましい。
4.× ④浴槽のふちの高さを洗い場から150 mm にするのではなく、ふちと洗い場を同じ高さに設定する。
5.〇 正しい。⑤テラスへの出入り口は埋め込みレールとした。なぜなら、埋め込みレール使用により、テラスへの出入り口の段差が解消されるため。
数値:【建築物移動等円滑化基準】(建築物移動等円滑化誘導基準)
玄関出入口の幅:【80cm】(120cm)
居室などの出入口:【80cm】(90cm)
廊下幅:【120cm】(180cm)※車椅子同士のすれちがいには180cm
スロープ幅:【120cm】(150cm)
スロープ勾配:【1/12以下】(1/12以下、屋外は1/15)
通路の幅:【120cm】(180cm)
出入口の幅:【80cm】(90cm)
かごの奥行:【135cm】(135cm)
かごの幅(一定の建物の場合):【140cm】(160cm)
乗降ロビー:【150cm】(180cm)
(※参考:「バリアフリー法」国土交通省HPより)
(※参考:「主要寸法の基本的な考え方」国土交通省様HPより)
48回 午前33
33 頸髄損傷による完全四肢麻痺者の機能残存レベルと自立可能な動作の組合せで正しいのはどれか。
1.C4:天井走行式リフターを使用した移乗
2.C5:自己導尿による排尿
3.C6:トランスファーボードなしでの自動車運転席への移乗
4.C7:車椅子から床への移乗
5.C8:手動装置なしでの自動車運転
解答4
解説
1.× 天井走行式リフターを使用した移乗は、自立可能な動作ではない。他者からの援助・介助で天井走行式リフターや床走行式リフター等を用いて移乗を行う。
2.× 自己導尿による排尿は、C5ではなく、C7以上の機能残存で可能である。
3.× トランスファーボードなしでの自動車運転席への移乗は、C6ではなく、トランスファーボードありではC6B2レベル以上で、トランスファーボードなしではC7~8以上で可能となる。
4.〇 正しい。車椅子から床への移乗は、C7以上で可能となる。C7レベルで可能となるのは、車椅子から床への移乗、車椅子からベッドへの移乗である。
5.× 手動装置なしでの自動車運転は、C8ではなくT12で可能となる。なぜなら、体幹の安定は不可欠であるため。
49回 午前9-10
次の文により9、10の問いに答えよ。
25歳の男性。転落による頸髄損傷。受傷後2年経過。筋力はMMTで、三角筋4、大胸筋鎖骨部2、上腕二頭筋5、上腕三頭筋0、回内筋0、腕橈骨筋4、長橈側手根伸筋3、橈側手根屈筋0、手指屈筋0で左右差はない。
9 自動車運転の際に用いる旋回装置の写真を下図に示す。
この患者に適しているのはどれか。
1.①
2.②
3.③
4.④
5.⑤
解答5
解説
MMTの結果から、上腕三頭筋が機能残存しておらず、長橈骨手根伸筋は機能しているが弱いため、残存機能レベルはZancolliの分類のC6Aであると考えられる。C6Aは手関節背屈が弱く、肘伸展や手関節掌屈、手指の動作が困難なレベルである。
1.× ①は、スティック型旋回装置である。手で握ることができる場合に適応となる。
2.× ②は、リング型旋回装置である。義手の爪をリングの中に差し込んで操作する義手用の旋回装置である。
3.× ③は、標準型旋回装置である。手で握ることができる場合に適応となる。
4.× ④は、Y字型ないしU字型旋回装置である。ステアリング操作の軽い自動車であれば、握力が弱くても手で握ることができれば適応となる。C6Aではテノデーシスで手背屈を持続し続けるのが困難であるため、手が抜けてしまう可能性がある。
5.〇 正しい。⑤は、横型旋回装置であり、手掌型の一種である。手掌型には横型と縦型があり、臨床的には、縦型はC6A・B1、横型はC6B2~適応とされる。
49回 午前9-10
次の文により9、10の問いに答えよ。
25歳の男性。転落による頸髄損傷。受傷後2年経過。筋力はMMTで、三角筋4、大胸筋鎖骨部2、上腕二頭筋5、上腕三頭筋0、回内筋0、腕橈骨筋4、長橈側手根伸筋3、橈側手根屈筋0、手指屈筋0で左右差はない。
10 旋回装置を右ハンドル乗用車のハンドルに取り付ける位置として正しいのはどれか。
1.①
2.②
3.③
4.④
5.⑤
解答1※
(※備考:当時採点除外など取り扱いをすることが望ましいと意見された。)
解説
旋回装置は、ハンドルの保持や操作ができない者に使用する装置である。上肢の残存する機能レベルに応じて形状が変わる。頸髄損傷者の運転時には、姿勢保持のための体幹サポートが重要であり、さらに、ドア内部の肘掛部分で肘を安定させることもある。C6Aでは残存する機能も限られており、本来ならば肩関節屈曲の力をどの位置からなら出しやすいか実車にて評価し、取り付け位置の検討が必要となる。
1.〇 正しい。①のようにハンドルの右下方に取り付けることが多い。運転で最も力が必要な時は、停車時からのすえ切りであり、その際、ハンドルを押し上げる必要がある。
2.△ ②のように、ハンドルの右上方に取り付けることもあるが、最も優先度が高いのは①となる。ちなみに、「脊髄損傷のリハビリテーション改訂第2版p204」には②の位置が正しい位置として示されている。
3.× ③は不適切である。なぜなら、最上方に設置されており、上肢を空間で保持しなければならなく、正中位を超えたリーチとなることもあるため。
4~5.× ④~⑤は、操作困難となる。なぜなら、正中位を超えたリーチが必要になり、座位が不安定となるため。
49回 午後9
9 脊髄完全損傷患者(Zancolliの四肢麻痺上肢機能分類C7B)に適した装具はどれか。
解答5
解説
Zancolliの四肢麻痺上肢機能分類(頸髄損傷分類)C7Bは、手指の完全伸展が可能だが、母指伸展が弱い状態である。
1.× RICスプリントである。手関節背屈運動により対立つまみを可能にする装具である。C6の残存に適応となる。
2.× MP伸展補助装具(逆ナックルベンダー)である。MP関節を伸展位に矯正する。C7BではMP関節伸展可能なため、不適切である。
3.× コックアップ型装具である。手関節を背屈位に、母指外転位に保持し、機能的に把持動作を獲得する。橈骨神経麻痺高位型に適応がある。
4.× オッペンハイマースプリントである。橈骨神経麻痺高位型の際に適応である。
5.〇 正しい。短対立スプリントは、脊髄完全損傷患者(Zancolliの四肢麻痺上肢機能分類C7B)に適した装具である。C7Bでは母指を対立位にできないため、母指を対立位に保持する装具である短対立スプリントの適応となる。
50回 午前11
11 20歳の男性。頸髄完全損傷。動作獲得を制限する関節可動域制限、残存筋力の低下および合併症はない。洋式便座に側方移乗で移乗し、便座上座位で排便を行う。この患者が使用する坐薬挿入の自助具と、自助具を使用する際の姿勢を図に示す。
Zancolliの四肢麻痺上肢機能分類による最上位の機能残存レベルはどれか。
1.C6A
2.C6B1
3.C6B2
4.C6B3
5.C7A
解答4
解説
本症例の特徴は、
①洋式便座に側方移乗で移乗し、便座上座位で排便を行うことができる。
②坐薬の挿入の図から、カフの利用と前腕回外位での挿入が可能である。
①からC6B3(手指伸展の機能はないが、円回内筋・橈骨手根屈筋・上腕三頭筋が機能する)以上の機能残存レベル、②C6B1(円回内筋・橈骨手根屈筋・上腕三頭筋の機能はないが、手関節背屈筋は強く働く)以上の機能残存レベルであることが読み取れる。したがって、選択肢4.C6B3(手指伸展の機能はないが、円回内筋・橈骨手根屈筋・上腕三頭筋が機能する)が正しい。
1.× C6A/C6B1/C6B2は、上腕三頭筋が機能しないため、車椅子の速報以上は不可能である。ちなみに、C6B2は、前方移乗なら可能となる。
5.× C7Aは、最上位の機能残存レベルではない。
51回 午前4
4 70歳の女性。頸髄完全損傷で第4頸髄機能残存。認知機能は正常である。受傷後6か月で在宅生活となり、訪問リハビリテーション時に踵部の発赤を認めた。
原因として最も考えられるのはどれか。
1. 痙縮
2. 褥瘡
3. 骨萎縮
4. 静脈血栓症
5. 異所性骨化
解答2
解説
・70歳の女性(頸髄完全損傷で第4頸髄機能残存)
・認知機能正常。
・受傷後6か月:在宅生活、訪問リハビリテーション時に踵部の発赤を認めた。
→頚髄損傷による下肢の麻痺が原因で、褥瘡発生の初期であり、踵部の発赤が生じていると考えられる。したがって、選択肢2.褥瘡が正しい。発赤だけでも褥瘡の初期症状と読み取ることがポイントである。
1.× 痙縮は、上位運動ニューロンの障害でみられる。頚髄損傷で起こりうるが、下肢の痙縮は伸展パターンを取りやすい。したがって、踵部の発赤と痙縮の関係は薄い。
3.× 骨萎縮は、不動などにより骨吸収亢進が起こり生じる。頚髄損傷により、立位などの抗重力位をとれないため骨萎縮は起こるが、踵部の発赤と骨萎縮の関係は薄い。
4.× 静脈血栓症が生じた場合、約半数は無症状である。 そのため、初期症状は、胸の痛みや息切れが肺塞栓症による異常を知らせる。 脚の太い静脈の血流が遮断されると、ふくらはぎがむくんで、痛み、圧痛、熱感などの症状が現れることもある。予防法として、①下肢挙上し、重力による静脈還流を促す。②弾性ストッキングや弾性包帯の利用。③下肢の運動(足部の運動、膝の等尺性運動)などがあげられる。踵部の発赤と静脈血栓症の関係は薄い。
5.× 異所性骨化とは、本来骨化がみられない場所が骨化する状態である。頚髄損傷の合併症として起こり、骨梁構造を認める点が石灰化との違いである。 好発部位は股関節(最も多い)・膝関節(2位)・肩関節(4位)・肘関節(3位)などである。脊髄損傷受傷後1~6か月くらいに発症することが多い。踵部の発赤と異所性骨化の関係は薄い。
褥瘡とは、局所の持続的な圧迫により組織に虚血が生じて発生する皮膚の潰瘍あるいは皮下組織の損傷のことである。背臥位では、後頭骨や肩甲骨、肘頭、仙骨、踵部などの骨の突出している場所に好発する。予防法としては、最も負担がかかりやすい骨突出部を除圧し、面で支持することで一点に圧をかけることなく、圧の分散に努める。褥瘡予防マットやクッションなどを活用する。また、清潔を心がけ、体位変換を行う。
51回 午前10
10 25歳の女性。脊髄完全損傷(第5胸髄節まで機能残存)。車椅子(寸法:全長85cm、全幅55 cm、前座高42 cm)での自立生活に向けて図のように住宅改修を行った。
考えられる問題点はどれか。
1. ①のエレベーターに乗るとバックで出なければならない。
2. ②の玄関スロープを上ることができない。
3. ③のトイレに入った後で扉を閉めることができない。
4. ④の洗体台が高く移乗できない。
5. ⑤の車椅子用台所シンクに対面できない。
解答3
解説
数値:【建築物移動等円滑化基準】(建築物移動等円滑化誘導基準)
玄関出入口の幅:【80cm】(120cm)
居室などの出入口:【80cm】(90cm)
廊下幅:【120cm】(180cm)※車椅子同士のすれちがいには180cm
スロープ幅:【120cm】(150cm)
スロープ勾配:【1/12以下】(1/12以下、屋外は1/15)
通路の幅:【120cm】(180cm)
出入口の幅:【80cm】(90cm)
かごの奥行:【135cm】(135cm)
かごの幅(一定の建物の場合):【140cm】(160cm)
乗降ロビー:【150cm】(180cm)
(※参考:「バリアフリー法」国土交通省HPより)
(※参考:「主要寸法の基本的な考え方」国土交通省様HPより)
1.× ①のエレベーターに乗るとバックで出る必要はない。なぜなら、車椅子の回転直径の150cmを満たすため。エレベーター内で回転して正面から出ることが可能である。
2.× ②の玄関スロープを上ることができる。なぜなら、スロープの勾配が1/12であるため。スロープの勾配は、バリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)で1/12を超えないことと定められている。スロープに十分な長さが設定できるなど条件が整う場合は、1/15~1/20が推奨される。
3.〇 正しい。③のトイレに入った後で扉を閉めることができない。なぜなら、車椅子(全長85cm、全幅55cm)であるため。車椅子の場合は、「開き戸」ではなく引き戸の方が望ましい。
4.× ④の洗体台に移乗可能である。なぜなら、洗体台(高さ45cm)は、車椅子の前座高42cmと合っているため。
5.× ⑤の車椅子用台所シンクに対面できる。なぜなら、有効幅が120cmあれば、設問にある車椅子の大きさならば対面可能であるため。ちなみに、90°の方向転換は幅90cmあれば行える。
53回 午前36
36 第6頸椎髄節まで機能残存している頸髄損傷患者に対する作業療法として適切でないのはどれか。
1.上衣着脱は被りタイプから練習する。
2.コンピュータの入力デバイスを検討する。
3.排便は臥位で行えるように環境を整える。
4.自己導尿ができるようにカテーテル操作を練習する。
5.車椅子で起立性低血圧が起こった時は前屈位する。
解答3
解説
(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)
第6頸髄節機能残存レベルでは、トランスファーボードの利用などにより移乗ができ更衣・整容・食事も自助具を使用し自立可能である。
1.〇 正しい。上衣着脱は被りタイプから練習する。被りタイプの着脱はC5で自立可能である。前開きのシャツなどは、動作が複雑で衣服の工夫や自助具が必要になる。
2.〇 正しい。コンピュータの入力デバイスを検討する。コンピュータの入力では、両手でのタイピングは難しいので、万能カフにポインティングデバイスを用いてキーボードを操作するか、タッチパネルタッチパッドを使うなど、入力デバイスを検討する。
3.× 排便は臥位で行えるように環境を整えるのは適切ではない。なぜなら、第6頸髄節機能残存レベルでは、頸髄損傷者用トイレを使用すれば、自立の可能性もあるため。また、座位で行う方が生理的であり尊厳も保たれる。
4.〇 正しい。自己導尿ができるようにカテーテル操作を練習する。男性は自己導尿操作が自立する可能性があり、女性はC6B3レベルでかつ設備・自助具の工夫があれば自立できる。
5.〇 正しい。車椅子で起立性低血圧が起こった時は前屈位する。起立性低血圧の発作時には、前屈位をとり頭部を低くすることで血流の還流量を増やす。
54回 午前7
7 20歳の男性。頸髄完全損傷。受傷3週後のDaniels らの徒手筋力テストにおける上肢の評価結果を示す。
この患者が獲得する可能性の最も高いADLはどれか。
1. 床から車椅子へ移乗する。
2. 10cmの段差をキャスター上げをして昇る。
3. ベッド上背臥位からベッド柵を使用せずに寝返る。
4. ベッド端座位のプッシュアップで20cm殿部を持ち上げる。
5. 車椅子上、体幹前屈位からアームサポートに手をついて上半身を起こす。
解答3
解説
20歳の男性(受傷3週後:頸髄完全損傷)。
→徒手筋力テストの結果より、長・短橈側手根伸筋が残存していること、円回内筋の収縮が困難であることより、Zancolli分類ではC6BⅠである。自立度の目安としては、寝返り自立、上肢装具を使用し書字可能、更衣一部自立である。
1.× 床から車椅子へ移乗することは、C6BⅢ以上残存レベルで行える。上腕三頭筋のプッシュアップ動作が必要になる。
2.× 10cmの段差をキャスター上げをして昇ることは、C8以上残存レベルで行える。車椅子のキャスター上げ(瞬間的に持ち上げる)/車椅子で5cmの段差昇降は、C7レベルの機能残存が必要である。瞬間的なキャスター上げは、約5cmの段差昇降を可能にする。ちなみに、キャスター上げの保持(持続的なキャスター上げ、キャスターを上げたままの移動)は、手指屈筋群が機能するC8レベル以下の機能が必要になる。
3.〇 正しい。ベッド上背臥位からベッド柵を使用せずに、(頚部と上肢を回旋し反動を利用して)寝返ることができる。
4.× ベッド端座位のプッシュアップで20cm殿部を持ち上げることは、C6BⅢ以上残存レベルで行える。上腕三頭筋のプッシュアップ動作が必要になる。
5.× 車椅子上、体幹前屈位からアームサポートに手をついて上半身を起こすことは難しい。上腕三頭筋の肘伸展・広背筋の体幹伸展筋力がMMT0であることから難しいと言える。
54回 午後10
10 頸髄損傷完全麻痺者(第6頸髄節まで機能残存)が肘での体重支持を練習している図を示す。
この練習の目的動作はどれか。
1. 導尿カテーテル操作
2. ベッド上での移動
3. 足上げ動作
4. 上着の着脱
5. 寝返り
解答2
解説
(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)
1.× 導尿カテーテル操作は、C7レベル以上の機能残存で可能になる。
2.〇 正しい。ベッド上での移動の練習場面である。C6レベルの機能残存では、肘で体重を支持し、そこを軸に頭部の屈曲・伸展の動きを伝えることで前方への移動が可能である。
3.× 足上げ動作は、C6レベル残存では行えない。足を動かすには、上肢を大腿部へひっかけ体幹の力と一緒に動かす必要がある。
4.× 上着の着脱は、肘関節での体重支持といった練習にはならない。「上着」ではなく、ズボンの着脱は肘関節の体重支持は必要である。肘関節で体重を支持することで、殿部や下肢への荷重を減らして着脱を行う。
5.× 寝返り(C6レベルの機能残存)は、ベッド柵を使用する。もしくは、上肢の重みや肩甲骨の外転・広背筋を用いて体幹を回旋させる。
55回 午前6
6 30歳の男性。頸髄損傷完全麻痺(第6頸髄まで機能残存)。上腕三頭筋の筋力検査を行う場面を図に示す。
代償運動が出現しないように作業療法士が最も抑制すべき運動はどれか。
1. 体幹屈曲
2. 肩関節屈曲
3. 肩関節外転
4. 肩関節外旋
5. 前腕回内
解答4
解説
代償動作とは、本来の動作や運動を行うのに必要な機能以外の機能で補って動作や運動を行うことです。ある運動を行うときに、動筋の筋力低下や麻痺からその作用を他の筋の運動によって補おうとする見せかけの運動をすること。筋力検査をする場合には注意する必要がある。
【肘関節伸展:代償動作】
①肩関節外旋(棘下筋、小円筋)を使用し、重力で肘関節伸展する。
②肩関節水平内転(大胸筋)を使用し、重力で肘関節伸展する。
1.× 体幹屈曲は、本症例(第6頸髄までの機能残存レベル)では機能しない。
2.× 肩関節屈曲した場合、さらに前腕の重さで肘関節屈曲する。
3.× 肩関節外転は行えない。図の姿勢から、肩関節外転は行えず、肩関節水平外転としての動作が成立する。肩関節水平外転した場合は、遠心力により肘関節伸展が行える。
4.〇 正しい。肩関節外旋は、代償運動が出現しないように作業療法士が最も抑制すべき運動である。なぜなら、肩関節外旋(棘下筋、小円筋)を使用し、重力で肘関節伸展するため。また、棘下筋・小円筋の神経支配は C5~6レベルであるため、機能は残存する。
5.× 前腕回内した場合、肘関節は中間位のまま保持される。代償運動は生じない。
57回 午前3
3 50歳の女性。末梢神経麻痺により、円回内筋、長掌筋、橈側手根屈筋、浅指屈筋、深指屈筋(示指・中指)、長母指屈筋、方形回内筋、短母指外転筋、短母指屈筋(浅頭)、母指対立筋、第1・2虫様筋が麻痺している。
適応する装具で正しいのはどれか。2つ選べ。
1.短対立装具(Bennett型)
2.長対立装具(Rancho型)
3.手関節駆動型把持装具(RIC型)
4.Thomas型装具
5.ナックルベンダー
解答2・3
解説
50歳の女性。末梢神経麻痺。円回内筋、長掌筋、橈側手根屈筋、浅指屈筋、深指屈筋(示指・中指)、長母指屈筋、方形回内筋、短母指外転筋、短母指屈筋(浅頭)、母指対立筋、第1・2虫様筋が麻痺していることから「正中神経麻痺(高位型)」、「C6機能残存レベル」である。
1.× 短対立装具(Bennett型)は、正中神経麻痺(低位型)やC7頸髄損傷などで適応となる。母指を対立位に保持し、手関節を保持する。
2.〇 正しい。長対立装具(Rancho型)は、手関節駆動式把持スプリントともいい、正中神経麻痺(高位型)やC6レベルまで残存している脊髄損傷に対して用いる。
3.〇 正しい。手関節駆動型把持装具(RIC型)は、C6の機能残存に適応で、手関節背屈運動により対立つまみを可能にする。屈筋腱固定術の原理を利用して、手関節背屈によって示指・中指のMP関節を他動的に屈曲させ、対立位にある母指との間で把持を行わせるものである。
4.× Thomas型装具は、橈骨神経麻痺(下垂手)に対する上肢装具である。
5.× ナックルベンダーは、尺骨神経麻痺(鷲手)に対する上肢装具である。
参考にどうぞ↓
57回 午前10
10 19歳の男性。バイク事故で受傷。脊髄損傷完全麻痺(第10胸髄節まで機能残存)。ADLは自立し、今後は車椅子マラソンを行うことを目標に作業療法に取り組んでいる。車椅子を下に示す。
マラソン用車椅子はどれか。
1.①
2.②
3.③
4.④
5.⑤
解答2
解説
・19歳の男性。
・脊髄損傷完全麻痺(第10胸髄節まで機能残存)
・今後は車椅子マラソンを行う。
1.× ①はバスケットボール用の車椅子である。タイヤをハの字にすることで、ターンがしやすくなることと横方向の安定性を高める効果がある。14~20°程角度がついている。また、車椅子の前方にバンパーを取り付けることで接触時に競技者の足を保護し、かつ車体の強度を上げている。接触の多い競技のため後方にはリアキャスターが取り付けられており、後方への転倒を防止する。
2.〇 正しい。②はマラソン用車椅子である。一般の車椅子と異なり、3輪式になっている。前輪は20インチ程度で、後輪は競技者の体格に応じて26~27インチのものが使用されている。車体にはカーボンなどの軽量な素材が使用されており、競技者の負担を軽減している。
3.× ③はラグビー用の車椅子である。車椅子ラグビーの車椅子には、攻撃型と守備型があり、写真は攻撃型である。激しいぶつかり合いに耐えられるよう装甲者のようになっている。機敏な動きができる用タイヤはハの字となっている。タイヤにはタックルからの保護や引っ掛かり部分を減らす目的で、スポークカバーが装着されている。
4.× ④はテニス用の車椅子である素早く向きを変えてボールを打ち返す位置につくことができるように軽量で回転性能や敏捷性が得られるよう作られている。
5.× ⑤は卓球やバドミントンなどの衝撃が加わらないスポーツ用の車椅子である。素早いターンや方向転換を可能にするため、適度なキャンパー角を設定できる。キャンパー角をつけることにより、軽い力で移動したい方向に旋回することができる。
57回 午前12
12 26歳の男性。C6レベルの頸髄損傷完全麻痺。仕事中の事故により受傷し入院。翌日からリハビリテーションが開始され継続している。受傷後1か月での徒手筋力テストの結果を表に示す。
受傷後2か月で到達可能と予測される動作はどれか。
1.更衣
2.自己導尿
3.プッシュアップ
4.万能カフを用いた食事
5.ベッドから車椅子への移乗
解答4
解説
本症例は、C6レベルの頸髄損傷完全麻痺である。その中でも、現在のMMTの結果から、長短橈側手根伸筋・円回内筋が不十分であるため「C6A」である。つまりC7レベルは到達困難と考えられる。C7の主な動作筋は、上腕三頭筋、橈側手根屈筋である。車椅子駆動、移乗動作、自動車運転可能なレベルまで目指せる。自助具を用いての整容・更衣動作が可能である。
C6機能残存レベルは、【主な動作筋】大胸筋、橈側手根屈筋、【運動機能】肩関節内転、手関節背屈、【移動】車椅子駆動(実用レベル)、【自立度】中等度介助(寝返り、上肢装具などを使って書字可能、更衣は一部介助)である。したがって、C6機能残存レベルのプッシュアップは、肩関節外旋位・肘関節伸展位・手指屈曲位にて骨性ロックを使用し、不完全なレベルであることが多い。
1.3.5.× (自助具を用いた)更衣/プッシュアップ/ベッドから車椅子への移乗は、C7レベル以上が必要となる。C6機能残存レベルのプッシュアップは、肩関節外旋位・肘関節伸展位・手指屈曲位にて骨性ロックを使用し、不完全なレベルであることが多い。
2.× 自己導尿は、男性の場合C6レベル、 女性の場合C8レベルで可能である。本症例は男性であり、女性ほど自己導尿が難しくないため、ゆくゆくは獲得可能である。ただ、選択肢の中に自己導尿より難易度が低く、先に獲得できるものがある。ちなみに、女性の場合の事故導尿は、男性に比べ尿道口が見えにくく、陰部の確認を目で直接行うことが困難であるため、手指の動きや感覚が重要となり、男性よりも高い機能が求められる。
4.〇 正しい。万能カフを用いた食事は、受傷後2か月で到達可能と予測される動作である。なぜなら、C5レベル以上で行えるため。MMTの結果でも、現時点で行えている機能はあると推測でき、万能カフの操作方法など練習していくことで、受傷後2か月で到達可能と予測される動作である。
(Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)
57回 午後8
8 28歳の女性。頸髄損傷(第6髄節まで機能残存)。車椅子とベッド間の移乗は前・後方移動で自立し、ADLは自助具や環境整備で自立の見込みを得た。住宅改修を図に示す。
正しいのはどれか。2つ選べ。
1.①の廊下幅は歩行者とのすれ違いのために140cmにした。
2.②のポーチの幅は車椅子を回転させるために100cmにした。
3.③の廊下と居室の開口部通過の幅は90cmにした。
4.④のシャワーフックの位置の高さは150cmにした。
5.⑤の屋外スロープの勾配は1/4にした。
解答1・3
解説
・28歳の女性。
・頸髄損傷(第6髄節まで機能残存)
・車椅子とベッド間の移乗は前・後方移動で自立。
・ADLは自助具や環境整備で自立の見込み。
1.〇 正しい。①の廊下幅は、歩行者とのすれ違いのために140cmにした。高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー新法)の第17条には、「廊下などは、幅120cm以上、50mごとに車いすの転回が可能なスペースを設けること」が規定されている。
2.× ②のポーチの幅は車椅子を回転させるために、100cmではなく「150cm」の幅が必要である。②のポーチで、玄関の鍵をかけたり、⑤屋外スロープへの方向転換が必要であるため広いほうが良い。
3.〇 正しい。③の廊下と居室の開口部通過の幅は90cmにした。車椅子の90°の方向転換に「85〜90cm」必要である。
4.× ④のシャワーフックの位置の高さは、「150cm」と固定ではなく、高さを調整できる方(垂直に取り付けられたバーに沿ってスライドし高さを調整できるもの)が良い。浴室用車いすやシャワーチェア等に座った状態で手が届くようにする。固定の場合は、高い位置(立位用:150〜170cm)と低い位置(座位用:60〜80cm)に2つつけるのが望ましい。ただし、本症例の場合、頸髄損傷(第6髄節まで機能残存)であるため、固定式の場合は低い位置(座位用:60〜80cm)に設定すべきである。ちなみに、シャワーホースの長さは150cmが望ましい。
5.× ⑤の屋外スロープの勾配は、1/4ではなく「1/12以下」にする。1/15~1/20が推奨されている。
数値:【建築物移動等円滑化基準】(建築物移動等円滑化誘導基準)
玄関出入口の幅:【80cm】(120cm)
居室などの出入口:【80cm】(90cm)
廊下幅:【120cm】(180cm)※車椅子同士のすれちがいには180cm
スロープ幅:【120cm】(150cm)
スロープ勾配:【1/12以下】(1/12以下、屋外は1/15)
通路の幅:【120cm】(180cm)
出入口の幅:【80cm】(90cm)
かごの奥行:【135cm】(135cm)
かごの幅(一定の建物の場合):【140cm】(160cm)
乗降ロビー:【150cm】(180cm)
(※参考:「バリアフリー法」国土交通省HPより)
(※参考:「主要寸法の基本的な考え方」国土交通省様HPより)
57回 午後35
35 頸髄損傷完全麻痺(第4頸髄節まで機能残存)に使用しないのはどれか。
1.万能カフ
2.電動車椅子
3.透明文字盤
4.環境制御装置
5.食事支援ロボット
解答3
解説
第4頸髄節の運動機能は、吸気・肩甲骨挙上が可能である。また、横隔膜の動きは障害されていないため、自発呼吸が行える。したがって、人工呼吸器は不必要である。移動は、下顎などを用いて電動車いすを操作する必要がある。
(写真引用:GIGAZINE様HPより~食事支援ロボット~)
1.〇 万能カフは使用する。「万能カフ」とは、フォークやスプーンに巻きつけて使う補助具である。 握力の弱い方や手指の曲がらない方向けであり、 食事や文字書きが自然な動作でラクになる。C5から用いることが多いが、選択肢の中で最も使用しないといえるものがほかにある。
2.〇 電動車椅子は使用する。下顎などを用いて電動車いすを操作する。
3.× 透明文字盤は使用しない。透明文字盤は上肢が動かせず、発声ができず眼球運動かできないとき、伝えたい文字を相手との視線の中心に来るように動かして使うものである。頸髄損傷完全麻痺(第4頸髄節まで機能残存)は、発声・会話は可能である。
4.〇 環境制御装置は使用する。視線入力装置を介しての環境制御装置の操作が可能である。
5.〇 食事支援ロボットは使用する。用者のジョイスティック操作に従って、ロボットのアームが食卓上の食物を口元へ運ぶ作業を行う。
58回 午前8
8 33歳の男性。交通事故で完全頚髄損傷(C7頚髄節まで機能残存)を受傷した。受傷後2か月が経過し、全身状態は良好でADLの拡大が図られている。排泄については核上型神経因性膀胱と診断され、自排尿が困難である。
この患者の排尿管理として適切なのはどれか。
1.圧迫排尿
2.骨盤底筋訓練
3.自己導尿
4.尿道カテーテル留置
5.膀胱瘻の造設
解答3
解説
・33歳の男性(交通事故)。
・完全頚髄損傷(C7頚髄節まで機能残存)。
・受傷後2か月:全身状態は良好(ADLの拡大)
・排泄:自排尿が困難(核上型神経因性膀胱)
→核上型神経因性膀胱とは、仙髄排尿中枢より上位の神経が障害され生じた神経因性膀胱である。膀胱が勝手に収縮してしまう状態になる。一般的には、頻尿、尿意切迫感(急に我慢できないような尿意が起こる)、トイレまで間に合わずに尿が漏れるなどの症状が出現する。
1.× 圧迫排尿は優先度が低い。なぜなら、圧迫排尿は自排尿がみられるが、残尿がある場合に適応となるため。ちなみに、圧迫排尿とは、膀胱を手で圧迫して尿を排出させる方法である。
2.× 骨盤底筋訓練は優先度が低い。なぜなら、核上型神経因性膀胱により、骨盤底筋群の機能の回復は見込めないため。骨盤底筋は子宮、膀胱、直腸を含む骨盤臓器を支える筋肉で、骨盤底筋を強化することで尿漏れ対策となる。仰臥位が基本的な姿勢であるが、腹臥位や座位など日常生活の中でどんな姿勢で行ってもよい。座位や膝立て背臥位などで、上体の力を抜いてお尻の穴を引き上げて「きゅっ」とすぼめ、5秒キープする動作を10~20回ほど繰り返す方法と、すぼめたりを繰り返す方法の2種類ある。
3.〇 正しい。自己導尿を実施する。なぜなら、本症例は核上型神経因性膀胱による反射性尿失禁を呈していると考えられるため。反射性尿失禁とは、脊髄損傷により排尿をつかさどる神経が障害されており(神経因性膀胱)、膀胱に尿が充満した状態で反射的に尿が漏れてしまうものである。原因として、膀胱尿管逆流症や水腎症などの合併症が起こり得るため、治療法として間欠的な自己導尿も選択される。治療としては、自己導尿や排尿訓練などを行う。
4.× 尿道カテーテル留置は優先度が低い。なぜなら、長期的なカテーテル留置は感染や尿路結石のリスクが高まるため。ちなみに、尿道カテーテル留置は、尿道にカテーテルを常時留置して排尿を管理する方法である。繰り返しになるが、尿道留置カテーテルは安易に設置するものでない。適応として、①腎盂腎炎などの疾患により残尿・尿路の確保が必要な場合、②排尿が困難な場合(全身状態が悪い)、③高度尿失禁を有する女性、④本人および介護者による間欠導尿が不可能な場合などが挙げられる。
5.× 膀胱瘻の造設は優先度が低い。なぜなら、本症例は33歳で全身状態も安定し、ADL拡大を図っている最中であるため。膀胱瘻(膀胱ろう)とは、尿を出すための管(膀胱ろうカテーテル)を恥骨の上の腹壁から直接、膀胱内に留置する尿路管理法のことである。適応として、重度の神経障害かつ自己導尿が困難な場合(認知面が低下している場合)などに用いられる。
(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)
59回 午前7
7 23歳の男性。プールの飛び込みで頭部を強打し、頸髄損傷(完全麻痺)と診断された。肘関節屈曲は可能で手関節背屈は強い。円回内筋機能は認め、橈側手根伸筋と上腕三頭筋の機能は認めない。手指完全伸展は不可能。
Zancolliの四肢麻痺上肢機能分類で最上位の機能残存レベルはどれか。(※不適切問題:採点除外)
1.C6A
2.C6BⅠ
3.C6BⅡ
4.C6BⅢ
5.C7A
解答3
理由:設問が不適切で正解が得られないため。
※設問の「橈側手根伸筋」が橈側手根屈筋と間違えているためと考えられる。ここでは、橈側手根屈筋で解説を記載する。
解説
・23歳の男性(頸髄損傷:完全麻痺)。
・肘関節屈曲:可能、手関節背屈は強い。
・円回内筋機能:認める。
・橈側手根屈筋と上腕三頭筋の機能:認めない。
・手指完全伸展:不可能。
→本症例は、C6BⅡが機能残存レベルである。
1.× C6Aの場合、手関節背屈は弱い。
2.× C6BⅠの場合、円回内筋機能も認めない。
3.〇 正しい。C6BⅡが最上位の機能残存レベルである。
4.× C6BⅢの場合、円回内筋、橈側手根伸筋、上腕三頭筋の機能を認める。
5.× C7Aの場合、円回内筋、橈側手根伸筋、上腕三頭筋の機能を認め、さらに尺側の指を完全伸展できる。
(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)
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共通問題
46回 午前82
82.頸髄完全損傷の機能残存レベルと課題との組合せで誤っているのはどれか。
1.C4:電動車椅子の操作
2.C5:ベッドへの横移乗
3.C6:長便座への移乗
4.C7:自動車への車椅子の積み込み
5.C8:高床浴槽への出入り
解答2
解説
1.〇 C4は、電動車椅子の操作が可能である。C4:下顎コントロールにより電動車椅子、C5:電動車椅子、C6以降:自走式車椅子を使用する。
2.× ベッドへの横移乗は、「C5」ではなくC7以降で可能となる。C5は肘関節屈曲が可能なレベルである。
3.〇 C6は、長便座への移乗が可能である。C6は手関節背屈が可能なレベルである。
4.〇 C7は、自動車への車椅子の積み込みが可能である。C7は、肘関節伸展が可能なレベルである。
5.〇 C8は、高床浴槽への出入りが可能である。C8は、手指伸展が可能なレベルである。
53回 午前84
84.脊髄損傷の機能残存レベルと可能な動作の組合せで正しいのはどれか。ただし、機能残存レベルより下位は完全麻痺とする。
1.C4:万能カフを用いた食事
2.C5:前方移乗
3.C6:橈側-手掌握り
4.C7:更衣
5.C8:長下肢装具での歩行
解答:4
解説
1.× 万能カフを用いた食事は、C4でなく、C5で行える。C4機能残存レベルでは四肢を動かすことはできない。
2.× 前方移乗は、C5でなく、C6で行える。
3.× 橈側-手掌握りは、C6でなく、C8で行える。C6機能残存レベルでは手関節の背屈は可能である。
4.〇 正しい。C7:更衣の組み合わせで正しい。
5.× 長下肢装具での歩行は、C8でなく、T12から行える。C8機能残存レベルでは体幹の随意性は得られない。
58回 午後83
83.頚髄損傷完全麻痺(第6頚髄節まで機能残存)の上肢機能で可能なのはどれか。2つ選べ。
1.小指の外転
2.母指の内転
3.手関節の背屈
4.肘関節の屈曲
5.中指DIP関節の屈曲
解答3・4
解説
第5頸髄節まで機能残存レベルでは、肘屈曲が可能である。
・上腕二頭筋、上腕筋が機能する。
第6頸髄節まで機能残存レベルでは、手関節背屈が可能である。
・長、短橈側手根伸筋が機能する。
1.× 小指の外転は、小指外転筋が行う。小指球筋群のひとつで、【起始】豆状骨、屈筋支帯、【停止】小指の基節骨底の尺側、一部は指背腱膜、【神経】尺骨神経(C8,T1)である。Zancolliの表には記載されていないが、支配神経から、第8頸髄節まで機能残存レベルで可能となると考えられる。
2.× 母指の内転は、母指内転筋が行う。母指球筋群のひとつで、【起始】横頭:第3中手骨掌面の全長、斜頭:有頭骨を中心とした手根骨、第2~3中手骨底の掌側面、【停止】種子骨、母指基節骨底、一部は指背腱膜、【神経】尺骨神経深枝(C8,T1)である。Zancolliの表には記載されていないが、支配神経から、第8頸髄節まで機能残存レベルで可能となると考えられる。
3.〇 正しい。手関節の背屈は可能である。第6頸髄節まで機能残存レベルで可能となり、長、短橈側手根伸筋が機能する。
4.〇 正しい。肘関節の屈曲は可能である。第5頸髄節まで機能残存レベルで可能となり、上腕二頭筋、上腕筋が機能する。
5.× 中指DIP関節の屈曲は、第8頸髄節まで機能残存レベルで可能となる。
(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)
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