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筋連結(アナトミートレイン)と聞いたことはないでしょうか?なんとなく聞いたことがあるけど、意味が分からない。先輩PTが使ってたけどなんだろう・・・など様々な理由でこの記事にたどり着いたのでしょう。筋連結(アナトミートレイン)を知りたい方へ。本記事では、学生に向けて書くことで、筋連結(アナトミートレイン)の基本から臨床応用までの内容を解説していきたいと思います。
この記事を書いている僕は、H27年から理学療法士として病院や施設で働いた経験があります。また現在は、施設の設立から運営をすべて行っています。そのため、ある程度の信頼性は確保できると思います。
筋連結(アナトミートレイン)とは?(学生のレポート作りにおすすめ)
おのおのの骨格筋は、バラバラに働くのではなく、共同・拮抗関係を通じています。全体として要求に合った作用を及ぼし合っているのです。1つの筋の作用の理解は、他の筋との相互作用を知ることへとつながっていきます。この記事は、筋が骨を介さない相互作用=筋連結(アナトミートレイン)について書いていきたいと思います。
筋連結(アナトミートレイン)とは?
異なる骨格筋の間で、骨を介さないで張力を伝え合うことを筋連結(muscle linkage)=アナトミートレインと呼ぶ。
これには大別して以下のものがあります。
①共同起始腱あるいは総頭をつくるもの
②停止部付近で筋線維が合流するもの(共同停止腱)
③拮抗筋どうしが筋間中隔を介するもの
④筋膜を介するもの
ただこんなこと言われても、「なんのこっちゃ??」ですよね(笑)私も最初に読んだときは、読むのをやめようかと思うぐらい頭の中が「???」でした(笑)。ただ待ってください。分かりやすく1つずつ説明していきます。読み終わったときは、その知識を使って、卒業研究ぐらいは書けると思います。
共同起始腱あるいは総頭をつくるもの
例)
- 烏口突起からおこる上腕二頭筋の短頭・烏口腕筋。
- 上腕骨内側上顆からおこる円回内筋・橈側手根屈筋・浅指屈筋・長掌筋・尺側手根屈筋。
- 坐骨結節からおこる大腿二頭筋長頭・半腱様筋など。。。
同一の神経に支配されることが多いです。つまり、それらの筋は、骨を介さないでも張力を伝え合うことができるのです。これを筋連結(アナトミートレイン)と呼ぶのです。同じところから起始しているのですが、作用は違うところがポイントです。
例えば、烏口突起が炎症したとします。そしたら、烏口腕筋だけの機能低下だけでなく、その起始部の上腕二頭筋短頭の機能も低下するということです。これはなんとなくイメージしやすいのではないでしょうか。起始部でつながっているため、機能低下する→筋連結(アナトミートレイン)によって機能低下するなどといった表現をするのです。
停止部付近で筋線維が合流するもの(共同停止腱)
例)
- 多頭筋(胸鎖乳突筋・上腕二頭筋・上腕三頭筋・大腿四頭筋・下腿三頭筋)。
- それ以外にも、棘上筋・棘下筋・小円筋の腱が合流して、回旋筋腱板を形成する。
- 大円筋と広背筋が上腕骨の小結節稜につく際に共同腱をつくる場合。
これも分かりやすいですね。筋線維が合流し、骨を介さなくても張力を伝えあることができるのですね。一般に、①と②は、主に協力関係にある筋どうしの相互作用となっています。先ほどは、共通の起始部ですが、今回は、停止部でも同じことが起こりますよということです。
拮抗筋どうしが筋間中隔を介するもの
例)
- 上腕筋と上腕三頭筋外側頭が「外側上腕筋間中隔」
- また上腕筋と上腕三頭筋内側頭が「内側上腕筋間中隔」からおこる。
- 大腿でも、外側広筋と大腿二頭筋短頭が「外側大腿筋間中隔」からおこる。
これは、なんとなくわかりますか?筋間中隔とは、体肢の屈筋群と伸筋群の筋膜がその間で癒合したものです。筋間中隔のように、隣接する筋が筋膜を共有している場合には、両側の筋が中隔を介して相互に影響を与え合っているのです。これらは、すべて同一ではなく、異なることがあるので注意が必要です。
上記2つは、屈筋と伸筋が影響を与え合う関係になります。しかし、3つ目は、伸筋と屈筋は筋間中隔の両側から引き合う関係になっています。例えば、上腕筋と上腕三頭筋外側頭は、「外側上腕筋間中隔」によって接しています。この外側上腕筋間中隔が、炎症など問題を起こし滑らかな機能がしなくなったらどうなると思いますか?
上腕筋(肘関節屈曲)を動かしたいのに、外側上腕筋間中隔を介し、拮抗筋である上腕三頭筋外側頭(肘関節伸展)が引っ張られることで、上腕筋の機能低下を引き起こすのです。
筋膜を介するもの
例)
多くの場所でみられます。
- 前腕筋膜や大腿筋膜からおこる筋は、同じ膜に包まれる他の筋とそれぞれ緊張状態を伝え合う。
また、筋膜を介して部位を越えた相互作用もおこります。
- 胸腰筋膜を介して腹部の筋の緊張が背部の筋へ伝わり、上腕二頭筋の停止が(橈骨粗面以外に)前腕筋膜にあることによって、上腕の緊張が前腕屈筋群に伝わっていく。
さらに、異なる部位に属する筋の線維束が、別の筋の線維束に合流します。
- 三角筋と上腕筋、外腹斜筋と前鋸筋、大殿筋と外側広筋などの間でしばしばみられ、1つの筋の作用が、その延長上の遠位の筋に伝わることもある。
④筋膜を介するものの例を3つ上げましたが、理解できたでしょうか?ここまで行くと、結局のところ、筋は筋膜を介してすべての筋につながっているので、何かしらの関係性はありそうですね。ただ、その中でも強い関係を持った筋群を覚えておくことは、臨床でも使えますよ。
筋連結の応用
次に、「筋連結」を臨床でも使えるよう考えていきたいと思います。「筋連結」により、二関節筋でなくても1つの筋の作用が複数の関節の動きに影響を及ぼしていることが分かりましたね。
したがって、筋のストレッチや物理療法にあたっては、連結によって縦につながった「別の部位の筋」や、連結によって並列している「共同・拮抗筋」も十分に緊張状態におかないと効果が現れないことを考慮に入れる必要があります。拮抗筋が硬いから、十分筋力が発揮できないと考えるのもいいでしょう。しかし、拮抗筋も筋連結によりある程度適した筋緊張がなければいけません。逆に、共同筋・拮抗筋に注目するのではなく、もっと他の部位が緊張している可能性もあるのです。
「まだよくわからないよぉぉ」っていう人は、とりあえず温熱療法のホットパックをやる際に、拮抗筋と一緒に暖めてみたり、いつも当てている部位と「+α」で近位部や遠位部も一緒に暖めてみることをおすすめします。いつもより関節可動域制限が拡大したり、パフォーマンス向上につながっていれば、その部位にも問題があったというヒントとなり、治療部位の限定に役立ちます。
まとめ
- 異なる骨格筋の間で、骨を介さないで張力を伝え合うことを筋連結(muscle linkage)と呼ぶ。
- 一つの筋肉が緊張すると、その緊張が他の筋肉に伝える。
- 二関節筋でなくても1つの筋の作用が複数の関節の動きに影響を及ぼしている。
最後に簡単な例を上げて終わりにしたいと思います。
伸縮性のないピチピチのジーパンを着た状態で、足を上げるのが難くなることでおわかりいただけると思います。
できないからといって、必ずに股関節に原因があるわけではありません。
レポート作りや臨床に少しでも役に立てば幸いです。もっと詳しく知りたいっていう人はこちら。
※参考文献) 標準理学療法学・作業療法学 解剖学 第3版 編集:野村嶬 P252