第60回(R7)理学療法士国家試験 解説【午後問題26~30】

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26 褥瘡の危険因子でないのはどれか。

1.低栄養
2.血圧の上昇
3.体動の減少
4.局所的な圧迫
5.骨の突出部位

解答

解説

褥瘡とは?

 褥瘡とは、局所の持続的な圧迫により組織に虚血が生じて発生する皮膚・皮下組織の損傷のことである。仙骨部、大転子部、足関節外果、踵部などの骨の突出している場所に好発する。頚髄完全損傷では、自分で除圧できないこと、感覚障害を合併していることより、褥瘡が生じやすい。したがって、仰臥位の褥瘡好発部位は、仙骨部が最も多く、次いで踵骨部、肩甲骨部、後頭部などがある。

側臥位における褥瘡の好発部位は、耳介部、腸骨稜部、大転子部、外顆部、内顆部などに好発する。

1.〇 低栄養は、褥瘡の危険因子である。なぜなら、低栄養状態は、皮膚の修復力を低下させるだけでなく、組織の脆弱性を高めるため。

2.× 血圧の上昇は、褥瘡の危険因子でない。むしろ、血圧の上昇(高血圧)は、一般的に組織の灌流(血流供給)が改善される場合が多いため、褥瘡の予防となる。したがって、局所的な血流不足が褥瘡の危険因子となる。

3.〇 体動の減少は、褥瘡の危険因子である。なぜなら、長時間同じ体位でいると、皮膚や組織に持続的な圧迫が加わり、血流が阻害されるため。

4.〇 局所的な圧迫は、褥瘡の危険因子である。なぜなら、局所的な圧迫は、血流が遮断されやすく、組織の酸素や栄養供給が不足しやすいため。

5.〇 骨の突出部位は、褥瘡の危険因子である。なぜなら、圧力が集中しやすいため。

褥瘡の予防

①一般に2時間ごとに体位変換を行うことが基本とされる。
②30°側臥位では体圧を分散させ身体を支えることができる。
③ベッドのキャッチアップは30°まで。
④予防にマッサージは効果的。ただし、骨突出部・突起部や発赤があるところには(摩擦を加えてしまうため)行わない。
⑤円座は接触部分が逆に圧迫されてしまい褥瘡の誘因となる。

 

 

 

 

 

27 腰椎椎間板ヘルニアの疼痛誘発テストはどれか。

1.Adsonテスト
2.Bragardテスト
3.Eichhoffテスト
4.Thomsenテスト
5.Yergasonテスト

解答

解説
1.× Adsonテスト(アドソンテスト)は、胸郭出口症候群誘発テストである。方法は、両手を膝に置き、頚椎を伸展し、患側へ回旋を加え、深吸気位で息を止めさせたときに、橈骨動脈の脈拍をみる。橈骨動脈が減弱もしくは消失すれば陽性である。

2.〇 正しい。Bragardテスト(ブラガードテスト)は、腰椎椎間板ヘルニアの疼痛誘発テストである。下肢伸展挙上テスト(SLR)で下肢痛を生じた位置より、角度を少し減じた位置で、足関節を背屈させ、同様の下肢痛を認めたときに陽性とする。

3.× Eichhoffテスト(アイヒホッフテスト)とは、母指を握り込ませて手関節尺屈すると、陽性の場合手関節橈側の疼痛が増強する。狭窄性腱鞘炎が疑われる。de Quervain病とは、狭窄性腱鞘炎ともいい、短母指伸筋腱と長母指外転筋腱が原因で起こる腱鞘炎である。母指の使いすぎや妊娠出産期、更年期の女性に多く見られる。手首に腫れと痛みを伴い、母指を小指側に牽引したときに痛みが増強する。

4.× Thomsenテスト(トムゼンテスト)の陽性は、テニス肘(上腕骨外側上顆炎)を疑う。方法は、握りこぶしにして手関節を背屈させ、検者が掌屈させようとする。

5.× Yergasonテスト(ヤーガソンテスト)の陽性は、上腕二頭筋腱炎を疑う。患者の肘90°屈曲させ、検者は一側の手で肘を固定して、他方の手で患側手首を持つ。次に患者にその前腕を外旋・回外するように指示し、検者はそれに抵抗を加える。

 

 

 

 

 

28 関節可動域測定(日本整形外科学会、日本リハビリテーション医学会基準1995年)に基づく関節角度測定の運動方向と参考可動域角度の組合せで正しいのはどれか。

1.頚部屈曲:80度
2.胸腰部屈曲:45度
3.肩伸展:30度
4.股外転:25度
5.足屈曲(底屈):60度

解答

解説
1.× 頚部屈曲は、「80度」ではなく60度である(伸展は50度)。
【基本軸】肩峰を通る床への垂直線、【移動軸】外耳孔と頭頂を結ぶ線、【測定部位及び注意点】頭部体幹の側面で行う原則として腰かけ座位とする。

2.〇 正しい。胸腰部屈曲:45度(伸展は30度)
【基本軸】仙骨後面、【移動軸】第1胸椎棘突起と第5腰椎棘突起を結ぶ線、【測定部位及び注意点】①体幹側面より行う。②立位、腰かけ座位または側臥位で行う。③股関節の運動が入らないように行う。

3.× 肩伸展は、「30度」ではなく50度である。
【基本軸】肩峰通る床への垂直線(立位または坐位)、【移動軸】上腕骨、【測定部位及び注意点】①前腕は中間位とする。②体幹が動かないように固定する。③脊柱が前後屈しないように注意する。

4.× 股外転は、「25度」ではなく45度である(内転は20度)。
【基本軸】両側の上前腸骨棘を結ぶ線への垂直線、【移動軸】大腿中央線(膝蓋骨中心を結ぶ線)、【測定部位及び注意点】①背臥位で骨盤を固定する。②下肢は外旋しないようにする内転の場合は、反対側の下肢を屈曲挙上してその下を通して内転させる。

5.× 足屈曲(底屈)は、「60度」ではなく45度である(背屈は20度)。
【基本軸】矢状面における腓骨長軸への垂直線、【移動軸】足底面、【測定部位及び注意点】膝関節を屈曲位で行う。

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29 Parkinson病でみられるのはどれか。

1.痙縮
2.分回し歩行
3.姿勢反射障害
4.膝蓋腱反射亢進
5.Babinski反射陽性

解答

解説

Parkinson病とは?

パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。

錐体外路性の反射であるMyerson徴候とWestphal現象が陽性となりやすい。Myerson徴候(マイヤーソン徴候)は、眉間を指やハンマーで叩き続けた場合、その刺激に慣れることなく瞬きし続ける(眉間叩打反射)。Westphal現象(ウエストファル現象)とは、筋を受動的に短縮させた時に、短縮させた筋に持続的な筋収縮が誘発される現象である。前脛骨筋に最も出やすい。

1.× 痙縮はみられにくい。痙縮は、錐体路の上位運動ニューロン障害による損傷高位以下の脊髄前角細胞(下位運動ニューロン)の活動性が亢進し、麻痺筋の筋紡錘からの求心性刺激が増強することによって生じる。その結果、意思とは関係なく筋肉の緊張が高まり、手や足が勝手につっぱったり曲がってしまったりしてしまう状態となる。

2.× 分回し歩行はみられにくい。ぶん回し歩行(痙性片麻痺歩行)は、錐体路の上位運動ニューロン障害に伴い、麻痺により下肢がうまく動かず、円を書くように歩く。脳血管障害で起こりやすい。

3.〇 正しい。姿勢反射障害は、Parkinson病でみられる。パーキンソン病の4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害があげられる。健常人は、姿勢反射によって、体が傾いたときに、重心を移動してバランスを取る。それでも耐えきれないときは、足を踏み出して転倒を防ぐ(立ち直り反射)。 これらが障害されて転倒し易くなった状態を姿勢反射障害と呼ぶ。

4.× 膝蓋腱反射は、「亢進」ではなく正常である。腱反射の亢進は、反射中枢における興奮性上昇、または脳内出血など反射中枢に障害(上位運動ニューロン障害)が生じることが原因で、反射中枢への抑制が減少または促進的影響が増大した結果生じる。深部腱反射とは、骨格筋につながる腱をハンマーなどでたたいた時、筋が不随意に収縮する反射である。筋紡錘が腱の伸びを筋の伸びとして感知したことにより、筋の収縮(緊張)を生み出すことが原因である。単収縮は単一の刺激によって引き起こされる筋収縮である。

5.× Babinski反射陽性はみられにくい。Babinski反射とは、上位運動ニューロン障害で陽性となる。方法は、足底外側部を踵の方からつま先に向けてゆっくり弧を描きながらこする。陽性の場合、母趾の背屈とそのほかの趾の開扇現象がみられる。出生後すぐから反応が見られ、生後1〜2年程度で自然に消失する。

Hoehn&Yahr の重症度分類ステージ

ステージⅠ:片側のみの症状がみられる。軽症で機能障害はない。
ステージⅡ:両側の症状がみられるが、バランス障害はない。また日常生活・通院にほとんど介助を要さない。
ステージⅢ:歩行障害、姿勢保持反射障害が出現し、ADLの一部に介助が必要になる。
ステージⅣ:日常生活・通院に介助を必要とする。立位・歩行はどうにか可能。
ステージⅤ:寝たきりあるいは車いすで、全面的に介助を要する。歩行・起立は不能。

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30 SF-36の下位尺度に含まれないのはどれか。

1.活力
2.栄養状態
3.体の痛み
4.社会生活機能
5.全体的健康観

解答

解説

SF-36とは?

SF-36(MOS 36-Item Short-Form Health Survey)は質問紙法により、対象者の健康関連QOLを包括的に評価する尺度である。
8つの健康概念を測定する。【測定項目】①身体機能、②日常生活役割機能(身体)、③体の痛み、④全体的健康感、⑤活力、⑥社会生活機能、⑦日常生活役割機能(精神)、⑧心の健康である。下位尺度は100点満点でスコア化され、スコアが高いほどQOLが高い。

1.3~5.〇 活力/体の痛み/社会生活機能/全体的健康観は、SF-36の下位尺度に含まれる

2.× 栄養状態は、SF-36の下位尺度に含まれない。なぜなら、栄養状態は、対象者の健康関連QOLと直接結びつきが低いと考えられるため。

QOLとは?

QOL(Quality of life)とは、個人を主体としたその人自身の生命と生活の質のことである。人が人間らしく満足して生活しているか、自分らしい生活が送れているか「生活の質」を評価する概念である。

 

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