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6 6歳の男児。1年前から歩行時の転倒が頻回にみられるようになったため病院を受診し、遺伝子検査でDuchenne型筋ジストロフィーと診断された。四肢体幹筋は萎縮しており、MMTで両側下肢の近位筋が2、遠位筋が3である。屋内は四つ這いで移動し、小学校の普通学級に車椅子で通学している。
機能障害度(厚生省筋萎縮症研究班)のステージで正しいのはどれか。
1.ステージ4
2.ステージ5
3.ステージ6
4.ステージ7
5.ステージ8
解答2
解説
・6歳の男児(Duchenne型筋ジストロフィー)。
・1年前から歩行時の転倒が頻回にみられる。
・四肢体幹筋は萎縮(両側下肢の近位筋:MMT2、遠位筋:MMT3)。
・屋内:四つ這いで移動、小学校の普通学級に車椅子で通学。
→機能障害度(厚生省筋萎縮症研究班)のステージを正確に覚えよう。
1.× ステージ4は、歩行可能、イスからの立ち上がり不能である。
2.〇 正しい。ステージ5が該当する。ステージ5は、歩行不能、四つ這い可能である。
本症例は、屋内:四つ這いで移動、小学校の普通学級に車椅子で通学であるため、日常生活の移動手段として「歩行」が失われステージ5に該当する。
3.× ステージ6は、四つ這い不能だが、いざり移動可能である。
4.× ステージ7は、這うことはできないが、自力で坐位保持可能である。
5.× ステージ8は、ベッドに寝たままで体動不能 全介助である。
ステージ1 歩行可能 介助なく階段昇降可能(手すりも用いない)
ステージ2 階段昇降に介助(手すり、手による膝おさえなど)を必要とする
ステージ3 階段昇降不能 平地歩行可能 通常の高さのイスからの立ち上がり可能
ステージ4 歩行可能 イスからの立ち上がり不能
ステージ5 歩行不能 四つ這い可能
ステージ6 四つ這い不能だが、いざり移動可能
ステージ7 這うことはできないが、自力で坐位保持可能
ステージ8 ベッドに寝たままで体動不能 全介助
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【PT専門】筋ジストロフィーについての問題「まとめ・解説」
【共通問題のみ】筋ジストロフィーについての問題「まとめ・解説」
7 22歳の男性。大学の野球部に所属している。右上肢の投球動作時の違和感を訴えて受診し、理学療法が開始された。
図に示す手法で伸長される筋はどれか。
1.棘下筋
2.棘上筋
3.小円筋
4.前鋸筋
5.大円筋
解答5
解説
本症例は、セカンドポジションの肩関節外旋をしている。したがって、肩関節内旋筋群(棘下筋、小円筋など)を伸長している。
1.× 棘下筋の【起始】肩甲骨の棘下窩、棘下筋膜の内側、【停止】上腕骨大結節の中部、【作用】肩関節外旋、上部は外転、下部は内転、【神経】肩甲上神経
2.× 棘上筋の【起始】肩甲骨の棘上窩、棘上筋膜の内側、【停止】上腕骨大結節の上部、【作用】肩関節外転、【神経】肩甲上神経である。
3.× 小円筋の【起始】肩甲骨後面の外側部上半、【停止】上腕骨大結節の下部、大結節稜の上端、【作用】肩関節外旋、【神経】腋窩神経。
4.× 前鋸筋の【起始】第1~8(~10)肋骨前外側面、【停止】第1,2肋骨とその間の腱弓からの筋束は肩甲骨上角。第2,3肋骨からは分散して広く肩甲骨内側縁。第4肋骨以下からは下角、【作用】全体:肩甲骨を前方に引く。下2/3:下角を前に引いて肩甲骨を外方に回旋し、上腕の屈曲と外転を補助。最上部:肩甲骨をやや引き上げる、【神経】長胸神経である。
5.〇 正しい。大円筋が伸長される筋である。大円筋の【起始】肩甲骨の下角部、棘下筋膜下部外面、【停止】上腕骨の小結節稜、【作用】肩関節内転、内旋、伸展、【神経】肩甲下神経である。
参考にどうぞ↓
8 60歳の男性。交通事故による右足部の開放骨折のため入院した。1週後に右足部の腫脹、熱感が出現し、右中足骨の骨髄炎と診断され、右足関節離断術が施行された。
製作すべき義足はどれか。
1.PTB式下腿義足
2.TSB式下腿義足
3.吸着式下腿義足
4.サイム義足
5.足根中足義足
解答4
解説
・60歳の男性(交通事故による右足部の開放骨折)。
・1週後:右足部の腫脹、熱感が出現(右中足骨の骨髄炎)。
・右足関節離断術施行。
→足関節離断術とは、サイム切断とも呼ばれ、足関節部での切断(内果・外果ともに骨隆起部の一部をトリミングする切断方法)をいう。本症例の場合、足関節を離断しているため、下腿義足は除外される。
→開放骨折とは、骨折した骨の端が皮膚を突き破って露出したりして、骨折部とつながる傷が皮膚にあるものを指す。この露出により、感染症を生じやすい。
1.× PTB式下腿義足(patellar tendon bearing式)は、膝蓋腱部で荷重を受ける標準的なソケットである。下腿骨骨折の手術後、部分荷重より開始とならないような重度のケースや、早期より免荷での歩行導入が必要な症例で用いられる。体重支持部と除圧部位が混合しないようにしっかり覚える必要がある。体重支持部は、①膝蓋腱部、②膝窩部、③脛骨内側面、④前脛骨筋部、⑤腓骨骨幹部である。一方で、除圧部位は、①脛骨粗面、②脛骨稜、③脛骨顆部の前面部、④腓骨頭、⑤ハムストリングスの走行部分である。
2.× TSB式下腿義足の特徴として、シリコンライナーを使用しているため密着性が高く、膝関節の筋力を損なわない。耐荷重性能が高く活動的な切断者に適しているなどのメリットがあるため、スポーツ復帰に適している。ただし、デメリットとしては、高価かつ、内ソケットがシリコンであるため発汗への対応は難しい。
3.× 吸着式下腿義足の特徴は、ソケット内壁と断端の軟部組織を密着させることによって自己懸垂性を持つソケットである。バルブより空気を追い出し、最後にふたをする。ベルトなどの牽引用の付属品が必要ない。
4.〇 正しい。サイム義足が製作すべき義足である。サイム義足とは、足関節離断(サイム切断)に特化した義足である。特徴として、断端末の形状が良好で荷重をかけることができ、正常に近い歩行能力が期待できる。断端が膨隆しており、ソケットの懸垂も良好である。
5.× 足根中足義足は、Lisfranc関節(リスフラン関節:足根中足関節)の離断に用いられる。Lisfranc関節(リスフラン関節:足根中足関節)は、3つの楔状骨(内側・中間・外側楔状骨)—立方骨—中足骨で構成する。
9 32歳の男性。右上肢の筋力低下を訴えて受診し、理学療法が開始された。筋力を評価するために、右上肢を前方挙上して壁を押させたときの様子を図に示す。その結果、右肩甲骨の内側縁全体が胸郭から離れる現象が認められた。
筋力低下が最も疑われる筋はどれか。
1.棘下筋
2.肩甲下筋
3.広背筋
4.前鋸筋
5.大円筋
解答4
解説
翼状肩甲とは、肩甲骨内側縁が後方に突出して鳥の翼のような形状をとることをいう。原因として、長胸神経の障害である。長胸神経支配の前鋸筋麻痺があげられる。
1.× 棘下筋の【起始】肩甲骨の棘下窩、棘下筋膜の内側、【停止】上腕骨大結節の中部、【作用】肩関節外旋、上部は外転、下部は内転、【神経】肩甲上神経である。
2.× 肩甲下筋の【起始】肩甲骨肋骨(肩甲下窩)と筋膜内面、【停止】上腕骨前面の小結節、小結節稜上端内側、【作用】肩関節内旋、【支配神経】肩甲下神経である。
3.× 広背筋の【起始】第6~8胸椎以下の棘突起、腰背腱膜、腸骨稜、第(9)10~12肋骨および肩甲骨下角、【停止】上腕骨の小結節稜、【作用】肩関節内転、伸展、多少内旋、【神経】胸背神経である。
4.〇 正しい。前鋸筋の筋力低下が最も疑われる。前鋸筋の【起始】第1~8(~10)肋骨前外側面、【停止】第1,2肋骨とその間の腱弓からの筋束は肩甲骨上角。第2,3肋骨からは分散して広く肩甲骨内側縁。第4肋骨以下からは下角、【作用】全体:肩甲骨を前方に引く。下2/3:下角を前に引いて肩甲骨を外方に回旋し、上腕の屈曲と外転を補助。最上部:肩甲骨をやや引き上げる、【神経】長胸神経である。
5.× 大円筋の【起始】肩甲骨の下角部、棘下筋膜下部外面、【停止】上腕骨の小結節稜、【作用】肩関節内転、内旋、伸展、【神経】肩甲下神経である。
参考にどうぞ↓
10 65歳の女性。右利き。突然の意識障害で急性期病院に搬送され、脳出血と診断された。左上下肢の運動麻痺、感覚障害は中等度。端座位では体幹が麻痺側に傾くが、理学療法士の修正に抵抗することなく正中位に戻ることが可能である。常に非麻痺側を向いているが、麻痺側からの刺激にも反応する。食事や歯磨きは非麻痺側上肢で行うが、麻痺側の食べ残しや、磨き残しが多い。
この患者に用いる検査で最も優先順位が高いのはどれか。
1.WAB
2.WCST
3.線分抹消試験
4.道具を使用したパントマイム
5.SCP(Scale for Contraversive Pushing)
解答3
解説
・65歳の女性(右利き、突然の意識障害、脳出血)。
・左上下肢の運動麻痺、感覚障害:中等度。
・端座位では体幹が麻痺側に傾くが、修正に抵抗することなく正中位に戻る。
・常に非麻痺側を向いているが、麻痺側からの刺激にも反応する。
・食事や歯磨きは非麻痺側上肢で行うが、麻痺側の食べ残しや、磨き残しが多い。
→本症例は、半側空間無視が疑われる。明らかな無視ではないが、麻痺側への注意が不足している(軽度~中等度の半側空間無視の可能性が高い)ことを示唆している。したがって、半側空間無視に対する評価を選択しよう。
→半側空間無視とは、障害側の対側への注意力が低下し、その空間が存在しないかのように振る舞う状態のことである。半盲のように左半分が見えないわけではなく、注意力が低下している。したがって、①左側への注意喚起、②左側身体への触覚刺激、③左側方向への体軸回旋運動、④左側からの声かけなどが挙げられる。ちなみに、劣位半球頭頂葉が障害されると、①対側の半側空無視、②着衣失行、③病態失認が起こる。
1.× WAB(Western Aphasia Battery) は、言語機能の総合的な検査である。ただ失語症のタイプ分類ができるだけでなく、失行・半側空間無視の有無・非言語性知能検査を含む包括的な検査が可能である。
2.× WCST(ウィスコンシンカード分類テスト:Wisconsin Card Sorting Test)は、計画をたてること・計画を達成するためにとるべき行動を決めること、状況の変化に対応すること、衝動的に行動することを抑えるなどの「前頭葉の実行機能」を調べる検査である。提示されたトランプのようなカードを色・数・形のどれに基づいて分類するかを判断する。高次脳機能障害の検査などに用いられる。
3.〇 正しい。線分抹消試験が最も優先順位が高い。BIT(Behavioural inattention test)は、行動性無視検査(半側空間無視の検査)である。①通常検査(線分抹消試験・文字抹消試験・星印抹消試験・模写試験・線分二等分試験・描画試験)と、②行動検査(写真課題・電話課題・メニュー課題・音読課題・時計課題・硬貨課題・書写課題・地図課題・トランプ課題)がある。カットオフ点は、通常検査で131点/146点、行動検査で68点/81点である。
4.× 道具を使用したパントマイムは、失行(特に観念運動失行)を評価する検査である。失行の場合、麻痺がなくても正しく道具操作ができなかったり、奇妙な操作をしたり見られる。
5.× SCP(Scale for Contraversive Pushing)は、プッシャー現象を評価するスケールである。本症例では「体幹が麻痺側に傾いているが、修正に抵抗せず正中位に戻れる」とあるため、プッシャー症候群の特徴である「他動的修正に強く抵抗する」所見がない。ちなみに、pusher現象(プッシャー現象)とは、脳血管疾患後に生じる姿勢異常の一種である。座位や立位で姿勢を保持させたときに、非麻痺側上肢・下肢で麻痺側へ押し、身体が麻痺側に傾き、他者が修正しようとしても抵抗してしまう現象をいう。右半球損傷に多い。
星印抹消試験とは、大小の星印と仮名文字・単語が散在する中から、小さい星のみに印を付けさせる課題である。標的は54個ある。3個見落とせば異常と判断する。見落としは、軽度例では線分抹消試験と同様に左下に生じやすく、文字抹消試験ほどではないが中央付近や右側にもみられる。複数の抹消試験を実施した場合、身体中心の座標系において無視される一定空間があるわけではないことがわかる。たとえば、線分抹消試験では左下の一部しか見落とさないのに、星印抹消試験ではきれいに左半分を見落とすということがあることに注意されたい(※引用:「半側空間無視」著:石合純夫より)。
(※図引用:「Scale for Contraversive Pushing(SCP)」群馬県理学療法士協会様HPより)