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91.皮膚筋炎で誤っているのはどれか。
1.女性に多い。
2.四肢近位筋の筋力が低下する。
3.赤沈が亢進する。
4.血中CK値が低下する。
5.悪性腫瘍を高率に合併する。
解答4
解説
多発性筋炎とは、自己免疫性の炎症性筋疾患で、主に体幹や四肢近位筋、頸筋、咽頭筋などの筋力低下をきたす。典型的な皮疹を伴うものは皮膚筋炎と呼ぶ。膠原病または自己免疫疾患に属し、骨格筋に炎症をきたす疾患で、遺伝はなく、中高年の女性に発症しやすい(男女比3:1)。5~10歳と50歳代にピークがあり、小児では性差なし。四肢の近位筋の筋力低下、発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状がみられる。手指、肘関節や膝関節外側の紅斑(ゴットロン徴候)、上眼瞼の腫れぼったい紅斑(ヘリオトロープ疹)などの特徴的な症状がある。合併症の中でも間質性肺炎を併発することは多いが、患者一人一人によって症状や傷害される臓器の種類や程度が異なる。予後は、5年生存率90%、10年でも80%である。死因としては、間質性肺炎や悪性腫瘍の2つが多い。悪性腫瘍に対する温熱療法は禁忌であるので、その合併が否定されなければ直ちに温熱療法を開始してはならない。しかし、悪性腫瘍の合併の有無や皮膚症状などの禁忌を確認したうえで、ホットパックなどを用いた温熱療法は疼痛軽減に効果がある。
(※参考:「皮膚筋炎/多発性筋炎」厚生労働省様HPより)
1.〇 女性に多い。中高年の女性に発症しやすい(男女比1:2~3)が、小児では性差ない。
2.〇 四肢近位筋の筋力が低下する。そのほかにも、発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状がみられる。
3.〇 赤沈が亢進する。またCRPの上昇もみられる。
4.× 血中CK値は、「低下」ではなく上昇する。血中CK値とは、筋肉にエネルギーを貯めるときに働く酵素で、全身の運動をつかさどる筋肉(骨格筋)や心臓の筋肉(心筋)に多く含まれる。したがって、それらの筋肉が傷害されたときに、血液中で高値となる。
5.〇 悪性腫瘍を高率に合併する。死因としては、間質性肺炎や悪性腫瘍の2つが多い。悪性腫瘍は、胃癌・肺癌・子宮癌・悪性リンパ腫などを合併することが多い。
92.ヘリコバクター・ピロリ菌の感染が原因となるのはどれか。
1.胆嚢炎
2.急性膵炎
3.萎縮性胃炎
4.逆流性食道炎
5.潰瘍性大腸炎
解答3
解説
ヘリコバクター・ピロリ菌は、井戸水などにより経口感染するヒトなどの胃に生息するらせん型のグラム陰性微好気性細菌である。単にピロリ菌と呼ばれることもある。アンモニアを遊離し、局所をアルカリ化することによって胃粘膜の障害をきたす病原菌である。胃炎や胃潰瘍の発生に関与する。
1.× 胆嚢炎の原因の多くは胆石である。他にも、胆嚢の血行障害・化学的な障害、膠原病、アレルギー反応などがあげられる。
2.× 急性膵炎の二大原因は、①アルコール(男性)と②胆石(女性)である。膵酵素が活性化されて膵組織を自己消化する病態である。他の隣接する臓器や遠隔臓器にも影響を及ぼし、重症例では多臓器不全や播種性血管内凝固症候群(DIC)をきたし、致命率も高い。
3.〇 正しい。萎縮性胃炎の原因は、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染が8割といわれている。ヘリコバクター・ピロリ菌は、アンモニアを遊離し、局所をアルカリ化することによって胃粘膜の障害をきたす病原菌である。胃炎や胃潰瘍の発生に関与する。
4.× 逆流性食道炎の原因は、胃液の食道への逆流である。様々な要因があげられ、加齢・食事の内容・肥満・姿勢などによって、食道を逆流から守る仕組みが弱まるか、胃酸が増えすぎることで胃液が逆流するために起こる。
5.× 潰瘍性大腸炎の原因は、不明である。潰瘍性大腸炎は、大腸粘膜の主として浅層が侵されびらんや潰瘍を形成する。症状として、繰り返す粘血便・下痢・腹痛・発熱・体重減少などがみられる。
急性膵炎とは、膵臓の突然の炎症で、軽度のものから生命を脅かすものまであるが、通常は治まる。主な原因は、胆石とアルコール乱用である。男性では50歳代に多く、女性では70歳代に多い。症状として、飲酒・過食後に左上腹部痛・心窩部痛が発症する。悪心・嘔吐、悪寒、発熱、背部への放散痛もみられ、腹痛はアルコールや脂質の摂取で増悪する。
検査:膵臓の炎症・壊死により膵臓由来の消化酵素(アミラーゼとリパーゼの血中濃度)が上昇する。
【治療】
軽症例:保存療法(禁食、呼吸・循環管理、除痛 等)
重症例:集中治療[臓器不全対策、輸液管理、栄養管理(早期経腸栄養)、感染予防、腹部コンパートメント症候群対策]
(※参考:「急性膵炎」MSDマニュアル家庭版より)
潰瘍性大腸炎とは、主に大腸の粘膜を侵し、再燃と寛解を繰り返す慢性のびまん性炎症性腸疾患である。症状として、繰り返す粘血便・下痢・腹痛・発熱・体重減少などがみられる。したがって、潰瘍性大腸炎の食事は、易消化性で高エネルギー、高タンパク、低脂肪、低残渣食を基本とする。原因不明であるが、遺伝的因子と環境因子が複雑に絡み合って発症に関与していると考えられている。
93.内分泌異常と病態との組合せで正しいのはどれか。
1.抗利尿ホルモン分泌亢進:尿崩症
2.副甲状腺機能低下:テタニー
3.甲状腺機能低下:Basedow病
4.下垂体前葉ホルモン欠損:先端巨大症
5.副腎皮質機能低下:Cushing症候群
解答2
解説
1.× 尿崩症は、抗利尿ホルモン(バソプレシン)の「分泌亢進」ではなく分泌低下により起こる。尿崩症は多尿 (3L/日以上)を呈する。尿崩症には2種類あり、①中枢性尿崩症(抗利尿ホルモンの分泌低下)と、②腎性尿崩症(ホルモンの作用障害)がある。
2.〇 正しい。テタニーは、副甲状腺機能低下で起こる。テタニーとは、血中カルシウム濃度が低下することで筋の異常収縮による硬直、痙攣、知覚障害などを生じる病態をいう。副甲状腺機能低下症では、パラトルモンの分泌低下により、血清カルシウム値が低下し、テタニーをきたす。
3.× Basedow病(バセドウ病)は、甲状腺機能の「低下」ではなく亢進で起こる。ちなみに、甲状腺機能低下すると橋本病となる。
4.× 先端巨大症は、下垂体前葉ホルモン(成長ホルモン)の「欠損」ではなく過剰分泌により生じる。
5.× Cushing症候群(クッシング症候群)は、副腎皮質機能の「低下」ではなく亢進で生じる。Cushing症候群の主な症状は、①満月様顔貌や②中心性肥満などである。ちなみに、副腎皮質機能低下症は、Addison病(アジソン病)で、るいそう(やせ)と色素沈着など特徴的である。
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【共通のみ】ホルモンについての問題「まとめ・解説」
94.心不全でみられにくい所見はどれか。
1.胸水の出現
2.左室前壁の不動化
3.心胸郭比(CTR):70%
4.左室駆出率(LVEF):60%
5.脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の増加
解答4
解説
心不全は心臓のポンプ機能低下のため末梢組織の酸素需要に見合った血液量を供給できない状態である。肺循環系にうっ血が著明なものを左心不全、体循環系にうっ血が著明なものを右心不全という。体液の著明やうっ血を生じ、主な症状として呼吸困難、咳嗽、チアノーゼ、血性・泡沫状喀痰(ピンクの痰)などがある。
心拍出量の低下を起こす原因として、
・左心不全:肺循環系にうっ血が著明なもの(呼吸困難、起座呼吸、尿量減少など)
・右心不全:体循環系にうっ血が著明なもの(頸静脈怒張、胸水・腹水、下腿浮腫、肝腫大など)
右室拡張末期圧の上昇(体循環の静脈系のうっ血)により右心不全は引き起こされる。
1.〇 胸水の出現は、右心不全の症状である。
2.〇 左室前壁の不動化は、心臓の収縮力が低下するため生じる。
3.〇 心胸郭比(CTR)70%は、体内水分蓄積量が増加するため生じる。ちなみに、正常は心胸郭比50%以下である。
4.× 左室駆出率(LVEF)60%は、正常範囲(55~90%)である。心臓の収縮力が低下するために、左室駆出率は35~40%以下に低下する。
5.〇 脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の増加がみられる。なぜなら、心不全が進行すると、心臓にかかる負荷が増加し、心筋からヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)が分泌されるため。したがって、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は、心不全の診断・予後や治療効果の判定に有用である。
95.嚥下障害に対する治療法はどれか。
1.Shaker(シャキア)法
2.DeLorme(デローム)法
3.Jakobson(ヤコプソン)法
4.Codman(コッドマン)体操
5.Buerger-AIIen(バージャー・アレン)体操
解答1
解説
【目的】喉頭挙上筋群の筋力強化を行い、喉頭の前上方運動を改善して食道入口部の開大を図る。食道入口部の食塊通過を促進し、咽頭残留(特に下咽頭残留)を少なくする効果がある。
【やり方】背臥位に横になり、肩を床につけたまま頭だけを足の指が見えるまで挙上する。疲れない程度で30秒程度持続し、休憩を入れながら5~10回繰り返す。施行中、口を閉じて行う。
1.〇 正しい。Shaker(シャキア)法は、嚥下障害に対する治療法である。Shaker法(シャキア法)とは、舌骨周囲の嚥下筋(特に舌骨上筋群)の強化を目的とする。嚥下訓練のうち食物を使わない間接訓練のひとつである。
2.× DeLorme(デローム)法は、筋力増強訓練に用いる。DeLormeの漸増抵抗運動 (PRE) は、①10RMの1/2負荷運動を10回、②10RMの3/4負荷を10回、③10RMを10回、これを3セット繰り返すことである。
3.× Jakobson(ヤコプソン)法は、漸進的筋弛緩法である。リラクセーション技法の一種である。
4.× Codman(コッドマン)体操は、肩関節の運動である。肩関節周囲炎の炎症期に使用する運動であり、肩関節回旋筋腱板の強化や肩関節可動域拡大を目的に使用する。患側の手に1~1.5㎏の重錘を持ち、振り子運動を行う。
5.× Buerger-AIIen(バージャー・アレン)体操は、閉塞性動脈硬化症などの末梢循環障害に対する運動療法として考案された。下肢の挙上と下垂を繰り返して反射性充血を促し、側副血行路の形成を促進する体操である。