第45回(H22) 理学療法士国家試験 解説【午前問題31~35】

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31.脳卒中片麻痺患者の歩行時麻痺側下肢の特徴はどれか。2つ選べ。

1.立脚相の足内側接地
2.立脚相の膝関節外側動揺
3.遊脚相の内反尖足
4.遊脚相の膝関節過伸展
5.遊脚相の股関節外転外旋

解答3.5

解説
1.× 立脚相の足「内側」ではなく「外側」接地である。なぜなら、筋緊張により足部は内反尖足をとりやすいため。
2.× 立脚相の膝関節外側動揺は、主に変形性膝関節症などで生じる。
3.〇 遊脚相の内反尖足は、脳卒中片麻痺患者の歩行時麻痺側下肢でみられる。なぜなら、筋緊張の亢進は、下肢伸展筋の緊張(伸展パターンの増強)が起こりやすいため。
4.× 膝関節過伸展(反張膝)は、「遊脚相」ではなく立脚相で起こりやすい。ちなみに、遊脚相は股関節外転・外旋(ぶん回し)が起こりやすい。
5.〇 遊脚相の股関節外転・外旋(ぶん回し)は、脳卒中片麻痺患者の歩行時麻痺側下肢でみられる。

 

 

 

 

 

32.Parkinson病で誤っているのはどれか。

1.経過とともにL-dopaの効果の持続が短縮する。
2.リズム音刺激による歩行訓練の効果を認める。
3.運動症状は一定の周期で変動する。
4.自律神経症状を合併する。
5.不随意運動を認める。

解答3

解説

矛盾性運動(逆説的運動)とは?

すくみ足の症状があっても、床の上の横棒をまたぐことができることをいう。リズムをとったり、視覚的な目標物を踏み越えてもらうと、本来難易度が高いはずであるが、スムーズに足が出るといった現象である。ちなみに、階段昇降もこれに含まれ、平地歩行に比べて障害されにくい。

1.〇 正しい。経過とともにL-dopaの効果の持続が短縮する。これをWearing-off現象という。
2.〇 正しい。リズム音刺激による歩行訓練の効果を認める。逆説運動を利用した訓練法である。聴覚刺激(かけ声や、メトロノームを用いたリズム音)や視覚刺激(床の上の横棒を踏み越える)歩行訓練は、すくみ足の改善に有効である。
3.× 運動症状は、一定の周期で変動しない。日内変動 (1日の中で調子の良い時・悪い時がある)や日差変動(日によって調子の良い日・悪い日がある)がある。
4.〇 正しい。自律神経症状を合併する。パーキンソン病の自律神経症状では、便秘・起立性低血圧がみられる。
5.〇 正しい。不随意運動(安静時振戦)を認める。また、L-dopaの副作用として、悪心・嘔吐、起立性低血圧、不随意運動(舞踏様運動、口舌ジスキネジー)がみられる。

Wearing-offの原因と仕組み

 wearing-offが出現する原因は、「ドパミン神経細胞の減少」である。病気の初期は、ドパミン神経が比較的残存しているため、L-dopaから作られたドパミンを貯蔵庫に保存して、必要に応じて使う事が可能である。しかし、病気が進行すると「ドパミン神経が減少」し、ドパミンを貯蔵庫に保存できなくなる。したがって、薬と薬の合間にドパミンを使い切ってしまい、欠乏状態が生じる。これがwearing-offの仕組みである。

 

 

 

 

33.Guillain-Barré症候群で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.筋力低下は体幹に初発する。
2.急性期は廃用症候群を予防する。
3.血清CK値を運動量の目安とする。
4.回復期は過用性筋力低下に注意する。
5.軸索変性型は機能予後が良好である。

解答2.4

解説

”Guillain-Barré症候群とは?”

Guillain-Barré(ギラン・バレー)症候群は、先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。一般的には細菌・ウイルスなどの感染があり、1~3週後に両足の筋力低下(下位運動ニューロン障害)や異常感覚(痺れ)などで発症する。感覚障害も伴うが、運動障害に比べて軽度であることが多く、他覚的な感覚障害は一般に軽度である。初期症状として、歩行障害、両手・腕・両側の顔面筋の筋力低下、複視、嚥下障害などがあり、これらの症状はピークに達するまでは急速に悪化し、時には人工呼吸器が必要になる。症状が軽い場合は自然に回復するが、多くの場合は入院により適切な治療(免疫グロブリン静注療法や血液浄化療法など)を必要とする。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い。臨床検査所見として、①髄液所見:蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示す。②電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。複合筋活動電位が消失あるいは著明な低下し、早期から脱神経所見を示す症例は、一般に回復が悪く機能的予後も不良である。

(※参考:「重篤副作用疾患別対応マニュアル ギラン・バレー症候群」厚生労働省様HPより)

1.× 筋力低下は、「体幹」ではなく下肢遠位(四肢遠位)に初発する。
2.〇 正しい。急性期は、廃用症候群を予防する。廃用症候群を予防しながら、かつ適度な運動を提供する。過度な近視用は筋力低下につながるため注意が必要である。
3.× 血清CK値を運動量の目安とならない。なぜなら、Guillain-Barré症候群は免疫・炎症性ニューロパチーの代表的疾患であり、急性の運動麻痺を主徴とする多発根ニューロパチー(末梢神経障害)であるため。血清CK値は筋ジストロフィー症など筋組織の損傷で上昇する。
4.〇 正しい。回復期は過用性筋力低下に注意する。急性期・回復期も一貫して廃用症候群と過用には注意が必要である。末梢神経障害の患者に対して高負荷の筋力増強訓練を行うと、逆に筋力低下してしまうため、低負荷高頻度の筋持久力訓練を行う。
5.× 軸索変性型は機能予後が、「良好」ではなく不良である。Guillain-Barré症候群は、①軸索変性を伴う軸索型、②脱髄型がみられる。ちなみに、我が国では、軸索障害型の方が脱髄型よりも多い。

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34.頸髄損傷受傷3日後で頸椎直達牽引中の患者に対する肩関節可動域訓練で屈曲角度の上限はどれか。

1. 30°
2. 60°
3. 90°
4. 120°
5. 150°

解答3

解説

本症例のポイント

・頸髄損傷受傷3日後。
・頸椎直達牽引中。
→頸髄損傷の急性期リハビリテーションでは、頸部周囲を動かさないように注意が必要である。

肩関節屈曲動作では頸椎の動き(頸椎の弯曲)を伴う。弛緩期には、他動的に肩関節屈曲・外転は90°までと言われている。受傷3日というごく初期では、90°までが望ましい。したがって、選択肢3. 90°が正しい。

肩甲上腕リズムとは?

肩甲上腕リズムは、1944年にInmanらが初めて提唱し、以来様々な研究で検証され、現在においても上腕骨と肩甲骨の運動における基準である。肩関節外転は、肩甲上腕関節のみでは外転90~120°までしかできない。これは肩峰と烏口肩峰靭帯によって阻害されるためである。さらなる外転位を取るには、肩甲骨・鎖骨を動かすことにより可能となる。上腕骨の外転だけでなく、肩甲骨の動きを合わせて肩甲上腕リズムという。90°外転位では、「肩甲骨上方回旋が30° + 肩甲上腕関節外転が60°」となり1:2の関係となる。180°外転位も同様に、「肩甲骨上方回旋が60° + 肩甲上腕関節外転が120°」となり1:2の関係となる。

 

 

 

 

 

35.脊髄損傷で異所性骨化を認めやすいのはどれか。2つ選べ。

1.仙腸関節
2.股関節
3.膝関節
4.足関節
5.足指関節

解答2.3

解説

異所性骨化とは、本来骨組織が存在しない部位、すなわち筋・筋膜・靱帯・関節包などに異常に骨形成が起こる現象である。骨梁構造を認める点が石灰化との違いである。 好発部位は骨盤・股関節(最も多い)・膝関節(2位)・肩関節(4位)・肘関節(3位)などである。脊髄損傷受傷後1~6か月くらいに発症することが多い。

1.× 仙腸関節/足関節/足指関節より、脊髄損傷で異所性骨化を認めやすいものが選択肢の中から他にある。ちなみに、仙腸関節は、4位以降に次いで多いとされている。
2~3.〇 正しい。股関節/膝関節は、脊髄損傷で異所性骨化を認めやすい。

 

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