第45回(H22) 理学療法士国家試験 解説【午前問題36~40】

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36.小児の理学療法用具と訓練目的との組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

1.ツイスター:股関節の回旋コントロール
2.三角マット:下肢の支持性改善
3.クローラー:体幹伸筋群の強化
4.スタビライザー:上肢伸筋群の強化
5.ターンバックル:前足部の変形改善

解答1.3

解説

ツイスター(※写真引用:厚生労働省様HP)

1.〇 正しい。ツイスターは、股関節の回旋コントロール目的に用いる。特に、立位歩行時に下肢が内旋する場合に用いるものである。
2.× 三角マットは、「下肢の支持性改善」ではなく、「姿勢の保持や安定、反応を促す」目的に用いる。主に、①腹臥位での頭部挙上を促す際や、②座位保持時に背部に挿入し保持・安定を図る。
3.〇 正しい。クローラーは、体幹伸筋群の強化目的に用いる。クローラーは、四肢麻痺の子どもが四つ這いで移動する時に必要な器具である。①運動機能の向上、②感覚的な側面の発達、③寝たきりの防止、④具体的な移動手段の獲得といった効果がある。
4.× スタビライザー(起立安定板付き長下肢装具)は、「上肢伸筋群の強化」ではなく「立位保持獲得」目的に用いる。主な対象は、立位不能な痙直型脳性麻痺である。
5.× ターンバックルは、「前足部の変形改善」ではなく「膝関節の屈曲・伸展拘縮改善」目的に用いる。装具の支柱や支持部に取り付けて関節可動域を調整する装具である。 

(※画像引用:メディカルオンライン様HPより)

 

 

 

 

 

37. 5歳のDuchenne型筋ジストロフィー児に認められるのはどれか。2つ選べ。

1.指這いでの上肢移動
2.足関節背屈制限
3.動揺性歩行
4.心不全徴候
5.動脈血二酸化炭素分圧の上昇

解答2.3

解説

筋ジストロフィーとは?

筋ジストロフィーは、骨格筋の変性・壊死と筋力低下を主徴とする遺伝性の疾患総称である。そのうちのDuchenne型筋ジストロフィーは、X連鎖劣性遺伝で①幼児期から始まる筋力低下、②動揺性歩行、③登攀性起立(Gowers徴候:ガワーズ徴候)、④腓腹筋などの仮性肥大を特徴とする。

【典型例の進行】
3歳頃:体幹・四肢の筋力低下が始まり、一旦歩行が可能になるものの、その後次第に転びやすくなる。症状は進行性で、次第に動揺性歩行や登攀性起立、ふくらはぎの仮性肥大などの所見が顕著になる。
10歳頃:上肢・体幹の筋力低下が著明となる。移動には車椅子が必要となる。
15歳頃:臥床中心となる。
20歳頃:呼吸障害や心不全で死亡する。骨格筋の他、心筋にも障害が見られることがある。

1.× 指這いでの上肢移動は、10歳頃のDuchenne型筋ジストロフィー児に認められる。手動車いすが必要になる時期は、 肘関節屈曲拘縮もつ弱る時期と重なり、四つ這い→肘這い→ずり這い→指這いへと進行する時期である。
2.〇 正しい。足関節背屈制限は、5歳のDuchenne型筋ジストロフィー児に認められる。下腿三頭筋の短縮や仮性肥大により、足関節は底屈し、尖足変形を呈する。
3.〇 正しい。動揺性歩行は、5歳のDuchenne型筋ジストロフィー児に認められる。動揺性歩行(アヒル歩行)は、下腹部と殿部を突き出して腰椎前弯を強めた姿勢で、腰部を左右に振りながら歩く様子が観察できる。Duchenne型筋ジストロフィー児や両中殿筋の低下・麻痺、発育性股関節形成不全などが原因として起こる。
4~5.× 心不全徴候/動脈血二酸化炭素分圧の上昇は、20歳頃のDuchenne型筋ジストロフィー児に認められる。20歳頃には、呼吸障害や心不全で死亡する。ちなみに、動脈血二酸化炭素分圧は、動脈血液中に取り込まれている炭酸ガスの圧力のことで、呼吸不全に対する呼吸状態の評価をする動脈血液ガス分析の検査項目のひとつである。

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38.冠動脈疾患後の維持期リハビリテーションの目的で誤っているのはどれか。

1.再発予防
2.高血圧の改善
3.冠動脈硬化の改善
4.心筋壊死部の筋再生
5.冠循環側副血行の増大

解答4

解説

心筋梗塞の危険因子

身体的因子:高血圧・糖尿病・血清脂質異常・肥満など。

生活習慣因子:喫煙・運動不足・飲酒など。

1.〇 再発予防を目的とする。心筋梗塞の危険因子を減らし、心負荷を減少させることで、再発の予防へとつながる。
2.〇 高血圧の改善を目的とする。高血圧は心筋梗塞の危険因子である。再発防止のため、運動療法により高血圧の改善を目指す。
3.〇 冠動脈硬化の改善を目的とする。冠動脈硬化とは、冠動脈の内側にコレステロールがたまると、血管の中が狭くなって血液の流れが悪くなっている状態のことである。動脈硬化の原因として、たばこ、高血圧、肥満、糖尿病、高脂血症などがあげられる。
4.× 心筋壊死部の筋再生は目的にならない。なぜなら、壊死した心筋は再生しないため。
5.〇 冠循環側副血行の増大を目的とする。なぜなら、側副血行路が発達すると血流が改善されるため。冠動脈に高度狭窄または閉塞が起こると、虚血部位に新たな循環を生じることにより虚血を改善しようとする機構が働く。 この新たに出現する循環を側副血行と呼ぶ。

 

 

 

 

 

39.呼吸器疾患の理学療法の目的で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.呼吸数の増加
2.吸気の緩徐化
3.腹式呼吸の促通
4.呼吸補助筋の活用
5.全身のリラクセーション

解答3.5

解説
1.× 呼吸数は、「増加」ではなく減少する。1回換気量を増加させ、胸郭の可動性を維持していく。そのために、腹式呼吸や吸気の緩徐化(口すぼめ呼吸)を練習する。
2.× 「吸気」ではなく呼気の緩徐化(口すぼめ呼吸)を練習する。緩徐化とは、ゆるやかで静かなさま、 動作などがゆっくりしているさまのことをいう。
3.〇 正しい。腹式呼吸の促通を行っていく。横隔膜の活動補助、呼吸補助筋群の活動抑制が目的となる。特に慢性閉塞性肺疾患は、気道の閉塞を伴うため、短時間に息を吐くことができない。
4.× 呼吸補助筋は、「活用」ではなく抑制する。なぜなら、呼吸補助筋優位の呼吸(努力性の呼吸)を長時間行うと、常時エネルギーを使い体力低下を招くため。したがって、呼吸補助筋群の活動を抑制し、強制吸気を抑制する。
5.〇 正しい。全身のリラクセーションを行っていく。なぜなら、呼吸補助筋や全身の筋肉の緊張緩和のため。

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40.慢性閉塞性肺疾患患者へのADLの指導で誤っているのはどれか。

1.作業は座位で行う。
2.動作時は腹式呼吸を心がける。
3.呼気よりも吸気に時間をかける。
4.両上肢挙上位を避けて作業する。
5.物を持ち上げる際は呼気で行う。

解答3

解説

1.〇 正しい。作業は、座位で行う。なぜなら、内蔵が重力により下垂し呼吸がしやすくなるため。それでも息苦しさがある場合は、起坐位や半座位で行う。
2.〇 正しい。動作時は、腹式呼吸を心がける。なぜなら、ゆっくり呼吸することで、効率的に換気できるため。
3.× である。吸気よりも呼気に時間をかける。口すぼめ呼吸は、吸気:呼気=1:2ぐらいが望ましい。
4.〇 正しい。両上肢挙上位を避けて作業する。なぜなら、両上肢挙上位・反復動作・前かがみなどは、呼吸苦が増悪するため。洗髪は片手ずつ挙上して行う。
5.〇 正しい。物を持ち上げる際は呼気で行う。口すぼめ呼吸で息を吐きながら行うよう指導する。

 

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