第47回(H24) 理学療法士国家試験 解説【午後問題6~10】

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6  右下肢筋の伸張運動を行う際に、運動方法と伸張される筋の組合せで正しいのはどれか。

1.腸腰筋
2.大腿筋膜張筋
3.ヒラメ筋
4.腓腹筋
5.ハムストリングス

解答3

解説


1.× 1の図は、「腸腰筋」ではなく大腿筋膜張筋・中殿筋を伸張している。
2.× 2の図は、「大腿筋膜張筋」ではなく腸腰筋(大腿四頭筋)を伸張している。
3.〇 正しい。3の図は、ヒラメ筋を伸長している。ちなみに、膝関節伸展位での足関節背屈は、腓腹筋も加えて伸長できる。
4.× 4の図は、「腓腹筋」ではなくハムストリングス(大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋)を伸張している。
5.× 5の図は、「ハムストリングス」ではなく下腿三頭筋(腓腹筋・ヒラメ筋)を伸張している。

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7 8歳の男児。転んで左手をつき、橈骨遠位部の若木骨折と診断され、副子による3週間の外固定が行われた。固定除去時のエックス線写真を下図に示す。手関節には可動域制限が残存している。
 この時点で行う物理療法で適切でないのはどれか。

1.渦流浴
2.赤外線
3.超音波
4.ホットパック
5.パラフィン浴

解答3

解説

本症例のポイント

・8歳の男児(橈骨遠位部の若木骨折)
・3週間:副子による外固定。
・手関節には可動域制限が残存している。
・固定除去時のエックス線写真:①橈骨遠位端の骨折線をはっきり確認することができない。②橈骨・尺骨に骨端線を認める。
→本症例は、8歳の男児で骨端線がみられる。手関節には可動域制限がみられるため安全に物理療法を実施する必要がある。児への治療の最注意事項として、①超音波治療は、骨端線への照射は禁忌である。②手術では骨端線を越えるような固定法(髄内釘・プレートなど)は行わない。

1〜2,4〜5.〇 正しい。渦流浴/赤外線/ホットパック/パラフィン浴は、本症例に適応である。どれも温熱効果・軟部組織の伸張性を増加させ、可動域制限改善に有効である。
3.× 超音波は、本症例に不適応である。なぜなら、超音波は小児の骨端線に対しては禁忌とされているため。

若木骨折とは?

若木骨折は、骨の膜の内側で、筋状にひびが入っている状態である。小児によくみられる。若木を折り曲げたときのように、ポキッと折れず連続性が一部保たれた不完全骨折である。不全骨折とは、何らかの理由により骨が連続性を完全に失わない状態の骨折を指す。いわゆる骨にヒビが入っている状態である亀裂骨折や、緻密層以下の部分が離断しているにも関わらず骨膜に損傷がないため、外形的には変化が見られない骨膜下骨折などがこの不全骨折の典型例である。

 

 

 

 

 

8 50歳の男性。右利き。脳梗塞発症後2週経過。頭部CTを下図に示す。
 この患者にみられる状態として考えにくいのはどれか。

1.Gerstmann 症候群
2.左下肢運動麻痺
3.左上肢感覚低下
4.左空間無視
5.身体失認

解答1

解説

本症例のポイント

・50歳の男性(右利き、脳梗塞)。
頭部CTの所見:右頭頂葉(右中大脳動脈領域)に低吸収域を認める。
→本症例は、右頭頂葉(右中大脳動脈領域)に低吸収域を認められ、中大脳動脈は①側頭葉、②前頭葉、③頭頂葉の一部を支配している。前頭葉障害もきたしやすいことも念頭に入れておく。【前頭葉障害の主症状】①遂行機能障害、②易疲労性、③意欲・発動性の低下、④脱抑制・易怒性、⑤注意障害、⑥非流暢性失語

1.× Gerstmann症候群(ゲルストマン症候群)とは、優位半球(左)の頭頂葉(角回周囲)の障害である。症状は、①手指失認、②左右失認、③失算、④失書が組み合わされた症状を呈する。
2〜3.〇 左下肢運動麻痺/左上肢感覚低下は、劣位半球(右)の大脳障害で起こる。
4〜5.〇 左空間無視/身体失認は、劣位半球(右)の頭頂葉障害で起こる。半側空間無視とは、障害側の対側への注意力が低下し、その空間が存在しないかのように振る舞う状態のことである。半盲とは性質が異なり、左半分が見えないわけではなく、左半分への注意力が低下している状態である。したがって、①左側への注意喚起、②左側身体への触覚刺激、③左足方向への体軸回旋運動、④左側からの声かけなどのアプローチが必要である。

 

 

 

 

 

 

9 65歳の男性。右利き。左中大脳動脈領域の脳梗塞による右片麻痺。発症後3週経過した時点でBrunnstrom法ステージは上肢、手指および下肢ともにⅠ。介助で膝立ち位をさせると体幹が前方へ崩れてしまう。バイタルサインは安定している。
 この患者に対する理学療法として適切なのはどれか。

1.長下肢装具を装着した状態での立位訓練
2.足継手付きプラスチック製短下肢装具を装着した状態での歩行訓練
3.床からの立ち上がり訓練
4.自転車エルゴメーターによる有酸素運動
5.浴槽への移乗訓練

解答1

解説

本症例のポイント

・65歳の男性(右利き、左中大脳動脈領域の脳梗塞による右片麻痺)
発症後3週経過:Brs上肢Ⅰ(弛緩性麻痺)、手指Ⅰ(弛緩性麻痺)、下肢Ⅰ(弛緩性麻痺
・介助で膝立ち位をさせると体幹が前方へ崩れてしまう。
・バイタルサインは安定している。
→本症例は、発症後3週経過しておりバイタルサインは安定している。症状も安定してきたと考えられ、理学療法の方針としては、①良好な肢位保持することで関節可動域制限を予防する。②早期座位を獲得し安全に離床を促す必要がある。

1.〇 正しい。長下肢装具を装着した状態での立位訓練は、この患者に対する理学療法として適切である。長下肢装具は、大腿から足先までの機能を補い、弛緩性麻痺患者に適応となる。麻痺側への荷重を促すことで、感覚入力や廃用予防、バランスの再獲得などにつながる。脳卒中ガイドライン2015で推奨されている。
2.× 足継手付きプラスチック製短下肢装具を装着した状態での歩行訓練は優先度が低い。なぜなら、本症例は、弛緩性麻痺(上肢・手指・下肢:Brunnstrom法ステージⅠ)であるため。足継手付きプラスチック製短下肢装具は、膝関節のコントロールがある程度行える患者に適応となる。
3.× 床からの立ち上がり訓練は優先度が低い。なぜなら、本症例は膝立ち位が困難で、弛緩性麻痺(上肢・手指・下肢:Brunnstrom法ステージⅠ)であるため。特に、上・下肢の機能が不十分と考えられる。
4.× 自転車エルゴメーターによる有酸素運動は優先度が低い。なぜなら、本症例は膝立ち位が困難で、弛緩性麻痺(上肢・手指・下肢:Brunnstrom法ステージⅠ)であるため。特に、下肢の機能が不十分と考えられる。
5.× 浴槽への移乗訓練は優先度が低い。なぜなら、本症例は膝立ち位が困難で、弛緩性麻痺(上肢・手指・下肢:Brunnstrom法ステージⅠ)であるため。特に、上肢の機能が不十分と考えられる。

 

 

 

 

 

 

次の文により10、11の問いに答えよ。
 68歳の男性。作業中に脚立の上から転落したため搬入された。強い腰痛を訴え、下肢の運動麻痺が認められる。脊椎MRIを下図に示す。

10 画像所見上、損傷部位として考えられるのはどれか。

1.第9胸椎
2.第11胸椎
3.第1腰椎
4.第3腰椎
5.第5腰椎

解答3

解説

本症例のポイント

しばしば仙椎は、椎体部が別れているように見える。

【腰仙関節の見分け方】
①椎弓部分での癒合が見られること。
②腰椎前弯から仙椎後弯にかけてのカープの変曲点にあたっているなどで見分ける。

損傷部位として考えられるのは、選択肢3.第1腰椎である。

 

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