第47回(H24) 理学療法士国家試験 解説【午前問題11~15】

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次の文により10、11の問いに答えよ。
 50 歳の男性。Parkinson病。4年前から右足のふるえが出現し、抗Parkinson病薬を服用している。ADLは自立し、家事を行うことはできているが、作業に時間がかかるようになった。最近、下り坂の途中で足を止めることができず、前方へ転倒するようになったという。

11 自宅でバランス練習を行うことになった。
 練習方法として適切なのはどれか。

解答2

解説

自宅での運動を提唱する上で、①安全に行えること。②効果的であることを基準に提供する。

1.× バランス練習とはいえない。ただし、体幹伸展され前傾姿勢に対して有効である。設問文には「自宅でバランス練習を行うことになった」とバランスの練習法を問いている。
2.〇 正しい。四つ這いでの練習は、自宅でのバランス練習として有効である。なぜなら、転倒した際も大きな怪我とはなりにくく、四つ這いから、手や足を上げたりとその日に合わせてバランスの難易度も変えられるため。
3.× 本症例には片脚立位は転倒のリスクが高く、転倒した際に姿勢反射障害による受け身も取りにくく怪我しやすい。
4〜5.× ボール/不安定板を用いたバランス練習は、実際にボールや不安定板の購入を強いることになる。また、自宅で実施するには転倒のリスクが高く、座位以上からの落下は怪我の原因となりやすい。自宅での練習には不適切である。

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12 義肢の写真(下図)に示す。
 使われている部品はどれか。

1.吸着式ソケット
2.ターンテーブル
3.多節リンク膝
4.単軸足継手
5.ドリンガー足部

解答1

解説
1.〇 正しい。吸着式ソケット(四変形ソケット)が使われている部品である。吸着式ソケット(四変形ソケット)とはソケットの内壁で、断端の軟部組織を適度に圧迫することによって、ソケットの内面と断端の表面との間に吸着作用を生じさせ、自己懸垂性をもたせたソケットである。
2.× ターンテーブルは、義足を360°回転する事ができるアダプターで、膝継手の上部に取り付ける。 足を組んだり、床や畳に楽に座る事ができたり、また靴下や靴を履く動作が可能となる。
3.× 多節リンク膝(多軸膝)は、軸が4つ以上あり、立脚期の安定に有効である。本画像は、荷重ブレーキ機構のついた単軸膝である。
4.× 単軸足継手であると、写真からは見られない。なぜなら、足継手は足部内に位置しているため。
5.× ドリンガー足部(農耕用義足)は、足部が丸みを帯びた舟底様になり前足部が無いのが特徴である。あぜ道・坂道での歩行の安定性と容易さが得られ、泥田の中から足部が抜けやすい利点がある。

(※写真引用:「第2章補装具の基礎知識」福島県ホームページより)

 

 

 

 

 

13 10歳の男児。脳性麻痺痙直型両麻痺。床上移動は交互性の四つ這いで自立している。移乗は手すりにつかまれば、かろうじて自力で可能である。主な移動手段は車椅子である。
 車椅子の作製で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.座面高は床からはい上がれる高さとする。
2.フットレストはスイングアウト式とする。
3.座幅は成長を見越して広くする。
4.背もたれはリクライニング式とする。
5.背もたれの高さは肩の高さまでとする。

解答1/2

解説

本症例のポイント

・10歳の男児(脳性麻痺痙直型両麻痺)
床上移動:交互性の四つ這い自立。
・移乗:手すり使用で自力。
・移動手段:車椅子。
→本症例は、床上動作は四つ這いで行え、移乗は手すりを使用すれば可能である。車椅子の作製時に個別の機能はしっかり把握する必要がある。脳性麻痺痙直型両麻痺である。両麻痺とは、両下肢に重度の麻痺がある状態のこと。痙直型両麻痺の歩行(クラウチング歩行)は、股・膝とも屈曲位で伸びきらない歩行である。さらに、股関節は内転・内旋となるため内股での歩行が特徴的である。

1.〇 正しい。座面高は、床からはい上がれる高さとする。なぜなら、本症例の移乗は手すりにつかまればかろうじて可能であるため。床からも車椅子に乗れるよう工夫する。
2.〇 正しい。フットレストは、スイングアウト式とする。なぜなら、固定式よりスイングアウト式の方が移乗しやすいため。
3.× 座幅は成長を見越して広くする必要はない。なぜなら、座幅が本人に合っていないと、座位が安定せず筋緊張が増強する可能性があるため。座幅は、おしりの幅(大転子間幅)+4〜5cmが目安で、成長した際は①クロスバーの交換、②シートの張り替え、③新規作製で対応する。
4.× 背もたれは、リクライニング式にする必要はない。なぜなら、リクライニング式の適応は、起立性低血圧などで座位がとれない場合であるため。ちなみに、リクライニング式とは背もたれを倒すことのできるものである。
5.× 背もたれの高さは、「肩の高さまで」ではなく、肩甲骨下端が目安である。本症例は、両麻痺であり、上肢は軽度の麻痺である。したがって、背もたれなどに必要以上の配慮は不要である。

他参考値

車椅子の標準寸法
・シート幅(座幅)=座位臀幅+(0~30)mm
・前座高=下腿長+60~80mm
・後座高=前座高-20~40mm
・フットサポート高=座位下腿長-クッション厚mm
・アームサポート高=座位膝頭高+(10~20)+クッション厚mm
・バックサポート高=座位腋下高+(70~100)+クッション厚mm
・シート奥行き(座長)=座底長-(50~70)mm
・バックサポート角度=90~95°
・グリップ高=介助者の臍~股関節の高さ

(※参考:「身体寸法と車いす寸法の合わせ方」財団法人テクノエイド協会様HPより)

 

 

 

 

 

 

14 54歳の男性。脳卒中左片麻痺。足部に中等度の痙性があり、内反尖足位となっている。膝の上から圧迫を加えて装具を装着すると図のような状態となり、歩行練習の最後まで踵部が装具から離れることはない。
 装具のベルトをかける手順として適切なのはどれか。

1.A→B→C
2.A→C→B
3.B→A→C
4.B→C→A
5.C→A→B

解答4

解説

中等度の痙縮・内反尖足に関わらず、装具のベルトを掛ける手順は変わらない。

①B:足部と装具(関節)がずれないように位置を決定する。
②C:足部の位置を整える。
③A:下腿の位置を整える。

したがって、選択肢4B→C→Aが正しい。

 

 

 

 

 

 

15 65歳の男性。4歳時にポリオに罹患し、右下肢麻痺となった。歩行時には右膝を右手で押さえながら歩いていたという。55歳ころから腰痛を自覚するようになり、歩行がさらに困難になったため受診した。体重75kg(30歳時と比較して20kg増加)。Danielsらの徒手筋力テストで、右大四頭筋と右前脛骨筋とは筋力1である。ポリオ後症候群と診断され、理学療法を行うことになった。
 理学療法として優先順位が高いのはどれか。

1.自転車エルゴメーターによる有酸素運動
2.右下肢装具を装着しての歩行訓練
3.右大四頭筋の筋力増強訓練
4.四つ這い移動訓練
5.車椅子の導入

解答2

解説

ポリオ後症候群とは?

ポリオ後症候群とは、小児期にポリオ(急性灰白脊髄炎:いわゆる小児まひ)に罹患し、いったん十分に機能回復して通常の社会生活を過ごしていた成人に、40歳から50歳代に新たに現れる筋力低下・筋萎縮・疲労・筋痛を主訴とし、寒冷耐性の低下・関節痛・呼吸機能障害・嚥下障害・睡眠障害・認知障害などの多彩な症状を伴う種々の機能障害の総称である。ポリオで傷害を受けた末梢神経を長年酷使することで、神経がダメージを受ける病態であるため、神経に負荷がかかりにくい訓練を実施する。

リハビリテーションのポイントとして過用の防止、廃用の予防、低負荷反復運動、生活習慣の再構築などがあげられている。

1.× 自転車エルゴメーターによる有酸素運動は優先度が低い。なぜなら、本症例の右大腿四頭筋は筋力1であり、両足を使用する自転車エルゴメーターは実施が困難であると考えられるため。
2.〇 正しい。右下肢装具を装着しての歩行訓練を行う。本症例は、歩行時に右膝を右手で押さえている(膝折れ防止)。右下肢装具(ダブルクレンザックや長下肢装具)を装着することで、歩行の困難さの改善を図れる。
3.× 右大四頭筋の筋力増強訓練は優先度が低い。なぜなら、筋力増強訓練は過用につながるため。神経に負荷がかかりにくい訓練で、廃用の予防は望ましい。
4〜5.× 四つ這い移動訓練/車椅子の導入は優先度が低い。なぜなら、現状では歩行に困難さは出ているものの維持可能と考えられるため。また、症状の進行も数ヵ月〜1年ほどで止まるとされている。

 

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