第47回(H24) 理学療法士国家試験 解説【午前問題6~10】

 

6  48歳の男性。高校時代に野球を始め、現在も週1回程度続けている。最近腰痛が悪化したため病院を受診したところ、第5腰椎分離症と診断された。3週間の自宅安静によって腰痛は軽快した。
 この時点で行うべき理学療法で適切でないのはどれか。

1.腕立て伏せ
2.腹筋の筋力強化
3.背筋の筋力強化
4.SLR訓練
5.踵あげ

解答3

解説

本症例のポイント

・48歳の男性(第5腰椎分離症)
・現在:野球を週1回程度、高校から続けている。
・最近:腰痛が悪化。
・3週間の自宅安静によって腰痛は軽快した。
→本症例は、腰痛は軽減していることからも慢性期に相当する。不良姿勢に注意をしながら再発防止を主に理学療法を行っていく時期である。腰椎分離症では腰椎前弯骨盤前傾による腰仙角の増大により疼痛が増悪するため、腰部を伸展させないよう、注意をしながら理学療法を行う必要がある。腰椎分離症とは、腰部の繰り返しのスポーツ動作によるストレスで起こる関節突起間部の疲労骨折である。日本人男性の約8%にみられ、また成長期のスポーツ選手の腰痛の原因の30~40%を占める。L5に好発し、腰部から殿部の痛みと圧痛・叩打痛がみられる。椎弓と呼ばれる腰椎の後方部分が分離した状態のことを指す。歩行時に下肢痛やしびれなどの症状が出現する。また、Kemp徴候(他動的な後側屈による放散痛)がみられる。

 

1.〇 正しい。腕立て伏せは、体幹を屈曲し、腰椎前弯とならないように行う。
2.〇 正しい。腹筋の筋力強化を実施する。なぜなら、腹筋は体幹屈曲・骨盤後傾作用のあるため。
3.× 背筋の筋力強化は、この時点で行うべき理学療法で適切でない。なぜなら、体幹の伸展運動は疼痛を誘発させる運動であるため。腰椎分離症とは、椎弓と呼ばれる腰椎の後方部分が分離した状態のことを指す。歩行時に下肢痛やしびれなどの症状が出現する。また、Kemp徴候(他動的な後側屈による放散痛)がみられる。また、背筋は筋力強化ではなくストレッチを主にすることが多い(マッケンジー体操)。
4.〇 正しい。SLR訓練は、大腿四頭筋の筋力強化訓練である。訓練をしている反対側の膝を立てることで骨盤を後傾させ、前傾を予防して行えている。
5.〇 正しい。踵上げは下腿三頭筋の筋力強化である。3週間の自宅安静後に廃用性筋萎縮による筋力低下、体幹のバランス機能の回復・改善、深部静脈血栓症の予防のため適切な運動である。

腰痛体操

McKenzie体操(マッケンジー法):ニュージーランドの理学療法士「ロビン・マッケンジー氏」により考案された、腰部の伸展を主に行う運動である。脊柱の生理的前弯の減少に対し、関節可動域を改善することで脊柱前弯を獲得させ、椎間板内の髄核を前方に移動させることを目的に行う。

Williams体操(ウィリアムス体操):目的は、腰痛症に対して腰部の負担を軽減することである。方法として、腹筋・大殿筋・ハムストリングス・背筋群のストレッチングを行う。

 

 

 

 

 

 

7 56歳の女性。関節リウマチ。足部の写真(下図)に示す。
 この写真にみられる変形はどれか。2つ選べ。

1.スワンネック変形
2.ボタンホール変形
3.Z状変形
4.内反小趾
5.外反母趾

解答4/5

解説


1.× スワンネック変形とは、手指のDIP関節が屈曲し、PIP関節が過伸展している状態のことである。
2.× ボタンホール変形とは、手指のDIP関節が過伸展氏、PIP関節が屈曲している状態のことである。
3.× Z状変形とは、手の母指に起こるものであり、IP関節が過伸展している状態のことである。
4.〇 正しい。内反小趾とは、第5趾が内反している状態のことを指す。この画像では、第5趾が内反し第4趾と重なっている。
5.〇 正しい。外反母趾とは、第1趾が外反している状態のことを指す。この画像では、母趾の外反が認められる。

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は7:3前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

8 60歳の男性。右利き。脳梗塞を発症し、回復期リハビリテーション病棟に入院中である。食事時に右手でスプーンの柄を握りこんでしまい、うまくスプーン操作ができず、介助が必要になることが多いが、少しずつ食事動作が円滑にできる場面が増えてきている。頭部MRI(下図)に示す。
 この食事動作の病態として考えられるのはどれか。

1.観念失行
2.視覚性失認
3.運動維持困難
4.右上肢運動麻痺
5.右上肢深部覚障害

解答1

解説

本症例のポイント

・60歳の男性(右利き、脳梗塞)
・食事時に右手でスプーンの柄を握りこんでしまい、うまくスプーン操作ができず、介助が必要になることが多い。
・頭部MRI:左頭頂葉に高信号を認める。
→当症例は左の角回(左頭頂葉)の脳梗塞により観念失行を生じていると考えられる。観念失行とは使い慣れているはずの道具の使用・日常の一連の動作を順序正しく行えないことである。

1.〇 正しい。問題文から、スプーンを握るが使い方がわからないという典型的な観念失行である。
2.× 視覚性失認とは、見ている物体が何であるかわからない状態である。左後頭葉の視覚前野から側頭葉の側頭連合野にかけての腹側視覚路が障害することで生じる。
3.× 運動維持困難は、一つ一つの動作は可能であるが、それを継続できない状態のことである。運動維持困難の障害病巣は右前頭葉右頭頂葉と言われている。また、前頭葉、側頭葉、頭頂葉を含む中大脳動脈領域の病変に起こりやすい。
4.× 右上肢運動麻痺であれば、食事動作に限らず、あらゆる日常動作で不便を感じるため、錐体路(外側皮質脊髄路 )の障害で生じ、その経路は「大脳皮質—放線冠—内包後脚—中脳の大脳脚—橋縦束―延髄で錐体交叉—脊髄の側索」である。
5.× 右上肢深部覚障害では、位置覚振動覚が障害される。本症例はスプーンを把持することができているため右上肢深部覚障害は否定できる。振動覚、位置覚の経路は、「後根→後索(下肢からの線維は薄束を通って薄束核に終わり、上肢からの線維は楔状束を通って楔状束核に終わる)→延髄(後索核)→毛帯交叉→内側毛帯→視床後外側腹側核→感覚野」となる。

 

 

 

 

 

 

9 60歳の男性。仕事中に意識障害を発症したため、救急車で搬入された。緊急手術を行い順調に経過していたが、術後7日目に突然右片麻痺が出現した。入院時の頭部CT(下図)に示す。
 麻痺の原因として最も考えられるのはどれか。

1.正常圧水頭症
2.血管攣縮
3.脳内出血
4.脳挫傷
5.脳膿瘍

解答2

解説

本症例のポイント

・60歳の男性。
・仕事中に意識障害を発症し緊急手術。
・術後7日目:突然右片麻痺が出現。
・入院時の頭部CT:脳溝に吸収域を認める。
→本症例は、頭部CTの画像から脳溝に吸収域が認められるため「くも膜下出血(SAH)」が疑われる。くも膜下出血とは、くも膜と呼ばれる脳表面の膜と脳の空間(くも膜下腔と呼ばれ、脳脊髄液が存在している)に存在する血管が切れて起こる出血である。くも膜下出血ではくも膜下腔に血液が流入し、CTでは高吸収域として抽出される。

1.× 正常圧水頭症は、くも膜下出血後数週~数か月後に発症する。3大症状は、認知症、歩行障害、尿失禁である。
2.〇 正しい。血管攣縮とは、くも膜下出血後2日~2-3週間までの期間に起こる現象で、脳の血管が収縮して血流が悪化することをいう。その結果、四肢の運動麻痺や意識障害の増悪などが生じることがある。
3.× 脳内出血はくも膜下出血後24時間以内に生じることが多い。
4.× 脳挫傷のCT画像は硬膜下血腫の(三日月形)所見などが認められる。本症例には認められない。
5.× 脳膿瘍のCT画像は膿瘍の壁がリング状に造影されるring enhancementが認められる。本症例には認められない。

くも膜下出血の合併症

くも膜下出血後の合併症には、①再出血・②脳血管攣縮・③正常圧水頭症などがある。
①再出血:発症後24時間以内が多く、死亡率も高い。
②脳血管攣縮:72時間後〜2週間後(ピークは8〜10日)が多く、脳血管攣縮による梗塞の好発部位は、「前交通動脈」である。
③正常圧水頭症:数週〜数ヶ月後に認知症状、尿失禁、歩行障害などの症状が出現する。

 

 

 

 

 

 

次の文により10、11の問いに答えよ。
 50歳の男性。Parkinson病。4年前から右足のふるえが出現し、抗Parkinson病薬を服用している。ADLは自立し、家事を行うことはできているが、作業に時間がかかるようになった。最近、下り坂の途中で足を止めることができず、前方へ転倒するようになったという。

10 Hoehn&Yahrの重症度分類のステージはどれか。

1.Ⅰ
2.Ⅱ
3.Ⅲ
4.Ⅳ
5.Ⅴ

解答3

解説

本症例のポイント

・50歳の男性(Parkinson病)。

・4年前:右足のふるえが出現、抗Parkinson病薬服用。
ADL:自立、家事も時間はかかるものの可能。
・最近:下り坂の途中で足を止めることができず、前方へ転倒するようになった(姿勢反射障害)。
→本症例は、ADL自立しているものの姿勢反射障害がみられている。。姿勢反射障害がみられていることからも、ステージⅢ(歩行障害、姿勢保持反射障害が出現し、ADLの一部に介助が必要になる)が妥当である。

1.× ステージⅠでは、一側性の障害で身体の片側だけ振戦や強剛を示す。日常生活にほとんど介助を必要としない。
2.× ステージⅡでは、両側性の障害で、姿勢の変化が明確となり振戦、強剛、動作緩慢とも両側にあるため日常生活がやや不便であるが姿勢反射障害はない。また、仮面様願望も出現する。
3.〇 正しい。ステージⅢでは姿勢反射障害が出現し活動が制限される。本症例では突進歩行や前方への転倒があり、姿勢反射障害によるものと考えられる。
4.× ステージⅣでは、高度な無動、顕著な振戦・固縮が出現し、日常生活活動全般に介助が必要である。歩行に関してはどうにか、可能な状態である。
5.× ステージⅤでは、立つことも難しい状態である。全身の振戦・硬直が認められ、車椅子での生活または寝たきり状態である。

Hoehn&Yahr の重症度分類ステージ

ステージⅠ:片側のみの症状がみられる。軽症で機能障害はない。
ステージⅡ:両側の症状がみられるが、バランス障害はない。また日常生活・通院にほとんど介助を要さない。
ステージⅢ:歩行障害、姿勢保持反射障害が出現し、ADLの一部に介助が必要になる。
ステージⅣ:日常生活・通院に介助を必要とする。立位・歩行はどうにか可能。
ステージⅤ:寝たきりあるいは車いすで、全面的に介助を要する。歩行・起立は不能。

 

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