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11 38歳の女性。32歳時に四肢脱力が出現、多発性硬化症の診断を受け寛解と増悪を繰り返している。2週前に痙縮を伴った上肢の麻痺にて入院。大量ステロイドによるパルス療法を行った。
この時点での痙縮の治療手段で正しいのはどれか。
1.超音波療法
2.赤外線療法
3.低周波療法
4.ホットパック
5.パラフィン療法
解答3
解説
多発性硬化症は、中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患であり、時間的・空間的に病変が多発するのが特徴である。病変部位によって症状は様々であるが、視覚障害(視神経炎)を合併することが多く、寛解・増悪を繰り返す。視力障害、複視、小脳失調、四肢の麻痺(単麻痺、対麻痺、片麻痺)、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害、有痛性強直性痙攣等であり、病変部位によって異なる。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。脱髄部位は視神経(眼症状や動眼神経麻痺)の他にも、脊髄、脳幹、大脳、小脳の順にみられる。有痛性強直性痙攣(有痛性けいれん)やレルミット徴候(頚部前屈時に背部から四肢にかけて放散する電撃痛)、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)などが特徴である。若年成人を侵し再発寛解を繰り返して経過が長期に渡る。視神経や脊髄、小脳に比較的強い障害 が残り ADL が著しく低下する症例が少なからず存在する長期的な経過をたどるためリハビリテーションが重要な意義を持つ。
(参考:「13 多発性硬化症/視神経脊髄炎」厚生労働省様HPより)
1.× 超音波療法は、超音波を用いた機械的振動によるエネルギーを摩擦熱に変換することによって特定の部位を温める両方の1つである。体温上昇により症状が悪化する。
2.× 赤外線療法では、赤外線が有する温熱効果を利用し、血流の増加や褥瘡治療にも用いられる。光線療法の1つであるが、温熱効果があり、体温上昇により症状が悪化する。
3.〇 痙縮の治療手段で正しい。なぜなら、低周波療法は、体温上昇しないため。低周波療法は、一定のリズムで断続する電流を人体に通電し治療効果を図る電気刺激療法の1つである。高周波では強縮となるが、低周波では単収縮となる。
4.× ホットパックは、シリカゲルを厚手の布袋に詰めたものを熱水(80~90℃)に浸した後、バスタオルでくるみ患部に当て、温熱刺激を与えるものであり、温熱療法の1つである。体温上昇により症状が悪化する。
5.× 熱伝導率の小さいパラフィンを用いて、関節を温めて血行を促し、炎症や痛み、こわばりを抑制する温熱療法の1つである。体温上昇により症状が悪化する。
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【OT】多発性硬化症についての問題「まとめ・解説」
12 60歳の男性。合併症のない急性心筋梗塞。厚生省「循環器疾患のリハビリテーションに関する研究」班(平成8年度)に基づいた心筋梗塞の急性期リハビリテーションプログラムが終了し、退院時指導を行っている。
安静時心拍数が70/分であった場合のKarvonenの方法による運動時の目標心拍数はどれか。
ただし、予測最大心拍数は220 -年齢とし、係数は0 .5 とする。
1.100
2.105
3.110
4.115
5.120
解答4
解説
Karvonenの式は以下の式から導かれる。
【目標心拍数=(予測最大心拍数-安静時心拍数)×k(係数)+安静時心拍数】
目標心拍数=(220-60-70)×0.5+70=115となる。したがって、選択肢4.115が正しい。
13 54歳の女性。糖尿病性末梢神経障害。インスリンによる治療を受けている。低血糖発作の既往が指摘されている。
作業療法中、この患者に現れる初期の低血糖症状で可能性が高いのはどれか。
1.発汗
2.複視
3.けいれん
4.行動異常
5.意識障害
解答1
解説
血糖値が70mg/dlになると、異常な空腹感や生あくび、動悸やふるえ等の自立神経症状を起こす。約50mg/dl以下になると、中枢神経の働きが低下し、無気力や倦怠感、計算力の低下、顔面蒼白等の症状が出現する。さらに血糖が低下し30mg/dl以下になると、意識レベルが低下し、意識消失や異常行動、けいれん、昏睡状態になり、昏睡状態から死に至ることもある。
1.〇 発汗は、この患者に現れる初期の低血糖症状で可能性が高い。発汗(自律神経症状)は、空腹感や生あくび等とともに初期から出現する。
2.× 複視は、50mg/dl以下になるとみられることがある。
3~5. × けいれん/行動異常/意識障害は、低血糖症状が進行した場合にはみられるが、初期の段階では見られない。
血糖値が低下するとカテコラミン(インスリン拮抗ホルモン)の分泌が上昇し、交感神経刺激症状が出現する。さらに血糖値が低下すると脳・神経細胞の代謝が低下し、中枢神経症状が出現する。頭痛や空腹感などの比較的軽度な症状から始まるが血糖値が低下し続けると昏睡に至る。低血糖症状は、①自律神経症状と②中枢神経症状に分けられる。①自律神経症状は、冷感・顔面蒼白・頻脈・動悸・発汗・手の震え・空腹感などである。②中枢神経症状は、頭痛・集中力低下・視力低下・痙攣・昏睡などである。予防法として、飴や角砂糖などを携帯してもらう。
次の文により14、15の問いに答えよ。
70代の女性。Alzheimer 型認知症の診断を受けデイケアを利用しながら自宅で生活を続けている。独歩での移動は可能であるが、屋外では道に迷う。IADLは全介助である。感情のコントロールができなくなり、デイケア施設職員に文句を言ったり介護に抵抗することもある。
14 この患者に特徴的にみられる症状や障害で正しいのはどれか。
1.幻視
2.人格変化
3.意識混濁
4.不全片麻痺
5.視空間認知の障害
解答5
解説
Alzheimer 型認知症は、全認知症の50%以上を占め、女性に多い疾患である。代表的な症状として、記憶障害(特に短期記憶や記銘力の低下)、失見当識、物とられ妄想、徘徊などある。
1.× 幻視は、Lewy(レビー)小体型認知症に特徴的である。
2.△ 人格変化は、前頭側頭型認知症(Pick病)で初期から見られる。Alzheimer 型認知症でも進行すればみられる。人格障害(人格変化)とは、もともとの人格傾向が量・質的に変化し、客観的にも病的状態とされ、明らかな生活障害をきたしていることが多いことをいう。本症例では、感情のコントロールができなくなり、デイケア施設職員に文句を言ったり、介護に抵抗することもあることから人格変化が起こっているとも考えられる。
3.× 認知症では、意識混濁を認めない。
4.× 不全片麻痺は、血管性認知症でみられる。
5.〇 視空間認知の障害は、道に迷うことなどで明らかになり、Alzheimer 型認知症でみられる。
次の文により14、15の問いに答えよ。
70代の女性。Alzheimer 型認知症の診断を受けデイケアを利用しながら自宅で生活を続けている。独歩での移動は可能であるが、屋外では道に迷う。IADLは全介助である。感情のコントロールができなくなり、デイケア施設職員に文句を言ったり介護に抵抗することもある。
15 この患者に対するデイケアプログラムで優先すべき目標はどれか。
1.気分の安定
2.買い物の練習
3.対人関係の改善
4.家事動作の練習
5.短期記銘力の向上
解答1
解説
1.〇 正しい。気分の安定は、この患者に対するデイケアプログラムで優先すべき目標である。なぜなら、本症例は感情のコントロールができず、気分が不安定であるため。今後、作業療法を円滑に進めるために、まず目標とするべきである。
2.× 買い物の練習に対する優先順位は低い。なぜなら、現時点でIADLは全介助であるため。買い物は患者にとって現在の能力を上回る活動であり、作業療法に対する苦手意識が生まれてしまう可能性がある。
3.× 対人関係の改善に対する優先順位は低い。なぜなら、気分が安定しないことには対人関係は円滑に行えないことが多いため。したがって、対人関係の改善は、気分の安定を行った後の目標とする。対人関係の改善は、意欲の向上を引き出すことができるため有用と考えられる。
4.× 家事動作の練習に対する優先順位は低い。なぜなら、現時点でIADLは全介助であるため。家事動作は患者にとって現在の能力を上回る活動であり、作業療法に対する苦手意識が生まれてしまう可能性があるので避ける。
5.× 短期記銘力の向上に対する優先順位は低い。なぜなら、認知症患者の記銘力の向上を望むことは難しいため。記銘力の向上を目標とするのではなく、記銘力が低下している状態でも行える活動を行い、記銘力の低下をカバーする方法を考える方がよい。