第48回(H25) 作業療法士国家試験 解説【午前問題16~20】

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16 53歳の男性。アルコール依存症。34歳から頻回の入院を繰り返し、仕事も失い、妻とも離婚した。1週前から終日飲酒して、食事も摂らない状態が続くため入院となった。入院後は振戦せん妄がみられたが、3週後には状態が安定し、体力強化を目的に作業療法が処方された。
作業療法場面でみられやすいのはどれか。

1.柔軟な判断
2.高い目標設定
3.共感的な感情表出
4.熟慮に基づく行動
5.円滑な対人関係の構築

解答2

解説

1.× 柔軟な判断はみられにくい。なぜなら、飲酒時の汚名を返上しようと焦っていることが多いため。
2.〇 正しい。高い目標設定は、作業療法場面でみられやすい。飲酒時の汚名を返上しようと焦り、高い目標設定をしがちである。
3.× 共感的な感情表出はみられにくい。なぜなら、飲酒欲求によりいらいらしていることが多いため。
4.× 熟慮に基づく行動はみられにくい。なぜなら、いらいら感や焦っていることが多いため。
5.× 円滑な対人関係の構築はみられにくい。なぜなら、飲酒欲求によりいらいらしているため。

 

 

 

 

 

 

次の文により17、18の問いに答えよ。
 32歳の女性。統合失調症。大学卒業後商社に勤務していた。28 歳ころから「心身ともに疲れる」と言うようになり、このころから幻聴が出現した。定期的に受診し服薬を続けていたが、1か月前から職場で自分の悪口を言われているような幻聴が増加したため休職し、外来作業療法が処方された。

17 作業療法の評価で優先するのはどれか。

1.生活歴
2.基礎体力
3.金銭管理能力
4.対人関係能力
5.余暇の過ごし方

解答4

解説

1.× 生活歴は優先順位は低い。なぜなら、本症例は職場には行かれなくなったが日常生活能力は保たれていると考えられるため。ただし、生活歴は患者を理解するうえで重要な情報である。
2.× 基礎体力は優先順位は低い。なぜなら、作業療法のために通院する体力は維持されていると考えられるため。幻聴によって患者が悩んでいることに焦点を当てる必要がある。
3.× 金銭管理能力は優先順位は低い。なぜなら、本症例は職場には行かれなくなったが日常生活能力は保たれていると考えられるため。つまり、金銭管理能力も保たれていると考えらる。
4.〇 正しい。対人関係能力は、作業療法の評価で優先する。なぜなら、復職を目指し、幻聴に左右されずに対人関係を維持できる能力の向上を図る必要があるため。
5.× 余暇の過ごし方は優先順位は低い。なぜなら、本症例は復職を目指しているため。ただし、生活歴同様、余暇の過ごし方は患者を理解するうえで重要な情報である。

 

 

 

 

 

次の文により17、18の問いに答えよ。
 32歳の女性。統合失調症。大学卒業後商社に勤務していた。28 歳ころから「心身ともに疲れる」と言うようになり、このころから幻聴が出現した。定期的に受診し服薬を続けていたが、1か月前から職場で自分の悪口を言われているような幻聴が増加したため休職し、外来作業療法が処方された。

18 この患者の作業療法で優先するのはどれか。

1.運動
2.調理訓練
3.通勤訓練
4.レザークラフト
5.セルフモニタリング

解答5

解説

1.× 運動は優先順位は低い。なぜなら、作業療法のために通院する体力は維持されていると考えられるため。
2.× 調理訓練は優先順位は低い。なぜなら、調理訓練と職場復帰の関連は少ないため。また、本症例は職場には行かれなくなったが日常生活能力は保たれていると考えられる。
3.× 通勤訓練は優先順位は低い。なぜなら、1ヵ月前まで通勤していたため。通勤の支障は出ていない。
4.× レザークラフトは優先順位は低い。なぜなら、レザークラフトと職場復帰は関係が低いため。
5.〇 セルフモニタリングは、この患者の作業療法で優先する。セルフモニタリングは、認知行動療法で用いられる方法の1つである。妄想に左右された自己の認知の歪みに気づき、対人関係技術を向上させていくのに有効である。

 

 

 

 

 

 

次の文により19、20の問いに答えよ。
 24歳の女性。自己愛性パーソナリティー障害。大学院を修了しサービス業に就いたが、自分より学歴の低い社員と同じ職場に配置されたことに腹を立て、上司に配置換えを要求した。客に尊大な態度を批判され、「なぜ自分が批判されるのか、配置換えの希望を無視した上司が悪い」と言い、怒りをあらわにした。その後、抑うつ感が強まり、自宅に引きこもるようになったため両親が精神科を受診させ、作業療法に通うことになった。

19 この患者にみられやすい特徴はどれか。

1.自罰傾向
2.特権意識
3.自生思考
4.不定愁訴
5.嫉妬妄想

解答2

解説

自己愛性パーソナリティー障害とは?

自己愛性パーソナリティー障害は、自分が素晴らしいと思い自己中心的にふるまうため、様々な対人関係に障害が生じやすい。周りの人間が自分の特別扱いするのが当然と考え、他人への配慮に欠ける。

【特徴】

①尊大で傲慢・横柄な態度・特権意識
②対人関係で相手の不当な利用・共感欠如
③過剰な賞賛への要求・批判に対しての過剰な反応

1.× 自罰傾向(自責傾向)とは、常に自分を責めてしまうことである。うつ病に特徴的である。
2.〇 正しい。特権意識は、特権を持つことによって感じる、自分は特別であるという強い優越感のことで、本症例にみられやすい。特権意識は、自己愛性パーソナリティ障害の特徴の一つである。
3.× 自生思考とは、考えが自分の意思と関係なく自然に頭に浮かんでくることである。初期の統合失調症に特徴的である。
4.× 不定愁訴とは、自覚症状が一定せずその時々により変化する様々な身体的訴えのことである。身体表現性障害に特徴的である。
5.× 嫉妬妄想とは、愛人や配偶者が、他の者と愛情や性的関係をもつという妄想のことである。妄想性障害、アルコール依存症、認知症によくみられる。

 

 

 

 

 

 

次の文により19、20の問いに答えよ。
 24歳の女性。自己愛性パーソナリティー障害。大学院を修了しサービス業に就いたが、自分より学歴の低い社員と同じ職場に配置されたことに腹を立て、上司に配置換えを要求した。客に尊大な態度を批判され、「なぜ自分が批判されるのか、配置換えの希望を無視した上司が悪い」と言い、怒りをあらわにした。その後、抑うつ感が強まり、自宅に引きこもるようになったため両親が精神科を受診させ、作業療法に通うことになった。

20 作業療法士の対応で適切なのはどれか。

1.作業の結果を積極的に賞賛する。
2.学歴に見合った仕事を探す。
3.競争や勝ち負けを重視する。
4.失敗や葛藤を避ける。
5.役割行動を促す。

解答5

解説

1.作業の結果を積極的に賞賛する必要はない。なぜなら、賞賛は、患者の欲求を満たすことになるため。さらなる横柄な態度へと発展する可能性が高い。
2.学歴に見合った仕事を探す必要はない。なぜなら、学歴に見合った仕事が必ずしも本症例にあったものとはいえないため。また、学歴等の社会的な評価をするのではなく、現在の状態にあった作業療法を受け入れるように促す。障害となっている態度(願望)を助長してはならず、現実的な行動ができるように働きかけることが重要である。
3.競争や勝ち負けを重視する必要はない。むしろ、競争や勝ち負けに異常にこだわる傾向であるためそれらを避ける必要がある。なぜなら、その結果によって患者の感情が不安定になる恐れがあるため。
4.失敗や葛藤を避ける必要はない。なぜなら、失敗や葛藤を避けては健康的な自我を構築することができないため。失敗や葛藤にぶつかってもそれを受け止めることができるように援助することが重要である。
5.役割行動を促すことは、作業療法士の対応で適切である。自らの役割を認識し、それに応じた行動をすることで達成感を得て、現実を自覚できるように促す。

 

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