第50回(H27) 作業療法士国家試験 解説【午前問題31~35】

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31 上腕義手装着時の適合判定において肩関節の可動域で正しいのはどれか。

1.外転60°以上
2.内転20°以上
3.屈曲90°以上
4.伸展15°以上
5.外旋30°以上

解答3

解説
1.× 外転は、「60°」ではなく90°以上である。
2.× 内転20°以上など、肩関節内転に関する可動域の基準はない
3.〇 正しい。屈曲90°以上である。
4.× 伸展は、「15°以上」ではなく30°以上である。
5.× 外旋は、「30°以上」ではなく45°以上である。ちなみに、内旋も同様に45°以上である。ただし、改定第8版では外旋・内旋のチェック項目が削除されている。

 

 

 

 

 

 

32 大腿骨頸部骨折に対して後方アプローチにて人工骨頭置換術を施行した患者のADL指導で正しいのはどれか。

1.和式トイレで排泄する。
2.割り座で足の爪を切る。
3.あぐら座位で靴下をはく。
4.患側下肢から階段を昇る。
5.椅子に座って床の物を拾う。

解答3

解説

  • 後方アプローチの禁忌肢位は、股関節の過屈曲 + 内転 + 内旋である。
  • 前方アプローチの禁忌肢位は、股関節の伸展 + 内転 + 外旋である。

1.× 和式トイレで排泄するのは不適切である。なぜなら、和式トイレは股関節過屈曲を伴い、股関節に負担をかけるため。
2.× 割り座で足の爪を切るのは不適切である。なぜなら、割り座は股関節の屈曲・内旋を伴い、股関節に負担をかけるため。
3.〇 正しい。あぐら座位で靴下をはく。あぐらは禁忌肢位に該当しない。股関節の外転・外旋を伴うのみである。
4.× 階段を昇るのは、「患側下肢から」ではなく健側下肢からである。なぜなら、体を上方へ移動させる(階段を上る)ためには、支持性が十分な健側から行うほうが安全に遂行できるため。人工骨頭置換術の術後のほかにも、脳卒中後の片麻痺、下肢切断者も同様に指導する。
5.× 椅子に座って床の物を拾うのは不適切である。なぜなら、体幹の前傾を伴い、相対的に股関節屈曲位となり、股関節に負担をかけるため。リーチャーなどの自助具を使用するよう指導する。

 

 

 

 

 

 

33 肩手症候群に対する治療介入で誤っているのはどれか。

1.温熱療法を併用する。
2.肩関節の可動域訓練を行う。
3.手指と手関節との可動域訓練を行う。
4.肩関節亜脱臼にアームスリングを使用する。
5.手指に発赤を認めた場合は可動域訓練は禁忌である。

解答5

解説

肩手症候群とは?

肩手症候群は、複合性局所疼痛症候群(CRPS)の1つと考えられており、脳卒中後片麻痺に合併することが多い。他にも骨折や心臓発作などが誘因となる。症状は、肩の灼熱性疼痛と運動制限、腫脹などを来す。それら症状は、自律神経障害によるものであると考えられている。

第1期:症状が強い時期。
第2期:痛みや腫脹が消失し、皮膚や手の萎縮が著明になる時期。
第3期:手指の拘縮と骨粗懸症が著明になる時期の経過をとる。

治療目的は、①疼痛緩和、②拘縮予防・軽減である。
治療は、①星状神経節ブロック、②ステロイド治療、③アームスリング装着を行う。
リハビリは、①温熱療法、②マッサージ、③関節可動域訓練(自動他動運動)、④巧級動作練習を行う。
『脳卒中治療ガイドライン2009』では、「麻痺の疼痛・可動域制限に対し、可動域訓練は推奨される(グレードB:行うよう勧められる)」としている。

1~4.〇 正しい。温熱療法を併用する/肩関節の可動域訓練を行う/手指と手関節との可動域訓練を行う/肩関節亜脱臼にアームスリングを使用することは、肩手症候群に対する治療介入として正しい。
5.× 手指に発赤を認めた場合でも可動域訓練は愛護的に行ってもよい

 

 

 

 

 

34 記憶障害と治療介入の組合せで適切でないのはどれか。

1.逆向性健忘:アルバム療法
2.逆向性健忘:展望記憶訓練
3.前向性健忘:メモリーノート
4.前向性健忘:アラーム付き時計
5.前向性健忘:リアリティオリエンテーション

解答2

解説

逆行性健忘とは?

 逆行性健忘とは、発症以前の過去の出来事に関する記憶を思い出すことの障害である。ここでいう出来事とは本人の生活史上の経験であっても、本人が生活してきた時代における社会的な事実であってもよい。すなわち、発症以前に本人が経験し、覚えているはずの出来事を思い出すことができない状態である。しかし、どの程度の期間の逆行性健忘があるかの評価は必ずしも容易ではない。なぜなら、その個人の過去の記憶を正確に証明することは困難であるため。また、世俗的な事象を対象に過去の記憶を確認しようとしても、個人の関心の度合いが異なるためである。

1.〇 正しい。逆向性健忘に対し、アルバム療法は適応となる。アルバム療法とは、記憶のきっかけとなる様々な材料や道具を使用し回想を促す回想法の一つである。その人が歩んできた人生の折々の経験やできごとが自然に思い出される素材としてアルバムを用いる。
2.× 展望記憶訓練は、「逆向性健忘に対して」ではなく、前向性健忘に対して適応となる。展望記憶訓練とは、これから先に起こる内容に関する記憶(展望記憶)に対するアプローチである。
3.〇 正しい。前向性健忘に対し、メモリーノートは適応となる。メモリーノートとは、忘れてはならないことをノートに書き留め、見返すことで記憶の想起補助に使用するノートのことである。記憶に関する神経機構の障害が発現した時点が明らかな場合、障害時点以降の情報の記憶障害を前向性健忘、障害以前の情報の記憶障害を逆行性健忘と呼ぶ。
4.〇 正しい。前向性健忘に対し、アラーム付き時計は適応となる。アラーム付き時計は、これから先に起こる行動予定時間にアラームを鳴らして展望記憶の補助として用いる。さらに、パソコンの操作自体も注意力や集中力を高める訓練になる。
5.〇 正しい。前向性健忘に対し、リアリティオリエンテーション(現実見当識訓練)は適応となる。リアリティオリエンテーション(現実見当識訓練)は、人・日時・場所などの現実検討の基本となる情報である。例えば、「味噌汁を嗅がせて今が朝であることを知る」ことなどを繰り返して、見当識障害の改善に用いる。

リアリティ・オリエンテーション法(現実見当識訓練)とは?

「今がいつなのか?」「ここはどこなのか?」「周りの人が誰なのか?」がわからない見当識障害の症状があると、患者さんは強い不安を感じる。医療スタッフが日常会話の中で患者さんに正しい情報を繰り返し伝えることにより、現実見当識の維持が期待できる。これを「リアリティ・オリエンテーション法」いう。
例)「〇〇さん、ちょっと外を見てください、今日はいいお天気ですね。」

 

 

 

 

 

 

35 ロービジョンケアの活動と補助具の組合せで適切でないのはどれか。

1.パソコン操作:音声変換ソフト
2.針の糸通し:拡大鏡
3.屋外歩行:白杖
4.爪切り:単眼鏡
5.読書:書見台

解答4

解説

ロービジョンケアとは?

 ロービジョンケアとは、視覚に障害があるため生活に何らかの支障を来している人に対する医療的・教育的・職業的・社会的・福祉的・心理的などすべての支援の総称である。

(写真左:単眼鏡 ブランド:ケンコートキナー様)(写真右:高見台 ブランド:AYADA様)

1.〇 正しい。音声変換ソフトによって、パソコンの画面を読み上げ、操作を助ける。
2.〇 正しい。拡大鏡によって、針穴への糸通しなど助ける。
3.〇 正しい。白杖によって、屋外歩行を助ける。使用者の安全の確保や歩行に必要な情報の収集、周囲への注意喚起を目的として使用される。
4.× 単眼鏡は、遠くを見るときに使用するものである。爪切りのように手元を見る場合には使用しない。
5.〇 正しい。書見台によって、読書を助ける。書見台は、読書をする際に目と対象物との距離を適正に保ち、姿勢が悪くなることを防止するためのものである。

 

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