第50回(H27) 作業療法士国家試験 解説【午前問題36~40】

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36 Wallenberg症候群の嚥下障害への対応について誤っているのはどれか。

1.病巣側への頸部回旋での直接訓練
2.頸部伸展位での直接訓練
3.Shaker(シャキア)法
4.Mendelsohn手技
5.バルーン拡張法

解答2

解説

Wallenberg症候群(延髄外側症候群)とは?

Wallenberg症候群(延髄外側症候群)は、椎骨動脈、後下小脳動脈の閉塞により延髄外側の梗塞を来す疾患である。①梗塞と同側の顔面感覚障害(温痛覚)、②梗塞と同側の運動失調(上下肢の動かしづらさ)、③梗塞と同側のホルネル(Horner)症候群(一側眼の瞼裂狭小化、縮瞳、眼球陥凹)、④梗塞と反対側の半身感覚障害(頸から下の温痛覚)、⑤嗄声、嚥下障害、⑥回転性めまい、眼振、⑦味覚障害が生じる。

(※参考:「脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告書」厚生労働省HPより)

1.〇 正しい。病巣側への頸部回旋での直接訓練を行う。なぜなら、病巣側への頸部回旋で、食塊の残留が少なくなり嚥下がスムーズになる(患側の梨状窩が狭くなるため)。麻痺のある患者に対しては、摂食時に非麻痺側を下、麻痺側を上にした半側臥位で頚部を患側に向けた姿勢をとる。
2.× 頸部「伸展位」ではなく屈曲位での直接訓練を行う。なぜなら、頚部伸展位では、喉頭が開き咽頭と気道が直線状となり誤嚥の危険性が増すため。
3.〇 正しい。Shaker法(シャキア法:head raising exercise)とは、仰臥位で両肩をつけたまま頚部を挙上し、舌骨上筋群など喉頭挙上に関わる筋の筋力強化を行う。嚥下訓練のうち食物を使わない間接訓練の一つである。
4.〇 正しい。Mendelsohn手技(メンデルスゾーン手技)は、Wallenberg症候群による球麻痺などで適応となる。Mendelsohn手技(メンデルスゾーン手技)とは、咽頭残留が多い場合に、咽頭挙上量と挙上時間を増大させ、輪状咽頭筋部の開大幅を増大し、開大時間を延長させる。唾液嚥下を行わせ、飲み込む際に喉仏が上がっているのを感じたら何秒間かそのままの状態を維持する。
5.〇 正しい。バルーン拡張法は、輪状咽頭筋弛緩不全食道狭窄に対する治療法である。バルーンカテーテルを用いて、主に食道入口部(輪状咽頭筋部)を機械的に反復して拡張する。

 

 

 

 

 

 

37 人間作業モデルにおける作業適応のプロセスで、人間の構成要素として正しいのはどれか。2つ選べ。

1.習慣化
2.意志
3.情緒
4.身体
5.認知

解答1/2

解説

人間作業モデルとは?

 人間作業モデルを構成するのは、「作業」を人間性の保持に必要なもの、健康が破綻した後の再調整をするものとして位置づけている。その人の行動を位置づけるものとして「意志・習慣化・遂行技能」の3要素の相互作用と、これに加えて「環境」 を4要素として挙げており、これらよりどの程度作業に適しているかを考える。

1~2.〇 正しい。習慣化/意志は、人間作業モデルにおける作業適応のプロセスで、人間の構成要素として正しい
3~5.× 情緒/身体/認知は、人間作業モデルにおける作業適応のプロセスで、人間の構成要素として含まれていない

 

 

 

 

 

38 脳卒中片麻痺患者(右片麻痺30名、左片麻痺30名)を対象に、自助具の使用について調査した。回答は右片麻痺患者で「使いやすい」13名、「使いにくい」17名、左片麻痺患者で「使いやすい」15名、「使いにくい」15名であった。
 麻痺側による回答の違いを統計学的に検定する方法はどれか。

1.t検定
2.X2検定
3.符号検定
4.Mann-Whitney検定
5.Wilcoxon符号付順位検定

解答2

解説

検定とは?

 検定とは検定とは、統計学的手法を用いて、帰無仮説が正しいか、正しくないかを判断することである。

「検定の方法」

①パラメトリック検定(母集団が正規分布をするという仮説のもとに行う)
②ノンパラメトリック検定(母集団の分布にかかわらず用いることのできる)に大別される。

パラメトリック検定には、①t検定(2群の平均値の差を検定する)、②分散分析(3群以上の平均値に差があるかどうかを検定する)などがある。ノンパラメトリック検定には、①Mann-Whitney検定(2群の中央値の差を検定する)、②X2検定(割合の違いを求める)、③Wilcoxon符号付順位検定(一対の標本による中央値の差を検定する)などがある。

したがって、本問題では、割合の違いを問われているため、選択肢2.X2検定が正しい。

1.× t検定は、2群間の平均値の差を検定する。
3.× 符号検定とは、対応のある2群間ですべての対についてその優劣に+、ーの符号をつけ(例えば、A群が優っていれば+、B群が優っていればー)、差がない場合は除外して+とーが出る確率を計算する。差がなければどちらの確率も1/2となる。ノンパラメトリック検定の一つである。
4.× Mann-Whitney検定は、2群の中央値の差を検定する。
5.× Wilcoxon符号付順位検定とは、一対の標本による中央値の差を検定するノンパラメトリック検定である。

 

 

 

 

 

 

39 国際生活機能分類(ICF)の特徴で適切でないのはどれか。

1.「生活機能と障害」は健康状態と背景因子との相互作用と考える。
2.「医学モデル」と「統計モデル」の統合に基づいている。
3.構成要素は肯定的・否定的の両方の用語で表現できる。
4.医療福祉の専門家と障害者団体が関わって作成された。
5.すべての人が対象になる。

解答2

解説

 ICFは、障害者のみならず、すべての人を対象として、障害を「生活機能」というプラス面からみるように視点を転換した分類法である。この「生活機能」は、「心身機能・身体構造」「活動」「参加」の3レベルに分類されたうえで、さらに「個人因子」「環境因子」の観点が加えられる。

1.〇 正しい。「生活機能と障害」は、健康状態と背景因子との相互作用と考える。ICFは、生活機能(心身機能・構造、活動、参加の3つの構成要素)と、それに影響する背景因子(環境因子、個人因子の2つの構成要素)で構成される。心身機能・構造、活動、参加は相互に影響を与え合い、健康状態と背景因子からも影響を受ける
2.× 「医学モデル」と「統計モデル」ではなく、「医学モデル」と「社会モデル」の統合に基づいている。
3.〇 正しい。構成要素は、肯定的・否定的の両方の用語で表現できる。それらの相互関係と、健康状態や背景因子との間の相互作用もみる。一方で、ICIDH(国際障害分類)は、マイナス面のみを評価するものである。
4.〇 正しい。医療福祉の専門家と障害者団体が関わって作成された。ICIDH(国際障害分類)に対する批判から、医療福祉の専門家と障害者団体が関わって、その結果を結集してICFの改訂へと至っている。
5.〇 正しい。すべての人が対象になる。ICFは、「障害をもつ人だけ」ではなく、すべての人を対象に健康状態や健康に関連する状況を評価することができる。

 

 

 

 

 

 

40 認知症のBPSD(behavioral and psychological symptoms of dementia)の評価尺度はどれか。

1.CDR(clinical dementia rating)
2.N式老年者用精神状態評価尺度
3.NPI(neuropsychiatric inventory)
4.MMSE(mini mental state examination)
5.HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)

解答3

解説

認知症の主な症状

①中核症状:神経細胞の障害で起こる症状
(例:記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下、失語・失行など)

②周辺症状:中核症状+(環境要因や身体要因や心理要因)などの相互作用で起こる様々な症状
(例:徘徊、幻覚、異食、せん妄、妄想、不安など)

1.× CDR(clinical dementia rating)とは、記憶を中心とした認知機能障害の重症度を一時評価尺度であり、5段階評価である。
2.× N式老年者用精神状態評価尺度は、認知症の重症度を評価する。老年者および認知症患者の日常生活における実際的な精神機能を、行動観察により評価する。①家事・身辺整理、②関心・意欲・交流、③会話、④記銘・記憶、⑤見当識の5項目について7段階に区分して点数化する。
3.〇 正しい。NPI(neuropsychiatric inventory)は、援助者からの聞き取りにより、「認知症の行動・心理症状(BPSD)」を評価する。「認知症の行動・心理症状(BPSD)」に関連する12項目につき、頻度を0~4の5段階で、重症度を1~3の3段階で評価し、点数が高いほど重症となる。
4~5.× MMSE(mini mental state examination)/HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)は、認知機能をみる簡易精神機能検査である。

 

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