第51回(H28) 作業療法士国家試験 解説【午後問題41~45】

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41 我が国の認知症対策として適切でないのはどれか。

1. 介護者への支援
2. 施設入所の促進
3. 若年性認知症施策の強化
4. 認知症に関する知識の普及
5. リハビリテーションモデルの研究開発

解答2

解説

 政府は、「認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指す」という考えをもとに打ち立てられた「新オレンジプラン」を2015年1月27日に策定した。

認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)7つの柱

認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進
②認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供。
若年性認知症施策の強化。
④認知症の人の介護者への支援
⑤認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進。
⑥認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究・開発及びその成果の普及の推進
⑦認知症の人やその家族の視点の重視。

(※参考:「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」厚生労働省)

1.〇 正しい。介護者への支援は、新オレンジプランのに該当する。ケアマネジメントは、要介護者だけでなく、介護者である家族の希望も取り入れながら介護目標を立てていく。例えば、介護保険によるショートステイなどの利用によって介護者の負担を減らす措置をとることができる。
2.× 施設入所の促進は、認知症対策として当てはまらない。なぜなら、症状の軽い人まで施設入所を促進すると、患者が多くなり施設が圧迫したり、十分なケアができず、さらなる症状の悪化が懸念されるため。都道府県や市町村では、地域包括ケアシステムの充実を図り、住まい・医療・介護・予防・生活支援が地域で継続できることを目標としている。
3.〇 正しい。若年性認知症施策の強化は、新オレンジプランのに該当する。
4.〇 正しい。認知症に関する知識の普及は、新オレンジプランのに該当する。
5.〇 正しい。リハビリテーションモデルの研究開発は、新オレンジプランのに該当する。

 

 

 

 

 

 

42 身体表現性障害の患者に対する作業療法で最も適切なのはどれか。

1. 現実検討能力を高める。
2. 不安な気持ちを解釈する。
3. 集団作業療法を基本とする。
4. 対人関係能力の向上を図る。
5. 感情表現を促す活動を提供する。

解答5

解説

身体表現性障害とは?

 身体表現性障害とは、ストレスが原因となって身体症状にあらわれる病気である。その特徴は、症状に身体的問題はないといわれても、執拗に検査を求め、繰り返し身体症状を訴えるものである。自分に注意を引こうとする行動がみられることもあるが、原因となるストレスについては無関心であることが多い。

1.× あえて現実検討能力(現実を正しく把握する力)を高めることへの優先度は低い。なぜなら、身体表現性障害などの神経症性障害では、病識や現実検討能力は保たれているため。あえて、現実検討能力を高める作業療法は不要である。
2.× あえて不安な気持ちを解釈することへの優先度は低い。なぜなら、精神の解釈は作業療法では行わないため。必要に応じて、医師や臨床心理士が精神療法で行う。
3.× あえて集団作業療法を基本とする必要はない。身体表現性障害の治療として、精神療法を主に行うことが多い。その人がどんな問題を抱えているのか、不安感や抑うつ感に苦しんでいることにも配慮しながら、身体的な気がかりを丁寧にうかがい、ストレスの原因の特定を目指し、具体的なストレス対処や環境調整について話し合う。
4.× あえて対人関係能力の向上を図ることへの優先度は低い。なぜなら、身体表現性障害は、対人関係能力の低下は特にみられないため。
5.〇 正しい。感情表現を促す活動を提供する。なぜなら、身体表現性障害は、感情表現が促される活動をすることで自己の症状へのとらわれを軽減できるため。

 

 

 

 

 

43 自閉性障害の子供の作業療法場面でみられる特徴はどれか。

1. 新しい環境を好む。
2. 同じ遊びに没頭する。
3. ままごと遊びをする。
4. 身振りで意味を強調する。
5. 周りの子供に関心をもつ。

解答2

解説

自閉性障害の特徴
  1. 対人関係の障害
  2. コミュニケーション障害
  3. 知能の遅れ
  4. 特徴的な常同行動やオウム返しなど。

1.× 新しい環境を好むのはなく、こだわりが強いため変化に対する適応が困難である。
2.〇 正しい。同じ遊びに没頭する。常同的な反復行動が特徴である。
3.× ままごと遊びをするなどの「ごっこ遊び」は苦手である。なぜなら、コミュニケーション障害があるため。
4.× 身振りで意味を強調するのは困難である。なぜなら、コミュニケーション障害があるため。
5.× 周りの子供に関心をもつことは少ない。なぜなら、人と関わるのを嫌がること(コミュニケーション障害)が多いため。

 

 

 

 

 

 

44 認知症患者のケアにおける環境調整で適切でないのはどれか。

1. 見守りがしやすい環境を整える。
2. 居室のプライバシーを確保する。
3. 自室の場所を分かりやすく掲示する。
4. 親しみやすい家庭的な環境作りをする。
5. 生活の道具を新しいものに入れ替える。

解答5

解説
1.〇 正しい。見守りがしやすい環境を整える。なぜなら、身体の不調や周辺症状についても把握しやすくなるため。
2.〇 正しい。居室のプライバシーを確保する。なぜなら、認知症患者であっても、意思が尊重され、自分らしく暮らし続けることができる工夫が必要であるため。
3.〇 正しい。自室の場所を分かりやすく掲示する。なぜなら、認知症患者(見当識障害のある患者)が、自室に戻れない場合を防ぐため。
4.〇 正しい。親しみやすい家庭的な環境作りをする。なぜなら、認知症患者も安心して過ごせるため。
5.× 生活の道具を新しいものに入れ替える必要はない。なぜなら、認知症患者は新しいことを覚えるのも困難であるため。環境の変化によって症状の悪化や混乱を招くこともある(リロケーションダメージ)。

 

 

 

 

 

 

45 アルコール依存症患者への抗酒薬に期待できる効果はどれか。

1. 不眠の改善
2. 不安感の軽減
3. 離脱症状の緩和
4. 飲酒に対する嫌悪
5. 幻覚妄想状態の改善

解答4

解説

 抗酒薬は、その名の通り、お酒を飲まないようにする薬である。その機序として、①アルデヒド脱水素酵素の働きを抑制する。②アセトアルデヒドが分解されず体内に長く留まる。③吐き気や頭痛,などの不快症状を引き起こす。したがって、選択肢4.飲酒に対する嫌悪が正しい。つまり、飲酒に対する嫌悪感を強め、禁酒させる。そのため、その効果から「嫌酒薬」とも呼ばれる。

1~3.5.× 不眠の改善/不安感の軽減/離脱症状の緩和/幻覚妄想状態の改善は、抗酒薬の効果はない。

 

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